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October 31, 2013

水の音を聴け オラ・シモンソン ヨハネス・シェルネ・ニルソン 『サウンド・オブ・ノイズ』

Img1_6003110月も今日でおしまい。秋もいよいよ終盤にさしかかってきましたが、みなさん、それぞれに「芸術の秋」を楽しんでおられると思います。今日はこんなヘンテコな芸術もあるんだよーということを教えてくれるヘンテコな映画をご紹介します。『サウンド・オブ・ノイズ』、まずはあらすじから。

町に突如として現れた奇妙な六人組。彼らはあらゆるものを楽器に見立て、病院や銀行で周りの迷惑も顧みずゲリラ的に演奏を始める。事件を担当することになった刑事アマデウスは、彼らを追ううちに次第に自分のトラウマである「音痴」と向き合わざるを得なくなっていく。

わけわかりませんよね… 本当に今年観た中でも1,2を争うくらいヘンテコな映画でした。とはいうものの、1位はやはり『ホーリー・モーターズ』かなあ。『ホーリー~』にはこれといってストーリーらしきものはありませんでしたが、こちらには一応それなりの起承転結があるので。

この映画で特によくわからないのはやはり美貌の音楽家サナが率いる6人のミュージシャンたちです。その演奏形態自体も相当突飛ですが、彼らはあまり「聴衆」というものを想定してません。普通演奏家といったらコンサートを告知して、観衆を集め、その上で演奏を披露するものだと思いますが、彼らは聴いてる人がいようがいまいがおかまいなしにパフォーマンスを始めます。登山家の言葉で「そこに山があるから上る」というのがありますが、さしずめ「そこにちょうどいい材料があるか、楽器にする」ってなもんでしょうか。
わたくしがごとき凡人は音楽にしろ絵画にしろ文学にしろ、「受け手」があって初めて成り立つものという観念があるのですが、表現者たちにとってみれば別に見たり聴いたりする人がいなくても、自分たちが求めているものが得られて、新たなる高みに立てればそれでいいのかもしれませんね。
ただサナたちがやっていることは芸術であると同時に、恐ろしく手の込んだ、かつはた迷惑なピンポンダッシュのように見えなくもありませんw 見ようによっては相当くだらない。だからこそ面白いんですけどね(^^;

そんな音楽テロリストを追うアマデウス刑事は、音楽が嫌いだったはずなのに、やがて彼らに触発されて自身も自分なりの音楽を求めはじめます。クライマックスで奏でられるアマデウス氏の「音のない音楽」は実に壮大で意表をつかれます。このシーンだけでも一見の価値があるかと。どうもCGを使ってる風ではないのですが、だとしたらいったいどうやって撮ったのだろう?と思わせられるようなシーンでした。

こんなヘンテコな映画を作ったのはどこの国だろう?と思いながらずっと観ておりました(ろくな前知識も仕入れず鑑賞に臨んだので…)。都市名が出てくればだいたいどこの国かわかるんですけど、結局そういったヒントはないまま終了。終映後、映画館にはってあったポスターで確認しました。スウェーデンでしたね。
確かによく言えばけばけばしくない、悪く言えば地味なあの町並みはいかにも東欧っぽかったです。
スウェーデン映画といえばポルノと『ミレニアム』が有名ですが(すいません)、そこへ来てまたこんなヘンテコな映画を観た日には、ますますスウェーデン=アブノーマルの印象を深めてしまうわたしでした(かさねがさねすみません)。

081031_183135『サウンド・オブ・ノイズ』はこちらでもわりと遅れてかかってたので、残る上映館は山形、兵庫、それに下高井戸くらいでしょうか。くわしくは公式サイトをごらんください。「他に類を見ないような映画が観たい!」という方におすすめです。


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October 25, 2013

恐怖のバナナ軍団の逆襲 ピアー・コフィン クリス・ルノー 『怪盗グルーのミニオン危機一発』

Brnebm7ciaajzfnバンバンバーババンバンババンバン バンバンバーババンバンババンバン(バナナ~~~ア~~~) バンバンバーババンバンババンバン バンバンバーババンバンババンバン(ポテト~~~オ~~~) バンバンバーババ… 
失礼しました。怪人グルーとその配下のミニオン軍団の活躍を描く待望の第二作。『怪盗グルーのミニオン危機一発』、ご紹介いたしましょう。ちなみに前作の感想記事はコチラ

いろいろあって三人の孤児を引き取った怪盗グルー。彼は子供たちのために悪党稼業を引退し(タイトルに偽りありじゃねえか!)、おいしいゼリーの発明に精を出していた。
そんなグルーのもとにある日「世界反悪党同盟」のエージェント・ルーシーがやってくる。ルーシーとその上司が言うには、極秘に開発されていた生物を凶暴化させるウィルスが何者かにより強奪されたとのこと。彼らは元怪盗のグルーなら悪党の手口に詳しかろうということで、その調査を依頼するのだが…

鼻が異様に突き出たグルーと、彼を取り囲む無数の楕円状の生き物のビジュアルが強烈だった第一作。三年経ってもそのヘンテコさは少しも色あせていません。
前作では名うてのひねくれ者だったグルーが少しずつ「真実の愛(笑)」に目覚めていく様子が面白うございました。今回はすっかりいい人になってしまったグルーさんですが、不器用ながらも幸せそうにシングルファーザーをこなしている彼をずっと見ているのもそれはそれで楽しいものです。
ただ子供たちの欲望には際限がありません。ユニコーンの次にはパパを欲しがり、パパの次には何を欲しがるのかといえば、当然ママを欲しがるわけです。しかし幼いころのトラウマのせいでやや女性恐怖症の気があるグルー氏は、周囲がすすめる縁談からひたすら逃げまくります。なんかこれ他人事とはおもえな… いえ、なんでもありません。

えー、そんなストーリーもなかなか痛快ですが、このシリーズのキモはやっぱりストーリーより、ところ狭しとうじゃうじゃ動き回るミニオンたち。今回も多種多様な言語とコスプレと一発ネタで観客たちを楽しませてくれます。
聞くところによるとこのミニオン、監督は最初小さなロボットを想定していたそうです。しかしロボットよりももっと感情豊かにさせたい…ということで考え出されたのが「バナナ人間」。ロボットからバナナ… すごい発想の飛躍ですよね。果たして周囲がそれですぐに納得したのか怪しいところですが、このヘンテコな生き物はいまや大人気となり全米ではトイストーリーのオープニング記録を抜いたというから驚きです。
たしか日本では第一作ってそんなにヒットしなかったんですよね。三週目くらいに見に行った時は観客がわたしと友人たちしかいなくて、貸切状態。「こんな面白い映画をなぜみんな観ないのだ!」とやけになってエンドロールで踊りまくった記憶があります(映写係の人の存在をすっかり忘れていた…)。
ですから今回も興行は厳しいんじゃないかな…と予想していたのですが、これまた驚きの大ヒット。たくさんの子供たちの歓声に囲まれて幸せな気分で鑑賞できました。
思えば今ディズニーランドで荒稼ぎしてるトイストーリーの連中だって、一作目の時は日本ではそんなに人気でもなかったような。それがDVDやTVで繰り返し親しまれるようになって、いつの間にかドラえもんやアンパンマンとも肩を並べるようになっていったわけです。ミニオンたちがこんだけ親しまれるようになったのも同じ経緯でしょう。
ですからわたしは日本の配給会社の方々に言いたい。もうすぐれたキッズ洋画の一作目は、捨石というかコマセのつもりで、儲けは度外視してバンバン公開しちゃいましょう。その時は目立った反応はなくても、やがて月日が経ち続編が製作された時に、そのコマセが実って大収穫となる…はず?
というのは最近キッズ洋画で評価が高くても、なかなかこちらでは公開されないものが多いからなんですよね。『ブルー』は今年になってようやく日の目をみたし、裏『Mr.インクレディブル』として絶賛されてる『メガマインド』はいまだにDVDにすらなっていません。日本でアニメ化された『ビッケ』はDVDスルーで二作目公開ももちろん未定。ほかにも『アステリックス』とか『エピック』とか… ああ、もう!
もう一度言いましょう。キッズ洋画は公開が終了してからが本番です。だからまず公開しないと…!

Bw8ddyiccaaopub…話をミニオン、じゃなくてグルーに戻しまして。長女の恋模様にやきもきしていたグルーさん。この調子だと彼女たちが嫁にいくころには相当大変なことになるでしょう。もし3作目が作られるならその辺にスポットがあてられそうです。
ただそのまえにとりあえずスピンオフ作品『ミニオンズ』の製作が決定しております。これまで以上にバナナ軍団の大活躍が楽しめそう。全米公開は来年末だそうですが、なんとか日米同時にいかないものでしょうか…
『怪盗グルーのミニオン危機一発』はまだまだ全国の映画館で上映中。できたらもう一回観にいきたいところだけど、資格の勉強で11月はあまり余裕がないんだ…


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October 22, 2013

シティ・オブ・バード カルロス・サルダーニャ 『ブルー 初めての空へ』

Hyacinthmacawアメリカで二週連続1位となり大ヒットを記録するものの、日本ではなぜかDVDスルー、それから1年半以上経って突然イオンシネマ系列で限定上映… 本日はそんなよくわからない形式ではありますが、ともあれ公開がめでたいCGアニメの傑作『ブルー 初めての空へ』(原題は『Rio』)をご紹介します。

ブラジルで生まれるも密猟者にさらわれ、遠くミネソタの地まで連れてこられた一羽のインコ。さいわいそのインコは優しい女の子リンダに拾われ、ブルーと名づけられる。一人と一羽は無二の親友となり共に成長するが、ブルーは幼い頃の出来事が原因で鳥なのに空を飛べないままだった。
そんなある日、リンダの営む古書店にチュリオと名乗る風変わりな学者が訪ねてくる。彼はブルーが絶滅寸前のアオコンゴウインコであると語り、ブラジルでもう一羽保護されている同じ種の鳥とつがわせようと提案する。

鳥派の人には大変申し訳ないんですが、わたくし、鳥は飼うより食べるほうが好きです。だからこの映画もやっとこ公開されても「ぜひ観たい!」ってわけではなかったんですが、ちょうどタイミングがよかったし、鳥になってブラジルの大空を飛ぶのも悪くないな…なんて気になってきて海老名のイオンシネマまで行ってきたのでした。
で、確かに空のシーンはそれなりにありましたが、主人公のブルーが「飛べない」という設定のため「飛んでる」というより「落ちてる」シーンの方が多い(^^; よくも悪くも意表を突かれた、という感じでした。
そんなやや期待とは違った映画でしたが、それを補ってあまりある魅力がたくさんありました。まずブルーがブラジルに戻るまでは淡々と進んでいくんですが、彼が再び窃盗団に捕まってからはノンストップで追跡劇とアクションが展開されていきます。
あとこのアニメにはブラジルはリオデジャネイロの魅力がぱんぱんに詰まっております。コパカバーナ・ビーチに始まりファべーラ、スカイダイビング、市場、路面電車、と頻繁に場面が変わり、あたかもリオを観光してるかのような気分にさせてくれます。そしてクライマックスはもちろんリオ最大のイベントであるカーニバルであります。リオのカーニバルがアニメでこんなに丁寧に描かれたのはたぶん初めてじゃないでしょうか。

こういう山場への盛り上げ方は少し前までピクサーの独壇場だったわけですが、最近は『シュガー・ラッシュ』や『怪盗グルー』などむしろ非ピクサー作品の方ががんばってる気がします。色とりどりのヘンテコな物体が画面をうじゃうじゃと埋め尽くして大騒ぎを繰り広げる。このカーニバルな感覚こそが、まさしくピクサーの醍醐味だったのではありますまいか。なあ、ピクサー!
えー、ピーさんちも負けずに盛り返してほしいものです。先の『モンスターズ・ユニバーシティ』は悪くなかったですけどね。

あとこの映画で特に感じ入ったのは作者のメガネっ子への愛情ですね。ブルーの保護者であるリンダが最近の日本アニメに出てくるようなラブリーなメガネっ子なんですが、ずっとお堅いムードだったのにカーニバルでは肌もあらわな衣装で目を楽しませてくれます。ただ、ぬるい恋愛漫画にあるような「メガネを取ったらそんなに可愛かったんだ…」みたいな描写はありません。最初から最後まで徹底してメガネははずしません。実に見上げたメガネ愛であります。

Fax『セイ・ユー、セイ・ミー』や『マシュケナダ』『イパネマの娘』とちょっと懐かしめのナンバーが幾つかかかってたのもツボでした。

エンドロールで「映画の半券でDVDが500円で買えるよ!」という宣伝があり、思わずつられて買っちゃいました… わたしDVDって買ってもあんまし観ないんですけどね…
『ブルー 初めての空へ』は今週末くらいまでイオンシネマ系列で上映中。吹替え限定ですがこれは絶対スクリーンで観た方がいい作品です。来るべきブラジルW杯&五輪の予習のためにぜひ。
ちなみに現在本国では続編が制作進行中。果たしてこちらは日本で普通に公開されるでしょうか…


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October 18, 2013

ズッコケ超能力三人組 ジョシュ・トランク 『クロニクル』

Crc1『超能力学園MAD』というのも考えました… 昨年初頭に封切りされるや俳優も監督も地味なのに馬鹿ヒットを飛ばし、日本上陸はいつだと期待していたのにこれがなかなかやってこない。結局本国から1年半以上遅れて、首都圏のみ二週間限定というめっちゃ不遇な状況でようやく公開となりました。『クロニクル』ご紹介します。

アンドリューは病身の母と失業中でやさぐれている父を持つ、さえない高校生。学校でも女子からはキモがられい、じめっ子からはいじめられ、鬱屈とした日々を送っていた。ある日アンドリューはためたお金でビデオカメラを買い、身の回りのものをできるだけ記録しておこうと思いつく。
従兄弟のマットから誘われたパーティーでもやはり絡まれて殴られてしまうアンドリュー。彼が木陰でメソメソしていると、マットと人気者のスティーブが奇妙な洞穴があるから撮影してくれと頼みに来る。彼らはその洞穴の中で奇妙に光る巨大な岩石を発見。その翌日からアンドリューたちは手に触れずともものを動かせる「サイコキネシス」の力を身につけてしまう。最初はたわいもないいたずらをして喜んでいた彼らだったが、アンドリューの力は日に日に強大なものとなっていく…

少し前の『ホワイトハウス・ダウン』の記事で「どうしてハリウッドのアクションの主人公はバツイチ子持ちが多いのか」ということを述べましたが、学園系ホラー・SFの主人公はどうしてこう「いじめられっ子のもやしっ子」が多いのでしょう。
『キャリー』『スパイダーマン』『クリスティーン』『シックス・センス』『パラノーマン』『超能力学園Z』etc。
それは恐らく映画を撮ってる監督さんたちが、学生時代そういう肩身のせまい思いをしてきたからでしょうねw 体育会系のスター選手はよほどのことでもない限り、SFホラー映画の監督になったりはしないと思います。
高校のころ学園の人気者から受けた屈辱を、こういう映画を撮ることで鬱憤を晴らしているのでしょう。わたしも似たような立場でしたからその気持ちは大変よくわかります。

あと『キャリー』や『クリスティーン』などがそうですが、「周囲からの抑圧が爆発的なパワーなきっかけとなる」という理由もあるかもしれません。監督は主演のデイン・デハーン君に参考に『AKIRA』を観ろと言ったそうですが、『AKIRA』の鉄男も強大な力を得たのは金田君へのコンプレックスが引き金でしたし。
デイン君演じるアンドリューの力が他の二人よりも明らかに強力なのは、彼にマットやスティーブにはないコンプレックスやストレスがあったから、と見てまちがいないでしょう。

映画を観ていて疑問に思ったのは、なぜ彼はいつもカメラを手放さないのか、ということです。そりゃぶっちゃけこの映画がPOV形式で、そのほうがリアルっぽく見えるから… それが一番の理由なんでしょうけど。
ただわたしは彼がレンズというバリアを通してでなければ人と落ち着いて接することができない、そんな不器用で臆病な性質のゆえかな、という気もしました(こじつけっぽいな(^^;))


以下、中バレで。


力を増すにつれ、どんどん怪物的になっていくアンドリュー。ここで『スパイダーマン』のベンおじさんや『X-MEN』のプロフェッサーXのような人がいたら、彼も道を踏み外しはしなかったかもしれない… と、最初は思いました。でも考えてみればアンドリューにもマットやスティーブといった、ちゃんと心配してくれる友達がいるんですよね。しかし悲しいかな、若さゆえの激情に駆られている時って、そういうありがたい気持ちを気づかなかったり、はねつけてしまったりすることもよくあるのです。
もしあの時カミナリが落ちなかったら、もし彼がマットやスティーブの真心に気づいていたら、もし彼を襲う不幸の連鎖が少しでもずれていたなら… きっとアンドリューはあんな「怪物」にはならなかったんじゃないかな、と思うとなんともやるせない気持ちになるのでした。

そんなひねくれエスパーを好演しているのは春の『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』でライアン・ゴズリングの息子役が印象的だったデイン・デハーン君。殴られていじけて暗い情念を宿す表情が本当によく似合います。殴られるのが様になる俳優といえばジェームズ・マカボイ君がいまのところ筆頭ですが、デハーン君のボコられ芸はまたマカボイ君のそれとは違った味わいがあります。そんなデハーン君の次回作は『アメイジング・スパイダーマン2』のハリー・オズボーン役… 似合いすぎだろwww キャスティングの慧眼にただただ感心するばかりです。
『スパイダーマン』といえば、この映画ライミ版だけでなく漫画の池上遼一版にも非常に近い雰囲気がありました。特異な力が持ち主を幸福にするのではなく、むしろ不幸な方へ追いやり、そして周囲の誰も救うことができないというあたりがね… 詳しくは拙レビューをごらんください。

Crc2これがデビューとなるジョシュ・トランク氏は、次にやはりマーベルの『ファンタスティック・フォー』のリブート版を手がけるとのこと。どっちかといえば暗い『X-MEN』の方が彼の資質にあってる気がしますが、こちらも楽しみです。
『クロニクル』は二週間限定だったはずが新宿のシネマカリテで続映中、さらに首都圏以外の劇場でも拡大公開中でまことにめでたいかぎりです。
でもね、この映画に限っては大スクリーンで観るよりおうちのTVで観た方が臨場感が出るかもしれない(^^; でも日本語DVDが出るまで待てない!という方はぜひ映画館で。


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October 16, 2013

天国でなぜ悪い ニール・ブロムカンプ 『エリジウム』

Fax_2驚くべきことに一日に二回目の更新です! まあ前の記事は昨日ほとんど仕上がってたからなんですが…
エビと人間の友情を描いた『第9地区』で、全世界を感動に包んだニール・ブロムカンプ監督の第二作。『エビジウム』… じゃなかった『エリジウム』、紹介いたします。

近未来、地球は人口増加のため荒廃の一途をたどっていた。富裕層は人工衛星エリジウムに移り住み、快適な環境や行き届いた医療の恩恵に浴していたが、人類の大部分は貧困と病気と犯罪に苦しむ日々を送っていた。
ロサンゼルスに住む元窃盗犯のマックスは地道に働こうと努力していたが、ある時工場の事故で大量の放射線を浴び余命5日と診断されてしまう。
彼が生き延びる道はエリジウムへ行き、どんな病気も治せるという医療ポッドの中へ入ること。マックスは裏社会を仕切る「スパイダー」の手を借り、天空の聖域へたどりつく術を探し求める。

本当は『第9地区』のことは忘れて、この作品はこの作品でわけて評価してあげるのが公平ってもんなんでしょうね… だけどどうしても観てると『第9地区』のあれやこれやが思い出されてしまってw それだけあの作品が面白かったってことなんですけど。というわけでもう開き直って「ここが『第9地区』と似てた!」ということをネチネチとあげつらっていきたいと思います。

☆格差社会
っていうかはっきり言ってアパルトヘイトですね。ハリウッドに行ってもこのあたりを主なテーマに据えてくるあたり、ブロムカンプ監督にとってまだまだ語り足りない問題だったのでしょう。

☆パワードスーツ
パワードスーツとはなんぞや。まあ普通に強化服とか作業用マニピュレーターのことですね。人体にぴったりフィットしたものと、車くらいのサイズで操縦者の顔が見えてるものに分けられます。車以上のサイズで操縦者の顔が隠れてるものは、それはもう「ロボ」と呼ぶべきでしょう。あれ? 第9地区のアレも顔が隠れてたっけ? …まあいいや(おーい)
前作ではちょびっとしか活躍しなかった強化スーツですが、今回はお話の8割くらいで大活躍です。ただあまりにも見かけが貧弱というか、はっきり言って大リーグ養成ギブスなので見ていて涙を誘われます。しかもアイアンマンみたくするっと着脱できるわけではなく、脊髄かどこかにボルトを打ち込んで装着するので風呂に入るのも大変そうです。でもまあこの貧弱な人口外骨格がこの映画の一番の見所かもしれません。まさにこの映画でしか見られないアイテムですからね。
ブロムカンプ監督がパワードスーツにこだわるのは、恐らく彼が『エイリアン2』の大大大ファンだからであると思われます。あの映画のクライマックスでジャキーン!と登場するパワーローダーに強い憧れがあるんでしょうね~

☆変質していく肉体への恐怖
『第9地区』ではエビになっていく恐怖が描かれていましたが、こちらでは放射線でボロボロに朽ちていく体への焦燥が主人公を駆り立てます。ゲロを吐いたり血がじくじく染み出てくる描写も好きみたいですね、ブロムカンプさん。この辺はジェームズ・キャメロンというよりデビッド・クローネンバーグのスタイルに近いものがあるような。脳内に仕込まれたデータをめぐっての攻防という要素もサイバーパンクでクローネンっぽかったです。

さらにあげるなら
☆シャールト・コプリー
☆人体爆散描写
☆逃亡劇
☆自分のことばかり考えていた主人公がやがて…

というところも共通しています。なんとも性質のはっきりした監督さんですね。でもわたしはそういうクリエイターの方が好みです。
あと『第9地区』で画面のあちこちでエビさんがわきわき動いていたように、『エリジウム』では無愛想なロボさんたちがたくさんコキコキ働いてます。わたしどっちかといえばエビ人間よりロボの方が好きなので、彼らを眺めているだけでとても幸せな気分になれました。

Topb13d01うーん。今回はろくなこと書いてないなw (いつもそうじゃねえか)
マックスが大暴れして金持ちどもに一泡ふかせるお話は非常に楽しかったんですが、終盤での展開では「またこれか…」と思ってしまったりもして。映画いっぱい観すぎなのがよくないんでしょうね、きっと。二十年前のわたしだったらもっと純粋に感動したと思います。
あと、「戦争その他で地球は住みにくい星になりました」で始まる映画、今年もうかれこれ5,6本目ですね(笑) みんなどうしてそうネガティブなの!? もっと明るく行こうよ! 明るくさあ!
そんな『エリジウム』は公開があと1,2週というところでしょうか。ロボ・メカの好きな人は観ておいて損はない…というか大変お得ですので、ぜひごらんください。

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そこに希望はアルカディア 荒牧伸志 『キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』

Photo「キャプテン・ハーロック」といえば松本零士が生み出した名キャラクターの一人。わたしのイメージは「『999』の鉄郎がピンチになると助けに来てくれる人」というものですが、そのハーロックがここに来てフルCG映画で復活。今日はあのジェームズ・キャメロンが絶賛したというその劇場版をご紹介します。すでに公開終わっちゃってるようでいささかバツが悪いんですが… ははは…

時は遠い未来、あるいは過去。銀河の果てにまで進出した人類だったが、やがてそれも限界に達し、人々は母なる星・地球へ帰りたいと願うようになる。だが地球には増えすぎた人類を受け入れるだけの余裕はなく、その居住をめぐり凄惨な戦争が始まる。多くの血が流された後、地球は不可侵領域となることが決定。ガイア・サンクションという強力な組織のもと、管理された社会に一人反旗を翻す男がいた。彼の名はキャプテン・ハーロック。彼はなぜ戦い続けるのか。そして彼の戦いは人類になにをもたらすのか。

まずよかったところから。日本の映画でSF巨編をやろうとしてもハリウッドの映画と比べるとどうしても見劣りがしてしまうものですが、CGアニメでならなんとか宇宙スケールのでかい世界が描けるわけです。
この映画でも太陽系をまたにかけて、ばかでかい兵器や大規模な艦隊戦が展開され、中二中年としては大いに胸がわくわくさせられました。ダークマター機関か何か知らないけど爆炎と共にドカーンとワープしてくる「アルカディア号」のビジュアルにも「ウホホッ」と、興奮せずにはいられませんでした。
あと「日本のエンタメはなんでも恋愛をからめがち」とよく批判されますが、ラブはあくまで添え物にとどめられてて、男の骨太なドラマになってたところもよかったです。

ついで悪かった…と言わないまでもちょいとひっかかったところを。こういったセカイ系の話にありがちなことなんですが、「世界を変える!」と息巻くのはいいんですが、その世界に住む一般庶民の描写がちょっとおざなりになりやすいというか。尺の問題でそこまで手が回らないという事情もあるかもしれませんが、こういうのを丁寧にやってくれるとぐっとその世界が身近に感じられるし、厚みが増してくる気がします。
あとわたしハーロックにはそんなに思い入れがあるわけでもないんですが、原作のハーロックは「たぶんこんなことはしないんじゃないかなあ…」というところがありまして。(以下、チョイバレ)


昔のTVシリーズ主題歌に「たとえ明日のない星と知っても やはり守って戦うのだ」という一節があるんですが、途中で思いっきり見捨ててましたよね… 地球。このハーロック、松本先生のキャラというか、脚本福井晴敏先生の小説によく出てくる「人生に疲れたオヤジキャラ」に近い気がしてなりません。そしてそれに血気盛んな青年キャラがぶつかるとなると、これはもう福井小説の王道的展開としか言いようがありませんw まあわたし『亡国のイージス』とか『終戦のローレライ』が大好きなんでそれはそれでいいかなって気もするんですが(^^;

さて、『キャプテン・ハーロック』映像化はコケの歴史でもあります。第一TVシリーズは決して視聴率が高くなく、第二シリーズ『わが青春のアルカディア』はさらにそれより低く打ち切り。その劇場版も興行成績はいまひとつ。近年深夜に第3シリーズがあったようですがわずか13話の上、開始早々松本先生からクレームがついて約一年製作が止まってたとか。
大変残念ながら今回の劇場版もこれまたその歴史をなぞることとなってしまいました。でもそれでも何度も忘れた頃に映像化されてるのがハーロックのすごいところです。いつかまた不死鳥のごとく復活することでしょう。

Photo_2最後に原作版のハーロックの大変勇気づけられた台詞を紹介してしめることといたします。
「男は時々、何をしてもまったく駄目だという時があるのだ。やればやるだけおかしくなる だけですることなすこと無駄な努力‥ふふ、いいか、そういう時、男はな、酒でも飲んで ひっくり返って寝てればいいんだ」
なるほど! というわけでわたしも飲んでひっくりかえって寝ます。ぐびー

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October 09, 2013

あの世に逝っチャオ! パトリス・ルコント 『スーサイド・ショップ』

Scsp1実に数年ぶりかという三日連続更新に挑戦。いったいオレは何をそんなに無駄にがんばっているのだ!? 今回ご紹介するのはフランスの巨匠パトリス・ルコントが挑戦した3Dアニメ映画『スーサイド・ショップ』。ではまずあらすじから。

ますます自殺が急増していくフランス社会。人々は楽に死ねる方法を求めてミシマ・トゥヴァシュの経営する自殺用品専門店「スーサイド・ショップ」を訪れる。巧みな弁舌で客に賞品を勧めるトゥヴァシュ一家だったが、そんな商売をしているゆえか彼ら自身も「早く死にたい」という思いに囚われ続けていた。そんなトゥヴァシュ夫妻に三人目の子供が生まれる。赤子のころから松岡修造なみに明るいその次男アランは、何かと前向きな発言をしては家族を苛立たせるのだった…

パトリス・ルコントといえばこんなわたしでも名前くらいは知ってる(逆に言うと名前くらいしか知らない)大御所であります。着実にキャリアと評価を築いてきた名匠が、60半ばになってなぜまたそんなチャレンジを?と思ったら、この方、若かりしころは漫画家としても活躍されたそうで。アート系の叙情豊かな作品を撮り続けながら、心のどこかでずっと「漫画映画作りてえよな~」と思っていたのかもしれません。
試しに監督の代表作のあらすじざっと調べてみたんですが、文面だけ読むとなんというかこう、暗いエッチな恋物語が多い感じですね…
それらに比べると『スーサイド・ショップ』は暗い題材を扱いながらも絵や音楽は素っ頓狂だし、恋愛要素は申し訳程度だし、やっぱり監督のこれまでのスタイルとはかなり違うんでないかな、と憶測します。

考えてみれば「自殺」というモチーフをギャグアニメで表現するということは、不謹慎この上ないことかもしれません。しかし悲しいことを悲しく語ることは、苦悩している人をますます暗い方向に追いやってしまうのもまた事実。悲しいことから少し距離をとって笑い交じりに語ったほうが、180度向きを変えられなくても、気分転換やなにかのきっかけになるような気がします。単にルコント監督が悪趣味なだけ、という疑いもぬぐえないのですが…
不謹慎なことを笑い飛ばすといえば、星新一氏がエッセイ『進化した猿たち』で紹介してたアメリカのひとコマ漫画もそうだったなあ。異様なまでに自殺とか死刑をネタにした作品が多くて(^^; 『スーサイド・ショップ』は教訓的なメッセージも一応ありますが、「絶対自殺はダメ!」と訴えるわけでもないし、どちらかといえば「きわどいネタでニヤニヤ笑わせてやるぜ!」というのがメインのような気がします。

さて、今年は『しわ』『パリ猫、ディノの夜』、そして本作と立て続けに3作欧州の渋い絵アニメが公開されました。コマ撮りアニメなんかは割りとコンスタントに紹介されつづけてきましたが、外国の絵アニメ公開が重なるのは最近では珍しいですよね。
そしてフルCGアニメが幅を利かせるに従い、ヨーロッパの手描きアニメ映画はだいぶ対象年齢があがったような… 欧州では元々芸術性の高い大人向けの漫画が多かった、という土壌もありましょうが。一昨年の『イリュージョニスト』や今年の『しわ』なんか老境の寂しさを切々と語った内容ですからね。子供たちが観て楽しめるかといえばはなはだ疑問です。
『スーサイド・ショップ』も子供が主人公とはいえ出てくる人がかたっぱしからバタバタ自殺してしまう話なので、お子様が観たらトラウマになってしまうかもしれません。なんでか必然性のないストリップシーンまであったし(^^; そこはやっぱりエッチな監督さんだなあ、としみじみ感じ入りました。そういえば『しわ』『パリ猫、ディノの夜』でも印象深いおっぱい描写がありました。あちらのアニメ作家はみんなスケベと見てまちがいないでしょう。

3D効果に関していえば高いところから俯瞰したようなカットが多く、そういうシーンでは鳥のようになってパリの街を見下ろすような感覚が味わえます。ツイッターでは「Xパンダ方式のためか画面が暗い」という評判が多く、それなりの覚悟をもって臨んだせいか思ったほどには暗く感じませんでした。あと終映後3Dメガネをはずすと視界が急にぱーっと明るくなって、映画の内容とシンクロするんですよねw 3D方式にしたのはそういう狙いもあるものと思われます(ねーよ)。

Img00219『スーサイド・ショップ』はこれから順次地方を回っていくようですが、3Dで観られるのは有楽町だけなんだな… なんか貴重な体験したような。

というわけで無事に三日連続更新達成いたしました。でもまだ感想書いてない映画5本もあるんですよね(^^; がんばるしかない!(誰に期待されてるわけでもないのに…)

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October 08, 2013

旅は道連れ、酔っ払い系 ジャック・ケルアック ウォルター・サレス 『オン・ザ・ロード』

Imageca6njfug「狂ったように生き、しゃべり、すべてを欲しがるやつ ら」「ありふれたことは言わない、彼らは、燃えて、燃えて、燃え尽きる」。多くの作家、芸術家、ミュージシャンに影響を与えたというジャック・ケルアックの『路上』(もちろん名前しか知りません)。その伝説の小説を『モーターサイクル・ダイアリーズ』のウォルター・サレスが映画化。『オン・ザ・ロード』ご紹介します。

第二次大戦後まもなくのNY。父を弔ったばかりの青年、サル・パラダイスは友人の詩人カーロを通じて自動車泥棒として名を馳せたディーンという男と知り合う。あらゆるルールとモラルを破壊し快楽にふけるディーンに、サルはなぜか兄のような親しみを感じる。やがて故郷のデンバーへ帰っていったディーン。サルは彼を追うようにして西部へと旅に出る。以後サルはディーンと共に、時には一人で、広大なアメリカ大陸を旅し続ける。

タイトル・あらすじからもわかるようにいわゆるひとつのロードムービーです。しかし旅以上にくどくどと描かれてるのが彼らの乱交シーン。暇さえあればセックスとドラッグに没頭しております。そういえば先日作家の某原田先生がおくすりの件で逮捕されましたが、ラリリはパンク作家の伝統なのかもしれません。中島らも先生のエッセイにもそういう話多かったし… ただ彼らが単なるジャンキーと違うのは、ラリリの合間にきちんと読書や創作にも情熱を注いでいる点です。

アメリカ文学の著名な旅人といえば、ジャック・ロンドン、ヘミングウェイ、『イントゥ・ザ・ワイルド(荒野へ)』のクリスなどが思い浮かびます。彼らが旅した理由は冒険心であったり、旅することが本能であったからですが、サル=ケルアックが旅をしたのはまた別の理由もあったように思えます。サルは亡き父から地道な労働をしてないことをよく責められていたようです。そして時を同じくしてアメリカはマッカーシズムのもと右方向へ傾いていきます。サルが旅を愛したのはそんな二人の父からのプレッシャーを忘れたかったからではないでしょうか。麻薬にふけることをよく「トリップする」と言いますが、彼にとっては文字通りのトリップも現実逃避の手段だったわけですね。うまいこと言うなあ、オレ(ドヤ顔)。実物のケルアックが本当にそうだったかどうかは原作を読んでみないと断言できかねますが、少なくとも映画のサル・パラダイスからはそんな印象を受けました。

役者で印象に残った人を二方。
まずディーンと着かず離れずの関係を続ける奔放な女、メアリー・ルーを演じるクリスティン・スチュワート。『トワイライト』シリーズで全米のアイドルとなりお金もがっぽがっぽ稼いでるだろうに、こんなどビッチの役をなぜあえてやるのか。出演場面の半分くらいが脱いでるかやってるかという体当たりぶり(もちろん乳首も出してます)。演技派として認められたいと必死なんでしょうかねえ… まだまだ若いんだから、そう無茶をせずともよかろうとおじさんは思いました。
もう一人はサルの親友でディーンにひかれるカーロ。普段はヒゲモジャででかいメガネをかけていて実に野暮ったいんですが、ある場面でヒゲ&メガネをとったらこれが少女マンガから抜け出たような美青年でして。わたしはそっちのケはないですけどうっかり惚れそうになりました。演ずるはトム・スターリッジ。『パイレーツ・オブ・ロック』などに出てたようですが、わたしはこの作品で初めて知りました。

映画を観た後、モデルとなった人物は誰だったのか、その後どうなったのかちょっと調べてみました。これはネタバレになるのだろうか… 自分で調べたいという方は避難されてください。


まずディーンのモデルとなったニール・キャサディ。wikiの記事を丸コピしますと「その奔放で過激な生き様から一冊の本も残さなかったにもかかわらず、友人のケルアック、アレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズ、等ビート・ジェネレーションの作家群やヒッピー等に大きな影響を与えた。1968年、キャサディは裸でメキシコの線路上で死んでいるのを発見されたが、その後も人気は衰えず、死後29年の1997年には彼の生涯を描いた映画『死にたいほどの夜』が発表された」とのことです…
あとヴィゴ・モーテンセン演じるオールド・ブル・リーはやはり『裸のランチ』で知られるウィリアム・バロウズがモデルのようです。バロウズといえばラリッた勢いでウィリアム・テルごっこをやって奥さんを撃ち殺してしまったというエピソードが有名です。映画では危なげな雰囲気を漂わせつつも、よきパパ、よき夫という感じだったのでこれまたショックでありました。

Otr2やっぱりドラッグはよくないですね… と言うのは野暮でしょうか。ともあれ、わたしも原作を読んでみたくなりました。調べたところ河出文庫版が最も入手しやすくリーズナブルなようですが、危なくて削除された箇所も完全復刻したという「スクロール版」の方が面白そうです。高い上に読みにくそうではありますが。
映画の方は東京の新宿武蔵野館で今週いっぱいまで、ほかにこれから静岡、新潟、沖縄、石川、岡山などでかかるようです。旅と乱交に興味ある方はぜひ。

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October 07, 2013

ウルウルヴァリンは二度死なない ジェームズ・マンゴールド 『ウルヴァリン:SAMURAI』

250pxwolverine_on_rockひとつ 人より治りがはやい
ふたつ フジヤマ カレーがうまい
みっつ ミュータントの未来のために
退治てくれよう! モジャ太郎!

X-MENシリーズの最新作は一番人気のあの方がなんと日本へ行って大暴れをするという… 『ウルヴァリン:SAMURAI』ご紹介いたします。

『X-MEN:ファイナル・ディシジョン』での激闘からほどなくして。ウルヴァリンことローガンは彼女の望みだったとはいえ、ジーン・グレイを死なせた自責の念からカナダの山に一人こもっていた。そんな彼の元にユキオ(女子)と名乗る武術の達人がやってくる。彼女はローガンが第二次大戦時日本で知り合った軍人・ヤシダからの使者だった。今は財閥の当主として巨万の富を築いたヤシダだったが、重い病に冒され、この世を去る前にローガンに会いたがっているとユキオは告げるが…

この映画の一番の難所はやはり「ハリウッドが日本を描く」というところですね。文芸作品ならともかくアクションもので向こうさんが日本を舞台にすると、「どこだここは!?」と言いたくなってしまう珍妙な描写が続出するものです。『007は二度死ぬ』『ベストキッド2』『G.I.ジョー バック2リベンジ』『悪魔の毒々モンスター東京へ行く』…
まあそれはそれで楽しかったりもするんですけど。
メガホンを撮るは実力派ジェームズ・マンゴールド監督。『17歳のカルテ』『アイデンティティー』『3時10分、決断の時』『ナイト&デイ』と幅広いジャンルを扱いながら、どれも実に手堅いレベルを維持している豪腕です。果たして彼ならこの難題を乗り越えることができるか? それともマンゴールド監督初の「やっちゃった」作品となるか? 固唾を呑んでスクリーンを見守っておりました。

前半は温かい目で見ればかなりがんばっていたと思います。東京もんは「○○から○○まで○分で行けるわけがない」とか言ってましたが、そんなこと地方の人間にはどうでもいいことです!
ただですね… あのアメコミヒーローのウルヴァリンがパチンコ屋さんとかラブホテルとかをうろちょろしてると、リアルであってもそれだけでギャグになってしまうのですね… こうなったらもう開き直ってメイド喫茶やダイバーシティにも行って欲しかった気がします。
そして後半に入るとダメ押しのように忍者が登場します。「いまの日本に忍者なんていないから!」と抗弁しても米人の耳には届きません。ていうかいま世界中が日本に最も期待してるものはやはり忍者ですからね… ここは映画屋としてもマンゴールド氏も出さざるを得なかったのでしょう。もうわたしも「日本に忍者はいる」っていうことでいいような気がしてきました。

えー、真面目な見所についても少々。この映画では日本映画でも珍しい「新幹線でのアクション」が拝めます。新幹線ってなかなか撮影許可がおりないらしいんですね。今回もかなり難しかったそうです。ほんでなんとか許可が降りたのかCG・セットでごまかしたのか… 忘れました。皆さんごじぶんで調べられてください。
もうひとつは今や世界的なアクターとなった真田広幸氏の迫真の殺陣です。ローガン演じるヒュー・ジャックマンいわく「ヒロは優れた武芸者だから刀を振り回しても当たる寸前でぴたっと止めることができるんだ。残念ながら僕はそうはできずヒロにけっこう当ててしまった」 っておい! ヒュー!
しかし真田さんも次は『47RONIN』とかみょうちきりんな映画への出演が増えてきました。大丈夫かしら? でも彼もデビュー当時は『伊賀忍法帖』や『魔界転生』で忍者の役やってたので、もしかしたら原点回帰なのかもしれません。

アメコミファン・動物好きからのどうでもいい解説をふたつばかり。
本作のメインヒロイン、ヤシダマリコさんについて。ヤシダってあまり聞かない名字ですよね。漢字で書くと矢志田だったかな。彼女の従兄弟に「シロウ・ヨシダ」という男がいる(X-MENに入り損ねた経歴アリ)ことを考えると、どうもライターが「ヨシダ」と「ヤシダ」を聞き間違えたという疑惑がぬぐえません。
ちなみに原作ではマリコは一度ローガンとめでたく結婚するのですが、色々あってフグ毒で自決してしまうという悲劇のヒロインであります。そこはアメコミなのでそのうちひょっこり生き返る可能性も大いにありますが。
あと劇中でローガンが突然「クズリ」と呼ばれることに「なんじゃそら?」と思われる方もおられるでしょう。これまたあまり聞かない名前ですが、「ウルヴァリン」はこの「クズリ」という動物名の英語訳であります(前の『ウルヴァリン』で月の妖精がウンタラ、とか語られていたのは一体なんだったのでしょう…)。このクズリという生き物、小柄ながらクマをひきずり倒すという獰猛さで知られております。元々ローガンにこの名前が与えられたのは原作の彼が小男だからなんですけど、ヒュー・ジャックマンがやってるとあまりピンと来ませんね。そしてなにより「クズリ」と言われると『ぼのぼの』という漫画でウンコを垂れながら泣いていた動物が思い浮かんでしまって困りものです。

N1二作前日談が続いていたX-MENですが、この『ウルヴァリン:SAMURAI』でようやく『ファイナル・ディシジョン』から話が先に進み始めました。一応時系列順に列挙いたしますと
ファースト・ジェネレーション→ウルヴァリン:X-MEN ZERO→1→2→ファイナル・ディシジョン→ウルヴァリン:SAMURAI となります。
そしていよいよ来年はX-MENのスターたちが一同に会す『デイズ・オブ・ザ・フューチャー・パスト』が公開。これは「過ぎ去りし未来の日々」という訳でいいのかな…
名だたる名優たちが再び結集するため予算は相当なものになるようですが、果たしてモトは取れるのでしょうか! そんな意味でもドキドキです!


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October 02, 2013

超科学忍法帖 佐藤東弥 『ガッチャマン(GATCHAMAN)』

Gtm1だれだっ だれだっ だれだ~ 空の彼方に踊る影♪ の曲で有名なあのヒーローが、実写映画となって33年ぶりに復活いたしました。『ガッチャマン』、ご紹介いたします。

近未来、人類は突如として現れた物理的攻撃をほぼ受け付けない超人類「ギャラクター」によって追い詰められ、地球の覇権をほぼ奪われてしまった。しかし人類はとある遺跡から発掘された謎の青い石が、ギャラクターのバリアーを中和することを発見。青い石を操るエージェント「ガッチャマン」を育成し、ギャラクターへの最終兵器として実線に投入する。

実はツイッターで監督さん自らフォローしていただき(たぶんツイート読んでないと思うけど)、非常におっかなびっくりなのですが、本日は極めて公平な立場でどこが良かったのか、どこが悪かったのか考えていきたいと思います。

佐藤監督はご自身アニメ好きであられ、ノベライズのあとがきを読むと「これはエピソード4にあたる」と書いておられるように、この映画のためにたくさんの設定を考え、愛情を注がれたことがよくわかります。冒頭の戦闘シーンや、ゴッドフェニックス発進のシーン、幾つかの美しいビジュアルにはそれがよく反映されていたと思います。しかしこの映画「微妙…」と思えたところも色々ありました。

まず冒頭で「世界はギャラクターによって支配され、虐げられていた」とナレーションが入りますが、それからほどないシーンでは東京で人々が我々と変わらぬ休日を楽しんでいたりするのあっけにとられます。ここは欲張らずに?「地球の半分くらいを支配された」ということでも良かったのではないでしょうか。ギャラクターの正体が伝説にあった○○○や○○○であった…という設定はなかなかうまいと思いました。

そしてよくある批判としては「世界の危機なのに恋愛にうつつ抜かしすぎ」「一刻を争う場面なのにダラダラとしゃべりすぎ」といったものがありました。
前者はこの映画に限らず日本アニメの伝統みたいなもんですよね。旧アニメでも「ジュンが健に思いを寄せている」という設定があったので、これはむしろ原作に忠実なくらいです。あと世界の危機と個人の恋愛が同時進行していくといえば、あの『スターウォーズ』だってそうです。ただ『スターウォーズ』がその辺あまり気にならないのは、壮大なビジュアルと軽快なテンポでもってさくさく話が進行していくからだと思います。メロドラマっぽい部分があっても、「好きよ」「ぼくも」くらいの会話でパッと次の場面に映っていく。観客が無心で楽しめるエンターテイメントを作りたいのであれば、それくらいの巻きのよさが欲しいところであります。

だから問題なのは後者の「ダラダラしゃべりすぎ」というところなのかもしれません。佐藤監督の前作『カイジ』1&2はむしろしゃべりすぎなところが良かったんですけどね。あれは理屈で勝負する話だったから。しかし実際に剣や銃で戦うのであれば、普通はしゃべっている間に撃たれたり切られたりするものでしょう。
ただこれもこの映画単体の問題ではなく、日本の特撮・アニメ全体に言えることだと思います。原点は恐らく歌舞伎にあるような気がします。ここぞというところで見得を切ったり、えんえんと愁嘆場が始まったりするああいうのがスタッフたちに無意識に受け継がれているんじゃなかろうかと。
ちなみに去年の秋にあった『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』もまるっきりそんな感じでした(笑) あちらが東映でこちらが東宝なのに、かなりスタイルが一緒です。
歌舞伎の伝統を受け継ぐのが悪いとは言いません。製作の現場においては色々と仕方ない事情もあるでしょう。でもハリウッドの向こうを張るようなアクションを作りたいのであれば、もう少しこの「テンポ」を重視する作品が増えてきてもいいんじゃないの…と言いたいです。

Gtm2もう少し誉めるつもりだったのに批判の方が多くなってしまった… 反省。でもわたし、どうしてもこの映画版『ガッチャマン』が嫌いになれません。これを一歩目として、ガッチャマンでなくてもいいので、次はもっと進化したものを作って頂ければ…と邦画界全体に望みます。
そんな『ガッチャマン』は今週いっぱいで終了のところが多いですweep 日本の特撮の将来のために、ぜひ観ましょう!


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