ブレイク・ザ・ブロック フィル・ロード クリストファー・ミラー 『LEGO® ムービー』
すべてが最高! みんないい感じ!
最初に予告を見た時は「なんじゃこりゃあああ!?」と思いましたが、早くも今年度№1かもしれない映画と出会ってしまいました。全てがレゴで出来た世界で繰り広げられる、レゴたちの大冒険! 『LEGO® ムービー』ご紹介します。
レゴの町で建設作業員として暮らすおばかで陽気なエメットは、仕事が終わったある晩、現場で怪しい女の子を見かける。彼女に気をとられて転落したエメットが目を覚ましたとき、背中には奇妙なパーツが付いていた。その時からエメットはレゴ世界を支配する「お仕事社長」に狙われる身となった。戸惑うエメットは現場にいた女の子「ワイルドガール」に助けられる。彼女が言うにはエメットは世界の救世主で、背中のパーツはお仕事社長の秘密兵器に対抗する切り札らしいのだが…
わたしがなんであきもせずこんだけ映画を観ているかというと、ひとつには今までに見たことがなかったものを、あるいはこちらの上回る何かを見せてくれるかも… そんな期待があるから。そしてこの『LEGO® ムービー』はその期待に十分に応えてくれた映画でした。
まず「すべてがレゴでできた世界」。いままでこんなの見た事ないです。そしておもちゃのレゴの背景を活かして、近代都市から西部劇の世界、メルヘンの国と次から次へと楽しい場所へわたしたちを案内してくれます。まるでデ○ズニーランドを巡っているような気分にさせてくれます。
ディ○ニーといえばこの『LEGO® ムービー』、初期のピクサー作品に満ちていた「しっちゃかめっちゃか精神」に満ちています。劇中で「なんでここにバットマンがいるんだ!?」というセリフがありますが、この言葉がこの映画の性質をよく表しています。それこそ子供が遊びで脈絡もなく場違いな人形を寄せ集めたみたいに、時空を越えたコラボレーションが展開してるんですね。ガンダルフみたいな老魔術師や、スーパーマン、グリーン・ランタンといったJLAの面々、レトロチックな宇宙飛行士やマイリトルポニーのバッタモン、善悪二つの顔を持つポリスマン… 実在・架空・有名・オリジナルと、画面の橋から端までにぎやかな連中がひしめいております。そして映画ファンであればあるほど楽しめるベタなパロディが満載。気持ちよすぎて頭がおかしくなりそうでした(笑)
そしてそんな超キャラ立ちしたやつらの中にあって、主人公をつとめるのが没個性的な肉体労働者というのがまたいい… なんせ同僚からも「こんなやついたっけ?」「個性ってもんがない」と言われちゃうくらいシンプルなキャラです。そんな将棋の歩みたいなやつが有名人どもを押しのけて縦横無尽の活躍を見せるのですから、『美味しんぼ』じゃありませんが「うほーわしをこれ以上喜ばせんといてやー」と快感のあまり悶絶しまくり状態でした。
と、こんなにまでに無茶なサービス精神に満ちた本作ですが、それだけじゃないんです。単純なバカ映画としても間違いなく楽しめる一方、教育とか「理想の社会」に関するふかーいテーマもこめられているのです。
ご存知の通りレゴには一応マニュアルがあります。図の示す通りに作るなら箱の絵に沿った完成品が出来上がるわけですね。しかしそれはあくまで「ひとつの理想形」にすぎない。子供たちはそれを踏まえた上でさらに自由に発想を広げていくことができるわけです。大人たちはつい子供たちを理想の型にはめてしまいがちですが、事細かに指示することや禁止することよりも、お手本を示しながら「自分で考える力」を伸ばしていくことこそが真の教育といえるのではないでしょうか。子も妻もなく教職にもついてないわたしがこんなことを言うのもアレですけど
で、こっからは若干ネタバレですが…
そんな深いテーマをどうやってレゴで示すのか?というとこれがチェコアニメのシュバンクマイエルを彷彿とさせるような思い切った実験を試みてまして。これまたこちらの想定をびょびょーんと越えていく超絶技巧なクライマックスでした。とにかく本当にすごい! とにかく騙されたと思って観て欲しい! 年に一回か二回会えるかどうかの、そんなごん太な作品でありました。
『LEGO® ムービー』はアメリカでは大ヒットを飛ばしているのですが、日本では『アナと雪の女王』や『ドラえもん』とぶつかったのが災いして、興行はあまり芳しくない模様。納得…いきませんよ!
世界は再生と破壊を繰り返しながら進化していく。硬直化した思想や変化を嫌う姿勢は何も生み出さない。この映画はそのことをわたしたちに教えてくれるのです(たぶん)
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【ストーリー】
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THE LEGO MOVIE
2014年
アメリカ
100分
コメディ/アドベンチャー
劇場公開(2014/03/21)
監督:
フィル・ロード
クリストファー・ミラー
原案:
フィル・ロード
クリストファー・ミラー
脚本:
フィル・ロード
クリストファー・ミラー
声の出演:
クリス・プ...... [Read More]
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Comments
この傑作がヒットしないなんて、どうかしてますね。
私も予告編を見た時には食指が全然動きませんでしたが……。
大人の胸に刺さる映画ですね。
Posted by: ナドレック | April 02, 2014 11:01 PM
>ナドレックさん
まあ日本はただでさえキャラものが多い国なので、なかなかいまさら外国のキャラが割り込むのは難しいというか… でもレゴはずいぶん前から浸透してるのにねえ
初めは「子供が喜べばいい」「バットマンが出るから観よう」くらいの気持ちでしたが、見事に一本取られました!
Posted by: SGA屋伍一 | April 03, 2014 10:11 PM
よおし、俺も歌うぞ
♪スケベがサイコー
Posted by: ふじき78 | April 09, 2014 03:12 PM
>ふじき78さん
それはレゴRムービーじゃなくて18Rムービー
Posted by: SGA屋伍一 | April 10, 2014 10:36 PM
騙されたつもりで見てきました(笑)。
良いものを教えて頂きありがとうございました。
アナ雪より感動しましたよ!
Posted by: かに | April 14, 2014 05:49 PM
>かにさん
だまされてくださってありがとうございます(笑)
アナ雪はアナ雪ですばらしい作品ですが、やっぱり予定調和の限界みたいなものも感じたりして
こちらは結末も含めてすべてが想定を超えていきました…
Posted by: SGA屋伍一 | April 15, 2014 08:46 AM
英語版を見ましたが、これは日本人こそが見るべき映画だ!
と思って日本での公開はどうだったのか調べてみると、
日本版の予告編が最悪!!(なんで主人公の声が子供???)
寒すぎるギャグにも、「はー(怒)?????」ってなりました。
字幕での上映も少なく、予告編見てげんなりした人たちは吹き替え版を見たいなんて思わなかったでしょうし、予告編と本編の吹き替えがまったく別物なのもすごく違和感がありました。まるでわざと日本では失敗するようにやっているような…。
日本人の中には自分のことを普通だと思っていて、何も考えずにただマニュアルや規則、常識などにしたがっているだけのいる人が多いと思います。
でも、普通だと思い込んでいる日本人達が自分の頭で考えて行動し始めれば、ものすごいことができちゃうのに気付いていない、(いや、気付かないように仕向けられている―マニュアルや規則に従うことを教えるだけの教育や、あの、映画の中に登場するばかばかしいテレビ番組や歌の様に…。)のが私は本当に悔しいんです。
日本は小国ながら大国ロシアに勝ったこともあるし、戦後は敗戦国から世界の大国アメリカに次ぐ第2位の経済大国へと成長しました。そして、世界中の人々から日本人や日本文化は尊敬されており、好意を持って迎え入れてくれます。(海外在住なので肌で感じています。)
こんな国の国民が本気を出すのを恐れている「何か」がこの映画を見て何か行動を起こす日本人たちが増えないように邪魔してる、と考えずにはおられず、一人でムカついています。
私は海外に来て自分が融通の利かないマニュアル人間であることに気付き、このままではいけないと思って、自分で深く考えることを学ぶようになりました。そして、平凡で何の役にも立たないと思っていた自分でも何かの役に立てるかもしれない、そう思えるようになって来ました。
日本の皆さん、日本の、日本人の、そしてあなた自身の素晴らしさに本当に気付いてください。そして、自分の頭で深く考え、行動を起こしてください。そういう人達が増えれば本当に素晴らしい世界になると信じています。
長文失礼しました…。
Posted by: 納得いきません! | May 31, 2014 10:13 PM
>納得いきません!さん
熱いご意見ありがとうございます。
まああの予告はなんとかして子供たちに興味をもってもらおうという配給の苦肉の策だったんではないでしょうか。上のコメントにも書きましたが日本では海外アニメの新たなキャラクターが人気を得るのは非常に困難なので
ただこれだけ怒ってる人がたくさんいるところを見ると、やはり作戦としては非常にまずかった、と言わざるを得ません
わたしなどはろくに海外も出たこともないので偉そうなことは言えないのですが、日本が世界で比較的好感度が高いという情報はちらちら見聞きしております
この映画のエメットのように優しい心で世界の人々と向き合い、自由な発想で時代を前進させていきたいものです
Posted by: SGA屋伍一 | May 31, 2014 10:51 PM
SGAさんこんばんわ♪
自分もようやく鑑賞しましたが、SGAさんが絶賛してた通りこれは素晴らしかったですねっ♪妥協していないレゴ尽くしの高クオリティ、有名レゴキャラのユーモアある言動、そして後半で明らかになる父と子のレゴを通した想い。全ての要素がレゴブロックのようにがっちり組み合わさっていて、笑って泣けてな充実した鑑賞を堪能できた気がします。自分もこれは今年のベスト入りしちゃうかなぁ~w
でも公開時はアナとドラえもんの陰に隠れてしまってたようで、ホント勿体無いですよね。公開時期をずらしていれば注目度も高まってたんじゃないかと思うだけに不運ですね・・^^;
Posted by: メビウス | August 15, 2014 08:29 PM
>メビウスさん
一押しのレゴムービー観てくださって嬉しいです! 感激っす!
みなさんけっこう「泣けた泣けた」とおっしゃっていて、それはそれで嬉しいんですが、わたしとしては泣かせのあとに全てをぶちこわすような痛烈なオチがまっているところがまた好きです(^_^;
自分が観た時はけっこうお客さんが入っていたのに、全体としては「不入り」とはまことに摩訶不思議。いま『ヒックとドラゴン2』の公開が危ぶまれていますが、なにか手を打たないと本作も続編はDVDスルーとなってしまうかも…
Posted by: SGA屋伍一 | August 18, 2014 05:58 PM