« 怪獣王誕生 円谷英二・本多猪四郎 『ゴジラ』(第1作) | Main | 動物バンザイ、人間NG ダーレン・アロノフスキー 『ノア 約束の舟』 »

July 03, 2014

新激女版エヴァグリーオン ノーム・ムーロ 『300 帝国の進撃』

3002その独特で鮮烈なアートにより、アクション映画の中でも異彩を放つ2007年の映画『300(ザ・スリーハンドレッド)』。一作だけできれいに終わってたんですが、「まだ使えるネタがあったよ!」ということで7年ぶりに続編が公開されることになりました。『300 帝国の進撃』、ご紹介します。一作目の紹介記事はこちら

紀元前490年。大国ペルシアは「マラトンの戦い」においてアテナイを中心とするギリシャの連合軍に敗北を喫し、王ダレイオスを失う。その息子であるクセルセスは失意に沈むが、勇敢な女将軍アルテミシアの助けを得て別人のような「神王」へと生まれ変わった。
それから約十年後、クセルクセスとアルテミシアは満を持してギリシャへ復讐のため軍を進める。かつてダレイオスを倒したアテナイの将軍テミストクレスは、限られた兵力でアルテミシアが率いる大艦隊と対峙する。

というわけで「おりゃー! かたきをとったるぜー!」と突進していく前作ラストからそのまま続くのかと思いきや、時系列的には一作目よりも過去から始まったりしております。そして『300』でスパルタが戦っていた時にアテナイはどうしていたかを描き、後日談にまで踏み込んでいます。尺はこちらのほうが5分ほど短いんですけどずいぶん詰め込んでますね!(^_^; こういう変わった形式の「第二作」といえば『ゴッドファーザーPARTⅡ』がありますが、あれは前日談と後日談が交互に語られていく構成だそうなので、少し違うのかな(実は観てなかったりする)。

第一作はすでに原作があり、監督ザック・スナイダーが「この絵をどこまでも忠実にコピるんじゃあああ!!」と異常なこだわりを発揮したために、あのような「動く油絵」的な迫力あるアートが生まれました。ところが今回はまだ映画完成時に原作が出版されておらず、恐らくコンセプトアートのようなものを見せてもらいながらコミックと同時進行で作られていったものと思われます。そのためアート的には前作より若干薄味になったというか、普通の映画に近くなっていました。でもまあ、燃えるビジュアルもたくさんありました。冒頭のマラトンの戦いで矢を放つテミストクレスや、予告にある崖から大ジャンプして敵艦に乗り移るシーンなどは鳥肌が立ちました。

で、今回の主人公を務めるアテナイのテミストクレスですが、前作のレオニダスと比べるとやや弱弱しく感じられます。いや、この人だって常人の十倍くらいは強いと思うんですけど、武力よりは智力で戦うタイプの武将。そんで思ったように援助が得られないことや、味方に犠牲を出してしまったことにいちいち落ち込みます。生まれ着いての英雄であるレオニダスもかっこいいですけど、わたしなどはどっちかというとテミストクレスのような苦労人タイプの方が感情移入しやすかったです。
そしてこのテミストクレスと対決するのが、先にも述べたエヴァ・グリーン演じるアルテミシア。邪魔者は表と裏の両方からバッサバッサと殺しまくる恐ろしい女傑ですが、なぜかテミストクレスにはそれなりに敬意を払っております。テミーさんの方でもアルテミシアの軍才には一目置いていて、敵軍の中へノコノコ出て行って、「お前の才能に勝ちたい」なんてことを言います。そんで意気投合した二人はそのままエッチしてしまったりして… えっ?
このお互いの才能に惚れあって「お前やるじゃねえか」「ふっ、お前こそ」と惹かれあう関係、ラブロマンスというより番長漫画とBLを足して割ったようでありました。そして二人が盛り上がれば盛り上がるほど、クセルクセスさんの影が薄くなっていきます。

以下ネタバレ




あまりこの辺の歴史に詳しくなかったわたしはてっきりレオニダスの敵をとってスパルタ軍がクセルクセスをぶっ殺して終わり… となるのかと思ったんですが、この映画、非常に「えっ」というところで終わってしまいます。
で、調べたら確かにクセルクセスこの時死んでないしね(笑) 彼がどういう最後をたどるかはご自分で検索して確かめてください。
あとペルシア戦争はこのあとにもう一回「プラタイアイの戦い」という山場があるのでそれでもう一本作ろうともくろんでいるのかもしれません。
3001ちなみにテミストクレスにもこのあと波乱に富んだ後半生があったり、さらにアテナイとスパルタが大々的にぶつかりあうぺロポンネソス戦争につながったり…とまだまだ面白そうなネタが転がっております。

『300 帝国の進撃』は現在中ヒット上映中。まだ二週間くらいはやってると思います。次は『300』よりさらに古い時代の『ノア 約束の舟』について語ります。

|

« 怪獣王誕生 円谷英二・本多猪四郎 『ゴジラ』(第1作) | Main | 動物バンザイ、人間NG ダーレン・アロノフスキー 『ノア 約束の舟』 »

Comments

伍一くん☆
映画的にはエヴァの大勝利でしたねー

しかし、これはゼッタイ目論んでいますねっ
ゼッタイ3作目を作ろうとしているかんじ。
最後にペルシアのクセルクセスを倒して完結するのでしょうか。

Posted by: ノルウェーまだ~む | July 06, 2014 12:18 AM

>ノルウェーまだ~むさん

みなさん本当にエヴァ・グリーンしか印象に残ってないようで… この人も最近肉食系の役が定着しつつありますね
すでに制作費の3倍近くは儲けてるので金銭的には第三作は問題なさそう。あとはミラー先生のアイデア次第?

Posted by: SGA屋伍一 | July 07, 2014 10:40 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 新激女版エヴァグリーオン ノーム・ムーロ 『300 帝国の進撃』:

» 「300 帝国の進撃」☆ほどよい筋肉加減 [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
戦いのシーンでほぼ間違いなく寝てしまう私が、唯一1ミリも眠くならなかった映画「300」 そのグロいのに美しい、唯一無二の映像美が私を虜にしたからだけど、さて今回は・・・・ [Read More]

Tracked on July 06, 2014 12:18 AM

» 「300 <スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~」 [或る日の出来事]
「300<スリーハンドレッド>」は、それほどでもなかったという記憶があり、本作は映画館では観なかったのだけど、テレビで見てみたら、なかなか楽しかった。 [Read More]

Tracked on May 16, 2015 11:43 AM

« 怪獣王誕生 円谷英二・本多猪四郎 『ゴジラ』(第1作) | Main | 動物バンザイ、人間NG ダーレン・アロノフスキー 『ノア 約束の舟』 »