« 水の音を聴け オラ・シモンソン ヨハネス・シェルネ・ニルソン 『サウンド・オブ・ノイズ』 | Main | 安らかに眠らせて ロベルト・シュヴェンケ 『R.I.P.D./ゴーストエージェント』 »

November 19, 2013

郵便屋さんと雪女 「Best of チェコアニメ映画祭 ポエム編」ほか

A実に19日ぶりの更新です… ここのところ資格試験のための勉強などありまして。
そんな私事はさておき、先日吉祥寺にて行われた「Best of チェコアニメ映画祭」という特集上映に行ってまいりました。これもまあ、かれこれ一ヶ月以上前のことなんですけどね(^^; わたしが見たのは「ポエム編」とレイト上映の特別プログラム。まずは「ポエム編」6作品を紹介します。

☆「動物たちと山賊」
夜の山に迷い込んだ山賊たちと、ブレーメンの音楽隊のような動物たちのドタバタを描いた一本。きのこがにょきにょき歩いているところがキモかわいい、くらいの印象しか残らなかったのですが、チェコアニメ史の中では重要とされている作品だそうで。ディズニーが席巻していたアニメ界において、「チェコアニメここにあり」を世界に知らしめたそうです。

☆「飲みすぎた一杯」
今回特に印象に残った作品のひとつ。さわやかなツーリングの途中、心無い車の追い越しにいらだつ一人のライダー。それが後に悲劇につながるとは…
中盤の至極のんびりしたムードが、クライマックスにさしかかるやいなや、アクション映画顔負けのカーチェイスへと急転します。
70年代のアメリカンニューシネマにも似た刹那的というかニヒリズムをかもし出す一本。チェコアニメの巨匠、ブジェチスラフ・ポヤル氏の出世作でもあります。

☆「もぐらくんとズボン」
純粋にこどもたちのために作られた「おやすみアニメ」の名キャラ「もぐらくん」が活躍する第一作。人間のこどものズボンを見て「あんなの欲しいなー」と泣きじゃくるもぐらくんに、自然界のみんなが総出でズボンをプレゼントしてくれる話。
このもぐらくん、他力本願もまことにいいとこで「もうちょっとてめえでなんとかしろよ」と言いたくもなるのですが、小動物も草花も仏のような優しさでもぐらくんを包み込みます。どこか悪魔的な人形アニメとくらべると、絵アニメは無限なまでの包容力に満ち溢れているのがチェコ作品の特色ですね。

☆「ベツレヘムの星」
毛糸やモールでかたどられた人や羊で、イエス・キリストの降誕のエピソードを描いた作品。今プログラム中もっとも「ポエム」の名にふさわしい一本。それだけにインパクトはやや乏しく… ただ、この作品、日本初公開だったそうで。そう言われると貴重な作品が見られてよかったなー、なんて思うのでした(^^;

☆「郵便屋さんの話」
怠け者の郵便屋さんがさぼり居眠りを決め込んでいると、どこからか現れた郵便の妖精さんたちが表れて、葉書を使って奇妙なゲームに興じ始める…
これまた「どこまで優しいのやら…」と思わせられるお話。粗忽や怠惰が責められるべきものではなく、「助けてあげなくてはいけない性質」として描かれています。観ていると本当に効率とか競争とかむなしくなってきちゃいますねw
そんなほのぼのした話でありながら、実は第二次大戦たけなわのころに作られたという背景が涙を誘います。

☆「手」
シュバンクマイエル、ポヤルと並ぶチェコアニメの巨匠イジー・トルンカ氏の遺作。これは以前とある特集上映で観たことがありました。二回目もべらぼうに面白かった。最初に観た時はただただ恐ろしい存在だった巨大な「手」ですが、今回はなんだか手は手なりに陶芸家を愛していたのかな…なんてことを思ったりして。


以上までが「ポエム編」。ついでレイトの特別プログラム3本です。
☆「雪女」
そう… 小泉八雲のあの「雪女」です。日本の怪談とチェコアニメの驚愕のコラボレーションです! 作ったのはファンタジー人形アニメの傑作『屋根裏のポムネンカ』のイジー・バルタ。そして『ポムネンカ』とは全然作風が違います…
この手法、なんといったら言いのでしょう。紙芝居的というかコラージュ風というか。静止画像をぎこちなく動かして独特の空気をかもし出しております。雪女の怖さと明治のノスタルジーがほどよく溶け合った一本でした。

☆「HIROSHI」「ぼくのともだち」
ポヤル監督の最新作。前者は自然が苦手だった少年が、孤独な画家と触れ合いながら成長していく…というお話(なぜか舞台は日本)。後者は転校したばかりで友達がいなかった少年が、犬を飼うことに夢を膨らませて…というお話。いずれも「子供と友情」が重要なモチーフとなっております。
出世作「飲みすぎた一杯」では悪魔的だったポヤルさんですが、こちらでは子供を暖かく見守る好々爺的なまなざしに満ち溢れています。こどもたちの目が微妙に魚のようであんまりかわいくないのですが、それもまたチェコアニメの味というものでしょう。

Photoまあわたしがこんな記事書かずともここにちゃんとした解説が書かれたブログがあるんですけどね…
Best of チェコアニメ映画際は吉祥寺ではもちろん終わってしまいましたが、春に大阪の心斎橋でも行われるそうなのでそちらのファンはぜひ足を運ばれてみてください。
あとチェコとは少しずれますが、やはり東欧の人形アニメの巨匠ロマン・カチャーノフの作品群が今冬渋谷の二つの映画館でかかるようです。わたしも行きたいけど行けるかどうか…

|

« 水の音を聴け オラ・シモンソン ヨハネス・シェルネ・ニルソン 『サウンド・オブ・ノイズ』 | Main | 安らかに眠らせて ロベルト・シュヴェンケ 『R.I.P.D./ゴーストエージェント』 »

Comments

ご無沙汰です。
もぐらの話はなんとなく新美南吉の「てぶくろをかいに」を思いだしてしまいました。
映画館で見る映画もこの数年は「RAILWAYS2」とか「ガンダムOO」ぐらいな有様です。

最近、掲示板スレ立ててくんないから、勝手に書いてごめんなさいですが……………
ただいま13年選手なPCが電源トラブルにて動かなくなりました…………。電源アダプターが接触不良ぎみなのでとりあえずアダプターの替えを手配しましたが、それでも動かない場合はコンデンサ膨張等て退場となりそう………。自宅ネットはノートが引き継ぎますが……………本日ipadを注文したので予定通りなら明日よりネット復帰となります。
そうそう…………………
再来年の大河は長州の寅次郎氏の妹御が主役らしい。

Posted by: まさとし@携帯 | November 20, 2013 10:55 PM

>まさとし@さん

こちらもご無沙汰です。
新美南吉…というと『ごんぎつね』の方ですね。というかそれしか知らない(^^; 「てぶくろをかいに」、覚えておきます

13年とはよくもたせましたね… わたしの先代PCは五年くらいでくたばったかな。ろくなメンテもしてなかったのがいけなかったのか
なんにせよ使い慣れたものから新機種に移行するのはいろいろと面倒くさいものですよね

>再来年の大河は長州の寅次郎氏の妹御が主役らしい。

やっぱり倍賞千恵子がやるのか!?(定番のボケ)

Posted by: SGA屋伍一 | November 21, 2013 10:43 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 郵便屋さんと雪女 「Best of チェコアニメ映画祭 ポエム編」ほか:

« 水の音を聴け オラ・シモンソン ヨハネス・シェルネ・ニルソン 『サウンド・オブ・ノイズ』 | Main | 安らかに眠らせて ロベルト・シュヴェンケ 『R.I.P.D./ゴーストエージェント』 »