水の音を聴け オラ・シモンソン ヨハネス・シェルネ・ニルソン 『サウンド・オブ・ノイズ』
10月も今日でおしまい。秋もいよいよ終盤にさしかかってきましたが、みなさん、それぞれに「芸術の秋」を楽しんでおられると思います。今日はこんなヘンテコな芸術もあるんだよーということを教えてくれるヘンテコな映画をご紹介します。『サウンド・オブ・ノイズ』、まずはあらすじから。
町に突如として現れた奇妙な六人組。彼らはあらゆるものを楽器に見立て、病院や銀行で周りの迷惑も顧みずゲリラ的に演奏を始める。事件を担当することになった刑事アマデウスは、彼らを追ううちに次第に自分のトラウマである「音痴」と向き合わざるを得なくなっていく。
わけわかりませんよね… 本当に今年観た中でも1,2を争うくらいヘンテコな映画でした。とはいうものの、1位はやはり『ホーリー・モーターズ』かなあ。『ホーリー~』にはこれといってストーリーらしきものはありませんでしたが、こちらには一応それなりの起承転結があるので。
この映画で特によくわからないのはやはり美貌の音楽家サナが率いる6人のミュージシャンたちです。その演奏形態自体も相当突飛ですが、彼らはあまり「聴衆」というものを想定してません。普通演奏家といったらコンサートを告知して、観衆を集め、その上で演奏を披露するものだと思いますが、彼らは聴いてる人がいようがいまいがおかまいなしにパフォーマンスを始めます。登山家の言葉で「そこに山があるから上る」というのがありますが、さしずめ「そこにちょうどいい材料があるか、楽器にする」ってなもんでしょうか。
わたくしがごとき凡人は音楽にしろ絵画にしろ文学にしろ、「受け手」があって初めて成り立つものという観念があるのですが、表現者たちにとってみれば別に見たり聴いたりする人がいなくても、自分たちが求めているものが得られて、新たなる高みに立てればそれでいいのかもしれませんね。
ただサナたちがやっていることは芸術であると同時に、恐ろしく手の込んだ、かつはた迷惑なピンポンダッシュのように見えなくもありませんw 見ようによっては相当くだらない。だからこそ面白いんですけどね(^^;
そんな音楽テロリストを追うアマデウス刑事は、音楽が嫌いだったはずなのに、やがて彼らに触発されて自身も自分なりの音楽を求めはじめます。クライマックスで奏でられるアマデウス氏の「音のない音楽」は実に壮大で意表をつかれます。このシーンだけでも一見の価値があるかと。どうもCGを使ってる風ではないのですが、だとしたらいったいどうやって撮ったのだろう?と思わせられるようなシーンでした。
こんなヘンテコな映画を作ったのはどこの国だろう?と思いながらずっと観ておりました(ろくな前知識も仕入れず鑑賞に臨んだので…)。都市名が出てくればだいたいどこの国かわかるんですけど、結局そういったヒントはないまま終了。終映後、映画館にはってあったポスターで確認しました。スウェーデンでしたね。
確かによく言えばけばけばしくない、悪く言えば地味なあの町並みはいかにも東欧っぽかったです。
スウェーデン映画といえばポルノと『ミレニアム』が有名ですが(すいません)、そこへ来てまたこんなヘンテコな映画を観た日には、ますますスウェーデン=アブノーマルの印象を深めてしまうわたしでした(かさねがさねすみません)。
『サウンド・オブ・ノイズ』はこちらでもわりと遅れてかかってたので、残る上映館は山形、兵庫、それに下高井戸くらいでしょうか。くわしくは公式サイトをごらんください。「他に類を見ないような映画が観たい!」という方におすすめです。
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