ZはゾンビのZ マックス・ブルックス マーク・フォースター 『ワールド・ウォー・Z』
珍しくがんばって連日更新! 「夏休みを偲んで」企画第三弾は、大スター、ブラッド・ピットが初めてゾンビものに挑んだSF大作『ワールド・ウォー・Z』をご紹介します。
かつて国連軍で働いていたジェリー・レインは任務に疲れて退役し、いまではフィラデルフィアで家族と穏やかな日々を過ごしていた。だがある朝娘達を学校へ送っていく途中、ジェリーと家族の日常は一変してしまう。
渋滞の中暴走する車の群れ。さらにそのあとから現れた大量の「ゾンビ」たち。突然流行りだした奇病のために町はまたたくまに地獄と化してしまう。
ジェリーは腕を化して欲しいという元同僚の連絡を受け、ゾンビたちの猛攻をかわしながら約束した集合場所へと向かう。果たして彼らはそこへたどり着けるのか。そして世界の行く末は…
最初にこの映画のタイトルを聞いた時はあまりのアホっぽさに、てっきり『ゾンビランド』みたいなコメディかと想像してたんですが予告映像を見たらかなり深刻そうな話だったんでたまげました。
でもまあ、わたしゾンビものってあんまし興味なくて。これまで観たゾンビ映画といえばそれこそ『ゾンビランド』に『バイオハザード』シリーズ、それに『レミントンとオカマゾンビの呪い』くらいなものです。
だからこの映画も「話題になってるしスケール大きそうだしなんとなく観てみようかなー」くらいの気持ちで観に行ったのですが、そんな風にほとんど期待してなかったせいかかなり楽しめました。
意外だったのはよくあるゾンビ映画かと思っていたら、これちゃんと「本格SF」してるんですよ! 本格SFとはなんぞや。世にはいろいろSFっぽいものが溢れていますが、通に言わせると単に宇宙が舞台だったりタイムスリップしたりすればSFってわけじゃないそうです。ちゃんと現在流布している科学知識基づいて、推理し、仮説を立て、空想を発展させる。これこそが「真のSF」なんだとか。
で、この映画、なんでゾンビ菌(ウィルス?)が発生したかについては明らかにしないんですが、ゾンビたちに見られる「ある奇妙な振る舞い」や、自然に見られる細菌の特徴などを手がかりに推理や考察を重ね、自然が隠そうとしていた「真相」へと迫っていきます。
主人公のブラピはゾンビたちと戦う兵士であり、同時に謎を追う刑事でもあります。米国、韓国、中東、欧州と移動していくごとに、ひとつひとつ手がかりを得ていきます。そんな感じなので中盤まではともかく、クライマックスはかなりゾンビ映画としては独特なのではないでしょうか。だからこそゾンビ好きには物足りないかもしれませんが、わたしはミステリーも好きなんでかなりこの展開にはスカッとしました。
もうひとつ良かった点について。こういうパニックものや侵略SFものにはおおまかな形式があります。実際に書いてみると
発端→パニック→雌伏→逆転→解決
と、こんな感じでしょうか。ただ映画は基本的に2時間なので、その枠の中でこれらを全部納めるのはけっこう大変だと思うんですよね。特に後半の「逆転」の部分、時間内に納めようとして無茶苦茶強引な展開になることも珍しくありません。わりとよくある例は「敵の本陣に潜入していって、爆弾放り投げて帰ってくる」ってヤツですね。あとなかには解決にまで至らず、なげっぱなにして終わってしまう映画もけっこうあります(^^;
その点『ワールド・ウォー・Z』はお話を無駄なく自然に運んでました。映画が冗長になる原因のひとつに「前フリが長い」というのがありますが、『WWZ』は始まってすぐゾンビ!です。前フリと呼べるものは10分もなかったような。
あと一番むずかしい終盤のくだりもわりと自然だったと思います。この自然さというか無理のなさが「物足りない」「スカッとしない」と感じる人もいるかもしれませんが、気になった人は自分の目で確かめてみてください。
ちなみに原作小説は世界の様々な場所の視点から描かれたちょっとオムニバスっぽい話だそうで。こちらもなんだか興味が沸いてまいりました。
『ワールド・ウォー・Z』は現在全国でまだヒット上映中。『ジャッキー・コーガン』の不振はこれで返済かな?
Comments
伍一君☆
数少ないゾンビのラインナップに「レミントン~」を入れていただいて光栄です(笑)
いやー、ゾンビもの見ない人だとは知らず失礼いたしました。
これは確かにゾンビと言ってもパンデミック映画なので、私も安心して(?)観れました。
地球はこうして時々凶暴なウイルスを発令して人間の人数を調整していくのかもしれないですね。ぞぞぞ・・・
Posted by: ノルウェーまだ~む | September 04, 2013 11:11 AM
SGAさんこんばんわ♪
自分もゾンビって言ったらもう『バイオハザード(ただしゲーム版)』くらいしか第一印象に無いので、通な目線にならなかった分イチエンタメとして楽しめましたね。『アウトブレイク』とかも未だに好きなので、パンデミックムービーとしても好感触♪・・でもそうですね、ウィルスの謎を探るために世界各国を巡る展開などは犯人を捜す推理サスペンスの様相もあったりで、もしかしたらこれって色んな見方が出来てしまうのかもしれませんね?ラブストーリーに見えたとかいうツワモノもいるかもしれません(爆
Posted by: メビウス | September 04, 2013 09:48 PM
>ノルウェーまだ~むさん
連日更新したと思ったら今度は返事が遅れてすみませぬm(_ _)m
いやー、『レミントン』のインパクトは相当のものでしたからね! あれ結局配給ついてないようで…
なかなか怖いことをおっしゃいますね、まだ~む
「みんなの未来を守らねば…」(『寄生獣』を読んでないとわからないネタ…)
Posted by: SGA屋伍一 | September 07, 2013 09:48 PM
>メビウスさん
返事が遅れてごめんなさいー
『アウトブレイク』、なつかしいなあ。そういえば最近ウォルフガング・ペーターゼン監督の名前を見ない。あのころはあんなに活躍してたのに…
根っからのゾンビファンに言わせるとこれはゾンビじゃないそうですね。でも劇中でみんなゾンビゾンビ言ってたからな(笑)
ラブストーリー…に見る人もいるだろうか? 後半出てきたイスラエルの女性兵士は、きっとブラピにほれてしまっただろうなーとは思いましたが
Posted by: SGA屋伍一 | September 07, 2013 09:53 PM
こんばんは!(^_^)
私も、ゾンビ系はあんまり得意じゃないけど
この作品は、スプラッタ部分があまりないので、
見やすかったです。
ゾンビ自体も人間に近かったですよね〜。
(量は多かったですが・・・^^;)
原作小説は、面白そうですね〜。
Posted by: ルナ | September 19, 2013 12:14 AM
>ルナさん
こんばんは。わたしも実はゾンビ系あまり得意じゃなくて(^^;
でもこの映画はあんまり臓物とか首チョンパとか出てこなかったので正直助かりました
原作は文庫本上下で合計600ページ越えみたいです… むむむむむ… 読む本たまっちゃってるけどがんばろう(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | September 19, 2013 10:43 PM