ボーイズ&パンツァー デビッド・エアー 『フューリー』
すげえ。もう先週末観た映画の感想書いてる。こんなのいつ以来だろう…
それはさておき、ブラッド・ピット主演最新作、激烈戦車映画『フューリー』ご紹介します。
1945年、すでに枢軸国の敗北は確定していたが、あとのないドイツ軍は本国でなおも抵抗し続け、戦闘は熾烈を極めていた。ドンことウォーダディひきいる戦車「フューリー」号の小隊もその侵攻に参加していた。激戦で副操縦士を失った彼らに補充として配属されたのは、タイプ係として入隊したまだあどけない若者だった…
思うんですが、たとえ戦争といえど、軍人さんといえど、よっぽど変わった人でもない限り同じ人間をバンバン殺していくというのは相当こたえると思うんです。まさに隊の新人である「マシン」君が追い詰められて「もういやだー!」と叫びだしたように。
そういう中にあって人はどうやって精神のバランスを保つのか。『フューリー』はそんな戦場における「正気の保ち方」を教えてくれる映画です。
まず自分たちが正義の側で、敵はとことん悪いやつらだと思い込むこと。この点ナチスドイツは民族浄化とか残忍な思想統制など行っていたので悪役としては申し分ありません。
人殺しは辛いけれども、世界に平和をもたらすためには仕方がないのだ… そんな風に思い込めばためらいなく銃の引き金も引けるようになるのかもしれません。
もうひとつは「仲間のために戦う」こと。極限状況において助けあっていくと、いがみあっていた者同士にすら不思議な連帯感が生まれます。「こいつらと一緒なら共に死んでもいい」と思えるほどに。ですからもし徴兵されて戦場に行かねばならなくなったら、気のいい仲間を見つけて、絆を深め合っていくことがまず大事かと思われます。
最初は「ダメよダメダメ」の一点張りだったマシン君も、ナチスの蛮行を目撃し、ブラピたちに褒められるにしたがってだんだん草食系の文学オタクから、熱血バリバリの殺人機械へと変貌を遂げます。
しかし本当に彼らは正しいのかな? それで死んでもいいのかな? という疑問をこの映画は投げかけます。さんざんアドレナリンを沸かせまくったあとに。なんて皮肉っぽい映画なのでしょう。しかしそれが作品に深みや現実味を与えているのも事実です。
とまあ重厚なテーマが胸に染み入る一方で、本物を使用したという戦車戦のシーンにはやっぱりチンコのついてる者としては興奮してしまうわけです。そもそも、これほど「戦車」というものにスポットがあてられた映画は最近では『レバノン』くらいではないでしょうか。
その『レバノン』でも単に迷走したり暴走したりとあまりいいところの無い「戦車」でしたが、『フューリー』では「戦車を戦場でどのように運用するか」がわかりやすく描かれていました。特に中盤における「戦車対戦車」のバトルは、今までに見たことのなかった戦闘シーンでございました。ロボット好きとしてはロボットがガッツンガッツンバトルしているようで、手に汗握って見守っておりました。まあ戦争はよくないと思いますがね(説得力なし)。
出演陣はまず製作総指揮もかねてるブラピ様。イケメン俳優からすっかりごっつい系のおっさんになった感があります。今年公開の映画で彼が製作に関わっているものというと他に『キックアス/ジャスティス・フォーエバー』と『それでも夜は明ける』がありました。題材・ジャンル共にてんでバラバラのような気もしますが、彼は「人を残酷さへと駆り立てるもの」に興味があるのかもしれません。
そんなブラピを脇で支えるのがシャイア・ラブーフ。『トランスフォーマー』でのヘナチョコ役とはうってかわって、こちらでは聖書を愛する涼やかな役で新境地を見せています。
また、もうひとりの主人公とも言える「マシン」君を演じるローガン・ラーマン君は『ノア』に引き続き、悩める苦労人のイメージがだいぶ定着してきました。他に粗暴な刈り上げ君(『ウォーキング・デッド』に出てたらしい)や、メキシコ系のバイプレイヤーとしてはおなじみのマイケル・ぺーニャらが好演しておりました。この男臭え~面々が吼えているのを観ているだけでも見ごたえがありました。
『フューリー』は初登場では見事2位を飾りましたが、来週からはもう一日一回の上映のところが多いようです。気になっている方はお早めに。
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Comments
こんばんは
>ですからもし徴兵されて戦場に行かねばならなくなったら、気のいい仲間を見つけて、絆を深め合っていくことがまず大事かと思われます。
これで徴兵された時も安心ですね!
でも戦車って地上最強の兵器でほとんど負け無しって思っていましたけれど、パンツァーファウストとかでやられちゃうと、蒸し焼けになっちゃうんですね・・・それは嫌だなあ、やっぱロボットアニメは苦手です(強引な結論
Posted by: ゴーダイ | December 17, 2014 10:49 PM
>ゴーダイさん
>これで徴兵された時も安心ですね!
ただ意地悪な鬼軍曹などに目をつけられると戦闘以前にノイローゼになってしまう恐れも…
ツイッターでも話しましたが、戦車で蒸し焼きにされるか、潜水艦で水圧に押しつぶされるか、究極の選択ですね。そうすっと一瞬で死ねそうな飛行機のりが一番か?
Posted by: SGA屋伍一 | December 18, 2014 10:40 PM
伍一くん☆
メリークリスマス!素敵な聖夜を過ごしているかな?
我が家は昨日お家クリスマス☆ねえねが持ってきたDVD「野火」を見ました。
骨付きローストチキン食べたのに!!
フューリーも過酷な戦争を描いて見事でしたね。
白熱の戦車バトルをみせておいて静かに反戦を唱えるのところも。
私はこの戦車の実物をどうやら生で見ていたらしいわ。
ボービントン戦車博物館。迫力ありました。
Posted by: ノルウェーまだ~む | December 24, 2014 10:47 AM
>ノルウェーまだ~むさん
こんばんは! 今日は普通にイカ焼きと熱燗でいっぱいやってましたw
昨日はスカイツリーのふもとでザクケーキとターキーをいただいてましたが…
『野火』は今度とらねこどんが配給する映画と同じ原作かな?
反戦テーマにうなずきつつ、どうしても戦車のごつさに興奮してしまう自分
そういえば生で戦車って見たことないな… しかるべき博物館に行けば見られるのかな? 今度探してみよう~
Posted by: SGA屋伍一 | December 24, 2014 11:16 PM
お正月に新宿ピカデリーで鑑賞しました。
これにするかインターステラーにするか悩んだのですが
やはり最後はブラピに一票!ということで。
戦争ものは好きなんですよ。殺し合い。
この作品は「戦車」が影の主役ともいえるので興味深かったです。
潜水艦が主役の戦争映画も好き…閉塞感が好きなのかな?
戦争の時のテンションの維持・・・そうですねぇ,私ならやっぱり
「殺らなきゃ殺られる!」という切羽詰まった動機かなぁ・・・・
私の祖父は軍人で大尉までやってたそうですが,戦後は牧師になりました。
大尉のときから信者で,戦地でも日曜礼拝は守っていたそうです。
信仰と殺し合いの折り合いのつけ方は,どうだったのかなぁと
この作品の「バイブル」のキャラを観ながら,今は亡き祖父に聞いてみたくなりました。
Posted by: なな | February 09, 2015 05:19 PM
>ななさん
おお、新ピカで観られましたか。わたしもあそこで観るのは年に1回くらいですが、都会の映画館って感じですよね
戦車物が好きとは意外な一面ですね。自分も同様潜水艦映画も好きですが、どうしても乗らねばならないとなったら潜水艦より戦車かな。潜水艦の戦闘は本当に極限状態という気がするので…
ななさんのおじいさんは将校さんでしたか。大戦時クリスチャンであるのはいろいろ折り合いをつけないと大変だったんじゃないかなあ…(あの時代はまず天皇陛下が神様でしたからね)
それこそ小説の題材になりそうなお話が聞けたかもしれませんね
Posted by: SGA屋伍一 | February 10, 2015 09:11 PM