シティ・オブ・バード カルロス・サルダーニャ 『ブルー 初めての空へ』
アメリカで二週連続1位となり大ヒットを記録するものの、日本ではなぜかDVDスルー、それから1年半以上経って突然イオンシネマ系列で限定上映… 本日はそんなよくわからない形式ではありますが、ともあれ公開がめでたいCGアニメの傑作『ブルー 初めての空へ』(原題は『Rio』)をご紹介します。
ブラジルで生まれるも密猟者にさらわれ、遠くミネソタの地まで連れてこられた一羽のインコ。さいわいそのインコは優しい女の子リンダに拾われ、ブルーと名づけられる。一人と一羽は無二の親友となり共に成長するが、ブルーは幼い頃の出来事が原因で鳥なのに空を飛べないままだった。
そんなある日、リンダの営む古書店にチュリオと名乗る風変わりな学者が訪ねてくる。彼はブルーが絶滅寸前のアオコンゴウインコであると語り、ブラジルでもう一羽保護されている同じ種の鳥とつがわせようと提案する。
鳥派の人には大変申し訳ないんですが、わたくし、鳥は飼うより食べるほうが好きです。だからこの映画もやっとこ公開されても「ぜひ観たい!」ってわけではなかったんですが、ちょうどタイミングがよかったし、鳥になってブラジルの大空を飛ぶのも悪くないな…なんて気になってきて海老名のイオンシネマまで行ってきたのでした。
で、確かに空のシーンはそれなりにありましたが、主人公のブルーが「飛べない」という設定のため「飛んでる」というより「落ちてる」シーンの方が多い(^^; よくも悪くも意表を突かれた、という感じでした。
そんなやや期待とは違った映画でしたが、それを補ってあまりある魅力がたくさんありました。まずブルーがブラジルに戻るまでは淡々と進んでいくんですが、彼が再び窃盗団に捕まってからはノンストップで追跡劇とアクションが展開されていきます。
あとこのアニメにはブラジルはリオデジャネイロの魅力がぱんぱんに詰まっております。コパカバーナ・ビーチに始まりファべーラ、スカイダイビング、市場、路面電車、と頻繁に場面が変わり、あたかもリオを観光してるかのような気分にさせてくれます。そしてクライマックスはもちろんリオ最大のイベントであるカーニバルであります。リオのカーニバルがアニメでこんなに丁寧に描かれたのはたぶん初めてじゃないでしょうか。
こういう山場への盛り上げ方は少し前までピクサーの独壇場だったわけですが、最近は『シュガー・ラッシュ』や『怪盗グルー』などむしろ非ピクサー作品の方ががんばってる気がします。色とりどりのヘンテコな物体が画面をうじゃうじゃと埋め尽くして大騒ぎを繰り広げる。このカーニバルな感覚こそが、まさしくピクサーの醍醐味だったのではありますまいか。なあ、ピクサー!
えー、ピーさんちも負けずに盛り返してほしいものです。先の『モンスターズ・ユニバーシティ』は悪くなかったですけどね。
あとこの映画で特に感じ入ったのは作者のメガネっ子への愛情ですね。ブルーの保護者であるリンダが最近の日本アニメに出てくるようなラブリーなメガネっ子なんですが、ずっとお堅いムードだったのにカーニバルでは肌もあらわな衣装で目を楽しませてくれます。ただ、ぬるい恋愛漫画にあるような「メガネを取ったらそんなに可愛かったんだ…」みたいな描写はありません。最初から最後まで徹底してメガネははずしません。実に見上げたメガネ愛であります。
『セイ・ユー、セイ・ミー』や『マシュケナダ』『イパネマの娘』とちょっと懐かしめのナンバーが幾つかかかってたのもツボでした。
エンドロールで「映画の半券でDVDが500円で買えるよ!」という宣伝があり、思わずつられて買っちゃいました… わたしDVDって買ってもあんまし観ないんですけどね…
『ブルー 初めての空へ』は今週末くらいまでイオンシネマ系列で上映中。吹替え限定ですがこれは絶対スクリーンで観た方がいい作品です。来るべきブラジルW杯&五輪の予習のためにぜひ。
ちなみに現在本国では続編が制作進行中。果たしてこちらは日本で普通に公開されるでしょうか…
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