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January 22, 2014

零戦もやもや 山崎貴 『永遠の0』

Img00499今日は語るのが難しい映画だな~~~
百田尚樹氏の手によるベストセラーを、『ALWAYS』などで知られる山崎貴監督が映画化。『永遠の0』、ご紹介します。わたし原作は未読なのであくまで映画オンリーの感想ということでよろしくお願いします。

2004年、司法浪人中の佐伯健太郎は祖母の葬儀の際、自分の実の祖父が第二次大戦中、零戦のパイロットとして「特攻」で亡くなったことを知る。興味を抱いたジャーナリストの姉に強引に連れ出される形で、健太郎は祖父・宮部久蔵を知る人たちを訪ねて歩くことに。宮部と同じ隊にいた老人たちの多くは、彼のことを「海軍一の臆病者」とののしった。宮部は本当に臆病者だったのか。もしそうなら、なぜ彼は最後に特攻を選んだのか… 健太郎は次第に一度も会ったことのない祖父に親しみを覚え始める。

「特攻隊」について語るのって、腫れ物に触るのと同じくらいおっかなびっくりであります。ある人たちは「祖国のために身をささげた英霊」と語るし、ある人たちは「国によって洗脳された狂信者」と言います。わたしはそのどちらでもないと考えます。当たり前のことですが、彼らもまた我々と同じ感情を持つ人間であり、誤った方向へ進んだ国家の犠牲者…と思っております。
では彼らが100%犠牲者かといえばそれもまたちょっと違う。戦争に加わったということは彼らもまた多くの人を殺したということだし、いくら国が狂っていても不戦を貫くことも出来たはず。
ただだからと言って声高に責める気にもなれません。流されやすい私があの時代日本に生きていたら、飛行気乗りにはなれずとも軍国主義に染まっていったであろうことは容易に想像がつくので。そんな風に特攻隊について考えると、二つの違う思いが行きつ戻りつするのでありました。

映画の中で健太郎の友人が特攻隊について「俺たちには関係ないし」と言います。まあ実際ほとんど関係ないんですよね。彼らより20ほど上のわたしだって似たようなものですし。ただこの映画を見て若者たちが「国というのは狂うこともあるし、そうなったら矢面に立たされるのは自分たちなんだ」ということを感じ取ってもらえればいいと思います。
敵と道連れに死ぬことを賛美し、生きて帰ってくることを「臆病」とののしるような組織は、いかに軍隊といえどやはり狂っております。明日明後日日本がそうなるとは思いませんが、近隣諸国の情勢や現政権の方針を見るとそういった兆候が見え隠れしているような。
映画『永遠の0』はお涙頂戴的な描写も多かったですが、戦争というものの異常性もはっきり示していたので、特に今の時代大いに意義のある作品だと思いました。はい。

…といかにもまじめぶって語りつつも、やっぱり零戦のドッグファイトを見ているとついワクワクしてしまうあたり自分も相当の困り者だと思います…
この辺は男子によくある問題ですね。戦争はいけない! 戦争反対!と叫びつつも同時にかっこいい兵器に見とれてしまったりする。
この映画では最新のCGを使って当時のプロペラ戦闘機がいかに大空を舞ったか、対空砲火をかいくぐって戦艦に迫って行ったか存分に見せてくれます。こういう戦闘シーンは今までなかったものではないかと。現代の空戦を描いた作品だったら他にもあるでしょうけど、マッハで飛ぶジェット戦闘機の戦いはかなり違うものでありますし。
『風立ちぬ』の堀越青年も目をキラキラさせて戦闘機の開発に夢中になっておりましたが、ワクワクしつつもそういったことに後ろめたさも感じるのも確か。海洋堂の名物専務さんが以前「戦車のプラモを心置きなく楽しむために世界中から戦争をなくすというのはどうか」とおっしゃってましたが、まったくその通りだと思います(^ ^;

構成で印象に残った点をひとつ。以下ラストまでどんどんネタバレしていくのでご注意ください。
この映画は宮部久蔵という男の人物像を、周囲の人間の証言だけで語っていきます。まあなんとなく作者の意図や宮部さんの思いは想像つくんですが、本当に心の奥底で何を考えていたまでかはわからない。加えて宮部さんもあまり口数が多くなかったりします。何かとしゃべらせたがる邦画が多い中で、そこはよく我慢したと思いました(代わりに周りの人間はべらべらしゃべりまくりますが)。
「周囲の人間の証言で描いていく」ということは、この映画では宮部さんの周りにはいつも誰かいることになるわけです。そんな宮部さんが一人になるおそらく唯一のシーンが、ラストの特攻の場面。
ここでもっと感動を煽ろうとするなら、国の妻子のカットバックでも入れて、岡田君にほろほろ涙を流させて、「○○、○○、今行くぞーッ!!」って叫ばせると思うんです。
しかしなぜか宮部さんはここですごく楽しそうに零戦を操り、最後の最後で「へやっ」と笑うのです。「なんとなくそうしちゃった」という見方も出来ましょうが、この笑顔については幾らでも考えようのあるシーンだと思いました。

Kztn1_2『永遠の0』は現在全国の映画館で大ヒット公開中。なんというか、素直に「観にいって!」とすすめづらい作品です。自分の判断で観にいって自分の判断で評価してください。
しかし最新の「はやぶさ」を扱った作品が3本そろってこけたというのに、いまどきゼロ戦を扱った映画が2本もヒットするなんて、世の中本当によくわからないですね…


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Comments

伍一くんっ☆
そうですかー、残念でしたね。
私は最後の「へやっ」があってこそこの映画が素晴らしいと思った口です。同時に岡田君の演技もすごい!って思ったのでした。
でなければ、最後のほうで春馬くんが号泣したのが、あまりに安易でひどい演出なので、危うくこの映画にダメダメ映画の刻印を押すところでした。

私が思うに、『あれだけ「生きて帰る」といいながらも特攻に志願した』理由がそこに込められていたなーと。
百田さんの小説のラストにはどんな風に書かれていたのか、読んでみたくなりましたよ。

Posted by: ノルウェーまだ~む | January 24, 2014 10:34 AM

>ノルウェーまだ~むさん

いや、書き方が悪かったのかもしれませんが、わたしも最後の笑顔のシーンが良かったと思ってますよ。その前の春馬くんの泣きがくどかっただけにね(笑) ちなみにわたし観ている間ずっと彼を生田斗真君だと勘違いしておりました。あはははは(^^;
うちに親父が買ってきた原作本があったんですが、読もうかと思ったらこないだ帰省に来た弟が東京に持っていってしまいました。むーん ラストだけ立ち読みしようかしら…

Posted by: SGA屋伍一 | January 25, 2014 10:49 PM

うーん、なんか、この映画を誉めたり、けなしたりする事で何かに加担してるように判断されちゃうのが、どうも面倒くさいです。

たかだか1本の映画で、簡単にみんな軍国主義に流れたりしないと思うんだけど、そういうのを信じられないのかなあ。

Posted by: ふじき78 | February 02, 2014 04:46 PM

>ふじき78さん

まあ特攻隊がからむと色々議論が起きやすいんですよね。今井雅之さんの舞台『WINDS OF GOD』も各方面からやいのやいの言われたそうですし
そういえば前々都知事がバックアップしてた『俺は、君のためにこそ死ににいく』というのもあったけど、あれは議論にすらならなかったなあ。『俺は君の~』は制作費の半分くらいしか儲からなかったようですが、今回は大もうけですね

Posted by: SGA屋伍一 | February 02, 2014 05:00 PM

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