適当イタリア人論 マルコ・ベロッキオ 『眠れる美女』
遅れ単館系映画専門劇場ジョ○ランド沼津、今年初の鑑賞作品はイタリアの名匠ベロッキオが描く社会派作品。『眠れる美女』、ご紹介します。
2009年、イタリアでエルアーナという女性の尊厳死を巡り、国中で議論が巻き起こる。議会で政党同士が争い、街路をデモ隊が更新する中、生きる力のない女性をめぐり悩み続ける人々がいた。愛妻の望みのため、彼女の生命維持装置を切った政治家とその娘。自殺を図った麻薬中毒者を看病する医師。そして植物状態の娘を見守り続ける元女優… 彼らの思いをよそにエルアーナを巡る論争はますます激しさを増していく。
タイトルからてっきり『眠り姫』みたいなファンタジックなお話かと思ってました。あるいは川端康成のエッチな小説の映画化かと。しかし実際には現実に起きた事件を元にしたどシリアスな映画でありました。川端というよりむしろテーマ的には森鴎外の『高瀬舟』でしたねー
イタリア男性って四六時中女子のお尻をおっかけているような軽~いイメージがあります。あるいは人気漫画『ヘタリア』が広めてしまった「世界一のへたれ」みたいな印象。
しかしイタリア関連の映画・漫画を読んでいるとそれとはまた違った面影も浮かんできます。『人生、ここにあり!』、『NINE』、トルナトーレ監督の一連の作品、『ベニスに死す』、『カラバッジョ』、『クレオ物語』、『テルマエ・ロマエ』、『ジョジョの奇妙な冒険』第五部…
ちょっと「それはどうか?」という作品も混じりましたが、これらの作品の主人公たちは常に自分の理想を追い求めてもがき苦しんでおります。「自分は何を果たすべきか?」「愛する人のために何ができるのか?」わき目もふらずそんなことばかり考え続けてます。そんで悩んでばかりでも暗い、というのとは少し違うんですね。彼らが悩むのは基本的に前に進むためなので。そんな風に悩むのと同時進行で、ちゃっかり美女をコマしちゃってるあたりも実にイタリアンらしい。
あとこれは男女両方に言えることですがイタリアの人たちは基本的にみな信心深いですね。信仰の教義と法律をめぐってこれほど熱くなることって日本ではまずないんじゃないでしょうか。まああんまり熱くなりすぎるとけが人も出てきちゃってそれはそれで問題ですけど。
『眠れる美女』ではそうしたラテン系の「熱さ」もよく描かれてる反面、「尊厳死」に関わるお話だけに彼らが直面する「無力感」も強く伝わってきます。それで彼らがどうするかというと、また引き続き悩み続けるわけです。イタリアの男性に禿頭が多いのはそんな風に悩んでばっかりいるからかもしれませんね。…すいません。
『眠れる美女』はまだ下高井戸、秋田、広島、佐賀などで上映予定。イタリアに興味がある方に特におすすめです。ただピザとかパスタなどは全く出てきませんのでその辺は期待なさらぬよう。
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