銀河戦隊マモレンジャー ジェームズ・ガン 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
第2フェイズに入っても一向に衰えを見せないマーベル・シネマティック・ユニバース。そのMCU最新作は、これまでで最もマイナーなキャラクターたちの物語。20年近く邦訳本読んでるわたしでさえ、製作発表までそんなチームがあったことを知りませんでした しかもそのチームの中にはアライグマや枯れ木まで混じってるという。いけるんか、これ!? ともかく『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』後紹介します。
1988年、アメリカの少年ピーター・クィルは、母を亡くした直後にUFOに連れ去られる。以後彼は宇宙海賊らベンジャーズの一員として育てられる。
時が経ち、いっぱしのトレジャーハンターとなったクィルは、辺境の惑星で「オーブ」と呼ばれる謎のお宝を入手する。しかしそのオーブを育ての親のヨンドゥや、凶悪なテロリストのロナン、さらには宇宙の覇王サノスまでもが狙っていたために、クィルは彼らの追撃を一手に引き受けることとなった。その冒険の最中、彼は女暗殺者ガモーラ、暴れん坊のドラックス、しゃべるアライグマのロケット、樹木人間のグルートらと巡りあう。
アメコミ読み慣れてる身にはこれくらいどってことないですが、母と子の悲しい別れの直後にバーン!とUFOが出てきて子供を吸い込んだら、普通の人はひきますよね(笑) そのあともアライグマ人間や歩く木やら、赤青緑の宇宙人がかわるがわる出てきて、現実離れはどんどんエスカレートしていきます。まるで誰かの夢をえんえんと見せられているよう。
ただ人の夢の話ってのはあまり面白くないものですが、この映画にはちゃんと起承転結や派手な見せ場や上手なクライマックスへの盛り上げがあるのでかなり楽しいです。一人の男が珍妙な仲間を集めて世界の命運を左右する冒険に出る…というところは『桃太郎』『西遊記』『オズの魔法使い』といったおとぎ話の定型を踏んでますしね。誰かを倒すというより、危険な力を封印するために奮闘する…といったあたりは『指輪物語』というか『ロード・オブ・ザ・リング』を思い出させます。
あとどことなくのんきで人を食ったムードは、一昔前のユーモアSFをほうふつとさせます。フレデリック・ブラウンとか、『銀河ヒッチハイクガイド』とか、真鍋博が挿絵を描いてる星新一の短編とかああいうのです。時折流れるなつかしい洋楽のナンバーは、「あえて古めかしいSFをやるんでよろしくね」という作り手の宣言のように感じられました。このいいところでかかる70年代ヒットソング集、受験勉強で『ジェットストリーム』をよく聴いていた者にはたまらんものがありましたね。
「現実離れした」「人を食った」と書きましたが、それでもちゃんとキャラクターに感情移入させ、愛着を抱かせる手腕はたいしたもの。気がつけば歩くラスカルやエントにどっぷり情が移ってしまって最後の方は鼻水ダラダラでした。わたし頭だけ動物で下は人間っぽいキャラって今まで苦手だったんですが、最新のCGで描かれるロケット君のリアルさというかモフモフぶりには興奮せざるをえませんでした。そのかわいいルックスでマシンガンを抱えて「オ~イエ~ィ」とか言われたらもう… ああ、もう!! 失礼、取り乱しました。
さて、ここで話題を変えまして、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(以下GoG)が映画史においてどんな意味をもつか少し考えてみたいと思います。
これまでのMCU作品にはすべて「『アベンジャーズ』に集合しなければならない」という不文律がありました。ところがこのGoGの面々は第2フェイズの総決算である『アベンジャーズ2』には出ないことがアナウンスされています。『3』には出るらしい…という噂もありますが、融合してアベンジャーズのメンバーになるということはないでしょう。
恐らくマーベル映画スタッフは、これを試金石として、MCUの枠をさらに広げていこうと考えているものと思います。タイトルの枠を超えてヒーローを集結させる…それだって前人未到のプロジェクトであったわけですが、それを足がかりに、今度はタイトルを越えて広大な共有世界をこしらえてしまおうというハラなのでしょう。そして一見無謀とも思えた『GoG』は大成功を収めました。これからはアベンジャーズの枷にとらわれることなく、秘境や異次元やまた別の宇宙にまでMCUの領域は拡大を続けていくことでしょう。まさしく映画が誕生して約120年、誰もなしとげなかったビッグプロジェクトが展開されようとしています。
何事も始まりがあれば終わりがあるように、いつかはこの「祭り」も終わることでしょう。それが3年先か10年先かはわかりませんが、最後までしっかと見届けて行きたいです。
今後のMCUの予定としては来年の2015年に『アベンジャーズ2』と『アントマン』、2016年に『キャプテン・アメリカ3』と『ドクター・ストレンジ』、2017年に『GoG』続編とほか未発表の2本、2018年にもタイトル未発表の作品が3本予定されています。アメコミファンにとって最高の時代に生まれたことに感謝!!
« カエルのヒーロー、かえる ジェームズ・ボビン 『ザ・マペッツ2 ワールドツアー』 | Main | ほっこりウミガラス島 アストリッド・リンドグレーン オッレ・ヘルボム 『なまいきチョルベンと水夫さん』 »
Comments
伍一くん☆
今頃ようやく観てきました~
いやあ、ほんと面白かったわ。
アライグマのもふもふも、樹木くんの愛嬌たっぷりの表情も最高!でした。
さすがアメコミに詳しい伍一くん。
まだまだ楽しみは当分続きそうで、良かったね♪
Posted by: ノルウェーまだ~む | October 10, 2014 12:17 AM
>ノルウェーまだ~むさん
おお、見てくれましたか!
わたしの方のツイッターでの人気は
木>アライグマ>地球人>宇宙人という感じでした
あとピーターの育ての親のヨンドゥも人気高いですね
とりあえず次のアベンジャーズ2は鉄板で面白いと思うのですが、その次のアントマン、ドクターストレンジは不安材料がないでもないですね(^_^; もちろんどんなに不安でもわたしは見ますが!
Posted by: SGA屋伍一 | October 10, 2014 11:10 PM