0.090909… 中村尚儁 片岡翔 『1/11 じゅういちぶんのいち』
短編上映などでここ数年追いかけてきた片岡翔監督が、ついに商業長編で監督デビュー。勝手に応援していた身ではありますが、なんつーかこう、じ~んと来るものがありますなあ。そんなわけでちょっと離れたベルマーレの本拠地・平塚まで観にいってまいりました。『1/11 じゅういちぶんのいち』、ご紹介します。
とある町の高校の門で、毎日チラシを配る二人の生徒がいた。二人はサッカー部キャプテンのソラとそのマネージャーの仁菜。部員の足りないサッカー部になんとか人を集めるために、ソラと仁菜は地道に活動し続けるが、なかなか11人の枠は埋まらない。そんな二人を苦々しい目で見る元野球部の凛也。演劇部から借り出されてきた気のいい下級生の俊。ソラのまっすぐな思いが、いつしか彼らや他の部活の生徒たちにまで不思議な影響を及ぼしていく。
原作は『ジャンプスクエア』連載中のコミック。少年誌連載のスポーツ漫画というと迫力満点の試合のシーンが多いものですが、この映画ではほとんど試合のシーンはありません。ソラと彼に関わっていく人たちの心情を丁寧に追った作品となっています。
タイトルの『1/11』はもちろんサッカーチームの中の1名、という意味が込められていますが、この映画の主要人物がちょうど11名であります。ソラ、仁菜、凛也、俊、ソラにつきまとう四季、仁菜の両親、演劇部の部長とその親友、カメラを愛する千夜子、そして四季の母。出番の多い少ないはありますが、彼ら一人一人にスポットライトがあてられていきます。
メインのサッカー部のお話が、演劇部やカメラ女子のキャラにまで連動していくところが面白いですね。様々な高校生の話といえば『桐嶋、部活やめるってよ』がありましたが、『桐嶋』の各グループは連動するというよりも孤立していたり対立したりしてましたからね(笑) その辺の違いを比べながら観るのも一興かと思います。
さて、サッカー部のメインとなる男子たちはいずれも挫折を経験しています。いつもニコニコ笑って超然としているソラですら、一度サッカーから遠ざかっていた時がありました。しかし彼らを思いやる女の子たちに励まされて情熱を取り戻していきます。この恋というよりも純粋な思いやりが観ていて心地よかったです。
一方女子たちも単に応援するだけではなく、並行しながら自分の目標を追い求めていきます。そんな女の子たちの力強さに心打たれるというか、頭が下がる映画でした。
個人的に好きだったところは舞台となる学校の風景。まわりにあんまり建物がなくて山の中にぽかんと建ってるような感じなんですよ。そんな校舎に夕暮れ時や暗い時間、少年少女たちが一生懸命何かに打ち込んでいる姿が、微笑ましかったり懐かしかったり。
あと片岡監督は子供を撮るのが上手だな、と前から思っていましたが、本作品でも子供時代のソラとその友達のシーンはじんわりくるものがありました。ボールを抱える彼らの姿が氏の代表作『くらげくん』を思わせるところもあり。
というわけでわたしのようなオッサンにも十分心に訴える作品でありましたが、特に十代や二十代初めの若い人たちに観てほしいです。夢をかなえる途中で壁にぶつかったとき、きっとこの映画は何らかの励ましになると思うので。
余談ですが先日弟が日本代表にもなったU選手のチームメイトと飲んだそうです。彼から聞いたところによると、U選手は超人的なテクニックやスピードがあったわけではないけれど、「ここで決めなくてはならない」という時に必ず決めてくれる、そんな力があったのだとか。とてもかなわないと思えるような才能にあうことがあるかもしれないけれど、やっぱり最後にものをいうのはそういう「意思の強さ」なんじゃないかな…と。
ちょっと脱線した気もしますけれど、『1/11 じゅうぶんのいち』、ぜひ多くの人に観てほしい作品です。現在全国の映画館で上映中ですが、わたしの観た平塚では来週25日までとなっていますので興味を持たれた方はお早めに。上映館一覧はコチラを参照ください。
Comments
伍一くん☆こちらにも
今度は2つとも上手!ソラくん似てるわー
そしてさすが伍一くん。確かに登場人物も11人なんだね。
登場する女子も家族も友達も、それぞれが尊重しあって支え合って眩しいほど素敵だったね。
なんだか片岡家を見ているよう。そういえばあそこは11人・・・以上いるっ!!
(先ほどのコメント、うっかりポストにしちゃいました・汗)
Posted by: ノルウェーまだ~む | April 17, 2014 10:18 AM
>ノルウェーまだ~むさん
お褒めの言葉どうも。主役の彼、嵐の二宮君や相場君に似た雰囲気があるような。
普通の高校生の映画だとどうも恋愛面が重視されて「あなたのことが好きッ!」とか言い出すもんですけど、みんな控えめ控えめでそれがよかったですね~ わたしの高校生活ももちろん控えめでした
(^^;
ところで最近スパムコメントがものすごいので認証制にしたのですよ。すぐ反映されなくてすいません…
Posted by: SGA屋伍一 | April 17, 2014 10:37 PM
> しかし彼らを思いやる女の子たちに励まされて情熱を取り戻していきます。
これだ。遥か昔の俺の青春に足りなかったのはこれだ。っつか、男子校だったから思いやる男の子に励まされるのもちょっといやじゃん。映画は良かった。でも、俺自身がダメだ。
Posted by: ふじき78 | May 07, 2014 12:45 AM
>ふじき78さん
ものは考えようですよ。「自分は男子校だったから女子と縁がなかったのだ。これが共学だったらもててもてて仕方なかったはず」と考えれば… ちなみにわたしも高校時代はクラスに男しかいませんでした。ふううううう
Posted by: SGA屋伍一 | May 07, 2014 09:45 PM
こちらにもお邪魔します♪
自分は片岡監督の監督作品はこれが初めてで、彼の得意とする手法と言うか『良さ』がまだ分からなかったのため原作漫画と照らし合わせた観方になってしまったのですが、それでもその原作の方の心温まる人間模様などが雰囲気損なうことなく描かれていて、思ってた以上に良い内容だったと思いましたね(アニメとか漫画の実写は劣化版も多いので・・^^;)。
そいえばまだ~むさんが、片岡監督は無音の描写に定評があると仰ってたのですが、子供撮りも秀逸なんですね。自分も注目したい監督さんので、今から必死こいてリサーチ中ですw
Posted by: メビウス | September 10, 2014 09:39 PM
>メビウスさん
おお、原作漫画も読まれたんですね。わたしも興味あるんですがまだ手を出してなかったりして(^_^;
この映画はいまのところ原作ファンからの批判はほとんど聞きませんね。インタビューで読みましたがニナちゃんがお父さんにお願いするところ、原作では土下座してるそうで。でも映画では普通に頭下げてるのが自然でよかったと思います
この映画はスクリーン数わりと限られてたんですが、いつか全国拡大系でバーンと上映されてほしいですね。片岡作品
Posted by: SGA屋伍一 | September 11, 2014 10:22 PM