恋活ライオン丸 クリストフ・ガンズ 『美女と野獣』
♪やさしさが~ ひらいてく~ あいのとびら~ ディズニーのアニメで有名なあの童話を、フランスの鬼才クリストフ・ガンズが実写映画化。本日は現在公開中の『美女と野獣』をご紹介します。
一昔前のフランス。とあるところに裕福な商人がいたが、嵐で持ち船をすべて失い、転落。6人の子供たちと共に田舎へ移り住むことを余儀なくされる。ある日所要で出かけた商人は、吹雪に襲われたまたま通りがかった城に避難する。優しい末娘のために…と城のバラを摘んだ商人の前に恐ろしい獣人が現われた。怪物は商人の盗みを許す代わりに、彼の命より大事な末娘を引き渡すように迫る。
わたくし実はディズニー版はTVで途中から一度観たきりで、ほとんど思い入れはありません。なのにどうしてこの映画を観たかったというと、あのカルト伝奇の名作『ジェボーダンの獣』と共通するところが多かったので。監督はクリストフ・ガンズ、メイン俳優にヴァンサン・カッセル、そしてメインの題材は「獣」…と来たらこれはもう『ジェボーダン~』の再現に違いない!と思い込んで映画館に行ったのですが… 結論からいえばかなりムードの違う話でした(^_^; ワイルド&バイオレンスに溢れていたかの作品に対して、こちらはファンタジックでメロメロなテイスト。まあ自由に想像を膨らませて作った『ジェボーダン~』とカチコチの原作がある『美女と野獣』では、やはり同じ監督といえども作り方はかなり異ならざるをえないでしょう。わたしの期待どころが間違っていたのです。
そんな風に多少あてが外れたところはありましたが、見所はそれなりにありました。美しいのだけれど薄暗くて、微妙におどろおどろしい森や城の風景とか。あと野獣がなぜ野獣になってしまったのか、ヒロインがすこしずつ知っていくミステリー的な展開も観ていて飽きませんでした。
先のジェボーダンの記事でも書きましたが、ガンズ監督はけっこう日本びいきらしくて、「今度は松本零士の漫画を映画化したい」とおっしゃってるそうです。今回の『美女と野獣』では特に必然性もなく土くれで出来た巨人たちが出てきましたが、あれは特撮映画の名作『大魔神』をイメージしてるんだそうです。あと商人が勝手に城のご馳走を行儀悪くむさぼり食うあたりとか、それが娘に苦労をかける流れなどは『千と千尋の神隠し』と似てるなあ、と思いました。
ちなみにこの実写版、ディズニー版とはいろんなところが違ってます。カップやお皿は踊りませんし、野獣も牛っぽい怪物から怪傑ライオン丸風になっています。
ヒロインが野獣を好きになるくだりもだいぶ異なる…というか、「なぜベルが野獣を好きになるのかよくわからない」という意見をよく目にしました。わたし思うにこのベルちゃんという子は「かわいそうな人」に弱いタイプなんじゃないでしょうかね。おちぶれたお父さんのことを何よりも気にかけてるあたりからもそれがうかがえます。
財産や名誉への欲望をしつこいくらい否定していた教訓性も、ディズニー版にはあまりなかったように思います。そんな作りとは裏腹に日本では「あのディズニーの!!」というコピーと共に売り出されている本作品(^_^; その思惑が当たったのか、フランス映画にしては初登場第二位という大健闘。うーん… まあいっか!
次回はやはりディズニーがアニメ化したことのある『ヘラクレス』をご紹介します。これも急がないと今週末までか?
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