その柔らかさ、無限大 ドン・ホール クリス・ウィリアムズ 『ベイマックス』
ついさっき気づいたんですがね… 20日でブログ開始から丸10年経ってました… あはは… こんなくだらないブログをもう十年ねえ。まことに年月は矢のように過ぎていきます。
それとはあんまり関係ありませんが、本日はディズニーアニメーションスタジオがはじめてマーベルユニバースにがっつり挑んだ『ベイマックス』、紹介いたします。
サンフランソウキョウに住むヒロとタダシの兄弟は、まだ学生でありながら、工学に対し類まれな才能を持っていた。タダシは無鉄砲なヒロをいつも気にかけ、その才能を自分が通う大学で生かすよう励ます。そこで尊敬している学者に出会ったヒロは発奮し、見事に発明「マイクロボット」で入学の権利を得る。喜びもつかの間、突然起きた事故によりタダシは帰らぬ人になる。深く悲しむヒロの前に現われたのは、タダシが懸命に開発していたフワフワの介護用ロボット「ベイマックス」だった。
この作品、原題を『BG HERO6』と言います。原作はちょっと前に発行されていた同名のコミック。X-MENにも誘われていた「サンファイア」というミュータントが、日本政府の要請を受けて結成したヒーローチームの話でした。その中にヒロとベイマックスもおりましたが、おそらくチームの中心いうよりマスコット的な存在だったと思われます。そしてベイマックスは映画版とは似ても似つかぬ怪獣型のロボットでした。
その後サンファイアの脱退と共に、BIG HERO6はよりポップなジャパニメーション風のチームへとイメージチェンジします。しかし人気は得られず廃刊。忘れられていたところへディズニーさんがアニメにちょうどいい原作を…と発掘したのでした。
というわけで、キャラの名前と「日本っぽい」という以外はほとんど別物。ディズニーの「俺色に染めてやるぜ~~~」感が強烈であまり企画に好感がもてなかったのですが、いざ観てみるともう原作との違いとかどうでもよくなりました(笑) もうね~ とにかくフワフワのベイマックスが良い。良すぎる。
実は観終わった直後は「うん。なかなかよかった」くらいのテンションだったのですが、ベイマックスのあんなモコモコシーンやこんなポワポワシーンを思い出すにつけ「あ~ も~ ベイマックスたまらん!!」状態でありました。
そもそもロボットというものは硬いものと相場が決まっております。「やわらかいロボット」というのはすごい発想の転換ではないでしょうか。
あと、少年とパートナーを組むロボットというのは、大体「こんな家族がいたら」という願いを反映しているように思われます。鉄人28号は強くたくましい父親を、ドラえもんは頼りになるけどちょっと抜けてるお兄さんを、アイアン・ジャイアントは一緒に遊んでくれる素直な弟を、エヴァンゲリオンはわが子を必死に守ろうとする鬼子母神のような母親を、それぞれ表していると思っています。
で、ベイマックスはエヴァとはだいぶ違いますが、思春期の息子を優しく見守る母親のような存在だと思っています。息子のヤンチャは広いふところで大抵は受け止めますが、本当に非行に走りそうな時は頑としてそれを押しとどめます。また、どんくさいようで意外にしっかりしていて、子供がピンチの時には一生懸命守ろうとします。深く傷ついていたヒロが、次第にゆるゆるなベイマックスのペース合わされて朗らかになっていく様子は心温まるものがありました。そしてベイマックスの無限の優しさと強さに、ただハラハラと涙したのでありました。
ただ悲しいことに、アニメにおける少年とロボットのコンビというのは、「悲しい別れ」が待っている場合が多いんですよね… 果たして『ベイマックス』ではどうだったかというと… な・い・しょ♪
『ベイマックス』の魅力はこれだけにとどまりません。東京とサンフランシスコをミックスさせた「サンフランソウキョウ」のアナーキーな風景とか。わたしは『鉄コン筋クリート』「宝町」を思い出しました。
ヒロとベイマックスを支える「BIG HERO6」のメンバーもいちいち面白い。ゴス風のヒロイン「ゴーゴー」(スピード担当)、プリキュアのような不思議ちゃん「ハニーレモン」(化学攻撃担当)、堅物でやや小心な「ワサビ」(剣術担当)、コメディリリーフのフレッド(こいつだけ実名)… キャラ、風景、アクション、ギャグ、本当に次から次へとこれだけ面白いことを思いつく才能に脱帽です。この輝きはまさしく初期のピクサー作品にあったものです。
これを機にまたディズニー風のヒーローアニメが作られていくとしたら、なかなかワクワクいたします。『パワーパック』なんか「子供が主人公」「忘れられてる」という点でちょうどいい題材かと。
『ベイマックス』の第二弾もぜひ観たいです。五つのメカが合体して巨大ロボット「ベイマックスマックス」になる展開などいいんじゃないでしょうか。
『妖怪ウォッチ』の影に隠れがちではありますが、『ベイマックス』も現在かなりのヒットを記録しております。今年の冬の一押しはコレでやんすよ!
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2014年
アメリカ
102分
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監督:
ドン・ホール
クリス・ウィリアムズ
製作総指揮:
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声の出演:
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Tracked on September 04, 2015 08:10 PM
Comments
トラコメどうもでした。
う~ん、初期のピクサーかなあ・・・?w
どこかのブログがうまいこと言ってて、この映画はジョン・ラセター監督が初めて試みる「部活もの」だと。
だから、敵を倒してめでたし、はい解散。で終わらない。
敵との戦いを求めて常にヒーローであり続けなければならない・・・そう言った意味で「正義の味方」というものに幼い頃から懐疑的だった私には生理的に厳しいものがありました。
部活感覚でこういう暴力を私的に執行していいのかっていう。
実際にいるじゃないですか、思想信条がどうこうじゃなくて、常に叩く相手を虎視眈々と狙っているような人が(^_^;)
憎んでいた相手への「許し」が中核的なテーマにしたいならもっと演出できるところはあったと思うんですけど、きっとあのラストから逆算しているからああなったったんでしょうね。
このモヤモヤは、何かに似てるなって思ったんですけど、あれだw
『ヒックとドラゴン』だw
許すなら許せ、叩くなら叩いて欲しいですwお前の立場はどっちやねんって(^_^;)(C)キルケゴール
Posted by: ゴーダイ | January 13, 2015 11:12 PM
伍一くん☆
うっかり見落としていたわ~
ブログ10周年おめでとう!!
いつも見事な文章で楽しませてもらってマス
ベイマックス全く同感!
私も観終わってすぐは、なーんだヒーローものだったわ・・・という気持ちの方がやや勝っていたけど、あとからどんどんベイマックスのふわふわが膨らんでいって、頭と心をいっぱいにしちゃってるかんじデス
へー?廃刊になったコミックのキャラだったのね。
クローズアップされて良かったね~
Posted by: ノルウェーまだ~む | January 14, 2015 12:08 AM
>ゴーダイさん
ご来訪ありがとうございます~
あ、その記事はわたしも読みました。う~ん、わたしは彼らがそんなに暴力的には見えなかったんですよね。もっぱら戦ってたのは例のマイクロボットだったし、直接ぶんなぐる描写もなかったと思うし。6対1で戦ってる時点でいじめに見えてしまう、というのはあるかと思いますが
ただ事件は解決したわけだし悪者も逮捕されたんだから、あのあともヒーロー活動を続ける意味はまったくないですよね。その辺はちょっと強引だと思いましたw
Posted by: SGA屋伍一 | January 14, 2015 10:21 PM
>ノルウェーまだ~むさん
ご来訪ありがとうございます~
そしてお祝いの言葉もありがとうございます(^_^; 本当にいつまで続けられるんだろう、これ…
わたしベイマックスって手塚治虫の『火の鳥』に出てきた「ロビタ」に似てると思うんですよね。ご存知でしょうか
ちなみに監督が「これをやってもいいかな?」とマーベルの担当者に相談したとき、彼らは完全に「BIG HERO 6」の存在を忘れていたそうです。ひどい話ですねw しかし今回の映画化で見事な一発逆転を果たしたといえるでしょう
Posted by: SGA屋伍一 | January 14, 2015 10:26 PM
母親というより、逆らえないんだけど、向こうも愛情持って接してくれる親戚のおばさんくらいかな。母親ほどベッタリな愛情を感じなかった。だから、キャスおばさんと同列……キャスおばさんはお母さんでよかったんじゃないかな(元はそういう設定だったらしいし)。
Posted by: ふじき78 | January 29, 2015 08:23 AM
>ふじき78さん
なるほど。一理ありますが親戚のおばさんはあそこまで親身になって気にかけてはくれないと思います… ってキャスおばさんがそうだけど。「親代わりのおばさん」というのはマーベルの大先輩?メイおばさんを意識したのかもですね
Posted by: SGA屋伍一 | January 30, 2015 10:13 PM