ひこう少年ダスティ クレイ・ホール 『プレーンズ』
ここ数年年の最初に観る映画はなぜかキッズムービーになってしまうことが多いのですが、今年もそうでした。あの『カーズ』の世界が空へ拡大! だけど製作はピクサーではないらしい???『プレーンズ』、お送りします。
そこは車や飛行機が人間のように暮らしている世界。ダスティは農薬散布機として畑を飛び回る毎日だったが、いつかレーサーとして世界の空を駆け回りたいという夢を持っていた。ある時近所に住む老人?のスキッパーズがかつて軍隊で活躍していたという噂を聞きつけたダスティは、彼の飛行術を伝授してほしいと頼み込むが…
キッズ向けアニメの主人公は何かしらハンディキャップを背負っていることが多いです。怖がられたいのにかわいい。ネズミなのにコックになりたい。鳥なのに飛べない。ペンギンなのに音痴… いや、ペンギンと音痴は関係ないか? ともかくこの映画の主人公ダスティは労働用のマシンなのに、競争用にあこがれたりしています。しかも高いところが苦手と来ている。現実なら土台無理な話ですが、そこはアニメですから。そもそも現実では飛行機はしゃべったり勝手に動いたりはしません。その辺についてつっこみ続けるときりがないのでこの辺でやめておきます。
そういえば元ネタ?の『カーズ』はその辺が変わってるというか、優越感に満ち溢れていた主人公が自分に足りなかったものに気づくというお話でした。そして子供向け映画であるにも関わらず、「勝利よりも大切なものである」という大人向けなテーマが盛り込まれていたりして。この傾向は続編『カーズ2』にも表れております。またしても勝利そっちのけで親友との絆の回復に必死になる主人公(笑) 同じピクサーの最新作『モンスターズ・ユニバーシティ』でも、「どんなにがんばってもかなわない夢がある」という子供にはきつめの教訓が語られていました。
そういうのがいけないとは言いませんけど、やっぱりディズニーには子供が純粋にわくわくし興奮するものを作ってほしいです。その点この『プレーンズ』は実に少年ジャンプ的といいますか、友情!努力!勝利!のカタルシスが存分に味わえる話になってました。あと青年漫画ではありますが、ぼろっちいマシンがピカピカの最新機の鼻を明かしていくあたりはモロしげの秀一先生の『頭文字D』でありました(笑)
お話以外の部分でよかったのは、最新鋭のCGで描かれた世界の風景。「世界一周レース」という題材を生かして大都市から大海原、はたまたエキゾチックな東洋の景色まで見事に再現しておりました。そして国や土地の特長をいかしたネタがいろいろおかしい。たとえば日本代表の飛行機として「サクラ」というキャラがいるんですけど、遠征先で畳の部屋で落ち着きながら和歌の一節を詠んでいるシーンなど、頭が爆裂しそうになりました。こういうバカバカしいセンス大好きです。
批評家ウケは芳しくないようですが、この『プレ-ンズ』、ピクサーの諸作と並べても遜色ないくらいの楽しさに満ちていました。以前はピクサーに比べるとディズニーご本家の作品はちょっとインパクトが足りないような感がありましたが、昨年の『シュガーラッシュ』といいだいぶその距離が縮まってきました。再来月公開の『アナと雪の女王』もだいぶ期待できそうです。
『プレーンズ』はまだ全国の映画館でかろうじて上映中。今夏には早くも続編の『プレーンズ ファイアー&レスキュー』が公開予定。このスケジュールの早さにはたまげました。そして3作目も準備中だという話。飛行機アニメだけあって製作ペースもバカっぱやですね!
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