ダイ統領・ハード ローランド・エメリッヒ 『ホワイトハウス・ダウン』
『パシフィック・リム』から続いてきた夏休みバカ大作映画シリーズもいよいよこれで最後です。『インデペンデンス・デイ』のローランド・エメリッヒが「全米熱狂」チャニング・テイタムを主役に迎えて挑んだ『ダイハード』風アクションムービー、『ホワイトハウス・ダウン』、ご紹介します。
米国下院議長の警護を務めるジョン・ケイルは、別れた妻と暮らす娘の尊敬を得るため、コネを使ってなんとか大統領SPの面接にこぎつける。だが結果は不採用。落胆を隠しながらケイルは娘とホワイトハウスの見学ツアーを回る。
時を同じくして、ホワイトハウスに巧みに侵入する謎の一団があった。やがてホールのひとつで爆発が起きる。男たちは大統領を捕らえようと彼が避難すると予想される特別シェルターへと向かう。娘とはぐれたケイルは彼らと鉢合わせしてしまい、銃撃戦を繰り広げることに。男たちの狙いは何か。そしてケイルは娘を守ることができるのか。
ローランド・エメリッヒといえば『インデペンデンス・デイ』を初め『ゴジラ』『紀元前1万年』『2012』と、スケールがでかくて中味はなくて非現実的でCGバリバリなそういう作風で知られています(好きなんですけどね…)。
それが今回はぐっとスケールがせばまって主な舞台はホワイトハウス周辺のみ。なんだよエメリッヒ… らしくないじゃん! と最初は鑑賞スルー予定でした。少し前にやっていた題材がモロかぶりの『エンド・オブ・ホワイトハウス』も観ませんでしたし。
ところが割と映画ファンから小馬鹿にされがちなエメリッヒ作品が、今回はなかなか評判がよろしかったりして。そうなると元々好きな監督だし、流されやすい性格も手伝って結局観たのでした(^^; 夏のバカ映画ほとんど観たのにこれだけスルーというのもアレでしたし。
で、結論から言いますとあまり内容がないところはいつものエメリッヒでしたね… ただあらすじからもわかるように、今回の話は一応現実的にギリギリありな話になってます。だからCGもそんなには使ってない。その辺がいつもは突拍子もないストーリーにひいてしまう人たちもひきつけたんだと思います。
あと感心したのは途中何気なく画面や話の中に出てきたものが、あとで思わぬところで役に立ったりするエピソードが幾つかあったりして。こういうのが多ければ多いほどよく出来た脚本のように思えてきます。特によくできた例としては、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の特に2,3あたりを思い出していただけるとわかりやすいかと。
してみると、今回の功績は脚本のジェームズ・ヴァンダービルト氏に追うところが大きい気がします。エメさんは時々『パトリオット』や『もうひとりのシェイクスピア』といった割と手堅い作品も撮ったりしてるのですが、脚本によって出来が大きく左右されがちなタイプなのかもしれません。
お話はそんなに目新しくなくても、要所要所で小技をしっかり決めておけば高評価を得られるという好例でした。現場に不自然なお色気ムチムチなお姉さんがいなくて、とってつけたような恋愛要素がなかったのもアクションの王道という感じでした。なんせこの映画のヒロインは主人公の10歳くらいの娘っ子なもんで。
しかしどうしてハリウッドのアクション、エンターテイメントの主人公には「バツイチ・子持ち」がこんなに多いのでしょう。そんで大抵仕事ばっかりで子供の約束をすっぽかして愛想をつかされたりしててねw ぱっと思いつく例で言うとエメリッヒも『2012』がそうでしたし、他には『ナイト・ミュージアム』『リアル・スティール』『宇宙戦争』など。最近の『ダイハード』もそんな感じだし、古い例だとイーストウッドの『トゥルー・クライム』も。ハリウッドじゃないですけど『オーガスト・ウォーズ』はお父さんじゃなくお母さんがアクションする珍しい例。他にももっと色々あった気がするんだが…
余談ですけど「家族を亡くして立ち直れてない」というパターンも多いですね。
ともかくアクションヒーローにバツイチ子持ちが多い理由について三分ほど考えてみました。それはやっぱり「感情移入しやすい」ってところにあるのではないかと。人間ある程度生きてれば何度か挫折や大失敗をするもの。バリバリのエリートで一度の挫折も味わってないような者を主人公にしても、一般庶民には身近には感じられないでしょう。
で、米国の皆さんが特に共感しやすい挫折の例が「離婚」なんでないかと。アメリカの離婚率は約50%。二組に一組が離婚すると言われているので、映画観ていて「あー、これ俺みたい」と思う(元)パパさんも多いことかと思われます。そんでいつかは立派になって子供に尊敬されたい…と願っているのではないでしょうか。なんだか書いてて悲しくなってきました。あと今のハリウッドの作り手にはもしかしたら『クレイマー・クレイマー』が好きな人がいっぱいいるのかもしれません。
映画ファンからは概ね好評を得た『ホワイトハウス・ダウン』ですが、成績の方はなぜか日米ともにいまひとつの模様。米国ではここのところ破竹の勢いのチャニング・テイタムですが、やっぱり「よくあるストーリー」ということで敬遠されてしまったのか。むーん
まあこの記事読んで気になった人は観にいってみてください。あ、明日で公開ほとんど終わる…(ダメじゃん!)
Comments
SGAさんこんばんわ♪こちらにもコメント有難うございました♪
なかなか深い考察をされてますね。自分は単純なエンタメ作としてガハハと笑いながら観てたのにっ(笑)
でも確かに言われてみれば・・な『バツイチ・子持ち』現象。アメリカは全世界で見るとそれほど離婚率が高い国では無いらしいのですが、それでもこれだけ作品内にバツイチ子持ちの設定を取り入れるのは、やはり挫折からの再起・逆転劇というスカッとさせる展開に持ち込み易いからというのもあるかもしれませんね?
でも感情移入できるというのも、その作品のキャラにもよりますよね?挙げている例の中で『宇宙戦争』のトムパパは個人的にイラッときました^^;(汗
Posted by: メビウス | October 05, 2013 07:33 PM
>メビウスさん
こちらにもありがとうございます2です。
深い考察…というかかなりあてずっぽうに近いですが(^^;
日本もそれなりに離婚率上がってきましたけど、あんまりこの手のヒーローはいないですよね。単に「再起・逆転もの」というなら先日大ヒットしてた『半沢直樹』というドラマはまさにそんな感じだったようで。まあ彼は家庭的にはとっても恵まれてるようでしたが
『宇宙戦争』のトムパパ、なつかしいですね~ バツイチ・子持ちパパにも色々あるということで(^^; スペックの割にはけっこうがんばってたんじゃないでしょうか
Posted by: SGA屋伍一 | October 07, 2013 10:33 PM
こんばんは!(^_^)
たしかに、ハリウッド映画の主人公は
バツイチ・子持ちのダメ親!ってパターンって、定番ですよね。
そして必ずダメ親父が、がんばって子供に認められるって
ラストですよねー。
ただ、ダメ親父と言っても特殊能力を持ってる人が
ほとんどなので、最初からもっとがんばれいいのにねぇ〜(笑)
Posted by: ルナ | October 18, 2013 10:40 PM
>ルナさん
こんばんは! おかえしありがとうございます
>ただ、ダメ親父と言っても特殊能力を持ってる人が
ほとんどなので、最初からもっとがんばれいいのにねぇ〜(笑)
たしかに(笑) まさに『俺はまだ、本気出してないだけ』状態。もっと早く本気出せっつーの
ただもしかしたら戦場やテロリストと戦うよりも、家庭を維持していくことの方が大変なのかも。「人生ほど重いパンチはない!」(BY ロッキー)
Posted by: SGA屋伍一 | October 19, 2013 10:45 PM
こんちは。
………日本だったら痴漢冤罪のお父さんのアクション映画とかいいかもしれない。最後、大活躍した結果、内閣総理大臣がTVに向かって「君は痴漢するような男じゃないよ」と言って、男同士、肩を組んで………それは違うか。
Posted by: ふじき78 | January 31, 2014 12:30 AM
>ふじき78さん
痴漢冤罪とまではいかなくても家族でも会社にもバカにされてて、どこにも居場所がないようなおやっさんが主人公になりそうですね。実は今度始まった奥浩哉先生の新作がそんな話
Posted by: SGA屋伍一 | February 02, 2014 04:46 PM