なんてったってマタドール パブロ・ベルヘル 『ブランカニエベス』
正月休みも先日終わりましたんで、ブログの方もぼちぼち始めたいと思います。新年明けましての一発目は、スペインからやってきた風変わりな白雪姫映画。『ブランカニエベス』参ります。
おそらく20世紀初めごろ。スペインで名前を轟かせていた人気闘牛士のアントニオは、不慮の事故により半身不随の身となる。身重の妻はショックで亡くなってしまうが、子供は無事に生まれた。カルメンシータと名づけられたその娘は、財産目当てでアントニオの後妻に納まったエンカルナにより父親から遠ざけられてしまう。屋敷の下働きとして虐げられるカルメンシータ。だが彼女には父親から受け継がれた勇気ある闘牛士の血が流れていたのだった。
まず白雪姫と闘牛をミックスしてしまうという大胆な発想に驚かされます。そんな無茶なお話にした理由としては単に製作国がスペインだからというのと、闘牛の持つ華やかで残酷な要素がヨーロッパの童話とよくマッチしているからかもしれません。
「白雪姫」をモチーフとした映画としては一昨年も『スノーホワイト』と『白雪姫と鏡の女王』がありましたが、それらと比べると『ブランカニエベス』はかなり残酷面が目立つというか、毒の強いお話でした。白雪姫はご存知のように継母からネチネチといじめられるわけですが、その辺のくだりがとにかくしつこい(^^;
そういえばスペインの映画というのは子供が悲惨な目に会う作品が目立ちますね。『パンズ・ラビリンス』に『アザーズ』に『永遠のこどもたち』に『ブラックブレッド』。古くは『汚れなき悪戯』というのもありました。『ペーパーバード』は悲惨というほどではなかったけれど、決して幸せな映画ではなかったし。これらに比べるとフランスや東欧の子供映画はもう少しあっけらかんとしたものが多い気がします。
もうひとつ印象に残ったのは「王子様の不在」ということ。童話においては王子様はさっそうと現れてお姫様のピンチを助けるものですが、最近のお姫様映画では王子様は役に立たないか場違いか最初からいないか、という感じです。例としては『魔法にかけられて』『メリダと恐ろしの森』『かぐや姫の物語』など。それだけ現在は「王子様」というものに幻想を抱きにくい時代ということなんでしょうか。お姫様の映画はコンスタントに作られてるのにね~ 今年公開の『アナと雪の女王』もきっとそんな感じだと思われます。
ちなみに直球白雪姫映画だった『スノーホワイト』で、王子様ポジションだったのは毛深い男やもめの肉体労働者でした。夢も希望もありません。
『ブランカニエベス』でもギリギリ王子様ポジションと言えなくもないキャラが出てきます。ところがこれがやっぱり「王子様」とは程遠いような野郎でして。この辺のテイストがまた残酷であります。わたしのような非モテの立場からするとかえって慰められる気もしないでもないですが。
あと『ブランカニエベス』の大きな特徴はなんと言っても「モノクロ・サイレント」というところです。サイレント映画では少し前に『アーティスト』がありましたが、『ブランカニエベス』はよく知る童話だからか、字幕の効果が絶妙だったからか『アーティスト』よりもわかりやすい話になっていたと思います。白黒の画面もお話の効果をよく盛り上げておりました。だだっぴろい闘牛場の砂の白さやエンカルナの衣装のどす黒さが目に焼きついております。もちろん「白雪姫」の肌の白さもね。
配給のエスパース・サロウさんは『メアリー&マックス』や『動くな、死ね、甦れ!』、ボリス・バルネットの特集上映など白黒作品の発掘にも力を入れておられるようで。フルカラーが当たり前のこの時代にあえてそういった不遇のジャンルに挑戦し続ける姿勢に拍手を送りたいと思います。
『ブランカニエベス』は現在東京は新宿武蔵野館をメインに上映中ですが、そちらではぼちぼち終了かな…
Comments
スペインだから闘牛士って、日本だから相撲みたいな理屈ですよね。いや、ちょっと相撲の白雪姫みたい気もするけど(ポッチャリちゃん不可)
Posted by: ふじき78 | January 12, 2014 08:23 AM
>ふじき78さん
今流行のマシュマロ系女子ってやつですかね… 日本版はフグ毒を盛られそうな気がします
Posted by: SGA屋伍一 | January 12, 2014 09:07 PM