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February 24, 2015

カミカメつくよ! ジョナサン・リーベスマン 『ミュータント・タートルズ』

Tnmt1アメコミ映画の隆盛にのっかって、90年代に人気を博したあのキャラクターまで大復活。『ミュータント・タートルズ』ご紹介します。NYを暗躍する犯罪者集団・フット団。熱意溢れる若きジャーナリスト・エイプリルは、フット団を追っていた最中、彼らと戦う謎のヒーローに遭遇する。そのヒーローとはまだ十代のミュータント化した四匹の亀たちだった…

この辺でひく人はおおよそひいてしまうと思います(^_^;
近年のアメコミ映画は『ダークナイト』に代表される「深刻系」と、『アイアンマン』『スパイダーマン』に代表される「エンジョイ系」に大別されます。この『ミュータント・タートルズ』はエンジョイ系の最極北といえましょう。
大別されるといえば、アメコミはDC・マーベルの2大巨頭と、それよりやや小規模の「ダークホース」がほとんどのシェアを占めています。残りのわずかな隙間の中にたくさんのインディ系がひしめいているわけですが、その中から映画化にまで上りつめるのは至難の業といえます。ミュータント・タートルズはそんな不可能を可能ににした作品といえるでしょう。

しかしまあこのタートルズ、なんと妙ちきりんなやつらでしょう。人間型に進化した亀… そこまでなら百歩譲って受け入れられないこともないです。ですがその上ティーンエイジャーで忍者で、師匠はネズミ人間で名前はルネサンスの芸術家でピザが大好物で… キャラを立たせるには突飛な設定がそれなりに必要かとは思いますが、いくらなんでもこりゃ盛りすぎだろうと思いました(^_^;
けれどそんなキャラが全世界で大ブームを巻き起こしたわけですから、世の中わかりません。そういえば90年代初めは大爆死したものの『スーパーマリオ』も映画化されていました。前世紀末は下水道と亀が脚光を浴びた極めて奇妙な時代といえます。下水道といえばタートルズのもともとの発想はNYの下水道で捨てられたワニが徘徊していた…という例の都市伝説からきているような気がします。

ちなみにタートルズ、日本ではブームが終息した後も3~5年毎に新作アニメが作られていたようです。ですから向こうではそれなりに定番キャラであり、この度の再映画化も当然の流れだったのかもしれませんが、まさか日本でも『ベイマックス』に肉薄するほどのヒットになるとはこりゃまたビックリでした。
ヒットの要因はやっぱり昔のアニメ・映画を懐かしむ層が意外にけっこういた、ということでしょうか。あとベイマックスもそうですが最近のゆるキャラやキモ系キャラのブームにうまくのっかった気がします。映画版タートルズはベイマックスに比べるとかなり生々しいというか不気味ですが、そんなキモイとカワイイの境界線上のデザインがかえって差別化になってよかったのかもしれません。

…とここまで書いて映画のストーリーについてほとんど触れてませんね。というか特にあまり書くことがないんです(笑) ただひたすら亀が暴れてドカーンバキーンと楽しい!そんな映画です(一応ほめてます)。
製作は『トランスフォーマー』のマイケル・ベイで監督は『世界侵略:ロサンゼルス決戦』のジョナサン・リーベスマン。とにかく火薬と爆発を盛りまくるベイ監督作品に比べると、『タートルズ』はやや盛りが少なく感じられます。それを物足りないと思うか、ちょうどいいと感じるかでこの映画の評価が分かれると思います。

P11『ミュータント・タートルズ』はそんなわけで現在全国で大ヒット上映中。観たらピザが食べたくなること間違いなしなので、ダイエット中の方にはおすすめできません!


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February 17, 2015

ビター・グループ・ホーム デスティン・ダニエル・クレットン 『ショートターム』

Poster2アメリカ映画というと莫大な予算をかけて大スターが活躍するものがまず思い浮かびますが、低予算で地味ながら良質の作品を作ってるところもいろいろあります。本日はそんな日本での公開が珍しい「地味アメリカ映画」の一本『ショート・ターム』をご紹介します。

深刻な問題を抱えて家族から預けられた子供たちが過ごすグループホーム「ショート・ターム」。突然半裸で駆け出す子もいれば、刃物を与えると自らを傷つけてしまう子もいる。それでもケアマネージャーのグレイスは恋人のメイソンと共になんとか彼らの面倒を見続けていた。そんな明るく優しい彼女にも、実は長い間抱え続けている心の闇があった。
お話はこのグレイスを中心に、もうじき出所しなければいけないマーカス、入所してきたばかりのジェイデンのエピソードを絡めながら進んでいきます。

上の映画ポスター、なんで走ってるのかというと脱走を図る子供をグレイスたちがおっかけてるんですね。なんとも体力の入りそうな職場であります。それはともかく、心に火種を抱えている子供たちはろくに前も見ず衝動的に駈けだしているようなもの。もしかしたら壁に激突するかもしれないし、豪快に転んで怪我をするかもしれない。彼らを守るためにショートタームの大人たちも全力を尽くさねばならないわけです。冒頭で「地味」と述べましたが、子供たちの無邪気な笑顔に心和む一方、突然悲劇がおきやしないかと観ている間ずっと緊張感を強いられました。

「うまいな」と思ったのは冒頭で健康的な大人に見えたグレイスの内面がすこしずつ明らかになっていくところ。子供たちの前では大人としてふるまってはいますが、彼女もまた子供のころの傷をかかえたままなのです。
メイソンも登場時はうんこをもらした話をえんえんとしているので、のんきで軽い男かと思いきや、話がすすむにつれつらい過去があったり、意外とたよりがいがあったりとどんどん印象が変わっていきます。そんな風にエンターテイメントの型にはまったキャラクターとは違う、現実の人間の二面性や複雑さがよく描かれていました。

エンターテイメントといえば、その類の映画では「主人公の悩みやトラウマがすっきり解決されて終わり」ということが多いですけど、現実では心の傷というものは時に解決したかと思われても、折りに触れて何度もよみがえってくるものです。グレイスや子供たちも、ラストシーンのあともそういう終わりなき戦いをずっと続けていかねばならないわけで。それでも互いに寄り添うことで、あるいはちゃんとした大人に頼ることでなんとか乗り切っていってほしい。そんな風にちゃんとしてない大人のわたしは非力ながら思うのでした。

Sttm1『ショート・ターム』は一日一回になってしまいましたが、静岡県駿東郡清水町のシネプラザサントムーンで今週金までやってます。てっきりこちらではやらないと思っていたので、本当に助かりました。えらい! ジョイランド沼津が今月で閉館してしまう今、これまで以上にあなたたちの力が必要とされています!


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February 06, 2015

それが勝利のカギだ マー・ジーシアン 『KANO 1931海の向こうの甲子園』

Photo野球ブーム再燃というわけでもないのに、なぜかいま野球映画が三本同時に公開されています。そのうちの一本に心引かれるものがあったので先日張り切っていってきました。『KANO 1931海の向こうの甲子園』、ご紹介します。

1930年代台湾。嘉義農林高校野球部はあたりでは「誰も塁に出たことがない」と言われるほど超弱小なチームだった。だがかつて松山で名コーチとしてならした近藤が監督に就任すると、嘉義の子供たちはめきめきと実力をあげていく。ついには台湾代表として海の向こうの甲子園へと出場することになるのだが…

『海角七号』『セデック・バレ』と、ジャンルはたがえど日本×台湾をテーマにした作品を撮ってきたウェイ・ダーション氏。そのダーションさんが今度は製作に回り、若手のマー・ジーシアン氏を監督に起用。そのマーさん、『セデック・バレ』では主人公と張り合う首狩り族の長を演じていたというから驚きです。
さて、『セデック・バレ』では血みどろの戦いを繰り広げていた日本人と台湾人(特に高砂族)。しかし『KANO』では実にほほえましく共に力を合わせて甲子園を目指します。きっと時の流れが民族間の敵対感情を洗い流させたんだな…と思って観てましたが、あとで調べたらこの二本の映画の舞台とする年代は、せいぜい一年くらいしか違わないことが判明しました。まあ台湾にもいろんな地方がありいろんな人がいたということなんでしょうけど、これまたびっくらこかせられました。

わたしは妙にいばりくさってた自分の学校の野球部の連中が好きではありませんでした。しかし『キャプテン』や『おおきく振りかぶって』と同様、『KANO』の少年たちは少しも高慢なところがなく、どこまでも純真でほがらか。「こんな子達と野球がやってみたいな~」と思わせられます。
ちなみに嘉義の選手たちはプロの俳優ではなく素人の高校球児たちが演じております。たどたどしい日本語やぎこちない演技が純真さをひきたてていました。また不器用な子供たちが試合や練習のシーンで、泥まみれになりながら躍動するアクションがピチピチとしていて本当に美しいのです。そっちの趣味はもちろんありませんが、思わず目覚めそうになりました。

最初意地悪なことを言っていた記者(おそらく菊池寛)が、嘉義の少年たちのプレイを見ていて、やや不自然に(笑)「民族を超えて同じ目的のため共同し努力しているということが、何となく涙ぐましい感じを起こさせる…」とつぶやきます。映画作りもそういうことじゃないでしょうかね。台湾と日本は別にいま仲悪くないですけど、衝突しがちな周辺諸国とも共に映画を作ることによってわだかまりを溶かしていけるのでは…と脳天気な自分は考えるのでした。

以下、ネタバレで特に好きなシーンを二つ。

baseball

baseball

baseball

baseball

明日は決勝戦という日、近藤監督は寝静まった部員たちの部屋を訪れ、ボソッと「甲子園につれてきてくれてありがとう」と言います。直接言ってやれよ、とも思いますがこの不器用で朴訥なところが近藤さんのいいところでもあるんですよね。
もうひとつは最後の試合が終わった後。もうわたしなんかは涙と鼻水とよだれでぐちゃぐちゃだったんですけど、「いつ泣いていいんですか?」と尋ねる部員に近藤さんはさわやかな笑顔で「泣いてはいかん!happy01」とおっしゃいます。もうおせーよーと思いましたが、ここで涙を見せずににやっと微笑んで去るのが、やはり真の男というものでしょうw
20070905172124さきほど『キャプテン』の名をあげましたが、いろいろとかの名作を思い出させるシーンも多く、地味野球漫画ファンにはぜひとも見ていただきたい1作。『KANO 1931海の向こうの甲子園』は現在全国の映画館で細々と公開中です。

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