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January 29, 2014

「恐るべき子!」どもたち オースン・スコット・カード ギャビン・フッド 『エンダーのゲーム』

51x0uqsb3lエンダアアアア! イヤアアアア! ラヴオールウェイラブユウウウウ ウ~ウウウ
…失礼しました。本日は世界的に人気を博しているSF小説がついに本格的日本上陸!と話題になっている(のかどうか)『エンダーのゲーム』、ご紹介します。

時は近未来。突如として来襲した宇宙人の攻撃により人類はかつてない危機に直面するが、一人の勇敢な兵士の機転により辛くも敵軍を退けることに成功する。それから時は流れた。
再び異星人がやってきたときのために、宇宙軍は新たな世代の中から司令官にふさわしい能力を持った子供たちを探していた。エンダー少年はその類まれなる指揮の才能により、特別な教育を受けるべく宇宙ステーションへと招かれる。着実に成長し続けるエンダー。だが彼は自分のうちにやどる凶暴性を意識し、それにおびえ続けていたのだった…

冒頭の世界観を説明するくだりがですね、すごく『インデペンデンス・デイ』みたいなんですね。宇宙人が昆虫っぽかったり、母船に一隻の戦闘機が突っ込んで勝利を得るところなんかまんま一緒です。
『ID4』続編は一作目で敗れた宇宙人たちが今度は大挙して地球に攻めてくる…という構想らしいですが、冷静に考えてとても勝てなさそう。でも『エンダーのゲーム』を観ますと「なるほど。次までの間にこんだけ準備しておけばなんとかなるかもなー」と思えてきます。
ただ『エンダーのゲーム』第一作は1977年発表。『ID4』より約20年先です。するってえとあれか。『ID4』の方がこっちの影響を受けているということか…?(結論:よくわかりません)
それはともかく、この『エンダーのゲーム』シリーズはそれ以降40年近くに渡って刊行されてきとのこと。2008年にはTVゲーム化され、それがさらに人気に拍車をかけたようです。

映画の際立った特色をひとつあげるなら、それは「子供が主人公」ということでしょうか。普通宇宙人が攻めてきたら先頭に立って戦うのは大人の軍人であり、政治家であり、科学者であります。しかし『エンダーのゲーム』では子供たちが対異星人用の切り札として用いられます。作中の人物は「子供たちは大人よりも考えが柔軟で多くの情報を処理できるから」と語りますが、もうひとつの隠された理由があったりします。あえて言いませんが(勘のいい人はもう気づいているでしょう…)そんな子供の持つ性質や本質がこの作品のテーマとなっております。

映像的な見所はやはり宇宙SFならではの未来の科学の様々でしょうか。訓練の一環である宇宙ステーションの模擬戦闘などはまるでダンスのように美しく、「こっちがメインでもよかったんじゃないか?」と思わせられます。
個人的に盛り上がったのはひ弱っ子のエンダー君がいかにいじめっ子に立ち向かっていくか…というあたりでした。わたしも子供時代はガキ大将にいつもびくびくしてたので、「あー、なるほどー。こういう風に反撃すればよかったのかー」なんて思いながら観ておりました。

そんな風に楽しみながらも、子供を軍隊の一員としたり、戦争の道具としていいのか?というところにひっかかりを覚えたのも確か。まあそういうのは日本のロボットアニメでもよくあるパターンですが。
その辺は作り手たちも充分わかっていたようで、後半ではすかっとさわやかなSFバトルものとは異なった、暗めのムードが漂い始めます。そういうのあまり大ヒットしないだろうし、「納得いかん」という人もいるでしょうけど、そんな煮え切らない、でも真摯にテーマに向かう姿勢が「良い」と感じました。

Endg1『エンダーのゲーム』は現在全国の映画館で上映中ですが、すでに失速中であります。興味がおありの方は早めに観にいってください。やっぱり「メインキャストが子供とじいちゃんだけ」というのがよくなかったのかな…


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January 22, 2014

零戦もやもや 山崎貴 『永遠の0』

Img00499今日は語るのが難しい映画だな~~~coldsweats01
百田尚樹氏の手によるベストセラーを、『ALWAYS』などで知られる山崎貴監督が映画化。『永遠の0』、ご紹介します。わたし原作は未読なのであくまで映画オンリーの感想ということでよろしくお願いします。

2004年、司法浪人中の佐伯健太郎は祖母の葬儀の際、自分の実の祖父が第二次大戦中、零戦のパイロットとして「特攻」で亡くなったことを知る。興味を抱いたジャーナリストの姉に強引に連れ出される形で、健太郎は祖父・宮部久蔵を知る人たちを訪ねて歩くことに。宮部と同じ隊にいた老人たちの多くは、彼のことを「海軍一の臆病者」とののしった。宮部は本当に臆病者だったのか。もしそうなら、なぜ彼は最後に特攻を選んだのか… 健太郎は次第に一度も会ったことのない祖父に親しみを覚え始める。

「特攻隊」について語るのって、腫れ物に触るのと同じくらいおっかなびっくりであります。ある人たちは「祖国のために身をささげた英霊」と語るし、ある人たちは「国によって洗脳された狂信者」と言います。わたしはそのどちらでもないと考えます。当たり前のことですが、彼らもまた我々と同じ感情を持つ人間であり、誤った方向へ進んだ国家の犠牲者…と思っております。
では彼らが100%犠牲者かといえばそれもまたちょっと違う。戦争に加わったということは彼らもまた多くの人を殺したということだし、いくら国が狂っていても不戦を貫くことも出来たはず。
ただだからと言って声高に責める気にもなれません。流されやすい私があの時代日本に生きていたら、飛行気乗りにはなれずとも軍国主義に染まっていったであろうことは容易に想像がつくので。そんな風に特攻隊について考えると、二つの違う思いが行きつ戻りつするのでありました。

映画の中で健太郎の友人が特攻隊について「俺たちには関係ないし」と言います。まあ実際ほとんど関係ないんですよね。彼らより20ほど上のわたしだって似たようなものですし。ただこの映画を見て若者たちが「国というのは狂うこともあるし、そうなったら矢面に立たされるのは自分たちなんだ」ということを感じ取ってもらえればいいと思います。
敵と道連れに死ぬことを賛美し、生きて帰ってくることを「臆病」とののしるような組織は、いかに軍隊といえどやはり狂っております。明日明後日日本がそうなるとは思いませんが、近隣諸国の情勢や現政権の方針を見るとそういった兆候が見え隠れしているような。
映画『永遠の0』はお涙頂戴的な描写も多かったですが、戦争というものの異常性もはっきり示していたので、特に今の時代大いに意義のある作品だと思いました。はい。

…といかにもまじめぶって語りつつも、やっぱり零戦のドッグファイトを見ているとついワクワクしてしまうあたり自分も相当の困り者だと思います…
この辺は男子によくある問題ですね。戦争はいけない! 戦争反対!と叫びつつも同時にかっこいい兵器に見とれてしまったりする。
この映画では最新のCGを使って当時のプロペラ戦闘機がいかに大空を舞ったか、対空砲火をかいくぐって戦艦に迫って行ったか存分に見せてくれます。こういう戦闘シーンは今までなかったものではないかと。現代の空戦を描いた作品だったら他にもあるでしょうけど、マッハで飛ぶジェット戦闘機の戦いはかなり違うものでありますし。
『風立ちぬ』の堀越青年も目をキラキラさせて戦闘機の開発に夢中になっておりましたが、ワクワクしつつもそういったことに後ろめたさも感じるのも確か。海洋堂の名物専務さんが以前「戦車のプラモを心置きなく楽しむために世界中から戦争をなくすというのはどうか」とおっしゃってましたが、まったくその通りだと思います(^ ^;

構成で印象に残った点をひとつ。以下ラストまでどんどんネタバレしていくのでご注意ください。
この映画は宮部久蔵という男の人物像を、周囲の人間の証言だけで語っていきます。まあなんとなく作者の意図や宮部さんの思いは想像つくんですが、本当に心の奥底で何を考えていたまでかはわからない。加えて宮部さんもあまり口数が多くなかったりします。何かとしゃべらせたがる邦画が多い中で、そこはよく我慢したと思いました(代わりに周りの人間はべらべらしゃべりまくりますが)。
「周囲の人間の証言で描いていく」ということは、この映画では宮部さんの周りにはいつも誰かいることになるわけです。そんな宮部さんが一人になるおそらく唯一のシーンが、ラストの特攻の場面。
ここでもっと感動を煽ろうとするなら、国の妻子のカットバックでも入れて、岡田君にほろほろ涙を流させて、「○○、○○、今行くぞーッ!!」って叫ばせると思うんです。
しかしなぜか宮部さんはここですごく楽しそうに零戦を操り、最後の最後で「へやっ」と笑うのです。「なんとなくそうしちゃった」という見方も出来ましょうが、この笑顔については幾らでも考えようのあるシーンだと思いました。

Kztn1_2『永遠の0』は現在全国の映画館で大ヒット公開中。なんというか、素直に「観にいって!」とすすめづらい作品です。自分の判断で観にいって自分の判断で評価してください。
しかし最新の「はやぶさ」を扱った作品が3本そろってこけたというのに、いまどきゼロ戦を扱った映画が2本もヒットするなんて、世の中本当によくわからないですね…


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January 20, 2014

吸いたいヤクも吸えないこんな世の中じゃ ジョニー・トー 『ドラッグ・ウォー 毒戦』

9559c97d地方に住んでおりますと「名前はよく目にするけれど、作品を映画館で観たことがない」という監督がけっこういます。中国映画の雄ジョニー・トーもそのひとり。『エグザイル 絆』とか本当に観たかったんですけど、そういうときに限ってなかなか遠出できなかったりして。
そのジョニー・トー作品がとうとう最寄のコロナO田原で上映される!と知り、喜び勇んで初日に観にいってまいりました。『ドラッグ・ウォー 毒戦』、紹介いたします。

麻薬組織壊滅のために日夜奔走し続ける中国公安警察。麻薬の製造に深く関わっていたマフィアの幹部テンミンは、工場の爆発がきっかけで鬼警部ジャンに捕らえられる。なんとか極刑を免れたいテンミンは、警察に協力する見返りとして減刑を願い求めるが…

おそらく今世界で最も麻薬に厳しい国は中国でしょう。かの国における麻薬の密輸は重罪で、見つかったらよくて無期懲役、悪くて死刑らしいです。そりゃいけないことだとは思いますが、「○キロ持ってたら死刑確実」って、それもまた極端ではないかと思います。
それでもまー、やっちゃう人はやっちゃうんようで… 貧困が彼らを追い詰めていくのか、単にバカなのか。ともかくどんなに政府が脅しても、お薬に手を出す人は一定数おられるようです。

メインとなるキャラクターは二人。まずマフィアのテンミン。麻薬を作って売りさばいてたくらいなので当然悪人です。でもその悪人ぶりがいちいち中途半端なんですよね。組織の仲間を裏切ることに負い目を感じていたり、自分を虐げる警部のことをちょいちょい助けてやったり。でもいざ自分の命が危ないとなると、なりふり構わず保身に徹する。そんなところがなんとも情けなく、かつ共感してしまう男です。あと無駄にイケメンでした。

そんなテンミンと対照的なのがいささか怪物的なジャン警部。普段は無口で無表情ですが、マフィアを陥れるためには突然饒舌になってゲラゲラ笑い出したりもする。で、演技する必要がなくなったらまたすっと仏頂面に戻る。彼の非人間性と比べると『踊る大捜査線』の青島刑事などはあまりの隔たりぶりに、本当に同じ刑事なのかと疑りたくなるくらいです。
テンミンだけではなく、彼の後に従う捜査官たちもみんなこんな感じです。軽口をたたくこともなく、ただ黙々と侵食を削って密輸組織を追いかけていきます。たまに疲れた同僚を気遣っている描写などに、辛うじて人間らしさが垣間見えるくらいです。事件を解決してもスポットライトを浴びるでもなく、絶えず命の危険にもさらされているというのに、何が楽しくてこんな仕事に情熱を注いでいるのでしょう。特に警部の右腕存在的な女性刑事がこんなハードな職業にはもったいないくらいの美人で、「なんであんたは刑事なんてやってるんだ! モデルか女優でもやっててくださいよ!」と思わずにはいられませんでした。

以下、ネタバレ気味で

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この『毒戦』、ストーリーのほとんどは警察がマフィアをつぶすべくあれやこれやと罠をはりめぐらせる部分に費やされています。「そこまでまわりくどいことをせずとも、目の前のそいつをとっとと捕まえちゃえばいいのに」と自分のような素人は思います。でもまあもっとでっかい獲物を、ねっこから粉砕すべく一生懸命忍耐してるんでしょうね。
ところがそんだけ労を費やした作戦が、ちょっとした見落とし?から大崩壊してしまう。この辺に頭を抱えてしまうか、スカッとカタルシスを感じるかでこの映画の評価が別れると思います。
20代の映画ファンにはこういうニヒリズムや突き放した感性が好きな人が多いみたいですね。でも自分は年のせいか、最近破滅に向かってひた走っていく作品はなんだか観ていてぐったりしてしまうのでした。まあ世の中確かに非情で残酷なもんかもしれないけれど、あたしは嘘でもいいから夢が見たいのよ! やさしさが欲しいのよ!

Bdgyezecyaasd8oというわけで楽しみにしてたわりに疲労感に包まれてしまった『毒戦』ですが、パワフルでエキサイティングな話であることには間違いありません。息詰まるデッドヒートがお好きな人におススメします。

ちなみに今回の画像、わたしが描いたものではもちろんなく、とあるまとめサイトから引っ張ってきたものです。なかなか笑えて教訓になるのでよかったらご覧ください


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January 17, 2014

ひこう少年ダスティ クレイ・ホール 『プレーンズ』

41k6flbwitl__sl500_aa300_ここ数年年の最初に観る映画はなぜかキッズムービーになってしまうことが多いのですが、今年もそうでした。あの『カーズ』の世界が空へ拡大! だけど製作はピクサーではないらしい???『プレーンズ』、お送りします。

そこは車や飛行機が人間のように暮らしている世界。ダスティは農薬散布機として畑を飛び回る毎日だったが、いつかレーサーとして世界の空を駆け回りたいという夢を持っていた。ある時近所に住む老人?のスキッパーズがかつて軍隊で活躍していたという噂を聞きつけたダスティは、彼の飛行術を伝授してほしいと頼み込むが…

キッズ向けアニメの主人公は何かしらハンディキャップを背負っていることが多いです。怖がられたいのにかわいい。ネズミなのにコックになりたい。鳥なのに飛べない。ペンギンなのに音痴… いや、ペンギンと音痴は関係ないか? ともかくこの映画の主人公ダスティは労働用のマシンなのに、競争用にあこがれたりしています。しかも高いところが苦手と来ている。現実なら土台無理な話ですが、そこはアニメですから。そもそも現実では飛行機はしゃべったり勝手に動いたりはしません。その辺についてつっこみ続けるときりがないのでこの辺でやめておきます。

そういえば元ネタ?の『カーズ』はその辺が変わってるというか、優越感に満ち溢れていた主人公が自分に足りなかったものに気づくというお話でした。そして子供向け映画であるにも関わらず、「勝利よりも大切なものである」という大人向けなテーマが盛り込まれていたりして。この傾向は続編『カーズ2』にも表れております。またしても勝利そっちのけで親友との絆の回復に必死になる主人公(笑) 同じピクサーの最新作『モンスターズ・ユニバーシティ』でも、「どんなにがんばってもかなわない夢がある」という子供にはきつめの教訓が語られていました。

そういうのがいけないとは言いませんけど、やっぱりディズニーには子供が純粋にわくわくし興奮するものを作ってほしいです。その点この『プレーンズ』は実に少年ジャンプ的といいますか、友情!努力!勝利!のカタルシスが存分に味わえる話になってました。あと青年漫画ではありますが、ぼろっちいマシンがピカピカの最新機の鼻を明かしていくあたりはモロしげの秀一先生の『頭文字D』でありました(笑)

お話以外の部分でよかったのは、最新鋭のCGで描かれた世界の風景。「世界一周レース」という題材を生かして大都市から大海原、はたまたエキゾチックな東洋の景色まで見事に再現しておりました。そして国や土地の特長をいかしたネタがいろいろおかしい。たとえば日本代表の飛行機として「サクラ」というキャラがいるんですけど、遠征先で畳の部屋で落ち着きながら和歌の一節を詠んでいるシーンなど、頭が爆裂しそうになりました。こういうバカバカしいセンス大好きです。

批評家ウケは芳しくないようですが、この『プレ-ンズ』、ピクサーの諸作と並べても遜色ないくらいの楽しさに満ちていました。以前はピクサーに比べるとディズニーご本家の作品はちょっとインパクトが足りないような感がありましたが、昨年の『シュガーラッシュ』といいだいぶその距離が縮まってきました。再来月公開の『アナと雪の女王』もだいぶ期待できそうです。

Yogurt01『プレーンズ』はまだ全国の映画館でかろうじて上映中。今夏には早くも続編の『プレーンズ ファイアー&レスキュー』が公開予定。このスケジュールの早さにはたまげました。そして3作目も準備中だという話。飛行機アニメだけあって製作ペースもバカっぱやですね!

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January 14, 2014

やられたらハエ返し S.S.ラージャマウリ 『マッキー』

B01938_1恥ずかしい話ですが、正月ボケがいまだに抜けきらず、更新もなかなかはかどりません(^^; そんなわけでようやく昨年観た最後の映画の感想をアップです。快進撃を続けるマサラムービーの中でも、かなり風変わりな一本『マッキー』をご紹介しましょう。

主人公は見るからにボンクラの青年ジャニ。彼は二年以上ボランティアに熱心な美女・ビンドゥにアタックを試みていた。そしてとうとうその思いが報われる時が来た。だが彼は恋敵であるマフィアのボスに目をつけられてしまい、文字通り闇から闇に葬られてしまう。しかし彼は驚くことにハエに転生してこの世に舞い戻ってきた…

不慮の死を遂げた青年が恋人が心配でこの世にとどまる話といえば、名作『ゴースト ニューヨークの幻』や昨年の『R.I.P.D』などがありました。彼らは彼らでなかなか苦労してましたが、それでもまだ人間の姿をキープしてただけマシかもしれません。このジャニ君なんてハエですから、ハエ。ちなみに「マッキー」とはインドの言葉でそのまんま「ハエ」を意味する語であります。
まあ教会では死んだら天国か地獄に行くと言われいていますが、また別の何か(人間とは限らない)に生まれ変わるといわれているのがヒンズー教。まことに東洋らしい考えと言えるかもしれません。
でもそれだったらもう少しまともなものに生まれ変われなかったものでしょうか。犬とかネズミとかトカゲとか… 大体人間の時には手も足も出なかった相手に、ハエになって復讐できるかといったらまず不可能ではないでしょうか。ですがそこは脚本の妙か強引なストーリーのゆえか、マッキー君は素早い身のこなしと天才的ないたずらセンスで仇を追い詰めていきます。

で、そのマッキー君の復讐がなかなかにねちっこい(笑)。体が小さい分だけ復讐を果たすにも時間がかかるということなのかもしれませんが、見ていて悪者のことが気の毒になるくらいです。この悪者の俳優さん、苦味走ったけっこうなイケメンなのに、こんな映画に出てしまったばっかりに全裸で走り回ったりその他色々本当にお疲れ様でした。
最近の欧米や日本の映画で「復讐」を扱うと、その空しさや代償について描かれることが多い気がします。しかしこの『マッキー』ではまったくそんなことはありません。「悪者なんだから報いを受けるのは当然」とばかりに、極めてハッピーなムードで復讐を描きます。そういや日本でも『半沢直樹』が大ヒットしましたけど、やっぱりみんなうわべではきれいごとを言ってても、心の奥底では「あんにゃろめに復讐してすかっとして~~~」と思ってるものなんでしょうかね…

あとインド映画を観ていてよく感じるのがヒロインの高飛車ぶり。『マッキー』では中盤以降こそしおらしくなるものの、ビンドゥーがジャニを振り回すくだりなどは非モテ系としてははらわた煮えくりかえるものがありました。マフィアのボスなんかよりこっちの方が断然性質が悪い気がします(わたし基準で)。
そういや昨年はなんかヒロインがむかつく映画が多かったな… この場を借りて「ヒロインがむかついた映画」ベスト(ワースト?)5を発表させてもらうと 

1位・華麗なるギャツビー 2位・アンナ・カレーニナ 3位・パパの木 4位・プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 5位・マッキー

というところでしょうか。純な男の恋心をもてあそぶなんてひどいわ! バカ!

…話がそれました。昆虫好きとしてはハエ視点で進んでいく映像なども楽しませてもらいました。これを観ちゃうとハエに感情移入してしまって、今後テーブルの上を飛んでいてもたたきつぶすのがためらわれるかもしれません。

Photo『マッキー』はまだ栃木・三重などで上映予定がありますが、さすがに大体終わってしまった模様。早くも4月にはDVDが出ますので見逃したかたはそちらでどうぞ。大きなスクリーンでハエを見るというのも乙なものですが、そういう話なんでテレビサイズで見てもあまり支障ないかも(^^;


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January 07, 2014

なんてったってマタドール パブロ・ベルヘル 『ブランカニエベス』

Scan正月休みも先日終わりましたんで、ブログの方もぼちぼち始めたいと思います。新年明けましての一発目は、スペインからやってきた風変わりな白雪姫映画。『ブランカニエベス』参ります。

おそらく20世紀初めごろ。スペインで名前を轟かせていた人気闘牛士のアントニオは、不慮の事故により半身不随の身となる。身重の妻はショックで亡くなってしまうが、子供は無事に生まれた。カルメンシータと名づけられたその娘は、財産目当てでアントニオの後妻に納まったエンカルナにより父親から遠ざけられてしまう。屋敷の下働きとして虐げられるカルメンシータ。だが彼女には父親から受け継がれた勇気ある闘牛士の血が流れていたのだった。

まず白雪姫と闘牛をミックスしてしまうという大胆な発想に驚かされます。そんな無茶なお話にした理由としては単に製作国がスペインだからというのと、闘牛の持つ華やかで残酷な要素がヨーロッパの童話とよくマッチしているからかもしれません。
「白雪姫」をモチーフとした映画としては一昨年も『スノーホワイト』と『白雪姫と鏡の女王』がありましたが、それらと比べると『ブランカニエベス』はかなり残酷面が目立つというか、毒の強いお話でした。白雪姫はご存知のように継母からネチネチといじめられるわけですが、その辺のくだりがとにかくしつこい(^^; 
そういえばスペインの映画というのは子供が悲惨な目に会う作品が目立ちますね。『パンズ・ラビリンス』に『アザーズ』に『永遠のこどもたち』に『ブラックブレッド』。古くは『汚れなき悪戯』というのもありました。『ペーパーバード』は悲惨というほどではなかったけれど、決して幸せな映画ではなかったし。これらに比べるとフランスや東欧の子供映画はもう少しあっけらかんとしたものが多い気がします。

もうひとつ印象に残ったのは「王子様の不在」ということ。童話においては王子様はさっそうと現れてお姫様のピンチを助けるものですが、最近のお姫様映画では王子様は役に立たないか場違いか最初からいないか、という感じです。例としては『魔法にかけられて』『メリダと恐ろしの森』『かぐや姫の物語』など。それだけ現在は「王子様」というものに幻想を抱きにくい時代ということなんでしょうか。お姫様の映画はコンスタントに作られてるのにね~ 今年公開の『アナと雪の女王』もきっとそんな感じだと思われます。
ちなみに直球白雪姫映画だった『スノーホワイト』で、王子様ポジションだったのは毛深い男やもめの肉体労働者でした。夢も希望もありません。
『ブランカニエベス』でもギリギリ王子様ポジションと言えなくもないキャラが出てきます。ところがこれがやっぱり「王子様」とは程遠いような野郎でして。この辺のテイストがまた残酷であります。わたしのような非モテの立場からするとかえって慰められる気もしないでもないですが。

あと『ブランカニエベス』の大きな特徴はなんと言っても「モノクロ・サイレント」というところです。サイレント映画では少し前に『アーティスト』がありましたが、『ブランカニエベス』はよく知る童話だからか、字幕の効果が絶妙だったからか『アーティスト』よりもわかりやすい話になっていたと思います。白黒の画面もお話の効果をよく盛り上げておりました。だだっぴろい闘牛場の砂の白さやエンカルナの衣装のどす黒さが目に焼きついております。もちろん「白雪姫」の肌の白さもね。
配給のエスパース・サロウさんは『メアリー&マックス』や『動くな、死ね、甦れ!』、ボリス・バルネットの特集上映など白黒作品の発掘にも力を入れておられるようで。フルカラーが当たり前のこの時代にあえてそういった不遇のジャンルに挑戦し続ける姿勢に拍手を送りたいと思います。

Img00474『ブランカニエベス』は現在東京は新宿武蔵野館をメインに上映中ですが、そちらではぼちぼち終了かな… 他の劇場でも順次巡回予定ということですので、詳しくは公式サイトをごらんください。


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