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June 24, 2014

奪えるものなら奪いたい名画 ウェス・アンダーソン 『グランド・ブダペスト・ホテル』

140617legograndbudapesthotelキュートでシュールな作風で熱心なファンを持つウェス・アンダーソン。そんな氏の新作が小規模公開ながら現在(主に都市部で)人気を集めております。第64回ベルリン国際映画祭の審査員グランプリに輝いた『グランド・ブダペスト・ホテル』、ご紹介しましょう。

①ある著名な作家の胸像の前でたたずむ一人の少女。
②次いで場面はその作家のインタビューの場面へと変わる。作家はかつて自分が長く滞在した欧州の「グランド・ブダペスト・ホテル」の思い出について語りだす。
③作家はそこでホテルのオーナーと懇意になり、彼がどうやって先代からホテルを譲り受けたのか、その数奇な物語について知ることになる。
④オーナーはかつては異国から逃れてきた一介のベルボーイだった。ホテルの名コンシェルジュ、グスタフ・Hと師弟関係になった彼は、富豪からグスタフに譲られたある名画をめぐる陰謀と冒険に巻き込まれることに。

というわけでこれ、なんと三重の昔話になってるんですね。さして必然性があるとも思えないそんな構成にどうしてなっているのか? ぼんやりと思うことはありますが、はっきり言ってわかりません。偉い評者のみなさんにおまかせします。

自分、ウェス・アンダーソンは『ダージリン急行』から観はじめて、以後『ファンタスティック・Mr.フォックス』『ムーンライズ・キングダム』と付き合って来ました。『ダージリン~』より前の4作は観てないのですが、ずうずうしくもアンダーソンさんについて語らせていただきます。
まず近年の作品でよく見られる傾向について。

・映像が絵本のよう(カラフルだけど目に優しい)
・脱出劇が多い
・乗り物が活躍する場面が多い
・小動物がひどい目にあうことが多い
・毒にも薬にもならないような、人を食ったお話が多い

…とこんな感じなんですが、『グランド・ブダペスト・ホテル』は最後の項だけちょっと違い、お話の最後の方で現在の世界に対する批判というか嘆きのようなものがこめられております。この辺の背景についてはわたしがウダウダ語るよりも(例によって)町山智浩氏の解説を読んだ方がはやいですね。というわけでリンク先もぜひ一読していただきたいのですが… これ、けっこう重いですね…(内容が)
となるとアンダーソン氏はインスピレーションを受けた作家のツヴァイク氏を、ジュード・ロウ演じる作家と、コンシェルジュのグスタフの二人のキャラに投影しているということでしょうか。ジュ-ドさんが子供にいじられているシーンがとても微笑ましかったので、実際のツヴァイク氏のようになってほしくはないんですが。
そんなわけで観ている間はチャカチャカしてて楽しいんですが、観終わってみると「今は失われてしまった美しいものへの哀愁」がひたひたと胸に迫ってきて、思い返すたびにあとをひきます。こういうこと、これまでのウェス・アンダーソン作品にはなかったような。
あとコロコロ人が死んだり痛そげなシーンが多かったのもちょっとウェスさんらしくなかったですかね。クレイブンの方ならともかく。

今回ヴィジュアル的に気に入ったのは、やはりグランド・ブダペスト・ホテルの全景でしょうか。ピカピカだった時といささかくすんでいる時の両面が印象深かったです。出番は少ないながらも奇妙な形をした登山電車もかわいらしかったですね。
登場人物ではだんとつにコンシェルジュのグスタフ氏が強烈でした。老女専門のプレイボーイで、詩人で、高慢のようで人情に篤く、浮世離れしているようで俗物っぽくもある。達観しているようで子供っぽくもある。色々忘れがたいキャラクターでした。そんな風変わりなおじさんと、ぼーっとしているようで悲しい過去を背負っている「ゼロ」君のコンビがまたよかったです。上司と部下であり、師弟であり、年の離れた友人であり、親子のようでもある。そんな二人のやりとりがいちいちおかしく、時にホロリとさせられました。

グスタフ氏を演じるのは名優レイフ・ファインズ。わたくし観ている間ずーっと「この人リーアム・ニーソンに似てるけど微妙に違うなー。誰だっけなー」と思ってました。どうもハリポタの鼻のないフェイスになじみすぎてしまって、鼻のある状態がどんなだったか忘れていたようです。余談ですがこの二人『シンドラーのリスト』や『タイタンの戦い』二部作で共演していて混乱させてくれます。

Gbh2『グランド・ブダペスト・ホテル』は現在全国で公開中。わたしが住んでるところでは通例彼の作品は都市部から3ヶ月くらい遅れてかかることが多いのですが、今回は遅れなく上映されました。映画館も配給さんも勝負に出たな!と思いましたcoldsweats01 黒字になるといいですが…

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Comments

伍一くん☆
グスタフ氏の高慢のようで人情に厚く~~とぼーっとしているようで辛い過去を背負ったゼロくん。
まさにその通りですね~
それで物語りもチャカチャカして楽しいのに、どこか物哀しいのかな。

私もレイフ・ファインズの顔を久しぶりにしげしげと見てしまいました。

Posted by: ノルウェーまだ~む | June 24, 2014 at 11:50 PM

>ノルウェーまだ~むさん

その辛い過去があまりしめっぽくならずにさらっと語られるところとか、それを聞いたグスタフさんが急にしおらしくなるところもよかったです
この映画のおかげでだいぶ鼻有りレイフ・ファインズも思い出してきました。少し前のスカイフォールにも出てましたけど、なぜか印象が薄い…

Posted by: SGA屋伍一 | June 26, 2014 at 02:00 PM

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