馬+鹿≒人 ベネディクト・エルリングソン 『馬々と人間たち』
2014年午年もいよいよあとわずか。お馬さんをテーマにした、ヘンテコな珍しい国の映画がやってるという話を聞いて渋谷はイメージフォーラムまで行ってきました。『馬々と人間たち』、ご紹介します。
極北の地、アイスランド。そこでは多くの馬たちと、馬を生活の糧としている人々が日々の営みを続けていた。時に愚かしく、時におおらかに…
…あ、あらすじ終わっちゃった。そんな風に大きな起承転結があるわけでもない、やや淡々とした映画(時折ショッキングなシーンもありますが)。主人子らしき主人公もおらず、あるエピソードで中心だった人物が、別のエピソードではチョイ役で出てたりします。構成だけなら『シン・シティ』とちょっと似てるかもしれません。
映し出されるアイスランドの雄大な風景には心いやされますが、馬々と人間たちはひょんなことから生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされたりするので、観ている側もなかなか油断できません。
たとえば冒頭では一人の男がかわいがっていた牝馬を、どこぞの牡馬に犯された途端射殺してしまったりします。名馬というのは血統の違いで値段にだいぶ差が着くそうなのでそういう事情もあるのかもしれませんが、それにしても殺すことはねーだろと。
わたしはもしかしたらこの男は牝馬を自分の妻のように愛していて、目の前で不貞を働かれたことに逆上してしまったのかなあ…とぼんやり考えてました。
こんなわかりづらいエピソードがあるかと思えば、普通にわかりやすいエピソードもあったり。まるで慣れてくれそうで慣れてくれない、扱いづらいお馬さんのような映画でした。
ただお馬さんというのは見ているだけでもけっこう気持ちいいというか、心安らぐものがあります。それだけに殺されたり傷ついたりする姿には心痛みました。そして定番の「この映画において動物は一切傷つけられていません」のテロップがあって本当にほっとしました。
ともあれ作品はお馬さんを通して、人間のそういった身勝手さや思慮の浅さなども描き出しております。
あともうひとつ印象的だったのは、何度かにわたって馬の一部をどどーんとクローズアップしたカットがあったこと。これもなにかそれなりに意味が込められてるのかな…と考えてみましたがよくわかりませんでした。感性の鋭い方、その辺に関するご意見をお待ちしてます。
『馬々と人間たち』はいまだにイメージフォーラムと福岡KBCシネマでしか上映館が決まってないようで… しかもイメージフォーラムの方は今週金曜で終了だそうです。けっこう人を選ぶ映画では…と思いましたが、同行してくれた友人はどこぞのおばさまと「面白かったですね!」と盛り上がっていました。不思議なことであります。
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