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December 25, 2014

スタンド・バイ・ミギー 岩明均 山崎貴 『寄生獣』(映画版)

Img00869今年も残り一週間! できるだけ連日更新してがんばっていきたいと思います。今日ご紹介するのは20年前カルト的に人気を博した伝説的コミックの映画化作品。『寄生獣』、ご紹介します。

それは、いつどこで生まれたのか誰も知らない。突如として発生した謎の寄生生物たち。彼らは人間の脳をのっとると、社会にまぎれながら人々をひそかに「捕食」しはじめた。偶然が幸いして「乗っ取り」を免れた高校生・泉新一は、しかし右腕をその寄生生物に同化されてしまう。当惑しながらも共同生活を始める新一と寄生生物「ミギー」。その奇妙なコンビは他の寄生生物から好奇と敵意をもって迎えられる。

思い起こせば大学の卒業旅行で泊まったカプセルホテルで、この漫画の最終回の載ったアフターヌーンを読んだのでした。いきなり最終回から読んだにも関わらずそのべらぼうな面白さに心奪われ、あっというまに全10巻をそろえてしまったものでした。わたしもそれなりに漫画をたくさん読んでますけど、あんなにも夢中になって読んだことはごくわずかです。原作『寄生獣』はそれほどに思い入れのある作品なのです。
この漫画の魅力をあげていくなら、まず奇抜なアイデア。先を予想させない緊迫したストーリー。緻密で親しみやすい心理描写。そして深読みしようと思えばいくらでも深読みできるテーマ… 多少絵柄が独特ではありますが、そんなものを気にさせないパワーに満ち溢れています。

で、この度の映画化。わたくしマンガ原作であっても、映画は映画、マンガはマンガとなるべく割り切って考えたいと常々思っております。しかしこの作品ばっかりは思い入れの深さのせいでなかなかそれが難しゅうございました。鑑賞後5日経った今、ようやく冷静に振り返られる気がします。
結論からいうと、目も当てられないような映画化作品も多い中、かなり出来のいい方だと思います。約4巻分のストーリーを二時間内で上手に取捨選択し、原作にかなり忠実に映像化してありました。
子犬のシーン、主人公の家庭環境、「母親」との決着などは「なぜ原作どおりにしないのだー」と思いましたが、そういう風にすることで新一君がよりクールで、より追い詰められるという効果がありました。そのあたりにどういう狙いがあるのか… 後編でうまく結実することを期待しています。
その新一君を演じるのは邦画界切っての演技派若手俳優・染谷将介君。やっぱり原作のイメージとはちょっと違うんですけど、ミギーと何気なく戯れる場面や、辛すぎる「敵」と対峙して苦悶する様子は彼だからこそ自然に、かつ真に迫って見えました。キャスティングに拍手です。あと朝ドラや『桐島、部活やめるってよ』でさわやかな笑顔を振りまいていた東出昌大君がかなり不気味な役を熱演してたのもインパクトありました。

また、いつもは「泣かせ」のくどさが際立つ山崎監督がかなりその辺の演出をセーブしていたのも驚きました。やればできんじゃん(笑) そもそも『寄生獣』前半というのはいかにして新一君が「泣けなくなる」か、という話でもありますからねい。きれいな青空がほとんど見られず、終始薄暗い雲がかった背景だったのも山崎作品にしては異色でありました。

それでもなお不満店をあげるとするなら、新一君がミギーにややツンケン気味だったとこかな… 二時間という枠では限界があったのかもしれませんが、二人?が打ち解けあっていく様子をもっとじっくり見たかったです。わたし本当にミギーが好きなんで、彼が冷たくされるのを見ているのは辛いのです。「ミギーはあんな萌えキャラじゃない」という感想をどこかで見かけましたが、人はミギーに萌えずしていったい何に萌えるのでしょう。

Ksj2というわけで現在『寄生獣』は大ヒット公開中ですが、『永遠の0』『STAND BY ME ドラえもん』に比べるとややおとなしめといった感じです。やっぱり涙よりも血がよく吹き出るような映画だからでしょうか。
完結編となる第二部は来年春公開予定です。


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Comments

伍一くん☆
ミギーほんとに、萌えるよねぇ。
ずっと大事に持ってたのに読んでなかったねえねと、映画鑑賞後、一気に全巻読みました。
今アニメも見ているけど、原作も映画もサイコー!アニメはちと違うかなってかんじです。

Posted by: ノルウェーまだ~む | December 27, 2014 06:28 PM

>ノルウェーまだ~むさん

ども。わたしのミギーのイメージボイスはワンピースなどの田中真弓さんだったので、「阿部サダヲか…」と最初聞いたときは不安でしたが、いや、なかなかサダヲさんよかったです。そしてねえねちゃんは大喜びだったでしょうW

Posted by: SGA屋伍一 | December 29, 2014 05:52 PM

原作と映画の関係についての煩悶はほぼ一緒ですね。よく出来てるんだけど、そこそういう風にしないでほしいな、みたいな雑さに困惑。

それはそれとして橋本愛の胸をあんな風にしたいなあ。

Posted by: ふじき78 | January 02, 2015 09:03 PM

>ふじき78さん

監督は「二部作が最低条件」というのがんばって押し通したようですけど、それでもはしょるところははしょらなきゃいけなかったようで… これが映画の限界ですかね
ぼくらが橋本愛の胸をあんなにしたらたぶん捕まりますよね。いいなあ、高校生は

Posted by: SGA屋伍一 | January 02, 2015 10:36 PM

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