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July 16, 2014

ミステリーテーブル 西加奈子・行定勲 『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』

Etk1昨年『きいろいゾウ』が映画化された西加奈子氏の作品を、『GO』などで知られる行定勲氏がこれまた映画化。いまをときめく人気子役の芦田愛菜ちゃんの出演最新作でもある『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』ご紹介します。

昭和なのか現在なのかよくわからない大阪。小学校三年生のことこ(通称こっこ)は好奇心旺盛で、気になった言葉をすぐに学習帳に書き留めては空想をめぐらす、そんな女の子。こっこにはすでに3人の姉がいたが、ある日の夕飯時、両親からもう一人兄弟が誕生することを知らされる。喜びに沸く一家とは裏腹に、あまり嬉しいと思えないこっこ。その時からこっこは自分と他人の「感じ方のズレ」を特に意識するようになる。

この映画、そんなにびっくりするような大事件が起きるわけではなく、基本的にはこっこと周りの人々の日常を淡々と追った内容。おかしいところもあるものの、わかりやすいギャグはあまりなく、じんわりくすくす笑えるようなテイストであります。だから『ちびまるこちゃん』のような内容を期待していくと、そのアバンギャルドな作風に少々面食らうことでしょう。さくらももこ的なところもありますが、吉田戦車のカラーもけっこう入っています。それでも『ぴあ』のアンケートで満足度№1だったのは、ひたむきに演じる子供たちの姿が微笑ましかったからなのか。

先ほどもあげた行定監督の『GO』は邦画オールタイム・ベストに入るくらい好きな作品です。その『GO』の中で父親が主人公にボクシングを教えながらこう語るシーンがあります。「円の中にとどまっていれば身を守れる。それでも円の外へ踏み出すことを選ぶか?」だったか。『GO』の杉原はケンカっぱやい思春期の少年なので、ドカバキ周囲とぶつかりながら前に進みますが、『円卓』のこっこちゃんはま10歳かそこらなので、おそるおそる確かめるようにして外界との接触を図ります。
家族が増えるのは嬉しいはずなのに、自分は嬉しいとは思えない。自分はかっこいいと思うことが、当人には恥ずかしいことだったりする。こっこちゃんはちょっとテンションの上下が激しいお子様ではありますが、そんなに変わったお子様ではないと思います。わたしももう40なんで幼少のころの感覚を思い出すのが年々難しくなっていますが、子供のころって自分の感覚と世間一般の感覚が時として大きくずれていて、戸惑うことがあったものです。その後周りと合わせるために、「こういうものなんだ」と自分に言い聞かせてるうちに、そうした違和感はだんだん消滅していったりするものです。こっこちゃんの独白はわたしに子供のころのそんな懐かしい感覚を思い出させてくれました。

わたしが特ににんまりしたのは子供たちの間に垣根がないというところですね。ここでは在日韓国人の子も普通にみんなと溶け込んでいて「パクくんパクくん」と呼ばれて親しまれていあくます。あと当たり前だけど男女の差もあまり意識されてない。「大きくなると、男と女であまり話さんようになるらしい」「ふーん」なんて会話からそれがうかがえます。そんでこっこちゃんの一番の親友も「ぽっさん」と呼ばれるメガネの男の子です。こっことぽっさんの間には恋愛感情らしきものはまったくなく、同性同士と変わらない友情で結ばれています。ただどちらかといえばこっこの方がぽっさんを頼りにしていて、ぽっさんもいざという時にはこっこを守らなきゃ、と思っている。友情というよりは兄妹のような関係に近いかもしれません。「大きくなったらしゃべらなくなる」とは言ってましたが、この二人の関係がいつまでも続けばいいのにな…とおじさんは思うのでした。

主演は皆さんご存知の芦田愛菜ちゃん。愛菜ちゃんといえばかわいらしい、いじらしい「いい子」のイメージがあるかもしれませんが、この映画では時として激しく怒るあまりかわいくない子を演じています(笑) さすが愛菜ちゃんというべきか、「可愛くない子」も堂々たる演じっぷりでした。監督によると彼女はいつもどうやって演じるか自主的に考えていて、他の子たちのお手本にもなっていたとか。早熟ですなあ… まあわたしが彼女の演技で最も
「すげえ」と思ったのは『パシフィック・リム』なんですけどね。あれはマジで怪獣におっかけられている表情をしていましたから。
Etk2 『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』は大体あさってで上映終了かしら… くわしくは上映一覧をご覧ください。規定の枠にはまらない、でもほっこりする映画を求めている方におすすめです。


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Comments

伍一くん☆
爆笑ってほどでもないけど、くすくす笑いが良かったよねー
私は結構好きなんだけど、あまりヒットってかんじでもないなーと思ったら、ぴあでは満足度ナンバーワンなのですね。
こっこ「可愛くない子」でしたかー?
私はウケを狙った可愛い子を演出する子供ほど嫌いなので、こっこ超キュートでした♪
やっぱり女性目線と男性目線で可愛い部分って違うのかなー

Posted by: ノルウェーまだ~む | July 20, 2014 at 12:34 PM

>ノルウェーまだ~むさん

わたしんとこの近くでもやってたので大規模に公開してるのかと思ったら、あまりスクリーン数多くなかったようですね
こっこはかわいくない子でしたが(笑)、そこがリアルでよかったのですよ。今度公開される『なまいきチョルベン』という映画の主演の子もあまりかわいくないんですが、そこがいいんです!

Posted by: SGA屋伍一 | July 22, 2014 at 10:01 PM

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いやぁ、めっちゃええやん~~~、ほんま、えらい泣いてしもたわぁ~ と劇場を出るときに、思わず口をついて出てしまうことでしょう。 原作 西加奈子、監督 行定勲という情報を抜きにしても、想像を遥かに超えた素晴らしい作品に、思わず本気で愛菜ちゃんのファンになってしまうこと間違いなし☆... [Read More]

Tracked on July 20, 2014 at 12:28 PM

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