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September 17, 2013

スーパーマン・リブーツ ザック・スナイダー 『マン・オブ・スティール』

Img00216クリストファー・ノーランの手によってバットマンを見事に新生、そして完結させたワーナーブラザーズが、次に狙うのはアメコミヒーローの原点である「あの人」のリブート。現在ヒット公開中の『マン・オブ・スティール』、ご紹介します。

地球から遠くはなれた惑星クリプトン。その星は優れた文明を誇っていたが、環境破壊のため滅亡の危機に瀕していた。科学者ジョー・エルは生まれたばかりのわが子をクリプトンより脱出させ、生存可能な惑星であった地球へと送り込む。地球人よりはるかに強靭な肉体を持つその子カル・エルは、たまたま宇宙船を見つけたカンザスのケント夫妻に「クラーク」と名づけられ育てられる。成長するつれ周囲と違うことを、その力を隠すことにクラークは深く苦悩する。

ここまで書けばわかると思いますが「マン・オブ・スティール」というのはスーパーマンの愛称のひとつです。他に「マン・オブ・トゥモロー」とも呼ばれてたような。
「単純明快」というイメージを持つ人もおられますが、その実読んでみると暗かったり悩んでばっかりな話が多いアメリカン・コミックス。こういうのは60年代のマーベルコミックスから始まった流れですが、近年ではDCコミックスも大きくその影響を受け、脳天気なヒーローの代表だったスーパーマンまで作品によっては深く悩んでいたりします。
で、特にその「悩む」側面が強調されたのがこの度の映画。なんせバットマン・スパイダーマンと比べるとそのパワーは桁違いですから、そんな原爆みたいな力を抱え込んでりゃ悩みもするでしょう。前半は「この強大な力を何に使うのか?」「一般人類に公にすべきなのか?」といったクラーク青年の悩みが丁寧に描かれていました(1点ひっかかるところもありましたが…)。

以後、どんどんネタバレしていくのでご了承ください。




ところが後半同等の力を持つ強敵「ゾッド将軍」が登場すると、それまでの苦悩はどこへやら、周囲のビルを片っ端からぶっ壊しながらパワー全開で猛烈なバトルを繰り広げます。この辺の都市破壊描写は本当にすごいです。ゴジラ他名だたる怪獣たちも、ここまではやってないだろう…というほどの壊しっぷりでした。
しかしそういった映像技術に興奮する一方で、バトルの影でかなりの数の人々が犠牲になっているであろうことを想像すると「納得いかーん!」という思いがムラムラと立ちこめてきたのでした。
これをゴジラやハルクがやっているんだったらまだいいんです。連中は怪獣だから。でもスーパーマンには悪者をやっつけるより前に、レスキューマンであってほしいんですよね。高所から落ちそうな人や瓦礫に閉じ込められてる人がいたなら、真っ先に飛んでって助け出して、一人の犠牲者も出さない… そういうヒーローであってほしいのです。ちょうどこの前に作られた『スーパーマン・リターンズ』の彼がまさにそうでした。あとこの映画でも前半では立派にレスキューマンだったと思います。それを貫徹してくれればよかったのに… 自分、スーパーマンにはあまり思いいれがない方だったので、そんなこだわりを感じるとは正直意外でした(笑)

「敵があまりにも強すぎてそこまで手が回らない」「周囲を壊さずに倒すことができない」そういう事情もあるのかもしれません。でもそれだったらせめて「わたしは未熟だ」とか「力が足りない」と反省する描写が欲しかったです。ギャオスとの戦闘中うっかり一般人を「プチッ」とやっちゃったガメラや、防衛隊員に「全然守れてねーじゃねーか!」と怒られてたウルトラマンメビウスのことなど思い出しながらそんなことを考えてました。ところが笑顔で「世界を救った」とか言っちゃってるので「こりゃダメだ~」と思いました

これはやっぱりザック・スナイダーとスーパーマンの相性が悪かったってことなんですかね。ザックさんはとにかくぶっ飛ばすこととぶっ壊すことが一番やりたいことみたいなので。前半は脚本に従ってその衝動をよく我慢したと言うべきでしょうか。

Mos2夏の大作はコケてるものも幾つかありますが、スーパーマンは日本でも知名度が高いということもあってそこそこお客さん入っている模様。単純に「今の技術でここまで出来るんだ! すげー! こまけー!」と興奮できれば十分楽しめると思います。
あとアメコミ者として今出てるスーパーマンの日本語版コミックを二作品ばかり紹介します(共に小学館集英社プロダクションより)。

☆『スーパーマン:アースワン』
本来のDCワールドとは別の世界を舞台とした、スーパーマンの誕生話。今回の原作なんじゃ…と思えるほど、『マン・オブ・スティール』と話がよく似てます。ただこちらは映画ほど街を壊してないのでストレスはたまらないかも。

☆『スーパーマン:レッド・サン』
これまた本来のDCワールドとは別の世界を舞台とした話。もしスーパーマンがカンザスではなく共産主義真っ只中のロシア=ソ連に不時着していたなら… という内容。意外な発想と展開、正義への皮肉が利いた傑作コミックです。ストーリー担当は『キック・アス』『ウォンテッド』のマーク・ミラー。

あとスーパーマンがバットマン、フラッシュら他のDCヒーローとチームを組む『ジャスティス・リーグ:誕生』もおすすめです。ワーナーさんは次にスーパーマンとバットマンの共演映画を経て、この『ジャスティス・リーグ』へ持っていきたいようです。「『アヴェンジャーズ』の二番煎じ」的な感はぬぐえませんが(コミックではこっちのが先なんですがね…)、楽しみにお待ちしております。

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Comments

伍一くん☆
確かにスーパーマンには「すっぱマン」くらいののどかさが欲しかったねぇ。
どぴゅーっと飛んだり、3Dがすごかったりはまあ楽しめたのでうっかり最後になるまで気付かなかったけど、その辺がスーパーマンらしさでは大切な所かも。
多くの犠牲を出してたった一人を救ったり、人間の家族のために同じ星の人(?)をボキッとやったりは、できればスーパーマンにはして欲しくないことかも。

Posted by: ノルウェーまだ~む | September 18, 2013 11:56 PM

>まだ~む・おぶ・スティールさん

こんばんは
確かにのどかさは必要ですがスッパマンレベルに堕してしまうのもどうかと… あいつペンギン村でいたずらと悪事しか働いてなかったように記憶しています
あんなに強かった将軍様が首ゴキくらいで死んでしまったのも腑に落ちませんでしたねえ。戦隊物の怪人みたくいったん爆発した後に(なぜか)巨大化してまきかえしたりするそういうしぶとさが欲しかったです
正義の味方のあり方については、恐らく次の作品でバットマンから色々お説教されることでしょうw

Posted by: SGA屋伍一 | September 19, 2013 10:37 PM

破壊力が半端なかったですよねー。
たしかに、おいおい!大丈夫なのか!!!って思ってしまいましたが
次の作品でバットマンから色々お説教されるなら(笑)
もう少しマシになるかもですね・・・。
大物を起用しただけあって、2人の父親はさすがに存在感ありましたよね。

さて次回作のバットマンとは、どういうからみになるのか
楽しみですねーーー。

Posted by: ルナ | September 23, 2013 12:20 AM

>ルナさん

次の「スーパーマン対バットマン」は名作コミック『ダークナイト・リターンズ』が下敷きになっていると噂されています。ただこちらの作品のバットマンはすでに引退して久しいおじいちゃんなので、当然ながらかなりのアレンジが加わるものと思われます
それにしても今回のスーパーマンは本当に壊しまくりでしたね… 地球を逆回転させてさくっと修復するくらいの気配りがほしいところです

Posted by: SGA屋伍一 | September 24, 2013 09:29 PM

SGAさんこんばんわ♪コメント有難うございました♪

個人的にはドラマ性も思ったほど悪く無かったですし、スーパーマンみたいな異能力者がもし本当にいたとしたら・・というリアルな側面も見受けられて好感持てた部分は多かったのですが、ただリアルに見受けられた分、あの後半のやり過ぎアクションも現実的に考えちゃうと『おいおい・・』と少し引いてしまう部分もあった気がしますね^^;
市民が犠牲になっているシーンこそ見受けられませんでしたが、あれだけ壊して死傷者ゼロだとかなり不自然ですし、終わった後も被害総額いくらなんだろう?と『ハンコック』みたいな事も考えちゃってましたねw

ジャーナリストになってめでたしめでたしではなく、敵ではないだろうが危険な存在だ、という着地をしてくれた方がもしかしたら自然だったかもしれませんね?(汗

Posted by: メビウス | October 05, 2013 06:43 PM

>メビウスさん

こちらにもありがとうございます♪
この後に『クロニクル』という話題の超能力映画を観て一層思ったのですが、何事も「いきすぎ・やりすぎは」よくないなとw 『クロニクル』は最初首都圏限定という話でしたが、全国でもやることになったのでメビウスさんの近くでやっていたら是非ご覧ください
「ヒーローと悪者の壮大バトルで周囲が大迷惑」といえば名作アニメ『ザンボット3』もそうでした

しかしこれだけリアル路線でやられると、「メガネをかけただけでどうしてみんな別人だと思うんだ?」という疑問が無視できなくなってきますね。以前のほのぼの路線ならそれもアリなように思えたのですが…

Posted by: SGA屋伍一 | October 07, 2013 10:10 PM

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