カエルのヒーロー、かえる ジェームズ・ボビン 『ザ・マペッツ2 ワールドツアー』
大傑作でありながら公開期間は約10日という実に不遇の扱いを受けた『ザ・マペッツ』。その続編が無事日本でも公開されると聞き、ほっとしたのもつかの間。上映館はたった二館であとはオンデマンドで観てくれという… なんじゃあそりゃーーーー!! 仕方がないので夢の国の近くのシネマイクスピアリまで行って観て参りました。『ザ・マペッツ2』、ご紹介します。
お話は前作のエンドマークから始まる(!)。映画の撮影は終わり、かえっていくエキストラの大観衆たち。あっというまに取り残されたマペッツたちは、せっかく集まったことだし、これからまた一緒に何かをやろうと話し合う。そんな彼らに近づく一人の男がいた。彼は自称敏腕マネージャーのドミニク。数々のスターと仕事をしてきたというドミニクはマペッツたちに世界ツアーの話を持ちかける。
一方そのころ厳寒のシベリア刑務所では一人の凶悪犯が脱獄に成功したところだった。その名をコンスタンティンという彼は、なんと恐るべきことにマペッツたちのリーダー、カーミットに瓜二つだった…
で、このコンスタンティンというのが悪巧みのためにカーミットになりかわろうとするのですね。誰にでも優しく天使のような癒し系のカーミットに対し、邪魔するやつらは容赦なく張り飛ばす悪魔のようなコンスタンティン。まさに究極の善と悪の対決であります。ただ子供向け映画では普通悪者は悪者らしい顔をしてるものですが、この映画の悪者は見かけが善玉とほくろの有無しか変りありません。なんて恐ろしい… そう、現実でも悪者はいかにもいい人そうな顔をしてすりよってくるものではないでしょうか。頭の足りなそうなマペッツの連中はたやすくコンスタンティンの計略にはまってしまいます。
よくわからないというかおかしいのは、この究極のヒーローであり究極の悪が「カエル」ということです。悪者とするなら迫力に欠けます。善玉にするにしても、カエルのキャラってそんなに子供ウケするものではないと思います。とりあえずぱっと思いつくのはケロッ子デメタンとド根性ガエルくらいのもの(ケロロ軍曹もいたか)。しかしまあこのカーミットがかつてセサミストリートでは大人気であったわけですから不思議なものです。一作目で最初に観た時は「こいつがヒーローか…」と唖然としたわたしも、彼のバッテンっぽい目を見ているうちにすっかりとりこになってしまいましたし。なんというか、それこそ天使にも悪党にも見える奥の深い顔をしてるんですよ。
カーミットの魅力ばかり語ってしまいましたがこの作品の魅力はほかにも山ほどあります。マペッツたちが訪れるヨーロッパの華やかな風景。うきうきするような楽しいナンバーの数々。あいかわらずにぎやかで我が強いマペッツたちのハチャメチャなショー。あっという間すぎてよくわからない豪華スターのカメオ出演。そして全編を覆うゆる~~~いギャグ。
マペッツたちももちろんがんばっている?んですが、今回はどちらかというと脇を固める人間たちがいい味を出しておりました。人間なのにカエルのNo.2であることに苦悩するドミニク。人間なのにカエルにぞっこんほれてしまうシベリアの女看守。人間なのにマペッツと張り合うインターポールの刑事。この刑事とマペッツのぶつかりあいが本筋とあまり関係のないところで涙と笑いを誘ってくれます。百聞は一見にしかず。とりあえず予告編をごらんください。
『ザ・マペッツ2 ワールドツアー』はまだシネマイクスピアリとイオンシネマむさし村山で限定上映中。観られる環境にある方はぜひ観ていただきたく。どうしても無理な人はオンデマンドで!
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