ほっこりウミガラス島 アストリッド・リンドグレーン オッレ・ヘルボム 『なまいきチョルベンと水夫さん』
今年も資格の試験が近づいて参りまして、更新がアップアップ状態です そんな合間を縫って紹介するのはスウェーデンの児童文学『わたしたちの島で』を映画化したこの作品、『なまいきチョルベンと水夫さん』。まずはあらすじから。
バルト海に位置する自然豊かなウミガラス島。そこに住むぽっちゃり系の少女チョルベンは、歯の抜けた女の子スティーナやウサギ大好きの少年ペッレと毎日仲良く遊んでいた。しかし彼女にとって一番の仲良しは家で飼っている大型犬の「水夫さん」。ある日近くに住む老人が迷子のアザラシ「モーゼ」を拾ってきたことから、穏やかだったチョルベンたちの日常に波乱が生じ始める。
あらすじからもわかるようにタイトルにある「水夫さん」というのは犬の名前です。ちなみに原題を直訳すると「チョルベン、水夫、そしてモーゼ」となっています。映画を見てみるとどっちかというと目立っているのはアザラシの方。子供たちも犬そっちのけで「モーゼモーゼ」とアザラシに夢中です。まあ、アザラシかわいいですからね… そんな不遇の身の上に予期せぬ災難まで降りかかってしまう「水夫さん」に感情移入するとなかなかに泣ける映画です。
この手の映画というのは大体安達祐実とか芦田愛菜といった目の大きなキラキラした、かわいらしげな女の子が主演なものですが、こちらのチョルベンちゃんはかわいいにはかわいいけど、ちょっとスーザン・ボイルに似ています。そんなちょっと貫禄のある女の子。じゃあ性格は… というとこれが基本文句しか言いません。よくしらない大人に「死ねばいいのに」とまで言ったりします。ところがずっと彼女を見ているとこれはこれで愛嬌があるように思えて来るから不思議です。
もう一人の主人公と言えるのはチョルベンの友達のペッレ君。冒頭で服のまま泥んこまみれになってキャッキャ言ってるあたり、「頭の悪そうな子だなあ」と思わずにはいられないのですが、ある悲劇に見舞われた際の彼の行動・言葉にはいちいち感服させられるものがありました。「小僧の神様」…そんな言葉がしっくりくるお子さんです。
あとこの映画のもうひとつの特色はウミガラス島の風景。緯度が高いせいか、昼がかなり長いようなのです。「もう寝る時間ですよ」と言っても外はまだけっこう明るかったりするのが変っておりました。
正直この映画を観た時、「原題の作品にしてはあまりにも素朴というか、古めかしいな」という思いをぬぐえませんでした。それもそのはず、あとで調べたらこの作品1964年に作られてるじゃありませんか。自分が勝手に新作だと思いこんでいたのでした… 最初からそう認識しておけば貴重な50年前の映像ということでもっとじっくり浸れたのになあ。残念。
『なまいきチョルベンと水夫さん』はもう大体上映を終え、あとは下高井戸他3館くらいで予定されています。ちなみにこの作品2005年にも『わたしたちの島で わんぱくアザラシのモーセ』という題でDVDスルーされているのですが、今回のデジタルリマスターを機に新版も発売されるのでしょうか。
あとこのチョルベンを主人公にした映画が他に3本作られてるそうなので、出来たらそちらも観たいものです。
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