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September 15, 2014

49日後… 大林宣彦 『野のなななのか』

Asibetumap03大ベテランの大林宣彦監督が新境地に挑んだ『この空の花 長岡花火物語』。その姉妹編とも言える作品が例によって数ヶ月遅れで沼津でも上映されたので行って参りました(3週間前ですが…)。『野のなななのか』、ご紹介します。

人口の減少著しい北海道の芦別市。その芦別で長年開業医を営んでいた鈴木光男という老人が、雪の降る日に倒れる。もう永くないという知らせを聞いて、芦別に集う親族たち。そして光男と共に長年働いていた女性・信子もやってきた。やがて静かに息をひきとる光男。彼の「なななのか(四十九日)」までの間、残された人々は光男との思い出を振り返り、これからどう生きるか思いをはせる。

『この空の花』と共通しているのは
・戦争の悲しい体験がモチーフとなっている
・生死の境界があいまいになっている世界観
・演劇調の会話・演出
・パスカルズの音楽
・時折語られる反原発への思い
…というあたりでしょうか。

お話は大きく三つの部分に別れます。
1.光男の秘められた終戦前後の体験
2.戦後の光男と孫たち、信子との暮らし
3.光男の葬儀から49日までの出来事

というところからもわかるように、作品の中心にいるのは光男さんであります。登場人物が多く、語りが現在にいったり過去にいったりするのですが、彼を要としてストーリーがすすんでいくので不思議ととっちらかった印象がありません。その点『この空の花』と好対照で、ついていきやすかったです(『この空の花』も好きですがcoldsweats01)。あと声高にはっきりと「戦争はいけません!」と叫ぶ前作に比べると、こちらは「戦争はこんなに悲惨なんだよ…」と切々と静かに訴えるような作りになっていました。

で、この光男さん、80近いおじいさん(品川徹)が演じてるにも関わらずめちゃくちゃダンディでかっこいいんですよ。そのダンディズムのゆえかはるか齢の離れた常盤貴子にまで惚れられてしまうのですね。いや、そりゃたしかにわからないでもないけど… ちょっずるくないかい? ともかく、このおじいさんの凛々しさというか、諦観というか、浮世離れした姿勢がいくつかの悲しい思いを生み出すことになってしまいます。「罪作りなじじいだ」と思わずにはいられませんでした。
わたしがこの映画で特に印象に残ったのはやはりこの光男と信子の交情に近い交流のあたり。陳腐な言い方ですが「悲しくも美しい」 …そんな表現がぴったりあてはまります。彼女を母と慕う二人の子供とのエピソードも、暖かくもなんとも切ないものでした。
そして信子演じる常盤貴子がまた美しい。かつてトレンディドラマで活躍されてたころはなんとも思わなかったのに… もういい年だろうに女学生を演じていてもほとんど違和感がありません。さらに恐ろしいのはもう一人のヒロインである安達祐美。32歳なのに十代の役をやってもまったく違和感がない! まさに魔女と呼ぶのがふさわしいお二方です。

現実的な話のようで時折はっとするような非現実性が折り込まれるのも印象的でした。パスカルズの音楽と中原中也の詩がその幻想味を独特なものとしています。
Nnnk2現代パートのヒロインである寺島咲さんも落ち着いたたたずまいでようございました。もし彼女が芦別で記念館を営んでいるのなら、ふらっと訪れてみたいな…なんて思えてきます。いや、別にいなくても行ってみたくなりますね、芦別。北海道自体子供のころに一度行ったきりだし…
『野のなななのか』は大体上映終了しちゃってますが、まだ細々と残ってるところもありますね。詳しくは公式サイトをごらんください。


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Comments

おはようございます。
イーストウッドがアメリカ映画に必要であるように、
今の日本映画に無くてはならないのは、大林監督であるような気すらしています。
“なななのか”の意味が分かるところで無駄に感動してしまいました。
変則的な物語ですが、こちらも大好き。
最近、目黒シネマやキネカ大森などで、『この空の花』との二本立てがやっているようです。
よくこの二本を見る体力のあるお客さんが居るなあー。
いくらお得でも私には一本づつの方が落ち着きます…。

Posted by: とらねこ | October 08, 2014 at 06:40 AM

>とらねこさん

こんばんは。
イーストウッドも大林監督もいいお年なのに一向に創作意欲は衰えないようで、まことに頼もしい限り。本当にいついつまでも長生きしてほしいものです。わたしはLINEで先に「なななのか」の意味を教えてもらっちゃったんだよなあ(笑)
そういえばわたしのフォロワーさんで、『この空の花』&『野のなななのか』の一気見にチャレンジしてた人いましたよ。意外と平気だった、と言ってました。すごいな。
わたしはとらねこさんと一緒でこの二本は一本ずつ観てしばらく余韻にひたりたい映画だと思いますた

Posted by: SGA屋伍一 | October 09, 2014 at 10:38 PM

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