コン性×キチ○イ ヨアヒム・ローニング エスペン・サンドベリ 『コン・ティキ』
わたしは子供の頃学研から出ていた「ひみつシリーズ」という学習漫画を愛読してたんですが、その中で特に面白かった一冊に『できる・できないのひみつ』という本がありました。前半は「高層ビルは何階まで建てられるか?」「温度は何度まで下げられるか?」という科学の疑問に答えた内容となっていたのですが、後半は未知の領域に挑んだ探険家たちの列伝となっておりました。紹介されていたのはヘディン、ピアリ、スコット、クストー、ピカール、そしてハ(へ)イエルダールという面々。子供のころ夢中になって読んだものというのは、不思議と幾つになっても覚えているもので。
で、この度へイエルダールさんの冒険が映画化されたというので(こちらではちょっと遅れましたが)張り切って観て来ました。『コン・ティキ』、ご紹介します。
海洋学者トール・へイエルダールは長期間のフィールドワークの末、ポリネシアと南米には文化や植物の点で多くの共通点があることに気づく。そしてポリネシアに最初にやってきたのは南米の人々だったのでは…という学説を唱えた。だが二つの土地の間には広大な海が広がっているため、当時はポリネシア人の先祖はアジア人、というのが定説であった。学会から冷遇されたヘイエルダールは、太古の南米の技術・・・イカダで実際に太平洋を渡り、己の学説の正しさを証明しようとする。
漫画で読んだときは「すごいなあ」くらいにしか思わなかったんですが、実写映像で見せられるといかにそれが無茶かよくわかります。広い海の上にぽつーんとイカダだけ浮いてて、しかも行き先はほとんど風まかせですから。目的とする海流までたどり着ければあとはそれに乗っかるだけなんですけど、そこにいくまでがけっこう大変だったりします。下手をすると出発地点まで押し戻されてしまうことも十分ありえます。さらにいくら「太平」洋といっても嵐に遭遇する可能性は幾らでもあります。それなりにしっかりした作りであるとはいえ、ロープで木材を縛り付けたイカダでそれをやりすごすのは至難の技であります。
危険はそれだけではありません。予告を見ると自然の美しい風景が次々と映し出されるので、そういう癒し系のビジュアルがメインなのかな、と思っていたのですが、実際は4割くらいがジョーズ映画でしたw 本当にちょびっと海にもぐったらすぐでかいサメがのっそりとやってきます。航海中ずっとイカダと一緒に泳いでたんじゃないか?というくらいサメの出番が多かったです。でもそんなに本気で人間を襲ってる風でもなかったので、もしかしたらサメさんたちはヘイエルダールとお友達になりたかったのかもしれません。
問題はまだあります┐(´д`)┌ヤレヤレ このイカダ=コン・ティキ号の乗組員たちがちょっと変わった人たちでして。まず二人は第二次大戦でけっこうな人数をあの世へ送ったというランボーみたいな経歴。うちひとりは罪の意識が消えずにPTSDに悩まされています。
これにアマゾンでずっと一人で過ごしていたというエキセントリックなカメラマンと、「一皮むけたい」というだけで航海に志願した冷蔵庫屋さんが加わります。タイムリーというべきか、冷蔵庫って、なんか今非常にあやういイメージがつきまとってますよねw
ヘイエルダールの親友で航海術に長けた天パ君はあまり問題なく頼れる人間なんですが、肝心のリーダーのヘイさんが「危険と見ればつっこんでいく」「何かと自分の偉さを主張する」「周りの意見をほとんど聞かない」「根拠のない自身に満ち溢れている」「航海してるのに泳げない」「カミさんを家で泣かせている」と問題ありまくりの人物です。まあこんだけ天然でなきゃこんな無謀なチャレンジはできないかもしれませんが…
ともかくそんな6人が極限状況で100日以上も顔つき合わせていれば、ギスギスした空気になるのも無理はなく。よくまあ船の上で血を見るような事態に発展しなかったな… と思います。なんせ判断のひとつひとつにそれぞれの「命」がかかってきますからね。「こいつを殺さなきゃ俺は生きて帰れない!」というとこまで思いつめてしまっても不思議ではありません。しかしまあそこまでの悲劇に発展しなかったのは、性格にに問題はあってもそこは誇り高い冒険野郎たちだから… なんでしょうかね。一名初心者の冷蔵庫屋さんも混じっていますけど。
彼らがコン・ティキ号と共に無数の困難を乗り越え、目的達成へと一歩一歩近づいていく姿に手に汗握り、深く胸を打たれました。航海ものといえば今年初めに『ライフ・オブ・パイ』もありましたが、こっちはなんといっても本当にあった話ですからね!
そんな『コン・ティキ』はもう大体のとこで上映終了。わが小田原のコロナワールドでは明日まで遅い時間にやっております。海や冒険といえば心が騒ぐ野郎どもはぜひ(ってもう遅いか…)
このあとヘイエルダールは「古代エジプトの葦舟で大西洋を渡る」というこれまた無茶なチャレンジを行っています。その辺の話も映画化希望であります!
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