総決算だよ! X-MEN! ブライアン・シンガー 『X-MEN:フューチャー&パスト』
西暦2000年からコツコツと続き、いつのまにやら14年も経ってしまった長寿アメコミ映画シリーズ『X-MEN』。その総決算ともいうべき映画が先日より公開されているのでご紹介します。『X-MEN フューチャー&パスト』(原題は『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』)参ります。
西暦2023年。ミュータント撲滅のために作られたロボット兵器「センチネル」の開発のため、X-MENと仲間たちは壊滅の危機に瀕していた。やがてセンチネルはミュータントだけでなく、「ミュータントを生み出す可能性もある人類」まで襲いだしたため、人類全体に絶滅の危機が及ぶ。
X-MENの指導者プロフェッサーXとビショップは、この事態を解決するため、メンバーのウルヴァリンを過去へ送り込み、センチネルが作られる原因そのものを消去することを試みる。
キティ・プライドのパワーにより70年代の自分へと意識を飛ばしたウルヴァリンは、その時代のプロフェッサーから助力を得ようと彼を探す。だが過去の時代のわかきプロフェッサーは、そのころ失意のどん底にいた…
なんとなくハリウッド映画シリーズには「基本3作目まで」みたいな決まりがあります。それ以上続けると新鮮味がどんどん薄れるし、初心者は途中から入り辛くなってきます。権利や役者のゴタゴタも起きます(笑)というわけでこの14年の間にバットマンもスーパーマンもスパイダーマンも1からやりなおされる(リブート)ことになりました。
ところがそんな風潮にも影響されず、意地でもリブートせずに続いてきたのがこのX-MENシリーズ。原因のひとつはヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンが、あまりにはまりすぎ&人気を得てしまったからでしょうか。しかし3作目『ファイナル・ディシジョン』でひとまずの完結を迎えてしまったシリーズは、その後スピンオフと前日談ばかりが続くことになります。そしてシリーズ上の矛盾点もいろいろ出来てしまいました(笑)
そんなグダグダ感あふれた状況で作られることになった本作品。わたしも最初はあんまり期待してなかったんですけど、実際に観てみたら見事なまとめっぷりと仕切りなおしっぷりにただただ感心いたしました。もちろん全ての矛盾を解決できたわけじゃありませんが、これまでのストーリーをとてもよく把握しており、新機軸も盛り込み、そして非常にカタルシスあふれた作品となっております。
この超絶技巧は1作目・2作目監督のブライアン・シンガーと、ファイナル・ディシジョン脚本&ファースト・ジェネレーション製作のサイモン・キンバーグががっちりタッグを組んだからこそなせた業でしょう。シリーズをよく知る二人が作っていることが、非常にいい効果となって表れております。
そんな風に常連さんにはたまらない作風の代わり、一見さんにはかなりハードルの高い作品となってしまいました(^_^; まあ仕方ないね。初心者さんはちゃんと予習してから観ればいいじゃない!! と、つい製作陣の味方をしてしまいたくなります。でもまあ日米共に客入りはこれまでと比べて持ち直しているようで不思議なことでありますね。
ストーリーに関して高く評価したいのは、まず悪役となるセンチネル開発者の、ボリバー・トラスクの人物像。彼はミュータントを憎んでいるわけではなく、むしろ高く評価していると言います。このままではネアンデルタール人が現人類に駆逐されたように、ミュータントにより現人類が滅ぼされてしまう。弱者が自衛するための当然の行いとして、ミュータントを滅ぼさなければいけないのだ…と。聞いているとなんだかこちらまで説得されてしまいそうです。こんな風に理路整然と自分の動機を述べられる悪役って実はかなり珍しいんじゃないでしょうか。そして彼の論理は世界で多く見られる人種同士の摩擦にもよく見られるものであります。
そしてもうひとつよかったのは、以下ネタバレですが
これがアメコミヒーロー映画なのに、誰も倒したり殺したりせずにめでたしめでたしとなるところです。ある意味かなり異例な決着のつけ方ですが、観ていてとってもさわやかになりました。やっぱり人類はみな兄弟、世界はラブ&ピースですよ。これが70年代がメインの映画だから言うわけじゃありませんけど。
さて、アメコミオタクの立場からキャラ説明をちょっと。
未来編に登場するメンバーはX-MENの主力よりもちょっと若手を選んであるのが心憎いですね。アイスマン、キティは加入時マスコット的な扱いだったし、ウォーパス、サンスポットは二軍的存在だったXフォースのメンバーです。ブリンクはさらにそれより一回り若いジェネレーションXのメンバー…というか加入直前に異次元に飛ばされちゃったんだったかな。ビショップは原作では未来からやってきたという設定で、先の時代の要らん情報を教えてはX-MENを混乱させます。
過去編ではそんなに新顔はいませんでしたが、一人強烈な印象を残すのが高速で移動する能力を持つクイック・シルバー。最初はマグニートー配下の悪役として登場しますが、すぐにヒーローチームのアベンジャーズに鞍替えします。映画では軽い感じの気のいいアンちゃんでしたが、原作では気難しい上に重度のシスコンというキャラです。あと悪気はないんだけどヒーローのくせにいろいろ問題やら火種やらをこさえてはみんなに迷惑かけてますね。彼は来年の『アベンジャーズ2』にも別設定で登場するようなのでそちらも楽しみです。
ある意味見事に完結したともとれる映画版X-MENシリーズ。しかし20世紀フォックスはすでに再来年新作の『X-MEN:エイジ・オブ・アポカリプス』を予定。リブートさせた(笑)『ファンタスティック・フォー』と世界を共有させるという情報もあります。せっかくうまくまとまったものが、またてんでバラバラになりそうな予感がしますが、そんなのはわたし『ゲッターロボサーガ』で十分味わってますから! 何の問題もありません!
おしまいに大したこと書いてないですけど、これまでのレビューのリンク貼っておきます。お暇な方は読んだってー
・1作目
・2作目
・ファイナル・ディシジョン
・ウルヴァリン
・ファースト・ジェネレーション
・ウルヴァリン:サムライ
Comments
伍一くん☆
えー?ファンタスティック・フォーと合弁したら、面白人間大集合になっちゃう・・・(汗)
若手を選んで再登場させたのは、今後の続き物をやるときに、シワ伸ばしのCG加工が少なくて済むからかな??
私もCG加工してほしい。
Posted by: ノルウェーまだ~む | June 14, 2014 10:48 PM
>ノルウェーまだ~むさん
遅くなってすいません。そうですねー ファンタさんたちはどっちかってえとコメディのノリですからねw いかにシリアスに仕上げるかが課題になるでしょう
>私もCG加工してほしい。
そんなときこそいま流行のあの歌を歌いましょう!
♪ありのー ままのー すがたーみせるのよーうおー
Posted by: SGA屋伍一」 | June 17, 2014 10:58 AM