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November 30, 2014

オールタイム・アニメ映画ベスト10

毎年年末にはてなブロガーのワッシュさんという方が開催されているオールタイム・ジャンル別映画ベスト10。いつも忘れっぽい性格のため投票しそびれてたのですが、今回は「アニメ映画ベスト」ということなので何が何でも参加させて頂きたい!と思います。それでは張り切って参ります。


Photo☆1位 『アイアン・ジャイアント』(1999年アメリカ ブラッド・バード監督)

アニメ映画というだけでなく、全ての映画ひっくるめてわが生涯最高の一本のひとつ。
思えばそれまでわりとどんな映画観ても「フッ」とクールに決めていたのに、轟々涙もろくなってしまったのはこの映画がきっかけのような気がする。本当にワンシーンたりとて無駄のない奇跡のような作品。
バード監督は来年の『トゥモローランド』も期待してるけどまたアニメに戻ってきて!


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☆2位 『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇』(2008年日本 今石洋之監督)

「無理を通して道理を道理を蹴っ飛ばす! それが俺たち、グレン団!」
「紅蓮編」「螺巌編」とありますがあえて「紅蓮編」のほうで。

グレンラガンはTVアニメのころから普通に好きだったんですけど、劇場で観たら知ってる話だったのにズキュウウウンと感じるものがありまして。
おそらく『グレンラガン』という作品は大スクリーンに映されて初めて真価を発揮する作品だったのだと思います。


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☆3位 『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(1997年日本 庵野秀明・鶴巻和哉監督)

いわゆる「エヴァ」に関しては文句とか不満とかも色々色々あるんですけど、これはもう「自分の人生の一部」になっちゃってるんで仕方ないんですね… リアルタイムで出会ってしまったゆえの呪いとでももうしましょうか。
で、劇場版では特に思い入れの深いこの作品を選びました。最近完結した漫画版はこちらを健康的にアレンジしたものと言えるかも。


5667☆4位 『トイ・ストーリー3』(2010年アメリカ リー・アンクリッチ監督)

ピクサーというかCGアニメ代表。
下手をするとケンという強烈すぎるキャラクターにすべてもっていかれる可能性もあったのに、しっかりメインのストーリーを際出せ、完璧すぎるクライマックス→ラストに運んでいったのには脱帽というほかありません。
玩具マニアにとっての永遠の命題にもチャレンジした辛すぎる作品でもあります(笑)


Mmk3☆5位 『劇場版 魔法少女まどかマギカ [後編] 永遠の物語』(2012年日本 新房昭之・宮本幸裕監督)

「前編」「後編」「新編」とありますがあえて「後編」で。
魔法少女アニメがあまり得意でないわたしをふん捕まえて押し倒して関節技を極めて「お願い! もう堪忍して!」と言わしめた大傑作。
今年の『鎧武』もそうですが、虚淵玄氏はいつも「犠牲なくしては世界は成り立たないのか」と考えている気がします。


☆6位 『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年日本 宮崎駿監督)

ジブリ代表…というか「世界の宮崎」代表。これのみ映画館で観ておりません。
もちろんその後のご活躍もすごいとは思いますが、こないだアカデミー特別賞の席でも言われてたように、結局これが一番面白かったんですよ!


☆7位 『ウォレスとグルミット 危機一髪!』(1995年イギリス ニック・パーク監督)

クレイアニメ代表。
「ウォレスとグルミット」は全部面白いですけど、面白さがピークに達したのはこの3作目ではなかろうかと思います。動物ものと見せかけてメカ描写も満載です。
アードマン・プロダクションは最近『ひつじのショーン』ばかりで新作が途絶えてるな…と思っていたらウォレス役のピーター・サリス氏の具合が良くないんだとか(93歳ですしね…)


☆8位 『屋根裏のポムネンカ』(2009年チェコ イジー・バルタ監督)

チェコアニメというか人形アニメ代表。
不気味な(笑)作品の多いチェコの人形アニメの中で、不気味ながらもかわいらしいもうひとつの『トイ・ストーリー』。この世界のためなら死ねる…かもしれない。
なんでDVD出てないの!? 出してよ!!


☆9位 『レゴ®ムービー』(2014年アメリカ クリス・ミラー&フィル・ロード監督)
今年の新星キターーーーーー!! 全てが最高! みんないい感じ!! 
アニメの技法も大体もう出尽くしただろう~というところへ躍り出てきた衝撃作。
技法だけでなく、映画ファン感涙のパロディがギュウギュウ詰め込まれているあたりも最高。


☆10位 『ミニスキュル ~森の小さな仲間たち~』(2014年フランス エレーヌ・ジロー&トマス・ザボ監督)
今年の新星もひとつキターーーーーー!!
まあこれはアニメというかほとんど実写なのですが、実写の風景にCGアニメのキャラを組み合わせるというこれまた独特なアイデアを評価して。約一時間半の間セリフがまったくないというのもすごい


次点は『銀河鉄道999』『河童のクゥと夏休み』『カラフル』『メアリー&マックス』など。

わたしもとうとう不惑の年を越えてしまいましたが(笑)、ひきつづきアニメ映画をおいかけていきたいと思います!

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November 28, 2014

お笑いドストエフスキー フョードル・ドストエフスキー リチャード・アイオアディ 『嗤う分身』

Wubs1『メアリー&マックス』『人生、ここにあり!』『ブランカニエベス』など「エッジの利いた」突き刺すような作品をよく配給してくれるエスパース・サロウさん。そのエスパースさんの最新配給作は、これまた他に類を見ない、不思議な印象を残す映画。文豪ドストエフスキーの短編をぶっとんだ形でアレンジした『嗤う分身』、ご紹介します。

とある会社に勤める青年サイモンは、気が小さく影が薄いため、気のある同僚ハナにもなかなかアタックできないでいた。そんなサイモンの会社に、ある日彼と瓜二つの青年ジェームズが雇われる。最初こそジェームズと楽しくはしゃいでいたサイモンだったが、何をやらせても要領よくこなす「分身」を見ているうちに、次第に苛立ちが募るようになってくる。そして意中のハナまでもがジェームズのとりこになってしまった時、サイモンの精神は崩壊を始めていく…

「ドストエフスキー 分身」でぐぐると幾つか感想記事がヒットしますが、原作小説もなかなかに変な話。特に説明もなく主人公の前に自分とそっくりな男が現われ、ドタバタやってるうちに最後はえらいところに連れて行かれてしまう…という。聞いたところによるとドストエフスキーが相当追い詰められてる時に書いた話なんだとか。不条理系でいかれちゃってる文学作品というとカミュの『異邦人』やカフカの『変身』などが思い浮かびますが、重厚なイメージのあるドスさんがそっち系の話も書いていたとは意外でした。

映画は原作のストーリーを生かしつつ、後半あたりからさらに独自の展開を見せていきます。そして原作よりもさらに輪をかけてヘンテコ(笑)。まず時代と国がどこなんだかよくわからない。やけに古めかしい機械を使ってるところを見ると、戦後まもなくくらいの時代かな…とは思うのですが。ついで青空というものがまったく出てこない。写されるのは建物の中か、夜のシーンかのどちらかです。あと極めつけは西洋人しか出てこないのに、なぜか劇中で日本の古い歌謡曲がちょくちょく流れるんですよ。『上を向いて歩こう』とか『ブルーシャトー』とか。このポカーン具合は『動くな、死ね、甦れ!』でいきなり炭鉱節が流れてきた時の感覚を思い出しました。

とまあヘンテコずくめの本作品ですが、主人公の心情はけっこうストレートに伝わってきます。特に私のような平々凡々の小心者にはね… 少し高圧的に出られただけでシオシオになってしまったりとか、美人の前で張り切ってるのにまるで相手にされないあたりとか、あまりにも自分のことのようで見ていて果てしなく落ち込みました(笑) こんなにまじめに一生懸命やってるのに、どうして僕は幸せになれないんでしょう。そう思うと現実世界もなかなか不条理なものですよね(いや、そんなに真面目にやってもないか)。

こういう「分身」に悩まされる話、エドガー・アラン・ポーの『世にも怪奇な物語』の第二話や、筒井康隆の『ミラーマンの時間』などもそうでした。藤子・F・不二雄の短編にもあったかな。あ、こないだの『ザ・マペッツ2』もそうだ。あんましわたしは自分とそっくりな人間と会ったら…とか考えたことないですけどね。もしそんな体験をしたらサイモン君以上に滅茶苦茶苛立つと思います。

631786『嗤う分身』は第一陣は今日で大体終了してしまった感じですが、これからかかる映画館もいろいろあるようです。自分としては本年度の『リアリティのダンス』と並ぶヘンテコ大賞でした。


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November 26, 2014

涙くん、アニョハセヨ イ・ジョンボム 『泣く男』

Nko1←この人もそうですけど、最近の男は泣きすぎだと思います。男塾の塾則にもありますが、男子たるもの、親の葬式といえども涙を見せてはいけないのです。そう思ってたところへこんな甘っちょろいタイトルの映画が公開されたので、いっちょしめてやろうと思って観て来ました。『泣く男』、ご紹介します。

チャイニーズマフィアの指示のもと、数々の暗殺指令を遂行してきた男・ゴン。そのゴンは引退と決めた仕事の際、予想外の事態に遭遇してしまい、激しく精神を消耗してしまう。しかし組織はさらに追い討ちをかけるように、その仕事でゴンが殺した男の妻も始末するよう命令をくだす。仕方なくターゲットの住む韓国へと渡ったゴンだったが、彼は突如として組織に反旗を翻し、女を守るために孤独な戦いに身をなげうつ。

監督はウォンビンのビフォー・アフターぶりが衝撃的だった『アジョシ』のイ・ジョンボム氏。『アジョシ』でもそうでしたが、そのアクションの徹底ぶりには目を見張るものがあります。主人公も悪者もグサグサ傷つきながらバトルがすすんでいくのですが、特に悪役の痛めつけられ具合が目を覆わんばかりです。あと周りの人もよく巻き添えになるので、圧倒されながらもあまりスカッとするところがありません。それでもゴン演じるチャン・ドンゴン(笑)の異常なまでの気迫に、目はスクリーンに釘付けになってしまいます。
一方でジョンボム作品は情に訴えてくるというかメロメロなところがあります。韓国映画の雄であるパク・チャヌクやポン・ジュノの作品は皮肉っぽかったり冷笑的な要素が濃いですが、その二人に比べるとやや浪花節的というか。
ただメロメロと言っても、ラブロマンス的な部分はこれっぽっちもありません。年頃の男性が年頃の女性を命がけで守る話であるにも関わらず、です。どうもジョンボム監督は妙齢の女性が苦手なところがあるようです。少し前での映画秘宝でもつっこまれてましたが、一作目の『熱血男児』は老女を守る話で、二作目はの『アジョシ』は幼女を守る話でした。「3作目でようやく普通の若い女性がヒロインですね」とインタビュアーが言うと、恥ずかしげに「チョットコワカッタデス…」と答えてました。この純情野郎!

それはともかく本編を観ればわかるように、二人を結びつけた経緯が経緯だけに、その間に恋愛感情が付け入る隙はまったくないんですよね… それにゴンがヒロインを守る理由というのは惚れたからではなく、自分が救えなかった母親を重ね合わせているから。以下結末までネタバレですが

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これはいかにゴンが望みどおり死ぬか、というお話なのです。彼はヒロインを守ると決めた時から、その目標に向かって必死で血みどろの戦いを生き抜きます。しかし全ての敵を迎え撃ったあとには…
それでもとても満足そうな微笑を浮かべて目を閉じるであろうゴンに、ほとんど顔も合わせてないのに事情を察したであろうヒロインに、わたしは涙が止まりませんでした。うん、男だって本当に悲しい時は泣いてもいいのですよ。最初と言ってることが違うけど気にしないでください。

20080507172527その『泣く男』ですが、ごくごく一部を除いて先週末でほぼ上映が終了してしまいました… どうしていつもわたしは書くのが遅いのだろう… ご興味持たれた方は名画座での上映かDVDの発売をお待ちください。レンタルで観た『新しき世界』『ファイ 悪魔に育てられた少年』も痛切な印象を残す傑作でしたが、わたしの本年度韓国映画ナンバー1はこちらです。


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November 23, 2014

トランシルバニア・ファミリー ゲイリー・ショア 『ドラキュラZERO』

Dc01春ごろに『アナ雪』『マレフィセント』と「悪い魔女も本当はいい人だったのよ!」的な映画が2本続けてヒットしましたが、その流れがモンスター映画にまで飛び火した模様です。誰でも知ってる妖怪キャラクターを、レジェンダリー・ピクチャーズが新解釈でリメイク。『ドラキュラZERO』ご紹介します。

15世紀ヨーロッパ。トランシルバニアのワラキア大公ヴラド・ツェぺシュはその武勇と敵を串刺しにするという行為で近隣から恐れられていたが、そんな彼も妻子の前では家族を愛する優しい父親の一人に過ぎなかった。ある時ヴラドに難題が降りかかる。ワラキアよりはるかに強大なオスマン・トルコ帝国の皇帝が、ヴラドの息子含む1000人の少年を兵士にするために差し出せと要求してきたのだ。国の平和と息子のどちらを取るか、ヴラドは悩む。意を決してトルコと戦うことにした彼は、強大な力を与えてくれるという怪物の住む山に足を踏み入れる。

ドラキュラといえばフォーマルないでたちの「伯爵」というキャラで一般に知られていると思います。しかしモデルは実在した「大公」でありました。ヴラド大公の蛮行が小説家に「血を病的に好む貴族」というイメージを与えたのでしょうね。『ドラキュラZERO』は「もしヴラドが本物の元祖ドラキュラだったら」という発想のもと作られています。
冒頭でも述べたように、今回の映画は宣伝でも「ドラキュラは本当は英雄だった」みたいなコピーで売り出されています。けれどもヴラド大公といえば敵を片っ端から串特急にして喜んでいたという残酷きわまりない男。そんな人をどうやって「ヒーロー」として描くのか。奥さんや子供はドンびかないのか。もしかしたら元々は普通の人間だったのだけど、人外の力を手に入れてしまったために暴走してしまった…という風に持っていくのか… などと色々考えてました。結論から言うと「支配者であるトルコの命令で仕方なくやっていた」ということになっていました。でもやっぱりそんな人を「ヒーロー」「家庭人」として描くのは矛盾がありまくりですよね(^_^;  なんてひっかかりを感じながらも、コスプレ俳優ルーク・エヴァンスの熱演を見ていると「うん、そんなもんかな」と思えて来るからわたしも大概いい加減です。

それはともかくこの映画で特に関心したのは、ドラキュラの能力や弱点の描写でした。ドラキュラのモチーフといえば蝙蝠ですが、蝙蝠は暗い中でも超音波を飛ばし、その反響でもって物体の位置を知ることで有名です。この「音波でものを見る」という感覚を映像で表現して見せてくれたのは高ポイントでした。あと完全に魔法の領域ですけど体を無数の蝙蝠に分裂させて、変幻自在の攻撃を見せるあたりは見ていて楽しかったです。これまたCGの進歩によって可能になった映像ですね。

この二日前に、ちょうど『ヘラクレス』を観たのですが、同じいにしえの英雄物語でありながら、いろいろ対照的なところもあったのが面白かったです。箇条書きにしてみますと

☆『ヘラクレス』
・一応能力は人間レベル
・信頼できる仲間がいる
・物語の初めで愛する家族を失っている
・実力はあるが派遣社員ゆえ肩身が狭いような立場
・全体的にスカッとする話

☆『ドラキュラZERO』
・はんぱない超能力者
・あまり頼りに出来る部下がいない(というかすぐ死んじゃう)
・物語の初めの時点で愛する家族に囲まれている
・取引先の大企業に常に気を使わねばならない中小企業の社長のような立場
・全体的にくら~い話

このアメコミ映画のようなプロットでありながら、ひたすら悲しいお話というのも『ドラキュラZERO』の特色です。自分は暗い人間なのでこのぺシミスティックなムードもなんか心地よかったのですが。

さて、ユニーバーサル・ピクチャーズ&レジェンダリー・ピクチャーズはれを皮切りに『狼男』『ミイラ男』『フランケンシュタイン』『半漁人』などを次々とリメイクし、最終的にこれら全てのモンスターが大集合する『アベンジャーズ』的な映画を作りたい…と聞いたのですが、『ドラキュラZERO』はいまんとこ「一応黒字」という程度のヒットなので、果たして続行されるかどうか。
余談ですがレジェンダリーのプロデューサー、トーマス・タル氏は先日インタビューで「我々は客が観たいというより、自分たちが観たいと思う映画を作っている」と宣言しておられました。その志は涙が出るほどうれしいけど、そういうことはスポンサー様にわからないようにこっそり言わないと(^_^;
Dc02ともあれ、そんなオタクたちの輝ける星であるレジェンダリーピクチャーズに引き続きついていく所存でございます。
『ドラキュラZERO』はたぶんあと上映1,2週くらいでしょうか。そしてやはりレジェンダリー製作である『インターステラー』が昨日より公開中です。


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November 19, 2014

超人ロック冒険記 ブレット・ラトナー 『ヘラクレス』

Hcrs1アキレス、ペルセウス、オリオン、オデュッセウス… ギリシャ神話の英雄は数あれど、その中でももっとも怪力で知られるのは誰でしょう。そう、ご存知ヘラクレスですね。そのヘラクレスの伝説を、ベテランのブレット・ラトナーが新解釈で映画化。『ヘラクレス』(まんま)ご紹介します。

古代ギリシア。12の難行により様々な怪物を倒してきたと噂されるヘラクレスは、傭兵としても無類の強さを誇り、近隣の多くの勢力から恐れられていた。そのヘラクレスの評判を聞きつけ、トラキアから王女が助力を頼みにやってくる。王女が言うには、トラキアは侵略者レーソスの狼藉に苦しめられているとのこと。弱き者のために…と彼女の依頼に応じたヘラクレスだったが、非戦闘民を戦士として鍛えあげる務めまで任され、多くの苦労を背負い込むことになる。

主演は最近『ワイルドスピード』などで大活躍の「ロック様」ことドウェイン・ジョンソン。ロック様が長髪で古代の英雄を演じておられるとむかしなつかしの『ハムナプトラ』スピンオフ、『スコーピオン・キング』を思い出します。しかしあのころと比べるとさすがにロック様も顔のしわが増え、いい年になられたなあ、と感じ入るのでした。

さて、ヘラクレスといえばまず怪獣退治で知られた(架空の)人物です。当然息つく間もなくモンスターたちとの一大バトルが繰り広げられるんだろうなあ…と予想してました。ポスターも予告ももろにそんな感じでしたしね。ところが怪獣たちの出番はほとんどありませんでした。ていうか想像の中だけにしか出てきませんでした。
実はこの映画、もしヘラクレスが現実世界に実在した人物だったら?というアプローチのもと作られています。似たような例ではやはりちょっと前の『キング・アーサー』がありました。まあアーサー王は確か怪獣とは戦ってませんでしたけどね… というかさびしいことですが、怪獣はこの世には実在しません。ではヘラクレスがやっつけてきたと言う怪物たちは一体なんだったのか? このあたりになかなか面白い工夫がなされていました。ギリシャ神話の好きな方であれば、ケンタウルスやヒドラ、ケルベロスの正体をチェックしながら観ていくと楽しめるでしょう。

あと神話のヘラクレスはおおむね一人で危険地帯へ足をズカズカ踏み入れていきますが、この映画では彼に忠実な仲間たちがいたことになってます。このメンバーがなかなかに個性豊かです。「オレ、今日死ぬと思う」と勝手に自分の死亡フラグを立てまくる預言者、口だけ達者なヘラクレスのおい、普段は病んでる系ながら戦場では無類の強さを発揮するあんちゃん、いかにもアマゾネスっぽい女戦士、戦いも好きだけどそれよりもお金が好きなおじさん…などなど。

「神話や伝説の奇跡は、実はこういうことだったんだよ」と種明かししていく話というのは、辛気臭い、地味な話になりがちなものです。しかしこの『ヘラクレス』後半のテンションの盛り上がりは、本年度のアクション映画の中でもかなりハイレベルなものでした。ツイッターでも特に体育会系な映画ファンからは熱狂的な支持を得ていました。
まあいくつか「それはどうかな?」というところもないではないです。いくら力持ちでもそれはないだろ…とか、王様の性格が前半と後半でかなり違う…とか。
しかしそうした細かい疑問も、まさにヘラクレスのように熱気で勢いで強引に押しつぶす映画でした。そういう映画、わたしは大好きです。
わたしは前から信じてましたよ。ブレット・ラトナーはやれば出来る子だって。この辺でいい加減『X-MEN:ファイナル・ディシジョン』も再評価されればいいのに。

Hcrs2なんか知りませんけどいま米国ではぷちっとヘラクレスブームらしくて、少し前にも『ザ・ヘラクレス』という映画が公開されていました。また今月初めには『ヘラクレス 帝国の侵略』という作品もDVDで出てます。まあ日本ではそのブームが一向に伝わってない感じですけど…
(何もついてない)『ヘラクレス』は現在全国で上映中ですが、今週金曜終わるところが多いようです。ロック様の力技をその目で観てみたいという方はぜひ。


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November 17, 2014

恋活ライオン丸 クリストフ・ガンズ 『美女と野獣』

Bb1♪やさしさが~ ひらいてく~ あいのとびら~ ディズニーのアニメで有名なあの童話を、フランスの鬼才クリストフ・ガンズが実写映画化。本日は現在公開中の『美女と野獣』をご紹介します。

一昔前のフランス。とあるところに裕福な商人がいたが、嵐で持ち船をすべて失い、転落。6人の子供たちと共に田舎へ移り住むことを余儀なくされる。ある日所要で出かけた商人は、吹雪に襲われたまたま通りがかった城に避難する。優しい末娘のために…と城のバラを摘んだ商人の前に恐ろしい獣人が現われた。怪物は商人の盗みを許す代わりに、彼の命より大事な末娘を引き渡すように迫る。

わたくし実はディズニー版はTVで途中から一度観たきりで、ほとんど思い入れはありません。なのにどうしてこの映画を観たかったというと、あのカルト伝奇の名作『ジェボーダンの獣』と共通するところが多かったので。監督はクリストフ・ガンズ、メイン俳優にヴァンサン・カッセル、そしてメインの題材は「獣」…と来たらこれはもう『ジェボーダン~』の再現に違いない!と思い込んで映画館に行ったのですが… 結論からいえばかなりムードの違う話でした(^_^; ワイルド&バイオレンスに溢れていたかの作品に対して、こちらはファンタジックでメロメロなテイスト。まあ自由に想像を膨らませて作った『ジェボーダン~』とカチコチの原作がある『美女と野獣』では、やはり同じ監督といえども作り方はかなり異ならざるをえないでしょう。わたしの期待どころが間違っていたのです。

そんな風に多少あてが外れたところはありましたが、見所はそれなりにありました。美しいのだけれど薄暗くて、微妙におどろおどろしい森や城の風景とか。あと野獣がなぜ野獣になってしまったのか、ヒロインがすこしずつ知っていくミステリー的な展開も観ていて飽きませんでした。

先のジェボーダンの記事でも書きましたが、ガンズ監督はけっこう日本びいきらしくて、「今度は松本零士の漫画を映画化したい」とおっしゃってるそうです。今回の『美女と野獣』では特に必然性もなく土くれで出来た巨人たちが出てきましたが、あれは特撮映画の名作『大魔神』をイメージしてるんだそうです。あと商人が勝手に城のご馳走を行儀悪くむさぼり食うあたりとか、それが娘に苦労をかける流れなどは『千と千尋の神隠し』と似てるなあ、と思いました。

ちなみにこの実写版、ディズニー版とはいろんなところが違ってます。カップやお皿は踊りませんし、野獣も牛っぽい怪物から怪傑ライオン丸風になっています。
ヒロインが野獣を好きになるくだりもだいぶ異なる…というか、「なぜベルが野獣を好きになるのかよくわからない」という意見をよく目にしました。わたし思うにこのベルちゃんという子は「かわいそうな人」に弱いタイプなんじゃないでしょうかね。おちぶれたお父さんのことを何よりも気にかけてるあたりからもそれがうかがえます。
財産や名誉への欲望をしつこいくらい否定していた教訓性も、ディズニー版にはあまりなかったように思います。58be2c6dそんな作りとは裏腹に日本では「あのディズニーの!!」というコピーと共に売り出されている本作品(^_^; その思惑が当たったのか、フランス映画にしては初登場第二位という大健闘。うーん… まあいっか! 
次回はやはりディズニーがアニメ化したことのある『ヘラクレス』をご紹介します。これも急がないと今週末までか?

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November 14, 2014

よみがえる葉っぱ隊 クリス・ウェッジ 『メアリーと秘密の王国』

Epic1最近海外のキッズアニメ公開に力を入れているイオンシネマさん。先回の『ミニスキュル』と同じくこちらもイオン限定で現在一応上映中です。『メアリーと秘密の王国』、ご紹介します。

その森では古より生命を司る小人たちと、腐敗を司る小人たちが長い戦いを続けていた。「生命」の側に属するノットは女王を守る「リーフマン」となるよう父代わりのローニンから鍛えられていたが、彼にはそれが重荷だった。
一方その森に引っ越してきた少女メアリーは、わけあって離れて暮らしていた父との生活に不安を感じていた。そんなメアリーの気持ちをよそに科学者である彼女の父は「森に住む小人」の存在を熱っぽく語りだすのだが…

原題は『Epic』。叙事詩という意味だそうです。CGアニメの雄といえばもちろんディズニー&ピクサーの大帝王ですが、それに必死で高レベルの作品で対抗してるのがドリーム・ワークス・アニメーション、そしてこの『Epic』を手がけているブルースカイ・スタジオです。代表作は『アイス・エイジ』シリーズや、昨年ようやっと日本でも公開された『ブルー 初めての空へ』など。他の二社よりもさらに友情や家族の絆をメインに打ち出した作品が多いような気がします。

お互いの種族の主人公であるメアリーとノットは、それぞれ父親的存在との間にぎこちないものを感じています。似た立場の二人が共に数々の冒険に挑んでいくうちに成長し、ゆっくりとそのわだかまりを解いていくあたりがこの作品の「幹」と言えるでしょうか。
一方「枝葉」となるのは最新のCGで描かれた小人の世界。リアルな自然とデフォルメされたファンタジー描写が絶妙なバランスで配合されています。特に目をひくのは葉っぱの鎧を身にまとう騎士「リーフマン」。強度的に疑問が残りますが、色鮮やかな緑がかっこいい。そしてこのリーフマン、鎧や武器のデザインがいちいち日本の時代劇を彷彿とさせるのです。リーダーの名前が「ローニン」なのですから、これはもう確定でしょう。むこうにおける黒澤明の影響力を改めて感じ入りました。
そしてリーフマンたちが駆るのはもちろん馬ではなくハチドリです。このハチドリに乗ってキーンと飛んでく様がまたかっこいい。ただし半人前のノットが乗るのがスズメちゃんだったりするのおかしくてかわいかったです。
しかし自然の生き物というのはかわいいものだけではありません。不気味で気色悪い連中もいます。この映画はその辺の描写でも手を抜いていません。特に目立つのがコメディ・リリーフとなるナメクジとカタツムリのコンビ。まあずっと見てれば粘液まみれのこいつらにも愛着がわいてくるかな~ 

1.7mの人間と妖精のような小人さんとの交流は、むかしなつかし『ミクロイドS』や『冒険コロボックル』『とんがり帽子のメモル』などを思い出させます。最近でも『かりぐらしのアリエッティ』がありました。逆に「こちらの方が小さかったら」という視点で作られたのが『進撃の巨人』でしょうか。来年にはアリのように小さくなれるヒーロー『アントマン』の公開も迫っています。この大小差をモチーフとした物語は時を越えて多くのクリエイターの興味をそそるようです。 

Epic2 『メアリーと秘密の王国』は本当は本日終了の予定でしたが(^_^;一部の劇場では延長が決定しました。くわしくは公式サイトをご覧ください。本国公開から1年半経ってるので、来月頭にはもうDVDも出ます。


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November 11, 2014

地べたの黙示録 エレーヌ・ジロー トマス・ザボ 『ミニスキュル ~小さな森の仲間たち~』

Photo『アナと雪の女王』『STAND BY ME ドラえもん』が大ヒットし、「やっぱりアニメは強い…」という認識をあらためて感じた2014年。そんなオバケアニメの影に隠れて、斬新で質も高いのに世間の注目を浴びてないアニメもいくつかあります… 今日はそんなアニメの一本『ミニスキュル ~小さな森の仲間たち~』をご紹介します(本国のフランスではめっちゃ売れてるんですが…)

ある春のうららかな野山。さなぎからかえったばかりの一匹のテントウムシがいた。親からはぐれたそのテントウムシは、なりゆきで角砂糖の缶を運ぶ黒アリの一団についていく。その道中、彼らは凶暴な赤アリたちに目をつけられ、決死の逃避行に身を投じることになる。

ETVでも放送され、好評を博した『ミニスキュル ~小さなムシの物語~』の長編劇場版であります。TV版の方は観てなかった…というか最近までその存在を知りませんでした。
『ミニスキュル』が独特なのは、まずその映像コンセプトにあります。ほとんどの背景は実際の自然の山であり、野原なんですが、キャラクターである虫たちはCGで作られています。このムシのデザインが本当に秀逸で、明らかにデフォルメされててマンガチックでありながら、自然の風景にとてもよくマッチしています。そしてとにかく何より愛らしい。

またアニメに限らず映画作品として異彩を放っているのが、「言語化されたセリフが一切ない」ということ。口笛とかさえずりとかうなり声ですべての会話が構成されています。まさに『WALL・E』の前半を最後までやりきった作品と言えます。
こういう作風、子供向けの短編アニメでは時々見受けられます。『ひつじのショーン』とか『ロボットパルタ』とか。しかし5分以内の作品ならともかく、これを一時間半徹底するのは相当困難であろうと思います。しかもちゃんと子供にもわかる、手に汗握る極上のエンターテイメントにもなっている。「すげえ…」としか言いようがありません。たとえば序盤でのアリたちの追跡劇、単に空き缶がカラカラ転がっているだけなのに、ものすごくエキサイティングです。わたしは今まで缶が転がることにこんなに興奮したことがありません。さらにこの一本だけでロッククライミングと激流下りと攻城戦とダンジョン探検と空中戦が全部楽しめるんです! こんなお得な映画はそうはありません!

そんなアクションシーンと交互に、心を潤すような美しい野山のビジュアルも目を楽しませてくれます。月並みな言い方ですがスクリーンで見てこそ醍醐味を味わえる映像の乱れ撃ちでございました。

あとこの映画ムシはたちのシンプルな物語はを通じて、「社会」の一面を巧みに描いています。基本的に世の中は弱肉強食です。強い者は弱い者を搾取し、逆らうものは容赦なく痛めつけます。しかしその一方で、自分を犠牲にして必死で他の誰かを助けようとする、そんな懐の深い「やさしさ」も確かに存在します。たまたま居合わせたから同行してるだけなのに、一生懸命お互いのためにがんばる黒アリとテントウムシ。彼らの種を越えた限りない優しさに、わたくしはただハラハラと涙したのでした。

Photo_2そんな『ミニスキュル』は現在全国のイオンシネマ(限定)で上映中ですが、今週の金曜で終了のようです。ああ… また書くのがモタモタしてるうちに… いつもこうだよ!! こんなにいい映画なのに映画ファンの間でさえほとんど話題にのぼらないのが本当に口惜しい。
次回はやはりイオンシネマ限定で同時期に公開されている洋アニメ『メアリーと秘密の王国』について書きます。

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November 06, 2014

A.愛. スパイク・ジョーンズ 『her/世界でひとつの彼女』

Hsk1本年度アカデミー賞作品賞にノミネートされた中で、最も奇抜と言える本作品。遅れに遅れてようやく先月こちらでも公開されました。まあやってくれるだけありがたいんですけど。『her/世界でひとつの彼女』、ご紹介します。

手紙の代筆を生業としているセオドアは、妻と別居して以来満たされない毎日を送っていた。ある日彼はPCの整理のために新開発されたOS「サマンサ」を購入する。「彼女」とセオドアは音声だけでしか交流できないが、まるで人間のように感情豊かなサマンサに、いつしかセオドアはひかれていく。そしてサマンサもまたセオドアのことを愛するようになり、「二人」は奇妙な恋人関係を築くのだが…

ちなみに上のイラストは『ときめきメモリアル』で一世を風靡した藤崎詩織ちゃんのつもり。意外と似せるのが難しくて途中で諦めました。
これまでアンドロイドに恋してしまった…という映画はいくつかありましたが、本作品はさらにシュールです。なんせヒロインが実体をもたないプログラムだというのですから。ただ声はスカーレット・ヨハンソンが普通に話しているだけなので、傍から見ると恋人と長電話しているように見えなくもありません。

スパイク・ジョーンズ作品は『マルコビッチの穴』と『かいじゅうたちのいるところ』を観たことがあります。どちらも現実世界からフイッと非日常の世界に入り込んでいくようなへんてこな映画でした。そんで登場人物はユーモラスなんだけど作品にはかなりニヒリズムが濃厚で、見終わったあとなんだかやるせない気持ちになったのを覚えています。あと誰かが誰かに強く執着するいわゆる「依存」の関係がお話の中心となっていたような。

今回も依存を描いたお話であり、単にワンアイデアの思いつき映画だけにはとどまらず、孤独に心蝕まれるような感情の機微を細やかに描いた作品となっています。大都会ロサンゼルスの美しい夜景が作中に頻繁にインサートされるのですが、その妙に人気が感じられない風景が一層薄ら寒い寂しさを掻き立てます。

主人公セオドアを演じる俳優さん、はにかんだ笑顔が印象的で見覚えあるんだけど誰だっけなあ…と思っていたらホアキン・フェニックスでびっくりしました。彼はなんとなくいつもしかめっ面でへの字口、みたいなイメージがあったのでね… メガネとヒゲと演技で気難し系の男子も癒し系に変わることができるんですねえ。それにしてもこのセオドア、別れた妻がルーニー・マーラで元彼女がエイミー・アダムス、一夜のデート相手がオリビア・ワイルドで現彼女は(声だけとはいえ)スカーレット・ヨハンソン、さらにまた別のかわいい系の女優さんにまで迫られていて「死ねよ!」と思いました。

以下はラストのネタバレ含みで

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主人公と絆を深めたものの、サマンサは急速に進化してやがてさらなる宇宙の真理を追究すべく、パートナーの元から旅立ってしまいます。友情と愛情の違いこそあれ、この流れなんだか「『寄生獣』みたいだなあ」と思ったのはわたしだけでしょうか。そういえばもうすぐ『寄生獣』映画版も公開ですね。けっこう楽しみだったりします。

Img00869『her/世界でひとつの彼女』はさすがに上映も大体終わりました。ていうか12月頭にDVDが出ます。ぼっちのみんなはクリスマス前にこれを見て寂しさ倍増になるといいよ!

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November 04, 2014

ワルのいる町に生まれ クリント・イーストウッド 『ジャージー・ボーイズ』

280pxmap_of_usa_nj_svgしぇーえりー しぇりべいびー しぇーえりー しぇりべいびー
イーストウッド二年ぶりの新作は、実在のミュージシャンを題材にしたミュージカル舞台の映画化(ややこしい)。『ジャージーボーイズ』、紹介します。

1960年代、ニュージャージー州。その町の若者が成功する道は三つ。ギャングになるか、軍人になるか、スターになるか…
床屋見習いの青年フランキーはヤクザな兄貴分トミーにその美声を見込まれて、彼のバンドの一員となる。同じくヤクザ仲間のマッシ、インテリの作曲家ボブの四人で構成されたそのバンド「フォーシーズンズ」はやがて「シェリー」という曲で全米に知られ、押しも押されぬスターとなる。しかし輝かしい栄光の影でフランキーは家族の問題を抱えるようになり、トミーは莫大な借金でフォーシーズンズを窮地に追いやっていく。

ビートルズ・ストーンズが台頭しロックが隆盛を極める前、米国では「ロカビリー」というものがもてはやされた時代がありました。バディ・ホリーやエルビス・プレスリーが脚光を浴びてたころですね。フォー・シーズンズもそんな時代の申し子と言えるかもしれません。ロックより軽やかでやや甘ったるいというか(適当な知識で書いてるのでまちがってるところありましたら訂正よろしく)。楽器をひきながら四人そろって同じステップを踏んでるところが面白かったりします。
ただスタイルは甘くても内情はけっこうヘビー(^_^; 「ぼくのかわいいベイビ~」なんて歌ってる裏でマフィアに借金で脅されてたりするので、どれだけ名声を得ていても必ずしも黒字になるわけじゃないんだなあ…とますます世の中の仕組みがわからなくなるのでした。

それはともかくこの映画で特に興味深かったのは「友情のややこしさ」を描いてるところでした。「友情」というと熱くてさわやかで感動するもの…みたいなイメージもありますが、実際はもっと複雑で面倒なものだと思います。時にはあまりに負担が大きすぎて「俺、なんでこいつと付き合ってるんだろ?」と思うこともありますが、今までの浅からぬ縁を思うとどうしても縁を切ることができない… そんな経験、皆さんはありませんかね? これ、友達だけでなく家族にも往々にしてあてはまることですけど。

あと友情だけでなくバンドの難しさについてもよく描かれてました。中島らも氏は「バンド内のケンカがイヤで一人で全部の楽器を弾こうとした」と言ってましたが、才能や個性の豊かな連中が一緒に何かやろうとすれば、ぶつかりあうのは必然というもの。そういえばバンドブーム華やかなころ、ブレイクしたバンドは ボーカルが「ソロでやりたい」と言い出す→解散→ボーカルと作曲の出来るやつだけが残る という流れをよくたどっていました。60年代からそういうもんだったんですねえ。最近の日本のバンドさんはあまり仲たがいせずいつまでも仲良くやっている、という例も多いですけど。

冒頭でも述べましたが監督はご存知クリント・イーストウッド。84歳というお年にして色々新たな挑戦をしておられるのに驚きました。たぶんこれだけ音楽が中心の映画を作るのも、登場人物が観客に向けてしゃべるいわゆる「第四の壁」を壊すような演出も初めてではないでしょうか。原作がミュージカルということを意識してこうなったんだと思いますが。
男同士の複雑な絆を淡々と力強く語る… そういうところはさすがにいつものイーストウッドでしたね。あと『J・エドガー』のレビューでも書きましたが、『ヒアアフター』以降御大は「人の強さ」より「人の弱さ」の方に興味が向いているような気がします。

41n7yr0zwml__sl290_そんな『ジャージーボーイズ』ですが、近場の映画館調べたらもう上映が終わってました。世界興収もかなり危うい感じだしなあ。いい映画なのになんでじゃああああ!! 見そびれた方は名画座情報をチェックするかDVDの発売をお待ちください。
ちなみにイーストウッドの次回作は実在の凄腕狙撃手を題材とした『アメリカン・スナイパー』。幸い来年二月にすでに日本公開が決まっている(早)ので、心して待ちたいと思います。


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