街の明かりが全部消えたら停電 ~ブルーライトNY~ マーク・ウェブ 『アメイジング・スパイダーマン2』
マイティ・ソー、キャプテン・アメリカ、とアメコミ大作が続く2014年。そして日本でもっとも人気のあるアメコミヒーローが満を持しての登場となりました。『アメイジング・スパイダーマン2』、ご紹介します。一作目の記事はコチラ
リザードとの戦いの後もスパイダーマンとして活躍し続けていたピーター。いまではスパイダーマンもすっかり街の人気者としてNYの人々から愛されていたが、ピーター・パーカー個人としての悩みは絶えない。亡き警部との約束が胸にのしかかり、恋人のグウェンとの仲がギクシャクし始めたり。
そんな折りピーターは旧友でオズボーン社の跡取りであるハリーがNYに戻ってきたことを知る。変わらぬ友情に心和むピーター。しかしこの再会は次なる悲劇の幕開けでもあった。
あらすじに上手に折り込むことができませんでしたが、今回の主な悪役は電気怪人エレクトロ。上の画像は池上遼一氏が昔描いた漫画版のものですが、原作版のデザインもほぼ一緒です。映画版ではもっとスッキリしたデザインで体色もブルーとまるで別のキャラのようにアレンジされております。もともとはスパイダーマンに助けられたことがきっかけで彼に病的な憧れを抱くさえない電気技師でしたが、不幸な事故により電気を操る怪人に変貌。精神的にも凶暴な人格に変わってしまう…という設定になってました。
今回はネタバレ抜きで語るのが難しいので、以下は未見の方は避難されてください。
『アメイジング・スパイダーマン2』のテーマをわかりやすく言うと、「自分のことばっかり考えてる人は手痛いしっぺがえしを食うことになる」ということでしょうか。
スパイダーマンで一貫して語られてるテーマに「大いなる力には大いなる責任が伴う」というものがあるあります。言い換えると「大きな力を持っているのにそれを私欲のために使ったり、責任を放棄しようとするなら相応の罰を受けることになる」ということです。しかしこの信条、考えようによってはかなり厳しいものですよね…
まずエレクトロとハリー・オズボーン。この二人は最初っから力を善用する気などなく、ひたすら自分のことしか考えてないという点ではまさしく悪役にふさわしい。しかし彼らとて望んで力を得たかったわけではなく、ほとんど誰からも愛されなかったかわいそうな境遇のことを思うと、多少は情状酌量の余地を与えてやってもいいんじゃないか?という気もしますが、作品は彼らに一片の救いさえ許しません。
そしてさらに厳しいことにこの掟はヒーローのスパイダーマンにもあてはまってしまうのです。ピーターに課せられてる「責任」とは何か? それは「隣人たちの平和と安全を守ること」であります。スパイダーマンの異名は「あなたの親愛なる隣人」ですからね。
劇中、英国に留学することになったグウェンにくっついてぼくもロンドンへ行く」というピーター。イギリスでもヒーロー活動をすればいい、と彼は考えたようですが、自分の都合で隣人であるNY市民を放り出してしまうということもまた「責任放棄」であったようです。そして彼に臨んだ罰とは…
しかし、しかしですね。好きな人のそばにいたいというのは人として当然の願望であります。まして力も責任もないグウェンがどうしてそのとばっちりをうけなくてはならないのか。大いなる力にともなう責任とは、そこまで重いものなのでしょうか。『アメイジング・スパイダーマン2』はそんな責任の重さというか、力の持つ呪いが際立って目立つ作品でありました。
グウェン・ステーシーの死はスパイダーマンのみならずマーベル世界における大きなトラウマのひとつです。一作目での彼女の存在感や、公開直後の「楽しかった!」というつぶやきから今回はてっきり回避されたのかと勝手に安心してたらもろにそのまんまでしたねえ… ふうううう…
エピローグの少年のエピソードで多少持ち直しはしましたが、アメコミ映画でこんなにガックリきたのはわたし初めてですよ。グウェンがあの場に向かったせいで大勢の人が救われた。そこへ向かえば死ぬということがわかっていたとしても、彼女はきっと決意を変えなかったのではないか… そんな風に考えて自分を慰めてはいますが、それでもやはり割り切れない何かが残ります。
両親、育ての父、恋人、親友… 大切な人を次々と失っていくピーター。彼に残されたものはもうそれこそメイおばさんとNY市くらいのものです。さびしげに「やっぱりこの街にはぼくが必要みたいだね」とつぶやくマスクの下で、ピーターは果たしてどんな顔をしていたのでしょう。
『アメイジング・スパイダーマン』シリーズはすでに公開前から『3』『4』が製作決定しております。そしてその2作品の間にヴィランをフィーチャーした『ヴェノム』『シニスターシックス』というスピンオフも製作予定。
主演のアンドリュー・ガーフィールドの契約が『3』までということを考えると 『3』でピーター死亡→スピンオフで悪役たちがのさばる→『4』で2代目スパイダーマンが登場してヴィラン軍団と激突…なんていや~な予想が浮かんできてしまったりして。せめて「2代目登場」なく「役者交代で復活」くらいでなんとか!
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Comments
伍一くん☆
さすがアメコミファンだけあって、お見事なレビューですね!
絵も上手いし・・・・あ、プロの絵でしたか。
グウェンは本当に残念。
おめめもパッチリしてやや子供向けにシフトしたスパイダーマンと思っていたので、よもやの展開に唖然としました。
ピーターのとしては、父親にあれだけ誓った責任を放棄して、優柔不断にゆらゆらと揺れたあげく、想いを断ち切ってロンドン行きを決意したグウェンにくっついていこうとしたのがいけなかったんでしょうかね。それにしても代償が大きいです。
Posted by: ノルウェーまだ~む | May 15, 2014 11:35 AM
>ノルウェーまだ~むさん
どうですか! わたし…じゃなくて若かりしころの池上遼一先生の絵は!w
池上版スパイダーマンはその暗さでもっていろんな人にトラウマを残した作品でしたが、今回のアメイジング・スパイダーマン2はかなりその池上版に近かったような…
わたしは原作でああなることを知っていたのでまだ覚悟がありましたが、知らなかった皆さんは本当にショックでしょうね…
そしてピーター君はますますステーシー警部に合わす顔がないわけですが(死んでるけど…)
Posted by: SGA屋伍一 | May 16, 2014 10:25 PM