8月のママさん戦争 ジャニック・ファイジエフ 『オーガスト・ウォーズ』
ボンクラ待望のバカSF『パシフィック・リム』が(一部で)超絶賛公開中です。そんな中明らかに『パシフィック・リム』に便乗しようとしてひっそりと公開されているロシア製ロボット映画?があります。夏休みにぴったりなそのタイトルは『オーガスト・ウォーズ』。ご紹介しましょう。
2008年ロシア。モスクワに住むシングルマザーのクセーニアは、腕白ぶりに手をやきながらも息子のチョーマを懸命に育てていた。夏季休暇に恋人に旅行に誘われたクセーニアはためらいながらも元夫の住む南オセチアへチョーマを預けてしまう。しかし折り悪くオセチア国境で紛争が勃発。クセーニアは旅行をとりやめて南オセチアへ急行。砲弾の飛び交う戦場で息子の姿を探してさまようことに…
あれ? あらすじのどこにもロボは出てきませんよね? だのにこの公式サイトを観ると予告編含めていかにもロボ映画みたいなんですが…
実はこのロボはチョーマ少年が大ファンのミュージカルに出てくるキャラクターでありまして、彼の妄想として映画の端々に出てくるのです。それを除くと実にシビアでリアルな戦場サバイバル映画です。
だからロボット目当てでこの映画を観に行くと、カレーライスを頼んだのにレバニラ炒めが出てきたような感覚を覚えます。
まあわたしレバニラ炒めも嫌いじゃないですけどね。それだったらはじめっから「うちはレバニラしか出しませんよ」と言っておいてくれれば… ブツブツ
とりあえずその辺の理不尽さを水に流せれば色々と見所のある作品です。
まずあまりなじみのなかったオセチア紛争について勉強になります。
そしてごく普通の生活を営んでるわたしたちがいきなり戦場に放り出されたら… という恐ろしい疑似体験ができます。南オセチア付近の人々も前日までまさか突然戦争が始まるなんて思ってなかったわけで。平和というのは時として突然予告もなく終わってしまうものであり、本当にありがたいものなんだな… ということをしみじみと感じました。
あと非力だったクセーニアが息子のために危険地帯へずんずんと入り込むくだりは実に手に汗握らされます。サポートしてくれた兵士が「世界で最も危険な」と評するような、スナイパーや戦車がうじゃうじゃひしめく地帯を息子を連れて帰ってくるなんてはっきり言って無理ゲー状態なんですけど、息子を想う母親の前にそんな道理は通用しません。最初に「わがままな女だな~!」と彼女に抱いていたいらだちはどこへやら、そのミッション・インポッシブルを果たせるよう心から応援するようになってしまいました。
ま、もひとつひっかかった点を挙げるとするなら、この映画プーチン大統領がなかなかかっこいい役どころで出てくるんですよね。ほんで戦争の悲惨さを訴えているのかと思っていたらいつの間にか「ロシア軍強ええ! ロシア兵士かっこええ!」って感じになってました。まあ対立するグルジア兵にも人並みの情けがあることも描かれてましたし、なにしろこれロシアで作られてるんで、あまりその辺批判的に描いたら当局からにらまれちゃうのかもな、とも思いましたけど。
『オーガストウォーズ』は現在全国10スクリーンくらいで細々と公開中ですが、うちの近所の小田原ではもうレイト限定になってる!
ご興味おありの方はお早めに! そしてくれぐれもロボには期待しないで! ロボは『パシフィック・リム』で観ましょう!
Comments
伍一くん☆
この映画、優待券で観られるので気になっていたのでした。
詳しいレポ感謝~♪
へー?ロボット映画じゃないのね?
それなら逆に観に行こうかなぁー
それでも戦車がロボットに変身するCGは、ロシアすごい!!CG技術デザイン的にも凄い!って思っちゃったわ。
Posted by: ノルウェーまだ~む | August 28, 2013 10:52 AM
>ノルウェーまだ~むさん
ご無沙汰しててすみませぬ~
こんなんで参考になったでしょうか?(^^;
優待券あるなら観ておいたほうがよいですよ。ただこの映画わたしが観たところでは初日でも五人くらいしか入ってなくて、三週目の現在では夜23時の上映しかありません! おはやめに!
ロボットのCGはそこそこ見事でしたねー ただこのCG、なくてもお話にあんまし支障ないという…
Posted by: SGA屋伍一 | August 28, 2013 09:29 PM