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May 30, 2014

世界が終わるまでは酒を断つこともない エドガー・ライト 『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』

Wded1これでようやくゴールデン・ウィーク中に観た映画の感想も終了! 『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ』につづく「スリー・フレーバー・コルネット三部作」完結編。鬼才エドガー・ライトの最新作『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』、ご紹介します。

高校時代校内の注目を集めていながら、いまはすっかり落ちぶれた中年男のゲイリー。彼は昔の勢いを取り戻すべく、かつての仲間たちと果たせなかった「パブクロール」をやりとげようともちかける。パブクロールとは町にある12件のパブで、それぞれ1パイントのビールを飲み干すという恐るべきハシゴ酒ラリーのことであった。
しかしなんだかんだ言いながら、かつての悪ガキ仲間たちは全員集まってくる。ゲイリーの傍若無人ぶりにメンバーは辟易しながらも、順調に進んでいくパブクロール。だが彼らは酔っ払った頭の中で、次第に町の人々の様子がおかしいことに気づき始める。

『ショーン~』ではゾンビもの、『ホット・ファズ』では刑事アクションをパロディ化してきたエドガー・ライト&サイモン・ペグ&ニック・フロスト。彼らが今回挑むのは「侵略SF」です。最近あまり見かけないですけど、ごく平凡な田舎町が、いつの間にか宇宙人にのっとられていた…!というジャンルがSF(映画)にはあります。しかしそこは一筋縄ではいかない3人組。爆笑必至の奇抜なスタイルでこのジャンルに挑みます。
それはこれが侵略SFであると同時に、酔っ払いの再生のお話でもあるということ。普通町が宇宙人に支配されてると知ったら矢も立てもたまらずその場所から逃げ出すと思います。しかしゲイリーはなんのかんの理屈をつけながら意地でもパブクロールをやりとげようと躍起になります。アホだ… だが男だ! いつしか観ている側も彼の悲願を成就させてやりたいとビール片手に応援するようになります(たぶん)。
まあ、日ごろ休肝日ももうけず毎晩酔っ払ってる身としては、ゲイリーのことが他人事とも思えなかったりしてね… あそこまで重症じゃないですけど。
自分の手に負えないような大ピンチに陥ったとき、人はどうするでしょうか。立派な人は懸命に努力してその壁を乗り越えようとします。しかしダメ人間はとりあえずお酒を飲みます。何の解決にもならないけれど、とりあえず癒される! 気持ちがいい! 何とかなるような気がする! A○KA容疑者もそんな気持ちでドラッグの深みにはまっていったのではないでしょうか。恐ろしい… お酒もほどほどにしないとな… ぷはーっ ゴキュゴキュbeer ウメーッッ!!

話を映画に戻します。割とおとなしめな役の多いサイモン・ペグ氏。今回は彼のキャリアの中でも特に突き抜けた、言ってみれば「らしからぬ」暴れん坊なキャラを演じています。まるでのび太君がパンクスにでもなったような面白さがありました。
一方相棒のニック・フロストはホモのようにペグのあとについていくキャラが定番ですけど、この度はある事情でことあるごとにペグとぶつかり合います。「ふふ… 成長したな」と思いつつも、やっぱり普段仲良しの二人がケンカばっかりしてるのはなんかさびしいですね。
この二人にいまや英国を代表する人気俳優マーティン・フリーマンと、激渋な『思秋期』という作品で監督としても注目を集めているパディ・コンシダインが脇を固めます。そしてもう一人おっさんがいたのですが、すいません、もうどんな人だったのか忘れちゃいました。

あとこの映画面白いことにメイン劇場の渋谷シネクイント周辺で、「実際にパブクロールをやってみよう!」という恐ろしい企画が行われていました。幸いなことにワタクシもツイッターのフォロワーさんに誘っていただいてチャレンジして参りました。あえなく3件目で轟沈しましたが… なさけなや。
記念に行ったお店の名前と印象を記しておきます。

HUB渋谷店
とりあえずシネクイントに一番近いあたり。パブの中でもかなり安いお店らしく、とにかく混んでて活気がありました。
ホブゴブリン渋谷店
こちらは先のHUBに比べるとゆったりした印象。おつまみもオサレでした。あと日本人より外国人のお客さんが多くてその辺もオサレでした
カタラタス
世界一周したというご夫婦がやってるということで、ビールだけでなく世界各地の変ったお酒がおいてあります。お店の方がとてもフレンドリーで好印象でした

T02200220_0225022511425001368いやあ、パブって奥が深い… そしてお酒って本当にいいものですね! もう一杯飲みたくなってきました!(ダメじゃん!)
『ワールズ・エンド』は七割方上映終わってしまいましたが、まだ残ってるところもあるので気になる方は公式サイトをごらんください。


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May 28, 2014

ぼくの伯父さんのサーカス 「ジャック・タチ映画祭」『乱暴者を求む』『パラード』

081203_173823まだGWに観た映画の感想が終わりません…
一日空いた日にフランス喜劇の巨匠として名高いジャック・タチの特集上映が行われているというので、久しぶりに渋谷はイメージ・フォーラムまで行ってまいりました。同日に話題作『アクト・オブ・キリング』も公開されていたということもあって、30分前に着いたにも関わらず劇場前は長蛇の列。なんとか座れましたけど、スクリーンの前から二列目での鑑賞となりました。
本当はタチの代表作と言われている『ぼくの伯父さん』が一番観たかったんですが、日にちの関係で『乱暴者を求む』『パラード』のプログラムとなりました。あとで知ったら日本の劇場でかかるのは初めてだそうで、こりゃなかなか貴重な機会だったかも。
まずは短編作品の『乱暴者を求む』
チャンピオンがあまりも強いので、対戦相手が決まらないレスリングのタイトルマッチ。「乱暴者を求む」という巧妙な新聞広告につれられてやってきたのは、仕事が決まらない売れない役者だった…
チャップリンやキートンを思わせるモノクロ・サイレント喜劇。ただチャップリンやキートンがキャラクターの面白さで話を牽引していくのに対し、こちらは状況の特異さや、数人のチームプレーで笑いをかもし出していきます。
チャンピオンの隆々たる体格に対し、主人公のやけに腕の長い体形が妙に印象に残りました。

もう一本は遺作となったTV映画『パラード』。こちらはこれといったストーリーがあるわけではなく、とあるサーカスの公演の様子を現場中継のように追った作品。ドキュメンタリーにも近い味わいですが、この作品のために芸人も観客も集めて撮影されているようなので、それともまたちょっと違います。
特筆すべきは芸人志望だったというタチ監督の多彩なパントマイム。こういうのはやっぱり時代や国を越えて笑いを誘いますね。テニスプレーヤーやゴールキーパーのネタなどイメージフォーラム館内でも大うけでした。
この作品はわたしが生まれた翌年(1974年)に作られているのですが、その当時のショーというのがどんなものだったのか知る上でも興味深かったです。とにかくお客さんたちがただボーっと見てるだけではなく、歌い、踊り、ひとつひとつの出し物に楽しそうに参加してるんですよね。
特にほほえましかったのはロデオショーのシーン。いい年のおじさんが奥さんにやめろやめろと言われてるのに、スーツ姿で目をらんらんとさせて跳ね馬にまたがろうとします。結果はもちろん惨憺たる有様でしたが、それでもおじさんの表情の実にすがすがしいこと。
そしてショーが盛り上がっている中、列に幼い少年が一人紛れ込もうとします。もちろん「危ないから」とすぐ遠ざけられるのですが、進行役の目を盗んで再び馬に忍び寄っていきます。
この『パラード』に主人公がいるとしたら、それらサーカスを心から楽しんでいる観客たちなのかもしれません。

Jtpd1「ジャック・タチ映画祭」はひとまず上映は終了しましたが、好評をうけて6月にアンコール上映が決定。他の幾つかの都市でも行われるようです。詳しくは公式サイトをごらんください。ラインナップを目で追っていると、やっぱり『ぼくの伯父さん』シリーズはもとより『プレイタイム』や『トラフィック』も観たくなりますね。むむむ…


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May 23, 2014

アメリカ横断ウルトラクジ アレクサンダー・ペイン 『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』

286pxmap_of_usa_ne_svg父子ネタがつづきます。本日ご紹介しますのはアカデミー候補常連ともいえるアレクサンダー・ペイン氏がモノクロスタイルで挑んだ『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』。GWにようやっとこちらでも公開されたので観られました。つか、GWに観た映画の感想を未だに書いてるというね…

モンタナの電気店につとめるデビッドのところへ、ある日父のウッディが補導されたという連絡が入る。ウッディはまぎらわしい勧誘の広告を宝くじが当たったと思い込み、配当金の受け渡し場所になっているネブラスカ州まで徒歩で行こうとしたのだ。いくら「勘違いだから」と説得しても聞こうとしないウッディ。デビッドは父を納得させるために仕方なく二人でウッディの郷里でもあるネブラスカまで行くことにする。

…というあらすじを書くといかにもロードムービー的ですが、旅にさかれているのは全体の2~3割りくらいですかねえ。あとのほとんどは両親の生まれ育った街で、デビッドが父母の親戚・知り合いと触れ合ったり、いらいらしたりするエピソードに占められています。
そんな映画の主な舞台となっているネブラスカ州、上の地図からもわかるようにアメリカ合衆国のど真ん中です。四方を陸に囲まれてる…ということは別に珍しいことではありませんが、その周りの州も、さらにその周りの州もすべて陸に囲まれているいわば「キング・オブ・陸地」であります。
そんなアメリカ中西部のだだっぴろーい平原・道路や、ぶらぶらしている牛を白黒スクリーンで眺めているのはなかなかに心地良うございました。

思ったのはなんでこの話をモノクロで作ったのか…ということ。とりあえず白黒映像でやると「現代の話なのになんだか昔の映画みたく見える」という効果はありますね。携帯電話とか普通に出てきたとしても。
あとこの映画のテーマである「父と子の交流」みたいなものがこのスタイルに合っているな、という気はしました。お父さんのウッディはなんかボケかかっているようでもあるし、隙を見せるとすぐビールを飲んでるし、とにかく問題児であります。一見家族のことなんか全然気にしてなさそう。でもこの映画の白っぽいぼやーっとした色調のようにはっきりとはわかりにくいけれど、彼にもそれなりに息子たちを思いやる気持ちがある…んじゃないかなあ…と(笑)
そんなぼんやりしたお父さんになぜだか親身になって世話するデビッド(次男)。一般に長男はお母さん子に、次男はお父さん子になる傾向がある気がします。他の映画でいうとちょっとマイナーですが『ロード・トゥ・パーディション』もそうでした。

あとこの映画でもう一人強烈な印象を残すのが一家のお母さん。子供にとって親から一番聞くのがきまずい話といえば、彼らのセックス関連の話だと思うのですが、敬虔なカトリック教徒だというのにその辺の話を臆面もなくべらべらと語りだす。さらに夫をガミガミと叱りとばすは間違えても一向に悪びれないは、関西のおばちゃんと全く一緒だと思いました(関西のご婦人方すいません)。

そんな『ネブラスカ』ですが、終盤が近づくにつれ、そんなわきゃないんだろうけど「お父さんの宝くじが本物だったらいいのにな」という思いがどんどんつのっていきます。果たして奇跡の一発逆転はあるのか? それはご自分の目で確かめてください。
51bdzoliyl__sl500_aa300_…と書いてはみましたが公式サイトの上映一覧見ますともうだいぶ劇場が限られてきてますね(^_^; 気になる方はリンク先をチェックしてみて、厳しければDVD発売までお待ちください。


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May 20, 2014

そんなヒロシに泣かされて 臼井儀人 高橋渉 『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』

Csrb1『ドラえもん』『名探偵コナン』と並ぶ長寿シリーズとなった劇場版『クレヨンしんちゃん』。その「しんちゃん」の新作をかれこれ10年ぶりくらいに映画館に観にいってきたのでご報告します。『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』、ご紹介します。

それはとある休日の出来事だった。一緒に観にいったアニメ映画の影響で、ひろしとしんのすけはロボットの合体フォーメーションを試みる。だがひろしはそれがきっかけでぎっくり腰に。家に戻るもみさえに冷たい目で見られたひろしは、痛めた腰をひきずりながら町内をさまよい歩く。そんな彼の前に、見慣れぬ怪しいメンズエステの店が現れる。勧誘の美女に言われるがまま店内に入っていったひろしは、施術中いつの間にか眠ってしまう。彼が目を覚ましたとき、鏡に映っていたのは完全にロボットと化した己の姿だった…

脚本は才人・中島かずき氏。中島氏も本当にいろいろな顔をもってる方で、まず劇団☆新幹線の座付きであり、巨大ロボットのマニアでもある。アニメ・特撮の脚本も手がけるし、元双葉社の編集で臼井義人氏の担当でもありました。で、今回の『ロボとーちゃん』はそんな中島氏の幾つかの経歴が見事に反映された作品になっておりました。
一方で単なるアニメ・特撮のパロディにとどまらず、「人の自我とはいったいなんなのか?」というテーマにも踏み込んでおります。そもそもロボットというのは本来自我をもって一人でに動くもののことを言います。ガンダムとかマジンガーZなどは厳密にはロボットではなく「乗り物」なんですよね。
ではロボットと人間との違いとはなんなのか? その辺が非常にあいまいになってきます。現時点で最大の違いといえばやはり「生殖能力があるかないか」というあたりなんでしょうが… ちょっと話が横道にそれました。
ある日自分が突然ロボになってしまったら… あなたはそのショックに耐えられるでしょうか? 家族はあなたを受け入れてくれるでしょうか? そういや最近そんな映画を観たばっかりのような… しかしまあそこは『しんちゃん』なんで、ハードSFなら深刻になりそうな話もうっかりちゃっかり楽しく語られていきます。途中まではね… フフフ… 子供向けアニメの映画版とたかをくくっていると、ズズーンとショックを受けることでしょう。

ちなみにわたしが映画館で観たもう一本のクレしん映画というのは、『嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード』。なんでこれかというと、舞台が地元の熱海だったから(笑) こちらは深いテーマとかなんにもないそれはくだらない作品なんですけど、丁寧にロケハンしててギャグもぶっ飛んでて実に痛快だったんですよね。『ロボとーちゃん』や『オトナ帝国』のような感動路線がある一方で、『ヤキニクロード』や『温泉わくわく決戦』のような実にしょうもないタイトルもあるあたりが「しんちゃん」という映画シリーズの奥の深いところだと思います。

話を『ロボとーちゃん』に戻しますと「父性」というテーマも盛り込まれているせいか、子供向けアニメなのにお子さんよりも世のお父さんに向けて作られているきらいはあります(笑) それでも映画館では子供たちも無邪気にケラケラ笑っていたのでまあいいjんじゃないでしょうか。
Csrb2『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』、は確認してませんがたぶんまだ全国の映画館で上映中。日本の父たちよ、いまこそこの映画を観て力強く立ち上がるのだ! チチ!ユレ! 乳!揺れ!

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May 13, 2014

街の明かりが全部消えたら停電 ~ブルーライトNY~ マーク・ウェブ 『アメイジング・スパイダーマン2』 

Spiderman2マイティ・ソー、キャプテン・アメリカ、とアメコミ大作が続く2014年。そして日本でもっとも人気のあるアメコミヒーローが満を持しての登場となりました。『アメイジング・スパイダーマン2』、ご紹介します。一作目の記事はコチラ

リザードとの戦いの後もスパイダーマンとして活躍し続けていたピーター。いまではスパイダーマンもすっかり街の人気者としてNYの人々から愛されていたが、ピーター・パーカー個人としての悩みは絶えない。亡き警部との約束が胸にのしかかり、恋人のグウェンとの仲がギクシャクし始めたり。
そんな折りピーターは旧友でオズボーン社の跡取りであるハリーがNYに戻ってきたことを知る。変わらぬ友情に心和むピーター。しかしこの再会は次なる悲劇の幕開けでもあった。

あらすじに上手に折り込むことができませんでしたが、今回の主な悪役は電気怪人エレクトロ。上の画像は池上遼一氏が昔描いた漫画版のものですが、原作版のデザインもほぼ一緒です。映画版ではもっとスッキリしたデザインで体色もブルーとまるで別のキャラのようにアレンジされております。もともとはスパイダーマンに助けられたことがきっかけで彼に病的な憧れを抱くさえない電気技師でしたが、不幸な事故により電気を操る怪人に変貌。精神的にも凶暴な人格に変わってしまう…という設定になってました。

今回はネタバレ抜きで語るのが難しいので、以下は未見の方は避難されてください。

『アメイジング・スパイダーマン2』のテーマをわかりやすく言うと、「自分のことばっかり考えてる人は手痛いしっぺがえしを食うことになる」ということでしょうか。
スパイダーマンで一貫して語られてるテーマに「大いなる力には大いなる責任が伴う」というものがあるあります。言い換えると「大きな力を持っているのにそれを私欲のために使ったり、責任を放棄しようとするなら相応の罰を受けることになる」ということです。しかしこの信条、考えようによってはかなり厳しいものですよね…

まずエレクトロとハリー・オズボーン。この二人は最初っから力を善用する気などなく、ひたすら自分のことしか考えてないという点ではまさしく悪役にふさわしい。しかし彼らとて望んで力を得たかったわけではなく、ほとんど誰からも愛されなかったかわいそうな境遇のことを思うと、多少は情状酌量の余地を与えてやってもいいんじゃないか?という気もしますが、作品は彼らに一片の救いさえ許しません。
そしてさらに厳しいことにこの掟はヒーローのスパイダーマンにもあてはまってしまうのです。ピーターに課せられてる「責任」とは何か? それは「隣人たちの平和と安全を守ること」であります。スパイダーマンの異名は「あなたの親愛なる隣人」ですからね。
劇中、英国に留学することになったグウェンにくっついてぼくもロンドンへ行く」というピーター。イギリスでもヒーロー活動をすればいい、と彼は考えたようですが、自分の都合で隣人であるNY市民を放り出してしまうということもまた「責任放棄」であったようです。そして彼に臨んだ罰とは…
しかし、しかしですね。好きな人のそばにいたいというのは人として当然の願望であります。まして力も責任もないグウェンがどうしてそのとばっちりをうけなくてはならないのか。大いなる力にともなう責任とは、そこまで重いものなのでしょうか。『アメイジング・スパイダーマン2』はそんな責任の重さというか、力の持つ呪いが際立って目立つ作品でありました。

グウェン・ステーシーの死はスパイダーマンのみならずマーベル世界における大きなトラウマのひとつです。一作目での彼女の存在感や、公開直後の「楽しかった!」というつぶやきから今回はてっきり回避されたのかと勝手に安心してたらもろにそのまんまでしたねえ… ふうううう… 
エピローグの少年のエピソードで多少持ち直しはしましたが、アメコミ映画でこんなにガックリきたのはわたし初めてですよ。グウェンがあの場に向かったせいで大勢の人が救われた。そこへ向かえば死ぬということがわかっていたとしても、彼女はきっと決意を変えなかったのではないか… そんな風に考えて自分を慰めてはいますが、それでもやはり割り切れない何かが残ります。

両親、育ての父、恋人、親友… 大切な人を次々と失っていくピーター。彼に残されたものはもうそれこそメイおばさんとNY市くらいのものです。さびしげに「やっぱりこの街にはぼくが必要みたいだね」とつぶやくマスクの下で、ピーターは果たしてどんな顔をしていたのでしょう。
Img00618『アメイジング・スパイダーマン』シリーズはすでに公開前から『3』『4』が製作決定しております。そしてその2作品の間にヴィランをフィーチャーした『ヴェノム』『シニスターシックス』というスピンオフも製作予定。
主演のアンドリュー・ガーフィールドの契約が『3』までということを考えると 『3』でピーター死亡→スピンオフで悪役たちがのさばる→『4』で2代目スパイダーマンが登場してヴィラン軍団と激突…なんていや~な予想が浮かんできてしまったりして。せめて「2代目登場」なく「役者交代で復活」くらいでなんとか!


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May 09, 2014

いかにして私は紅白腹巻の英雄を愛するようになったか アンソニー&ジョー・ルッソ 『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』

Img00611『アヴェンジャーズ』でひとつの頂点を迎えながらも、引き続き力作を送り続けるマーベル・シネマティック・ユニバース。この度そこからまた長く語り継がれるであろうヒーロー映画が誕生しました。第二次大戦時に作られた「超人兵士」の活躍を描く第二弾『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』、ご紹介します。ちなみに第一作『ファースト・アベンジャー』の記事はコチラ

70年の眠りから覚まされたキャプテン・アメリカことスティーブン・ロジャース。未知の軍勢との戦いの後も、彼は軍に籍を置き「アメリカ」のために働き続けていた。だが強引に他国の領土に踏み入る任務や、ますます増強されていく軍備に、スティーブはいつしか悩みを抱くようになっていく。
おりしも上層部に反抗的だった直接の上司ニック・フューリーが何者かにより襲撃される。本当の敵は誰でどこにいるのか。キャプテン・アメリカの周囲で世界を揺るがす大いなる陰謀が、静かに進行し始めていた…

わたしがキャプテン・アメリカを認識したのは90年代中ごろに出版された日本語版『X-MEN』の5巻のエピソード。第二次大戦時ロシアでの陰謀を食い止めるためにウルヴァリンと共に戦う、というお話でした。ジム・リー描くところのアートは非常にかっこよかったものの、頭にちっちゃな羽が生えてて、紅白の腹巻きのような模様があしらわれいるキャプテンのデザインは、正直ちょっと笑えました。
その後幾つかのコミックで彼を見かけましたが、最初のイメージはなかなかぬぐえず。それが急速にひきつけられるようになったのは、やはり2011年の『ファースト・アベンジャー』と、邦訳コミック『ウィンターソルジャー』からでした。
この二つの作品はキャプテン・アメリカの持つ優しさと哀愁を叙情性豊かに描き出し、彼は一躍わたしにとってもっとも重要なヒーローの一人となったのでした。

で、今回の映画版『ウィンター・ソルジャー』です。
はっきりいっこの度の作品、目新しいものはそれほどないんですよね。様々な先達へのリスペクトを集大成して出来た映画といってもいい。しかし作品の各所にスタッフの熱い思いがビシバシとほとばしっておりました。
まずアクションですが、やたら銃をぶっ放したり、ガチャガチャ動き回って画面が不明瞭な作品が多い中で、『ウィンターソルジャー』は誰が(何が)どのように動いているのか非常にクリアになっておりました。
そして巨大な船やビルを背景に、ヒーローたちが縦横無尽に駆け巡り、稲妻のような速さで拳を繰り出し続けます。これ!これ!これ!こそが映画におけるアクションの醍醐味ってやつではないでしょうか。

そして面白いことにこの作品、牧歌的なムードさえあった第一作とはまるで違う雰囲気なのですが、そういうつくりでありながら見事にふたつでひとつの作品として成り立っています。
いろんなところで語られてるところですが、彼が目覚めたとき、単純で純粋な青年だったアメリカはかつての姿とは著しく変っておりました。世界で最も恐るべき国家として、数々の汚れ仕事に手を染めております。
じゃあ自分は21世紀においてなんのために戦うべきなのか? キャプテンは苦悩しますが、すぐに答えを見つけます。70年もの時が経てば人も時代も国も変って当然というもの。しかしそれでも彼はなおも変らぬものがあるということを証明するために戦い続けます。
冒頭で裏仕事をしているキャプテンの腹には、例の紅白模様はありません。それはまあ単純にステルス仕様で模様があったら目立つからなんですが、同時にキャプテンの本来の姿ではないことをも表しています。
しかし自分のなすべきことをはっきりと見出した時、キャプテンは血の赤と純潔の白を今一度腹に刻み込みます。本来ヒーローにとってのマスク・コスチュームというのは正体を隠すためのものです。しかしこの世界ではどうやらキャップの素顔はみんなにはバレバレのようなので、衣装にそういう意味はありません。彼が衣装を身にまとうのは「これこそがアメリカの本当の姿なんだ」ということを知らしめるための、一種のデモンストレーションなのですね。

あと、わたしが映画版のキャプテンにひかれるのは、先も述べましたが彼がどこまでも優しいから。信じた人がどれほど姿を変えようとも、彼自身は変らぬ愛情を注ぎ続けます。まさに「タフでなければ生きていけない。タフなだけでは生きている意味がない」、その言葉の通りに。
そのためにズタボロに傷つきながらも進むことをやめないキャプテンの背中に、わたしは滂沱の涙と鼻水を噴出し続けたのでした。

Img00632いきなりこれから観ても真価がわからない上に、恐らく残りあと一週間という上映期間ではありますが、はっきり言いましょう。

こいつは… 観ないと損するぜ?

『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』、ただいま全国の映画館で絶賛公開中であります!!!!(鼻血)

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May 07, 2014

インビジブル・アフェア ジョニー・トー 『名探偵ゴッド・アイ』

Mge1映画では『コナン』が、ドラマでは『シャーロック』が注目を集めていますが、いつの世も人は名探偵が好きなもの。今日は中国の鬼才ジョニー・トーが生み出した風変わりな名探偵をご紹介します。『名探偵ゴッド・アイ』、まずはあらすじから。

女性刑事ホーは、ある事件で上司から盲目の探偵ジョンストンのあとをつけるように命令される。ジョンストンの行き先を追って、警察は掠め取るように犯人を逮捕。彼の推理能力に感嘆したホーは、報酬と引替えに行方不明となった学生時代の友人を探してくれるように依頼する。

原題は『盲探 Blind Detective』。主演がアクションもこなすアンディ・ラウなので、てっきり座頭市のように超感覚で悪者たちをばったばったとなぎ倒すのかと思ったら、これがてんで弱い。凶悪犯に追いかけられるとこけつまろびつしながら、ひたすらホーに助けを呼び求めます。ハンデがあるからしょうがないとはいえ、はっきり言ってかっこ悪い(笑)
では変りに探偵としての能力は抜群なのかというと、これもかなり適当…なように見えます。なぜかというと捜査の途中で意中の美女を追いかけたり、おいしいものをやたら食べてたりするので。それでも気がつけば事件を解決しているので、やっぱり探偵としては一流なのかもしれません(脚本の力技のような気もしますが)。
ちなみにジョンストンの推理方法というのは、とにかく被害者や加害者の気持ちになりきること。彼が思いを巡らすと事件の関係者が亡霊のように周りに現れる映像はなかなか面白うございました。

そんなわけで先に観たジョニー・トー作品『ドラッグ・ウォー 毒戦』と比べるとあまりのギャップに驚かされました。あっちにもユーモアは感じられましたがひたすらブラックで、かえって作品の非情さを際立たせるように使われていました。
対して『ゴッドアイ』はひたすらハチャメチャでスラップスティック。恐らくジョニーさんが評価されてるのは『毒戦』のようなシリアスな映画なのでしょうけど、馬鹿馬鹿しいものが好きな者としては『ゴッドアイ』の方がツボにはまりましたw

そんなハチャメチャさに花をそえているのがヒロインのホー刑事。落ち着いてみれば整った顔立ちをしているのですが、とにかくせわしなく暴れまわっているので、あまり「美人」という気がしません。日本の刑事物でいうと『あぶない刑事』の浅野温子さんに近い雰囲気があります。ジョンストンの無茶な要求で5、6人の女性に代わる代わるなりきるシーンがあるのですが、そのくだりでぶん殴られたり、階段から転げ落ちたり、タトゥーまで入れさせられたり… まことに気の毒なんですが同時に爆笑させられました。刑事も大変だけど女優も本当にきつい仕事ですよね~
あと女心に無頓着な主人公と、健気で三枚目?な女性との組み合わせはチャウ・シンチーの『食神』『少林サッカー』とも似ています。
Mge2そんな『名探偵ゴッド・アイ』ですが、もうほぼ劇場公開を終えて来週にはDVDが出ます。興味のある方はアマゾンかレンタル店で探してみてください。気分が滅入ってるときなどに観ると意外と元気が出てくるかもしれません。


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