超科学忍法帖 佐藤東弥 『ガッチャマン(GATCHAMAN)』
だれだっ だれだっ だれだ~ 空の彼方に踊る影♪ の曲で有名なあのヒーローが、実写映画となって33年ぶりに復活いたしました。『ガッチャマン』、ご紹介いたします。
近未来、人類は突如として現れた物理的攻撃をほぼ受け付けない超人類「ギャラクター」によって追い詰められ、地球の覇権をほぼ奪われてしまった。しかし人類はとある遺跡から発掘された謎の青い石が、ギャラクターのバリアーを中和することを発見。青い石を操るエージェント「ガッチャマン」を育成し、ギャラクターへの最終兵器として実線に投入する。
実はツイッターで監督さん自らフォローしていただき(たぶんツイート読んでないと思うけど)、非常におっかなびっくりなのですが、本日は極めて公平な立場でどこが良かったのか、どこが悪かったのか考えていきたいと思います。
佐藤監督はご自身アニメ好きであられ、ノベライズのあとがきを読むと「これはエピソード4にあたる」と書いておられるように、この映画のためにたくさんの設定を考え、愛情を注がれたことがよくわかります。冒頭の戦闘シーンや、ゴッドフェニックス発進のシーン、幾つかの美しいビジュアルにはそれがよく反映されていたと思います。しかしこの映画「微妙…」と思えたところも色々ありました。
まず冒頭で「世界はギャラクターによって支配され、虐げられていた」とナレーションが入りますが、それからほどないシーンでは東京で人々が我々と変わらぬ休日を楽しんでいたりするのあっけにとられます。ここは欲張らずに?「地球の半分くらいを支配された」ということでも良かったのではないでしょうか。ギャラクターの正体が伝説にあった○○○や○○○であった…という設定はなかなかうまいと思いました。
そしてよくある批判としては「世界の危機なのに恋愛にうつつ抜かしすぎ」「一刻を争う場面なのにダラダラとしゃべりすぎ」といったものがありました。
前者はこの映画に限らず日本アニメの伝統みたいなもんですよね。旧アニメでも「ジュンが健に思いを寄せている」という設定があったので、これはむしろ原作に忠実なくらいです。あと世界の危機と個人の恋愛が同時進行していくといえば、あの『スターウォーズ』だってそうです。ただ『スターウォーズ』がその辺あまり気にならないのは、壮大なビジュアルと軽快なテンポでもってさくさく話が進行していくからだと思います。メロドラマっぽい部分があっても、「好きよ」「ぼくも」くらいの会話でパッと次の場面に映っていく。観客が無心で楽しめるエンターテイメントを作りたいのであれば、それくらいの巻きのよさが欲しいところであります。
だから問題なのは後者の「ダラダラしゃべりすぎ」というところなのかもしれません。佐藤監督の前作『カイジ』1&2はむしろしゃべりすぎなところが良かったんですけどね。あれは理屈で勝負する話だったから。しかし実際に剣や銃で戦うのであれば、普通はしゃべっている間に撃たれたり切られたりするものでしょう。
ただこれもこの映画単体の問題ではなく、日本の特撮・アニメ全体に言えることだと思います。原点は恐らく歌舞伎にあるような気がします。ここぞというところで見得を切ったり、えんえんと愁嘆場が始まったりするああいうのがスタッフたちに無意識に受け継がれているんじゃなかろうかと。
ちなみに去年の秋にあった『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』もまるっきりそんな感じでした(笑) あちらが東映でこちらが東宝なのに、かなりスタイルが一緒です。
歌舞伎の伝統を受け継ぐのが悪いとは言いません。製作の現場においては色々と仕方ない事情もあるでしょう。でもハリウッドの向こうを張るようなアクションを作りたいのであれば、もう少しこの「テンポ」を重視する作品が増えてきてもいいんじゃないの…と言いたいです。
もう少し誉めるつもりだったのに批判の方が多くなってしまった… 反省。でもわたし、どうしてもこの映画版『ガッチャマン』が嫌いになれません。これを一歩目として、ガッチャマンでなくてもいいので、次はもっと進化したものを作って頂ければ…と邦画界全体に望みます。
そんな『ガッチャマン』は今週いっぱいで終了のところが多いです 日本の特撮の将来のために、ぜひ観ましょう!
Comments
さすが、伍一さん!
この残念な作品をフォローするなんて・・・。
でも『スターウォーズ』とはかなり違いがあるようね気がします。
スターウォーズには、壮大なドラマの中の一部としての恋愛ですが
ガッチャンマンでは、根底が恋愛でしたから・・・あれではねぇー。
どうせなら、もっと戦闘シーンを増やしてで楽しませてほしかったです。
Posted by: ルナ | October 18, 2013 10:56 PM
>ルナさん
こちらにもありがとうございます
なんでしょうね~ フルボッコにされてるものを見ると、ついかばいたくなるというか
そういえば昔のヤマトで「僕らがしなきゃならないのは戦うことより愛すること。勝利なんてクソ食らえ」みたいな台詞がありましたw
でもまあ観客がSFエンターテイメントに求めてるのはやっぱりド派手なアクションなのでしょうね。わたしもそうですけど、なぜかこの映画に関しては「見逃してあげたい!」と思ってしまったのでした…
Posted by: SGA屋伍一 | October 19, 2013 10:53 PM