« 超人ロック冒険記 ブレット・ラトナー 『ヘラクレス』 | Main | 涙くん、アニョハセヨ イ・ジョンボム 『泣く男』 »

November 23, 2014

トランシルバニア・ファミリー ゲイリー・ショア 『ドラキュラZERO』

Dc01春ごろに『アナ雪』『マレフィセント』と「悪い魔女も本当はいい人だったのよ!」的な映画が2本続けてヒットしましたが、その流れがモンスター映画にまで飛び火した模様です。誰でも知ってる妖怪キャラクターを、レジェンダリー・ピクチャーズが新解釈でリメイク。『ドラキュラZERO』ご紹介します。

15世紀ヨーロッパ。トランシルバニアのワラキア大公ヴラド・ツェぺシュはその武勇と敵を串刺しにするという行為で近隣から恐れられていたが、そんな彼も妻子の前では家族を愛する優しい父親の一人に過ぎなかった。ある時ヴラドに難題が降りかかる。ワラキアよりはるかに強大なオスマン・トルコ帝国の皇帝が、ヴラドの息子含む1000人の少年を兵士にするために差し出せと要求してきたのだ。国の平和と息子のどちらを取るか、ヴラドは悩む。意を決してトルコと戦うことにした彼は、強大な力を与えてくれるという怪物の住む山に足を踏み入れる。

ドラキュラといえばフォーマルないでたちの「伯爵」というキャラで一般に知られていると思います。しかしモデルは実在した「大公」でありました。ヴラド大公の蛮行が小説家に「血を病的に好む貴族」というイメージを与えたのでしょうね。『ドラキュラZERO』は「もしヴラドが本物の元祖ドラキュラだったら」という発想のもと作られています。
冒頭でも述べたように、今回の映画は宣伝でも「ドラキュラは本当は英雄だった」みたいなコピーで売り出されています。けれどもヴラド大公といえば敵を片っ端から串特急にして喜んでいたという残酷きわまりない男。そんな人をどうやって「ヒーロー」として描くのか。奥さんや子供はドンびかないのか。もしかしたら元々は普通の人間だったのだけど、人外の力を手に入れてしまったために暴走してしまった…という風に持っていくのか… などと色々考えてました。結論から言うと「支配者であるトルコの命令で仕方なくやっていた」ということになっていました。でもやっぱりそんな人を「ヒーロー」「家庭人」として描くのは矛盾がありまくりですよね(^_^;  なんてひっかかりを感じながらも、コスプレ俳優ルーク・エヴァンスの熱演を見ていると「うん、そんなもんかな」と思えて来るからわたしも大概いい加減です。

それはともかくこの映画で特に関心したのは、ドラキュラの能力や弱点の描写でした。ドラキュラのモチーフといえば蝙蝠ですが、蝙蝠は暗い中でも超音波を飛ばし、その反響でもって物体の位置を知ることで有名です。この「音波でものを見る」という感覚を映像で表現して見せてくれたのは高ポイントでした。あと完全に魔法の領域ですけど体を無数の蝙蝠に分裂させて、変幻自在の攻撃を見せるあたりは見ていて楽しかったです。これまたCGの進歩によって可能になった映像ですね。

この二日前に、ちょうど『ヘラクレス』を観たのですが、同じいにしえの英雄物語でありながら、いろいろ対照的なところもあったのが面白かったです。箇条書きにしてみますと

☆『ヘラクレス』
・一応能力は人間レベル
・信頼できる仲間がいる
・物語の初めで愛する家族を失っている
・実力はあるが派遣社員ゆえ肩身が狭いような立場
・全体的にスカッとする話

☆『ドラキュラZERO』
・はんぱない超能力者
・あまり頼りに出来る部下がいない(というかすぐ死んじゃう)
・物語の初めの時点で愛する家族に囲まれている
・取引先の大企業に常に気を使わねばならない中小企業の社長のような立場
・全体的にくら~い話

このアメコミ映画のようなプロットでありながら、ひたすら悲しいお話というのも『ドラキュラZERO』の特色です。自分は暗い人間なのでこのぺシミスティックなムードもなんか心地よかったのですが。

さて、ユニーバーサル・ピクチャーズ&レジェンダリー・ピクチャーズはれを皮切りに『狼男』『ミイラ男』『フランケンシュタイン』『半漁人』などを次々とリメイクし、最終的にこれら全てのモンスターが大集合する『アベンジャーズ』的な映画を作りたい…と聞いたのですが、『ドラキュラZERO』はいまんとこ「一応黒字」という程度のヒットなので、果たして続行されるかどうか。
余談ですがレジェンダリーのプロデューサー、トーマス・タル氏は先日インタビューで「我々は客が観たいというより、自分たちが観たいと思う映画を作っている」と宣言しておられました。その志は涙が出るほどうれしいけど、そういうことはスポンサー様にわからないようにこっそり言わないと(^_^;
Dc02ともあれ、そんなオタクたちの輝ける星であるレジェンダリーピクチャーズに引き続きついていく所存でございます。
『ドラキュラZERO』はたぶんあと上映1,2週くらいでしょうか。そしてやはりレジェンダリー製作である『インターステラー』が昨日より公開中です。


|

« 超人ロック冒険記 ブレット・ラトナー 『ヘラクレス』 | Main | 涙くん、アニョハセヨ イ・ジョンボム 『泣く男』 »

Comments

SGAさんこんばんわ♪

血を啜るだとか串刺しにしたりだとか残酷な面が一人歩きをしてるようにも思えるドラキュラ像だけに、民に慕われ、妻と子を一心に愛する偉人のような描かれ方は個人的に面白かった気がしますね。ルーク・エヴァンスもやっぱりカッコ良かったですし・・^^


でもモンスター版アベンジャーズと言うのもなかなか楽しそうではありますが、やっぱり結果(興行収入)も伴わないと実現は難しそうですし、本作も大ヒットっていう感じには見えなかったので早くも先行き不安な感じもしますねぇ・・。
そいえばヒュー・ジャックマン主演の『ヴァン・ヘルシング』はドラキュラもいればフランケンや狼男もいたりで、むしろそっちの方がアベンジャーズっぽいような気もしますw

Posted by: メビウス | November 25, 2014 at 08:21 PM

>メビウスさん

まあ織田信長や秦の始皇帝もけっこうひどいことやってますが、英雄として扱われることも多いですからね。本当はどういう人だったのか天というのがわからないのが歴史の面白いところかもしれません。

モンスターズ版アベンジャーズは作るとしたらどれも「かわいそうな話」になってしまいそうなのが問題ですね(^_^; わたしのフォロワーさんには「怪物くん?」と言ってる人もいましたw

Posted by: SGA屋伍一 | November 26, 2014 at 11:07 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/70832/60687673

Listed below are links to weblogs that reference トランシルバニア・ファミリー ゲイリー・ショア 『ドラキュラZERO』:

» ドラキュラZERO/アッサリ味の元祖ヴァンパイア [MOVIE BOYS]
最近アメコミとかで良くあるビギニング=ZEROシリーズがついにドラキュラにも登場だ。主演でトランシルバニア君主ヴラド・ドラキュラを演じるのは『ワイルド・スピード EURO MISSION』のルーク・エヴァンス。その妻を『複製された男』のサラ・ガドン、オスマン帝国の皇帝を『テビルズ・ダブル』のドミニク・クーパーが演じている。ドラキュラがドラキュラになった理由は一体…? ... [Read More]

Tracked on November 23, 2014 at 09:51 PM

» ドラキュラZERO [シネマをぶった斬りっ!!]
【監督】ゲイリー・ショア 【出演】ルーク・エヴァンス/サラ・ガドン/ドミニク・クーパー 【公開日】2014年 10月31日 【製作】アメリカ 【ストーリー】 強く優しく民衆から慕われる理想の君主・ヴラド・ドラキュラは、最愛の妻とひとり息子と共に幸せに暮らしていた。だがヨーロッパ侵略を狙う大国オスマン帝国の皇帝メフメト2世に、ヴラドの息子を含む1000人の少年達を兵士とし...... [Read More]

Tracked on November 25, 2014 at 08:21 PM

» ドラキュラZERO [銀幕大帝α]
DRACULA UNTOLD 2014年 アメリカ 92分 アクション/ファンタジー/ホラー 劇場公開(2014/10/31) 監督: ゲイリー・ショア 出演: ルーク・エヴァンス:ヴラド・ドラキュラ ドミニク・クーパー:オスマン帝国皇帝メフメト2世 サラ・ガドン:ミレナ <ストー...... [Read More]

Tracked on April 26, 2015 at 04:40 AM

« 超人ロック冒険記 ブレット・ラトナー 『ヘラクレス』 | Main | 涙くん、アニョハセヨ イ・ジョンボム 『泣く男』 »