怒れる森の魔女 ロバート・ストロンバーグ 『マレフィセント』
みなさん、お盆休みいかがおすごしでしょうか。わたしはだらけきっていて、いつも以上に眠いです。こうやって書いている今でさえ、果てしなく深い眠りに落ちて行きそう… というわけで本日は『眠れる森の美女』を原案とした大ヒット公開中の『マレフィセント』、ご紹介します。
そこは中世ヨーロッパっぽいけど明らかにファンタジーの世界。妖精たちの森と人間たちの世界は境界によって分かたれ、お互い干渉せずに暮らしていた。将来妖精の女王となる少女・マレフィセントは、ある日財宝目当てで森に侵入してきた少年・ステファンと出会う。二人は魅かれあうが、ステファンは成長するにつれ人間界での栄達を求めることに必死になり、やがて森の境界に姿を現さなくなる。
時は流れ、森と接する国のヘンリー王はその傲慢さゆえ、妖精たちの世界への侵略を始める。だがマレフィセントの強大な力の前に人間たちは敗退。王も瀕死の傷を負う。ヘンリー王はマレフィセントを倒した者に王位を譲ると宣言。それを聞いたステファンの胸に、ある謀略が思い浮かぶ。
この映画の話を聞いたとき意外だったのが、『眠れる森の美女』の魔女に「マレフィセント」という固有名詞があったことですね。童話だと大抵魔女は「魔女」としか書かれてないじゃないですか。実際この名前は元々の童話からあったものではなく、1959年のディズニー映画でつけられたもののようです。お姫様の名前が「オーロラ」というのもディズニーオリジナルのようですね。
わたしゃそっちの方の映画は観てませんが、ざっと紹介を読むと有名な『眠り姫』のストーリーをほぼ踏襲しているようです。かわいいお姫様が悪い魔女の呪いにかかって永遠の眠りについてしまうが、王子様のキスで目覚める。おしまい。で、今回は見るからに悪そうな「悪い魔女」マレフィセントを主人公にして、彼女がどうしてそんな意地悪な魔法をかけたのか…というところに焦点があてられています。
まあいろんな人が言ってるので恐縮ですけど、これ『アナ雪』ですよね。
共通点を挙げていきますと
・恐ろしい魔女も、実はピュアで孤独な女の子だった
この辺はおじさんとしては30年くらい前の氷室冴子先生の小説『シンデレラ迷宮』を思い出します。いい話なんで若い方はぜひごらんください。いまはキンドル版でしか読めないようですが…
以下、どんどんネタバレになっていくのでお気をつけください。
・ヒロイン?は強大な魔力を持っているけれど、自分には完全にコントロールできない
・魔力のおまけで変った生き物を生み出してしまう
・よからぬたくらみを抱くイケメンが出てくる
・「真実の愛」で愛する者を救い、自分も救われる
・その「真実の愛」を抱く者は年下の女の子だったりする
ディズニーでいう「愛」っっていったら、少なくとも『美女と野獣』『アラジン』くらいまでは男と女のLOVEだったと思います。まあ最近でも『プリンセスと魔法のキス』や『ラプンツェル』あたりはそれがあてはまりますか。しかしこの二作で言われる「真実の愛」というのは完全に家族や保護すべき対象に向けられるものになっています。確かにうまくいく例もありますが、男女間の愛というのはとかく性欲とか年収とかステータスとか余計なものがからみやすいものです。そこへいくと家族に向ける愛というのはもっと純粋なものでありますし。
あとセレブの男女の愛というのもとてもうつろいやすいものですよね。色々破局を経験してきたアンジェリーナ・ジョリーも、子宝に恵まれてようやく「真実の愛」(恥ずかしいな、この語)にめぐり合えたのならめでたいことではないでしょうか。
こっからは結末も明かしちゃいますが
自分としては悪者のステファン王の扱いが残念でした。彼だって最初はいいところがあったわけじゃないですか。ぐれてからも少しは良心が残ってたからマレフィセントの命を奪わなかったわけだし。
だもんで罪をあがなうために死んじゃうのは仕方ないとしても、せめていまわの際に「ぼくちゃん、間違ってた。許してねん」とかつてのいいところを思い出して欲しかったです。でないとマレフィセントにもオーロラにもあとあと心にしこりが残ると思うんですけど、普通に極悪人として救いのかけらもなくお亡くなりになったのでなんかむなしかったですね~ そのあとダメ押しのように「めでたしめでたし」で終わってしまったのでなおさらむなしさがつのりました。
とはいえ全体的には普通に楽しめたファンタジー映画でした。特にマレフィセントの従者となるカラス人間はよかったですね。演じるサム・ライリー君は『オン・ザ・ロード』などで主演を演じていますので気に入ったお姉さんはチェックしてみてください。
『マレフィセント』は公開して一ヶ月が経ってますが、『アナ雪』ブームの勢いを駆ってか、現在実写洋画ではナンバー1のヒットとなっているそうです。次は「『シンデレラ』の継母は実はいい人だった」という映画ができるかも。
Comments
こんにちは。
サム・ライリー、いいですね。
名前の中に侍があるのがいかしてます。
いつか侍役も見たいものです。
Posted by: ナドレック | August 15, 2014 07:26 AM
>ナドレックさん
返信遅れてすいません
サム・ライリーの侍役、ぜひ見たいですね
監督はぜひサム・ライミで!
Posted by: SGA屋伍一 | August 18, 2014 05:52 PM
吾一くん☆
ま、男性は女性の大切なものを奪った時点で、極悪非道か白馬の王子様のどちらかになるのです。
仕方ないことですね☆
白馬の王子で居続ける覚悟がない場合は、いまわのきわのチャンスも無しと諦めましょう。
Posted by: ノルウェーまだ~む | August 26, 2014 12:47 AM
>ノルウェーまだ~むさん
おっと女性側からの厳しいご意見… 肝に銘じます
しかしわたしももう40才白馬に乗ってももう王子様というよりオジ様だなあ…
Posted by: SGA屋伍一 | August 27, 2014 09:39 PM