アメリカ横断ウルトラクジ アレクサンダー・ペイン 『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』
父子ネタがつづきます。本日ご紹介しますのはアカデミー候補常連ともいえるアレクサンダー・ペイン氏がモノクロスタイルで挑んだ『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』。GWにようやっとこちらでも公開されたので観られました。つか、GWに観た映画の感想を未だに書いてるというね…
モンタナの電気店につとめるデビッドのところへ、ある日父のウッディが補導されたという連絡が入る。ウッディはまぎらわしい勧誘の広告を宝くじが当たったと思い込み、配当金の受け渡し場所になっているネブラスカ州まで徒歩で行こうとしたのだ。いくら「勘違いだから」と説得しても聞こうとしないウッディ。デビッドは父を納得させるために仕方なく二人でウッディの郷里でもあるネブラスカまで行くことにする。
…というあらすじを書くといかにもロードムービー的ですが、旅にさかれているのは全体の2~3割りくらいですかねえ。あとのほとんどは両親の生まれ育った街で、デビッドが父母の親戚・知り合いと触れ合ったり、いらいらしたりするエピソードに占められています。
そんな映画の主な舞台となっているネブラスカ州、上の地図からもわかるようにアメリカ合衆国のど真ん中です。四方を陸に囲まれてる…ということは別に珍しいことではありませんが、その周りの州も、さらにその周りの州もすべて陸に囲まれているいわば「キング・オブ・陸地」であります。
そんなアメリカ中西部のだだっぴろーい平原・道路や、ぶらぶらしている牛を白黒スクリーンで眺めているのはなかなかに心地良うございました。
思ったのはなんでこの話をモノクロで作ったのか…ということ。とりあえず白黒映像でやると「現代の話なのになんだか昔の映画みたく見える」という効果はありますね。携帯電話とか普通に出てきたとしても。
あとこの映画のテーマである「父と子の交流」みたいなものがこのスタイルに合っているな、という気はしました。お父さんのウッディはなんかボケかかっているようでもあるし、隙を見せるとすぐビールを飲んでるし、とにかく問題児であります。一見家族のことなんか全然気にしてなさそう。でもこの映画の白っぽいぼやーっとした色調のようにはっきりとはわかりにくいけれど、彼にもそれなりに息子たちを思いやる気持ちがある…んじゃないかなあ…と(笑)
そんなぼんやりしたお父さんになぜだか親身になって世話するデビッド(次男)。一般に長男はお母さん子に、次男はお父さん子になる傾向がある気がします。他の映画でいうとちょっとマイナーですが『ロード・トゥ・パーディション』もそうでした。
あとこの映画でもう一人強烈な印象を残すのが一家のお母さん。子供にとって親から一番聞くのがきまずい話といえば、彼らのセックス関連の話だと思うのですが、敬虔なカトリック教徒だというのにその辺の話を臆面もなくべらべらと語りだす。さらに夫をガミガミと叱りとばすは間違えても一向に悪びれないは、関西のおばちゃんと全く一緒だと思いました(関西のご婦人方すいません)。
そんな『ネブラスカ』ですが、終盤が近づくにつれ、そんなわきゃないんだろうけど「お父さんの宝くじが本物だったらいいのにな」という思いがどんどんつのっていきます。果たして奇跡の一発逆転はあるのか? それはご自分の目で確かめてください。
…と書いてはみましたが公式サイトの上映一覧見ますともうだいぶ劇場が限られてきてますね(^_^; 気になる方はリンク先をチェックしてみて、厳しければDVD発売までお待ちください。
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Comments
伍一君☆
やっぱり男子と父親との関係っていうのは、男性ならではのものがあるのかなーと。
それは「8月の家族たち」に見られるような、女子と母の関係と対極にあるようにも思えます。
ゆるゆるとした展開が心地よい作品でした。
Posted by: ノルウェーまだ~む | May 26, 2014 11:57 PM
>ノルウェーまだ~むさん
こんばんは。そうですねえ。父と息子の関係ってなかなか面倒くさいんですよ(笑) 特に長男の場合は…
『8月の家族たち』も評判よいですが、きっつい話ということでちょっと腰が引けてます。というかこっちではいまんとこ上映予定だないんだけど(^_^;
Posted by: SGA屋伍一 | May 27, 2014 09:59 PM