ウルウルヴァリンは二度死なない ジェームズ・マンゴールド 『ウルヴァリン:SAMURAI』
ひとつ 人より治りがはやい
ふたつ フジヤマ カレーがうまい
みっつ ミュータントの未来のために
退治てくれよう! モジャ太郎!
X-MENシリーズの最新作は一番人気のあの方がなんと日本へ行って大暴れをするという… 『ウルヴァリン:SAMURAI』ご紹介いたします。
『X-MEN:ファイナル・ディシジョン』での激闘からほどなくして。ウルヴァリンことローガンは彼女の望みだったとはいえ、ジーン・グレイを死なせた自責の念からカナダの山に一人こもっていた。そんな彼の元にユキオ(女子)と名乗る武術の達人がやってくる。彼女はローガンが第二次大戦時日本で知り合った軍人・ヤシダからの使者だった。今は財閥の当主として巨万の富を築いたヤシダだったが、重い病に冒され、この世を去る前にローガンに会いたがっているとユキオは告げるが…
この映画の一番の難所はやはり「ハリウッドが日本を描く」というところですね。文芸作品ならともかくアクションもので向こうさんが日本を舞台にすると、「どこだここは!?」と言いたくなってしまう珍妙な描写が続出するものです。『007は二度死ぬ』『ベストキッド2』『G.I.ジョー バック2リベンジ』『悪魔の毒々モンスター東京へ行く』…
まあそれはそれで楽しかったりもするんですけど。
メガホンを撮るは実力派ジェームズ・マンゴールド監督。『17歳のカルテ』『アイデンティティー』『3時10分、決断の時』『ナイト&デイ』と幅広いジャンルを扱いながら、どれも実に手堅いレベルを維持している豪腕です。果たして彼ならこの難題を乗り越えることができるか? それともマンゴールド監督初の「やっちゃった」作品となるか? 固唾を呑んでスクリーンを見守っておりました。
前半は温かい目で見ればかなりがんばっていたと思います。東京もんは「○○から○○まで○分で行けるわけがない」とか言ってましたが、そんなこと地方の人間にはどうでもいいことです!
ただですね… あのアメコミヒーローのウルヴァリンがパチンコ屋さんとかラブホテルとかをうろちょろしてると、リアルであってもそれだけでギャグになってしまうのですね… こうなったらもう開き直ってメイド喫茶やダイバーシティにも行って欲しかった気がします。
そして後半に入るとダメ押しのように忍者が登場します。「いまの日本に忍者なんていないから!」と抗弁しても米人の耳には届きません。ていうかいま世界中が日本に最も期待してるものはやはり忍者ですからね… ここは映画屋としてもマンゴールド氏も出さざるを得なかったのでしょう。もうわたしも「日本に忍者はいる」っていうことでいいような気がしてきました。
えー、真面目な見所についても少々。この映画では日本映画でも珍しい「新幹線でのアクション」が拝めます。新幹線ってなかなか撮影許可がおりないらしいんですね。今回もかなり難しかったそうです。ほんでなんとか許可が降りたのかCG・セットでごまかしたのか… 忘れました。皆さんごじぶんで調べられてください。
もうひとつは今や世界的なアクターとなった真田広幸氏の迫真の殺陣です。ローガン演じるヒュー・ジャックマンいわく「ヒロは優れた武芸者だから刀を振り回しても当たる寸前でぴたっと止めることができるんだ。残念ながら僕はそうはできずヒロにけっこう当ててしまった」 っておい! ヒュー!
しかし真田さんも次は『47RONIN』とかみょうちきりんな映画への出演が増えてきました。大丈夫かしら? でも彼もデビュー当時は『伊賀忍法帖』や『魔界転生』で忍者の役やってたので、もしかしたら原点回帰なのかもしれません。
アメコミファン・動物好きからのどうでもいい解説をふたつばかり。
本作のメインヒロイン、ヤシダマリコさんについて。ヤシダってあまり聞かない名字ですよね。漢字で書くと矢志田だったかな。彼女の従兄弟に「シロウ・ヨシダ」という男がいる(X-MENに入り損ねた経歴アリ)ことを考えると、どうもライターが「ヨシダ」と「ヤシダ」を聞き間違えたという疑惑がぬぐえません。
ちなみに原作ではマリコは一度ローガンとめでたく結婚するのですが、色々あってフグ毒で自決してしまうという悲劇のヒロインであります。そこはアメコミなのでそのうちひょっこり生き返る可能性も大いにありますが。
あと劇中でローガンが突然「クズリ」と呼ばれることに「なんじゃそら?」と思われる方もおられるでしょう。これまたあまり聞かない名前ですが、「ウルヴァリン」はこの「クズリ」という動物名の英語訳であります(前の『ウルヴァリン』で月の妖精がウンタラ、とか語られていたのは一体なんだったのでしょう…)。このクズリという生き物、小柄ながらクマをひきずり倒すという獰猛さで知られております。元々ローガンにこの名前が与えられたのは原作の彼が小男だからなんですけど、ヒュー・ジャックマンがやってるとあまりピンと来ませんね。そしてなにより「クズリ」と言われると『ぼのぼの』という漫画でウンコを垂れながら泣いていた動物が思い浮かんでしまって困りものです。
二作前日談が続いていたX-MENですが、この『ウルヴァリン:SAMURAI』でようやく『ファイナル・ディシジョン』から話が先に進み始めました。一応時系列順に列挙いたしますと
ファースト・ジェネレーション→ウルヴァリン:X-MEN ZERO→1→2→ファイナル・ディシジョン→ウルヴァリン:SAMURAI となります。
そしていよいよ来年はX-MENのスターたちが一同に会す『デイズ・オブ・ザ・フューチャー・パスト』が公開。これは「過ぎ去りし未来の日々」という訳でいいのかな…
名だたる名優たちが再び結集するため予算は相当なものになるようですが、果たしてモトは取れるのでしょうか! そんな意味でもドキドキです!
Comments
こんばんはw
これ、やっぱり007二度死ぬとかぶって見えますよねw
なんかお風呂入るところとか、田舎でちょっと現地妻作るとことか、話の展開も似てるし(^_^;)
マリコさんはフグに当たって死んじゃうんですね・・・フグ・・・(´;ω;`)
Posted by: 田代剛大 | October 07, 2013 11:57 PM
SGAさんこんばんわ♪
やはりハリウッドジャパンの『ズレ』みたいなものはそう易々とは改善されないのか、本作でも絶好調な感じでしたね^^;まあ自分はそのズレみたいなのをギャグやユーモアだと割り切って観てた分もありまして許容範囲内でもあったのですが、やっぱしアレなんでしょうかねぇ?原作は未読ですがX-MENの世界はミュータントも共存してる社会でもあるわけですから、日本の文化も現代とは少しだけ異なりサムライやニンジャが根強く浸透してたりもすれば、893の中にもミュータント並に身体能力が向上してて新幹線上障害物バトルも難なくこなしちゃう・・・・というのが実は普通だったりするのかも~?!
・・・そう思わなければ文句ばかり出そうですからね(笑
Posted by: メビウス | October 08, 2013 09:32 PM
>田代剛大さん
こんばんは。実は『二度死ぬ』は情報として知ってるだけで観た事ないのです。このブログではよく「観てないのに観たようなフリして書いてる」ということがよくあります。慣れてください(開き直り)
にしても外国人がニッポンに現地妻を作りたがるのは、『蝶々夫人』からの伝統なんでしょうかね~
フグはおいしいらしいですけど、ちゃんとした店で食べましょう。そういえばわたしフグ食べたことない…
Posted by: SGA屋伍一 | October 08, 2013 11:02 PM
>メビウスさん
こんばんはー
わたしの記憶が確かならば原作ではよく忍者は出てきます。日本だけに限らず世界規模で活躍?してます。
侍といえばシルバーサムライは原作ではあんなではなく、もっとちゃんとした人が中に入ってる上にロボじゃなくアーマーです。しかしねえ、「シルバーサムライ」って名前もうちょっと変えられなかったのかな(^^;
ヤクザはどうだったかな… ちょうどいま元になったエピソードの邦訳が出たんで確認したいところですが、最近邦訳アメコミたくさん出版されてるので、なかなか手が回りません
Posted by: SGA屋伍一 | October 08, 2013 11:09 PM
伍一くん☆
ちょいお久しぶり~
さすがアメコミ詳しい伍一くん。
私的には結構頑張っていたと思うのだけど、そこそことんでもニッポンになっていたのは、原作がそうなのだから仕方ないですよねー
それに忍者いるし(映画村とか)笑
「47RONIN」なんて、町人はバカ殿メイクらしいし?
時系列はそうだったのですね・・・
なんかラストに二人が一緒に出てきたし、あれ?と思っていたのでした。
下の絵はぼのぼののキャラだったのねー?(爆)
結構好きなのに、ぼのぼの・・・
Posted by: ノルウェーまだ~む | October 09, 2013 11:06 AM
>ノルウェーまだ~むさん
こんばんはー こちらもご無沙汰しててすみませぬ
今年の主だったアメコミ映画もこれでほぼ終わってしまってなんだかさみしいです
元になったエピソードはわたし読んでないんですけど、たぶん映画よりひどいですw
『47RONIN』はもはや日本が舞台というより似ても似つかない異世界が舞台のようで… めっちゃワクワクします!(あれ?)
教授はファイナル・ディシジョンで別の人に乗り移ったはずなのに普通にもとの姿で出てきましたね。その辺どうこじつけるのか楽しみです
Posted by: SGA屋伍一 | October 09, 2013 10:10 PM
今更、見ました。
ヤクザ最強で笑いました。
ヤクザと忍者だけで日本人口の1割くらいいそうです。後、1割くらいはみんなパチンコ屋にたむろしてる。残りの8割が普通にサラリーマン。
「グズリ」はまあ、いきなりあんな風に使われちゃうと分かんないからわざと異訳して「くまちゃん」で良かったんじゃないですかね。そんな使い方なんだから。矢志田の爺ちゃんが「この、くまちゃんめ」なんて言ったらおかしいか。
Posted by: ふじき78 | March 31, 2014 10:18 AM
>ふじき78さん
いやーん、見ちゃったのね!
まあわたしらもアメリカ国民の半分は黒人で、スペイン男子のほとんどは闘牛士で、中国人は全員カンフーの達人だと思い込んでるからその辺はお互い様ではないでしょうか
>矢志田の爺ちゃんが「この、くまちゃんめ」なんて言ったらおかしいか。
「熊八」よりかはいいかもしれません…
Posted by: SGA屋伍一 | March 31, 2014 10:03 PM