天国でなぜ悪い ニール・ブロムカンプ 『エリジウム』
驚くべきことに一日に二回目の更新です! まあ前の記事は昨日ほとんど仕上がってたからなんですが…
エビと人間の友情を描いた『第9地区』で、全世界を感動に包んだニール・ブロムカンプ監督の第二作。『エビジウム』… じゃなかった『エリジウム』、紹介いたします。
近未来、地球は人口増加のため荒廃の一途をたどっていた。富裕層は人工衛星エリジウムに移り住み、快適な環境や行き届いた医療の恩恵に浴していたが、人類の大部分は貧困と病気と犯罪に苦しむ日々を送っていた。
ロサンゼルスに住む元窃盗犯のマックスは地道に働こうと努力していたが、ある時工場の事故で大量の放射線を浴び余命5日と診断されてしまう。
彼が生き延びる道はエリジウムへ行き、どんな病気も治せるという医療ポッドの中へ入ること。マックスは裏社会を仕切る「スパイダー」の手を借り、天空の聖域へたどりつく術を探し求める。
本当は『第9地区』のことは忘れて、この作品はこの作品でわけて評価してあげるのが公平ってもんなんでしょうね… だけどどうしても観てると『第9地区』のあれやこれやが思い出されてしまってw それだけあの作品が面白かったってことなんですけど。というわけでもう開き直って「ここが『第9地区』と似てた!」ということをネチネチとあげつらっていきたいと思います。
☆格差社会
っていうかはっきり言ってアパルトヘイトですね。ハリウッドに行ってもこのあたりを主なテーマに据えてくるあたり、ブロムカンプ監督にとってまだまだ語り足りない問題だったのでしょう。
☆パワードスーツ
パワードスーツとはなんぞや。まあ普通に強化服とか作業用マニピュレーターのことですね。人体にぴったりフィットしたものと、車くらいのサイズで操縦者の顔が見えてるものに分けられます。車以上のサイズで操縦者の顔が隠れてるものは、それはもう「ロボ」と呼ぶべきでしょう。あれ? 第9地区のアレも顔が隠れてたっけ? …まあいいや(おーい)
前作ではちょびっとしか活躍しなかった強化スーツですが、今回はお話の8割くらいで大活躍です。ただあまりにも見かけが貧弱というか、はっきり言って大リーグ養成ギブスなので見ていて涙を誘われます。しかもアイアンマンみたくするっと着脱できるわけではなく、脊髄かどこかにボルトを打ち込んで装着するので風呂に入るのも大変そうです。でもまあこの貧弱な人口外骨格がこの映画の一番の見所かもしれません。まさにこの映画でしか見られないアイテムですからね。
ブロムカンプ監督がパワードスーツにこだわるのは、恐らく彼が『エイリアン2』の大大大ファンだからであると思われます。あの映画のクライマックスでジャキーン!と登場するパワーローダーに強い憧れがあるんでしょうね~
☆変質していく肉体への恐怖
『第9地区』ではエビになっていく恐怖が描かれていましたが、こちらでは放射線でボロボロに朽ちていく体への焦燥が主人公を駆り立てます。ゲロを吐いたり血がじくじく染み出てくる描写も好きみたいですね、ブロムカンプさん。この辺はジェームズ・キャメロンというよりデビッド・クローネンバーグのスタイルに近いものがあるような。脳内に仕込まれたデータをめぐっての攻防という要素もサイバーパンクでクローネンっぽかったです。
さらにあげるなら
☆シャールト・コプリー
☆人体爆散描写
☆逃亡劇
☆自分のことばかり考えていた主人公がやがて…
というところも共通しています。なんとも性質のはっきりした監督さんですね。でもわたしはそういうクリエイターの方が好みです。
あと『第9地区』で画面のあちこちでエビさんがわきわき動いていたように、『エリジウム』では無愛想なロボさんたちがたくさんコキコキ働いてます。わたしどっちかといえばエビ人間よりロボの方が好きなので、彼らを眺めているだけでとても幸せな気分になれました。
うーん。今回はろくなこと書いてないなw (いつもそうじゃねえか)
マックスが大暴れして金持ちどもに一泡ふかせるお話は非常に楽しかったんですが、終盤での展開では「またこれか…」と思ってしまったりもして。映画いっぱい観すぎなのがよくないんでしょうね、きっと。二十年前のわたしだったらもっと純粋に感動したと思います。
あと、「戦争その他で地球は住みにくい星になりました」で始まる映画、今年もうかれこれ5,6本目ですね(笑) みんなどうしてそうネガティブなの!? もっと明るく行こうよ! 明るくさあ!
そんな『エリジウム』は公開があと1,2週というところでしょうか。ロボ・メカの好きな人は観ておいて損はない…というか大変お得ですので、ぜひごらんください。
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Comments
>映画いっぱい観すぎなのがよくないんでしょうね、きっと。二十年前のわたしだったらもっと純粋に感動したと思います。
これすごいわかります・・・自分なんかもオリジナリティのあるお話を作るために、あえて名作は見ないようにしてたりします。とはいえ、とうとう黒澤明見ちゃいますけど(^_^;)
ハインラインやHGウェルズは老後のお楽しみかなあ・・・(^_^;)
Posted by: 田代剛大 | October 16, 2013 10:44 PM
>田代剛大さん
映画だけじゃないや… 漫画やアニメもそうでしたw
だからこそ元ネタがあってもそうと気づかせない上手なアレンジをしてる作品はひいきしたくなりますね
『エリジウム』の終盤はややその辺が安直でしたw
Posted by: SGA屋伍一 | October 17, 2013 10:25 PM
伍一くん☆こちらにも
やっぱり皆さん、「第9地区」に似てる~と言いますねぇ。
私はもうこの監督の譲れないその部分が好きですわ。
これからもずっとこれを隠しテーマ(隠してないか・・・)にしてがんばっていってほしいものです。
あと映画いっぱい観すぎて、楽しめる部分が少なくなっちゃっているのは、実際私もそうですけど残念ですよね。
たまーに観て、「面白かったー♪」と言っている友人をみて、はっとさせられる事もあります。
Posted by: ノルウェーまだ~む | October 19, 2013 10:55 PM
>ノルウェーまだ~むさん
こちらも速攻でお返事します
ブロムカンプ監督の次回作は「チャッピー」というロボットの話になると聞きました。きっとロボットがこき使われて差別されるとかそんな内容かと思われます。しかしチャッピーって名前かわいいな…
あとまたシャールト・コプリーが出るそうですw
>たまーに観て、「面白かったー♪」と言っている友人をみて、はっとさせられる事もあります。
見習いたいですね… でも正直「愛する女のために笑顔で死んでいく」パターンと、「異次元に爆弾放り込んで逃げてくる」パターンはしばらく打ち止めにしてほしいなあ。「地球は戦争その他で住みにくい星になりました」という話も(^^;
Posted by: SGA屋伍一 | October 19, 2013 11:04 PM
> 地球は戦争その他で住みにくい星になりました
でも、その中でも健気に生きる少女が
監督次回作「エリジウム2 in おしん」というのはどうでしょう。
Posted by: ふじき78 | October 23, 2013 09:17 AM
>ふじき78さん
けなげな女の子が「この医療ポッドでおっかあを治してくだせえ! おねげえするっす!」とがんばるわけですね
あるいはロボット製造工場で酷使されるとか
Posted by: SGA屋伍一 | October 24, 2013 10:03 PM