ぼくの伯父さんのサーカス 「ジャック・タチ映画祭」『乱暴者を求む』『パラード』
まだGWに観た映画の感想が終わりません…
一日空いた日にフランス喜劇の巨匠として名高いジャック・タチの特集上映が行われているというので、久しぶりに渋谷はイメージ・フォーラムまで行ってまいりました。同日に話題作『アクト・オブ・キリング』も公開されていたということもあって、30分前に着いたにも関わらず劇場前は長蛇の列。なんとか座れましたけど、スクリーンの前から二列目での鑑賞となりました。
本当はタチの代表作と言われている『ぼくの伯父さん』が一番観たかったんですが、日にちの関係で『乱暴者を求む』『パラード』のプログラムとなりました。あとで知ったら日本の劇場でかかるのは初めてだそうで、こりゃなかなか貴重な機会だったかも。
まずは短編作品の『乱暴者を求む』
チャンピオンがあまりも強いので、対戦相手が決まらないレスリングのタイトルマッチ。「乱暴者を求む」という巧妙な新聞広告につれられてやってきたのは、仕事が決まらない売れない役者だった…
チャップリンやキートンを思わせるモノクロ・サイレント喜劇。ただチャップリンやキートンがキャラクターの面白さで話を牽引していくのに対し、こちらは状況の特異さや、数人のチームプレーで笑いをかもし出していきます。
チャンピオンの隆々たる体格に対し、主人公のやけに腕の長い体形が妙に印象に残りました。
もう一本は遺作となったTV映画『パラード』。こちらはこれといったストーリーがあるわけではなく、とあるサーカスの公演の様子を現場中継のように追った作品。ドキュメンタリーにも近い味わいですが、この作品のために芸人も観客も集めて撮影されているようなので、それともまたちょっと違います。
特筆すべきは芸人志望だったというタチ監督の多彩なパントマイム。こういうのはやっぱり時代や国を越えて笑いを誘いますね。テニスプレーヤーやゴールキーパーのネタなどイメージフォーラム館内でも大うけでした。
この作品はわたしが生まれた翌年(1974年)に作られているのですが、その当時のショーというのがどんなものだったのか知る上でも興味深かったです。とにかくお客さんたちがただボーっと見てるだけではなく、歌い、踊り、ひとつひとつの出し物に楽しそうに参加してるんですよね。
特にほほえましかったのはロデオショーのシーン。いい年のおじさんが奥さんにやめろやめろと言われてるのに、スーツ姿で目をらんらんとさせて跳ね馬にまたがろうとします。結果はもちろん惨憺たる有様でしたが、それでもおじさんの表情の実にすがすがしいこと。
そしてショーが盛り上がっている中、列に幼い少年が一人紛れ込もうとします。もちろん「危ないから」とすぐ遠ざけられるのですが、進行役の目を盗んで再び馬に忍び寄っていきます。
この『パラード』に主人公がいるとしたら、それらサーカスを心から楽しんでいる観客たちなのかもしれません。
「ジャック・タチ映画祭」はひとまず上映は終了しましたが、好評をうけて6月にアンコール上映が決定。他の幾つかの都市でも行われるようです。詳しくは公式サイトをごらんください。ラインナップを目で追っていると、やっぱり『ぼくの伯父さん』シリーズはもとより『プレイタイム』や『トラフィック』も観たくなりますね。むむむ…
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Comments
ええっ!そんなに遅いんですかあ?
でも私なんか、GW公開の映画を試写会で前もって見たのを、今頃UPしているという状態だったりしますので、人のことは言えないな!
ジャック・タチのこういうテイスト、何となくだけど『地下鉄のザジ』を思い出しちゃいました。
私は大好きでしたねえ、これ。
Posted by: とらねこ | May 31, 2014 03:05 AM
>とらねこさん
こんばんはー
うん、最近は仕事終わって酒飲んじゃうとなかなかブログを書こうという気力がわかず… で、どんどん感想が遅れていきます。でも次はがんばって誰かさんがうとうとしてた『ポーラX』書くよー
>『地下鉄のザジ』
子供が憎たらしくもかわいいところは似てたね。あと美術がシャレオツでキュートなところや、おっさんたちが体を張ってギャグに挑んでるところも
Posted by: SGA屋伍一 | May 31, 2014 10:39 PM