「恐るべき子!」どもたち オースン・スコット・カード ギャビン・フッド 『エンダーのゲーム』
エンダアアアア! イヤアアアア! ラヴオールウェイラブユウウウウ ウ~ウウウ
…失礼しました。本日は世界的に人気を博しているSF小説がついに本格的日本上陸!と話題になっている(のかどうか)『エンダーのゲーム』、ご紹介します。
時は近未来。突如として来襲した宇宙人の攻撃により人類はかつてない危機に直面するが、一人の勇敢な兵士の機転により辛くも敵軍を退けることに成功する。それから時は流れた。
再び異星人がやってきたときのために、宇宙軍は新たな世代の中から司令官にふさわしい能力を持った子供たちを探していた。エンダー少年はその類まれなる指揮の才能により、特別な教育を受けるべく宇宙ステーションへと招かれる。着実に成長し続けるエンダー。だが彼は自分のうちにやどる凶暴性を意識し、それにおびえ続けていたのだった…
冒頭の世界観を説明するくだりがですね、すごく『インデペンデンス・デイ』みたいなんですね。宇宙人が昆虫っぽかったり、母船に一隻の戦闘機が突っ込んで勝利を得るところなんかまんま一緒です。
『ID4』続編は一作目で敗れた宇宙人たちが今度は大挙して地球に攻めてくる…という構想らしいですが、冷静に考えてとても勝てなさそう。でも『エンダーのゲーム』を観ますと「なるほど。次までの間にこんだけ準備しておけばなんとかなるかもなー」と思えてきます。
ただ『エンダーのゲーム』第一作は1977年発表。『ID4』より約20年先です。するってえとあれか。『ID4』の方がこっちの影響を受けているということか…?(結論:よくわかりません)
それはともかく、この『エンダーのゲーム』シリーズはそれ以降40年近くに渡って刊行されてきとのこと。2008年にはTVゲーム化され、それがさらに人気に拍車をかけたようです。
映画の際立った特色をひとつあげるなら、それは「子供が主人公」ということでしょうか。普通宇宙人が攻めてきたら先頭に立って戦うのは大人の軍人であり、政治家であり、科学者であります。しかし『エンダーのゲーム』では子供たちが対異星人用の切り札として用いられます。作中の人物は「子供たちは大人よりも考えが柔軟で多くの情報を処理できるから」と語りますが、もうひとつの隠された理由があったりします。あえて言いませんが(勘のいい人はもう気づいているでしょう…)そんな子供の持つ性質や本質がこの作品のテーマとなっております。
映像的な見所はやはり宇宙SFならではの未来の科学の様々でしょうか。訓練の一環である宇宙ステーションの模擬戦闘などはまるでダンスのように美しく、「こっちがメインでもよかったんじゃないか?」と思わせられます。
個人的に盛り上がったのはひ弱っ子のエンダー君がいかにいじめっ子に立ち向かっていくか…というあたりでした。わたしも子供時代はガキ大将にいつもびくびくしてたので、「あー、なるほどー。こういう風に反撃すればよかったのかー」なんて思いながら観ておりました。
そんな風に楽しみながらも、子供を軍隊の一員としたり、戦争の道具としていいのか?というところにひっかかりを覚えたのも確か。まあそういうのは日本のロボットアニメでもよくあるパターンですが。
その辺は作り手たちも充分わかっていたようで、後半ではすかっとさわやかなSFバトルものとは異なった、暗めのムードが漂い始めます。そういうのあまり大ヒットしないだろうし、「納得いかん」という人もいるでしょうけど、そんな煮え切らない、でも真摯にテーマに向かう姿勢が「良い」と感じました。
『エンダーのゲーム』は現在全国の映画館で上映中ですが、すでに失速中であります。興味がおありの方は早めに観にいってください。やっぱり「メインキャストが子供とじいちゃんだけ」というのがよくなかったのかな…
Comments