ほどほどにホドロフスキー フランク・パビッチ 『ホドロフスキーのDUNE』
最近暑いせいか更新が遅れがちですw これももうかれこれ一ヶ月前に観た映画。ここで気を取り直して遅れを取り戻していきたいと思います!(できるかなー)。それでは『ホドロフスキーのDUNE』、ご紹介しましょう。
あらすじ:『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』で名をはせた鬼才アレハンドロ・ホドロフスキーは、1975年、その勢いを駆って人気SF小説『デューン』の映画化に乗り出す。その情熱は多くの才能や著名人を引き寄せ、彼の夢とプロジェクトは果てしなく広がっていく。だが諸事情によってこの企画はボツになった。おしまい。
あっ… 最後まで書いちゃった… まあそんなドキュメンタリーです。
『デューン 砂の惑星』はその後デビッド・リンチにより映画化されました。公開された時話題を呼んでいたのはうっすらと覚えています。それから数年後して、気まぐれでシリーズの第一部も読みました。これまただいぶ記憶がおぼろげですが、こむずかしい設定と理屈の多い『スターウォーズ』という印象でした。どちらかというとスターウォーズの方がこれの影響を受けているんですけどね(^_^;
完成しなかった映画のドキュメンタリーというと、テリー・ギリアムの『ロスト・イン・ラ・マンチャ』(未見)などもありますが、そんな映画、観て面白いのか?という人もいるかもしれません。ところがこれがけっこうひきこまれるんですよ。特にSF映画が好きな人だったらぜひ観てほしい作品です。
まずホドさんが原作小説からどんどん空想を膨らませ、さらには暴走していく様子が一緒にトリップしているようでめっちゃ楽しいのです。人間の脳内にも無限の宇宙があるわけですが、ホドさんの宇宙はまことに摩訶不思議で、こちらの想像を絶するような世界を垣間見せてくれます。
あともうひとつすごいのは、あまり物を知らない私ですらたまげるようなビッグネームが、次から次へと登場してくること。メビウス、ギーガー、ダン・オバノン、オーソン・ウェルズ、ピンク・フロイド、果てはミック・ジャガーやらサルバトーレ・ダリまで… どなたもこなたもそのまんまSFに出てきそうなお名前であるのが素敵です。さらにすごいのは、そんなビッグネームどもが多少の差こそあれ、ホドさんが声をかけるとみんな「うん、やるよ」と返事しちゃうんですよ! 当時名を知られていたとはいえ、まだ若いホドさんにどうしてみんなそろってその申し出にうなずいたのか。それはやっぱり、彼の情熱とカリスマ性ゆえでしょうか。
ただしつこいようですが、結局この『DUNE』は日の目を見ませんでした。残念、観たかったな…とは思いますが、総計12時間ともなると映画会社が難色を示すのも無理からぬことかと思います。あと構想を聞いていますとけっこう残酷なシーンがあったり、難解な部分も多いようなので、仮に尺をめちゃくちゃ縮めてもヒットは難しかったのでは。もっともホドさんは映画が売れるか売れないかなんて、あまり気にしちゃいなかったようですけど。彼は単なる商売ではなく、後世に影響を残す一大芸術プロジェクトとしてこの企画に臨んでいたので。
実際、当初の予想とは違う形ではありましたけど、確かに『DUNE』のプロジェクトは後の作家・作品に大きな影響を与えることになりました。その詳細についてはドキュメンタリーを観て知ってほしいところですが、ただひとつ例をあげるなら、冒頭に述べた『スターウォーズ』も『DUNE』の企画がなかったらもっと別なものになっていたことでしょう。
で、特に爆笑したのが、後にリンチ版が完成した時のホドさんの反応ですねw 彼はデビッド・リンチの才能を認めていたので、「きっとすごいものを作っただろうなあ… きい! 悔しい!!」と公開されても観るのをいやがったそうです。しかし頼もしい長男に一喝されて、しぶしぶ劇場に足を運ぶホドさん。果たして彼はどんな感想を抱いたのか… すいません。ここも実際に聴いて確かめてくださいw
しかしこのホドロフスキー長男の人格者ぶりはものすごいですよ。『エル・トポ』で素っ裸にさせられて、『DUNE』では主役を演じるべく星一徹のような特訓を施されたにも関わらず、まったくぐれていない。しかもダメダメになった親父を叱り飛ばすことまでしている。そして現在公開中の『リアリティのダンス』ではまたまた親父の変態につきあわされて、とんでもないことまでさせられている。西洋の人ではありますが、さながら生きた仏を見ているような気持ちになりました。
『ホドロフスキーのDUNE』はまだ渋谷のアップリンクを初め、けっこういろんなところで上映中・予定。同時に二十数年ぶりとなる新作『リアリティのダンス』も公開中です。先週観て来たので近々こちらの感想も書きます。その間に、まだ3本レビューが残っているんですけどね…
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