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August 23, 2014

アンナと雪のない北海道 ジョーン・G・ロビンソン 米林昌弘 『思い出のマーニー』

Omn1先日映画・アニメ界に衝撃を与えた「ジブリ解体」のニュース。これがもしや最後の長編となってしまうのか… というわけで『思い出のマーニー』、紹介します。

札幌に住む病弱の少女杏奈は、医師のすすめで夏休みの間叔父夫婦のいる田舎に静養することになる。養母との間にわだかまりを抱えている杏奈は人とうまく接することができず、静養先の同年代の少女たちとも衝突してしまう。
ある日杏奈は一人で湖をスケッチしていた際、古い洋風の屋敷を発見する。杏奈はその屋敷に惹かれるものを感じて浅瀬を渡って向かうが、ついた途端に眠り込んでしまう。水かさが増して帰れなくなり途方に暮れていた彼女の前に現れたのは、マーニーと名乗る不思議な金髪の少女だった…
以後、杏奈はこの世ならざる気配を感じながらも、マーニーとどんどん仲を深めていきます。

北海道のど田舎に存在する金持ちの外人の女の子… ちぐはぐというか違和感をぬぐえません。しかし米林監督の絵力には、そうしたちぐはぐさをねじふせるパワーを感じました。湿っ地屋敷の風景、水にぬれる杏奈の足の質感、おばさんちで取れたトマトなど、ひとつひとつの風景や小物が確かな存在感をもってわたしたちの前に迫ってきます。
こうした絵力は、監督の前作『借りぐらしのアリエッティ』ではそれほど感じられませんでした。偉そうなものいいですが、米林氏の確かな成長が認められます。

さて、とくにとりえのなさそうな男の子が目の覚めるような美少女と出会って、特に理由もないのにほれられてしまう… という話はよくあります。ただ本作の主人公の杏奈ちゃんはボーイッシュであっても女の子。なぜだ!? 百合ものがやりたいのか!? と思いましたが違いました(^_^; これは宣伝のミスリードのせいもあると思います。
マーニーが出会ったばかりの杏奈をなぜ突然「大好き」と言うのか? これはストーリーが後半に入るにつれだんだんと明かされていきます。以下ネタバレになるのでご了承ください。
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観た方には言うまでもないですけど、マーニーの正体というのは杏奈のおばあちゃんの少女時代の姿でありました。わたしは「誰かに愛されたい」という杏奈の孤独な思いが、おばあちゃんの霊というか残留思念をひきよせたのでは…と解釈しました。その正体が明らかになる過程で、おばあちゃんが「本当は杏奈のそばから離れたくなかった」「誰よりも杏奈を愛していた」ことがわかり、杏奈は胸の傷を癒し、同時に人を許すことを学んでいく… 実にこころにくい構成であります。

ただ最近のジブリ全体… 『コクリコ坂』『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』…に言える話ですが、この話が『トトロ』や『ラピュタ』が好きなお子様たちにも楽しめるかといえば少々疑問です。『マーニー』も宮崎御大は「内面の話だからアニメでやるのは不可能」と言ってたくらい感情の機微を細かに描いた作品なので、杏奈と同じくらいの子じゃないと理解するのは厳しいでしょう。そんな子供置いてけぼり作品ばかり作っていて、ジブリ経営的に大丈夫なのかな…と思っていたら、「ジブリ(いったん)解体」のニュースが飛び込んできたのでたまげました。
まあジブリが消えたとしてもあの「宮崎さんっぽい絵」のアニメが作られるならばファンは安心すると思うのですが… 10月から始まる宮崎吾朗氏の『山賊のむすめローニャ』にもあの画風が受け継がれているようなので、その辺に期待したいと思います。Omn2しかしディズニーにひきつづきこちらまで「男の影が薄い・肝心なときに役に立たない」という流れなのはどういうことなのか。わたしも役に立たないことにかけては自信がありますがね。
『思い出のマーニー』は「ジブリ初登場なのに1位を逃した」というこれまた事件でしたが、いい映画なのでできれば多くの人に見て欲しいです。あと1,2週か… まだマーニーあう!


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Comments

こんにちは。
ジブリは製作部門メンバーとの固定契約を止めるという話のようなので、ジブリが解体するわけではないと思います。アニメを作るときに人を集めて、作り終えたらリリースする普通のアニメ会社になるのかと。
せっかく社内保育園まで作ったのに残念ですけど。

私はマーニーとは杏奈の妄想だと思いました。祖母が話してくれた思い出の遠い記憶が、杏奈の脳内に像を結んだのかと。
いろんな解釈があるものですね。

Posted by: ナドレック | August 24, 2014 at 12:35 AM

>ナドレックさん

情報ありがとうございます。レベルの高いアニメーターばかり雇ってるので人件費がすごい… みたいな噂は聞いておりました。固定契約をやめることで赤字を減らそうという狙いなんですかね
しかしあんなにヒットしてるジブリですら赤字になるとは、いいものを追求していくというのは無限にお金がかかるものなのですね…
わたしの友人もナドレックさんと同じ考え方をしておりました。わたしはフィクションに関してはどうもファンタジックにとらえたがる傾向があるようで

Posted by: SGA屋伍一 | August 25, 2014 at 10:00 PM

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