あの世に逝っチャオ! パトリス・ルコント 『スーサイド・ショップ』
実に数年ぶりかという三日連続更新に挑戦。いったいオレは何をそんなに無駄にがんばっているのだ!? 今回ご紹介するのはフランスの巨匠パトリス・ルコントが挑戦した3Dアニメ映画『スーサイド・ショップ』。ではまずあらすじから。
ますます自殺が急増していくフランス社会。人々は楽に死ねる方法を求めてミシマ・トゥヴァシュの経営する自殺用品専門店「スーサイド・ショップ」を訪れる。巧みな弁舌で客に賞品を勧めるトゥヴァシュ一家だったが、そんな商売をしているゆえか彼ら自身も「早く死にたい」という思いに囚われ続けていた。そんなトゥヴァシュ夫妻に三人目の子供が生まれる。赤子のころから松岡修造なみに明るいその次男アランは、何かと前向きな発言をしては家族を苛立たせるのだった…
パトリス・ルコントといえばこんなわたしでも名前くらいは知ってる(逆に言うと名前くらいしか知らない)大御所であります。着実にキャリアと評価を築いてきた名匠が、60半ばになってなぜまたそんなチャレンジを?と思ったら、この方、若かりしころは漫画家としても活躍されたそうで。アート系の叙情豊かな作品を撮り続けながら、心のどこかでずっと「漫画映画作りてえよな~」と思っていたのかもしれません。
試しに監督の代表作のあらすじざっと調べてみたんですが、文面だけ読むとなんというかこう、暗いエッチな恋物語が多い感じですね…
それらに比べると『スーサイド・ショップ』は暗い題材を扱いながらも絵や音楽は素っ頓狂だし、恋愛要素は申し訳程度だし、やっぱり監督のこれまでのスタイルとはかなり違うんでないかな、と憶測します。
考えてみれば「自殺」というモチーフをギャグアニメで表現するということは、不謹慎この上ないことかもしれません。しかし悲しいことを悲しく語ることは、苦悩している人をますます暗い方向に追いやってしまうのもまた事実。悲しいことから少し距離をとって笑い交じりに語ったほうが、180度向きを変えられなくても、気分転換やなにかのきっかけになるような気がします。単にルコント監督が悪趣味なだけ、という疑いもぬぐえないのですが…
不謹慎なことを笑い飛ばすといえば、星新一氏がエッセイ『進化した猿たち』で紹介してたアメリカのひとコマ漫画もそうだったなあ。異様なまでに自殺とか死刑をネタにした作品が多くて(^^; 『スーサイド・ショップ』は教訓的なメッセージも一応ありますが、「絶対自殺はダメ!」と訴えるわけでもないし、どちらかといえば「きわどいネタでニヤニヤ笑わせてやるぜ!」というのがメインのような気がします。
さて、今年は『しわ』『パリ猫、ディノの夜』、そして本作と立て続けに3作欧州の渋い絵アニメが公開されました。コマ撮りアニメなんかは割りとコンスタントに紹介されつづけてきましたが、外国の絵アニメ公開が重なるのは最近では珍しいですよね。
そしてフルCGアニメが幅を利かせるに従い、ヨーロッパの手描きアニメ映画はだいぶ対象年齢があがったような… 欧州では元々芸術性の高い大人向けの漫画が多かった、という土壌もありましょうが。一昨年の『イリュージョニスト』や今年の『しわ』なんか老境の寂しさを切々と語った内容ですからね。子供たちが観て楽しめるかといえばはなはだ疑問です。
『スーサイド・ショップ』も子供が主人公とはいえ出てくる人がかたっぱしからバタバタ自殺してしまう話なので、お子様が観たらトラウマになってしまうかもしれません。なんでか必然性のないストリップシーンまであったし(^^; そこはやっぱりエッチな監督さんだなあ、としみじみ感じ入りました。そういえば『しわ』『パリ猫、ディノの夜』でも印象深いおっぱい描写がありました。あちらのアニメ作家はみんなスケベと見てまちがいないでしょう。
3D効果に関していえば高いところから俯瞰したようなカットが多く、そういうシーンでは鳥のようになってパリの街を見下ろすような感覚が味わえます。ツイッターでは「Xパンダ方式のためか画面が暗い」という評判が多く、それなりの覚悟をもって臨んだせいか思ったほどには暗く感じませんでした。あと終映後3Dメガネをはずすと視界が急にぱーっと明るくなって、映画の内容とシンクロするんですよねw 3D方式にしたのはそういう狙いもあるものと思われます(ねーよ)。
『スーサイド・ショップ』はこれから順次地方を回っていくようですが、3Dで観られるのは有楽町だけなんだな… なんか貴重な体験したような。
というわけで無事に三日連続更新達成いたしました。でもまだ感想書いてない映画5本もあるんですよね(^^; がんばるしかない!(誰に期待されてるわけでもないのに…)
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