A都市まで行こう ジャン・リュック・ゴダール 『アルファヴィル』
年も明けて9日目なので、いい加減再開いたします。2015年最初の紹介記事は、なにを間違ったかヌーベルバーグの巨匠ゴダールの異色作。『アルファヴィル』、紹介いたします。
銀河の中心と称される巨大都市「アルファヴィル」に潜入したスパイ・レミー=コーション。彼の任務はかの都市に亡命してブレーンとなった「フォン・ブラウン博士」を探し出すことだった。偶然にも案内役として博士の娘ナターシャをあてがわれたレミーは、急速に彼女にひかれていく。
お話の中でははるか未来の宇宙都市となっているアルファヴィル。しかし実際に映し出されている風景は当時のヨーロッパ(おそらくフランス)のそれにほかなりません。その辺は予算が足りなかったというよりかは、ゴダールさんの実験の一環であるようです。
まあがんばって観れば一昔前の映像が、モードが一回りして昔のようになった未来の風景に見えてこないこともありません。だのにシンクロナイズドスイミングのど真ん中で処刑が行われているような、わけわかんない演出が頻発するので、そんな努力もたちまち木っ端ミジンコになってしまいました。
ただわたしもわけわかんない独特な映画は決して嫌いではないので、そういうもんだと割り切ってしまえばそれなりに楽しんで観る事が出来ました。
感情を表すことが禁止され、弱者は集団住宅に押し込まれ、異分子は容赦なく処刑されていくアルファヴィル。当時のロシア(ソ連)を初めとする共産主義社会を批判していたのかな…と考えるのはやや安直でしょうか。未来の都市を舞台に無感情だったヒロインが、主人公との出会いをきっかけに人間らしさを取り戻していく様子は『ブレードランナー』なども思い出させます。
気になったのはアルファヴィルの中枢となっている人物の名が「フォン・ブラウン」となっていることです。ご存知のようにフォン・ブラウンといえばナチス政権下で強力なミサイル兵器「V2ロケット」を開発し、戦後はアメリカに移住して月ロケット・アポロ11号の打ち上げに尽力した人物。あえて彼の名を持ってくるあたりに皮肉というか深い寓意が込められている気もしますが、むずかしいことはよくわかりません。
ちなみにゴダールさんの作品をスクリーンで観たのは今回が初めて。「SF」という情報を知らなかったらたぶん観にいかなかったと思います。そういえば若かりしころ「勉強しなきゃ」と『勝手にしやがれ』を録画したことがありましたが、何回かにわけて観ていたら途中でどのテープに録ったのかわからなくなってしまいました(笑)
そんなゴダールさんの新作は初の3D作品だそうです。予告観た限りでは3Dにする意味がまったくわからなかったんですが、実際に鑑賞したら巨匠の意図が理解できるのかもしれません。
『アルファヴィル』はやはりヌーベルバーグの巨匠フランソワ・トリュフォーの撮ったSF映画『華氏451』と共に、渋谷はイメージフォーラムにて来週16日まで上映中。「SFとついてたらなんだって観てやるぜ!」という方は是非。
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