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August 24, 2013

ドリフ(ト)の大爆発 ギレルモ・デル・トロ 『パシフィック・リム』

Photoこの夏はいつも以上にハリウッドのSF・冒険大作が集中し、なんだか夏祭りの屋台で手当たり次第に焼き鳥やらイカ焼きやらたこ焼きやら食い漁ってるような感じなのですが、中でも本命といったらやっぱりコレですよ奥さん! 『ヘルボ-イ』や『パンズ・ラビリンス』などの妖怪大好き監督、ギレルモ・デル・トロの最新作『パシフィック・リム』ご紹介します。

近未来、太平洋の海底に突然生じた裂け目から、謎の巨大生物「怪獣」が現れ都市を破壊するという事件が相次いだ。環太平洋の国々は互いに協力し、怪獣専用の人型兵器「イェーガー」を建造。怪獣達を次々と撃退することに成功する。
そんな折、アラスカ基地のイェーガーパイロット・ベケット兄弟はかつてないほど強力な怪獣に遭遇。辛くも勝利を収めるものの、兄のヤンシーは壮絶な戦死を遂げた。うちのめされる弟のローリー。だがモンスターたちとの戦いは以後一層激しさを増していく。

あれは何年前でしたかねえ(そんなに前でもない)。ギレルモさんが今度ゴジラみたいな、クローバー・フィールドみたいな怪獣映画を作るよーという噂を耳にしまして「へ~」と思ったものでした。
それが少し経って今度は「怪獣が巨大なロボットと戦う話らしい」と聞いて「え?」と思い、さらには「ロボットも怪獣も何体もいて集団戦をやるらしい。そしてヒロインは菊地凛子」という情報を得るに至って「えええええ!?」と驚愕したものでした。
一体… どうして… こんなマニアックな企画が成立してしまったんでしょうね…
ひとつには『トランスフォーマー』シリーズの成功があると考えます。あれのヒットを見て映画会社の方が「うちもロボでなんか作られないものか!」とか思っちゃったんでしょうね。
ただ向こうの人って巨大ロボットのことを一種の「モンスター」としてとらえているところがあると思うんです。自我をもって勝手に動くロボはともかく、兵器として人が動かすロボってどれくらい受け入れられているのかなあと。そしたらやはり米国ではコケてしまったそうです。あははははcoldsweats01
けれどもそんな心配とは別に、発表されたトレイラーを見るととんでもない映像が次々に映し出され、映画ファンとしてロボットファンとして今か今かと公開を待っていたのでした。いや~、期待に違わぬ出来でしたね。

まあはっきり言っちゃいますと内容は無いヨーーーー!!!! いいんすよ! 映画に内容なんてなくたって!!(暴言) も~ 本当にね~ 次から次へと繰り出される巨大物映像の迫力にひたすらうちのめされた2時間でした。この映画観て、自分がなんで映画館に通うようになったのかあらためて思い出しましたよ。それは単純に「でっかいものがでっかく見えるから」ということなんですけど(『インデペンデンス・デイ』だったんですけど…)。もっとも最近はアート系作品なんかもテレビサイズでは集中できなくなっちゃったので、結論として結局は「どんな映画も映画館で観た方がいい」ってことなんですが、ともかくわたしの映画ファンとしてのスタートはそこにあったのでした。単純なところでこれまで実写作品でこれほどドでかいパンチが繰り出される映像があったか?と言えば、たぶんない…と思います。その映像だけでも観る価値があると思います。
以下ネタバレで。わたしが特に燃えたシーンはといいますと。

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・冒頭で半壊状態のイェーガー「ジプシーデンジャー」が力尽きて氷の大地にズズーンと倒れるシーン
・怪獣に襲われているところを助けられた幼き日のヒロイン(演じるは芦田愛菜)が、イェーガーからパイロットが現れるところを見て笑顔になるシーン
・中盤の山場の香港戦でジプシーがタンカーで怪獣を殴ったり、ロケットパンチを繰り出したり、上空に運び去られてなすすべもないところで「まだ武器があるわ!」となったり他

これらのシーンがもう一度観たいがために今日2回目を観てきてしまったほどです(^^;
そんなわけでわたしが盛り上がったのはクライマックスより中盤の方だったりして。終盤の展開には正直「またイ○デ○ンデンス・○イ的展開かよ… こないだ○○○○○ズや○○○○○ンでもやったばっかしじゃん…」と若干萎えたのですが、その前の映像だけでも十分お釣りがきますし、2回目観たらその辺もそんなに悪くないような気がしてきました。やっぱり2時間ですっぱり決着つけるにはこの方法しかなかったのかもね… こうしたことで「続編に期待して!」という中途半端感もなかったし。この辺の話はまた『ワールド・ウォー・Z』のレビューでしたいと思います。

Pcm5色々出てくるロボット・怪獣でわたしが特に気に入ったのはロシア製のイェーガー、チェルノ・アルファ。他のイェーガーがシャープでヒーロー然としてるのに対し、これだけ明らかに手抜きデザインというか、敵のロボが紛れ込んできたみたいな。でもそんなシュールなシルエットがかえって大人のハートをくすぐるのでした。

『パシフィック・リム』はただいま全国で苦戦しながら絶賛上映中。どうでしょう。わたしの熱意伝わったでしょうか。じゃあそれ、いつ観に行くんですか? まだやってるうちにでしょう!

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August 21, 2013

8月のママさん戦争 ジャニック・ファイジエフ 『オーガスト・ウォーズ』

Agws1ボンクラ待望のバカSF『パシフィック・リム』が(一部で)超絶賛公開中です。そんな中明らかに『パシフィック・リム』に便乗しようとしてひっそりと公開されているロシア製ロボット映画?があります。夏休みにぴったりなそのタイトルは『オーガスト・ウォーズ』。ご紹介しましょう。

2008年ロシア。モスクワに住むシングルマザーのクセーニアは、腕白ぶりに手をやきながらも息子のチョーマを懸命に育てていた。夏季休暇に恋人に旅行に誘われたクセーニアはためらいながらも元夫の住む南オセチアへチョーマを預けてしまう。しかし折り悪くオセチア国境で紛争が勃発。クセーニアは旅行をとりやめて南オセチアへ急行。砲弾の飛び交う戦場で息子の姿を探してさまようことに…

あれ? あらすじのどこにもロボは出てきませんよね? だのにこの公式サイトを観ると予告編含めていかにもロボ映画みたいなんですが…
実はこのロボはチョーマ少年が大ファンのミュージカルに出てくるキャラクターでありまして、彼の妄想として映画の端々に出てくるのです。それを除くと実にシビアでリアルな戦場サバイバル映画です。
だからロボット目当てでこの映画を観に行くと、カレーライスを頼んだのにレバニラ炒めが出てきたような感覚を覚えます。
まあわたしレバニラ炒めも嫌いじゃないですけどね。それだったらはじめっから「うちはレバニラしか出しませんよ」と言っておいてくれれば… ブツブツ

とりあえずその辺の理不尽さを水に流せれば色々と見所のある作品です。
まずあまりなじみのなかったオセチア紛争について勉強になります。
そしてごく普通の生活を営んでるわたしたちがいきなり戦場に放り出されたら… という恐ろしい疑似体験ができます。南オセチア付近の人々も前日までまさか突然戦争が始まるなんて思ってなかったわけで。平和というのは時として突然予告もなく終わってしまうものであり、本当にありがたいものなんだな… ということをしみじみと感じました。
あと非力だったクセーニアが息子のために危険地帯へずんずんと入り込むくだりは実に手に汗握らされます。サポートしてくれた兵士が「世界で最も危険な」と評するような、スナイパーや戦車がうじゃうじゃひしめく地帯を息子を連れて帰ってくるなんてはっきり言って無理ゲー状態なんですけど、息子を想う母親の前にそんな道理は通用しません。最初に「わがままな女だな~!」と彼女に抱いていたいらだちはどこへやら、そのミッション・インポッシブルを果たせるよう心から応援するようになってしまいました。

ま、もひとつひっかかった点を挙げるとするなら、この映画プーチン大統領がなかなかかっこいい役どころで出てくるんですよね。ほんで戦争の悲惨さを訴えているのかと思っていたらいつの間にか「ロシア軍強ええ! ロシア兵士かっこええ!」って感じになってました。まあ対立するグルジア兵にも人並みの情けがあることも描かれてましたし、なにしろこれロシアで作られてるんで、あまりその辺批判的に描いたら当局からにらまれちゃうのかもな、とも思いましたけど。

Agws2『オーガストウォーズ』は現在全国10スクリーンくらいで細々と公開中ですが、うちの近所の小田原ではもうレイト限定になってる!
ご興味おありの方はお早めに! そしてくれぐれもロボには期待しないで! ロボは『パシフィック・リム』で観ましょう!

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August 16, 2013

ゼロとジロー 宮崎駿 『風立ちぬ』

Kztn1_2しろーいー さかーみちがー そらまでー つづいていたァーッッッ!!
…失礼いたしました。初期のころのオタク専門のイメージはどこへやら。いまや日本で一番稼げる映画監督となってしまった宮崎駿監督の最新作がこのほど公開されました。…なんてわたしが言わずとも日本国民の皆さんの8割はもうご存知でしょうけど。零戦の開発に携わった実在の人物・堀越二郎氏の半生を、堀辰雄氏の名作に絡めて描く『風立ちぬ』、ご紹介いたします。

大正時代、寝ても醒めてもひたすら飛行機への情熱を燃やす堀越二郎という少年がいた。彼の夢には時折イタリアの名設計士カプローニが現れ、二郎と飛行機の未来について語り合うのだった。実家が裕福だったこともあり、成長した二郎は大学に進み航空機設計について学ぶ。
大正も末期の14年、二郎は実家から大学へ戻る列車の中で関東大震災を経験する。人々がパニックに陥る中、彼は居合わせた少女とその使用人の女性を避難させる。二郎はことを見届けると名も告げずにその場を去った。
時代は昭和となり、日本は戦争へと突き進んでいく。だが二郎の頭にあるのは相変わらず「より優れた飛行機を作る」ただそのことだけだった。そんな折、二郎は地震の折に助けたかつての少女と再会する。

今回はかなりネタバレして書きます。これから観ようかという人はできれば映画館に行ってから以下をお読みください(忘れられそう…)。
この映画に関しては本当に人それぞれの意見・感想があると思います。わたしは「夢が人を殺すこともある」…そういう話だと思いました。
実在の彼がどうだったかは知りませんが、この作品の堀越青年は始終夢うつつでいる、あるいはいまひとつ現実に距離を置いている、そんな人物として目に映りました。「何に対してもあまり喜怒哀楽を表さず」「夢の中のカプローニの言葉を神託のように受け取っていて」「戦争や社会問題に特に興味を示そうとしない」そういった描写から。
また、そんな堀越青年の姿は、これまでずっとアニメの中で夢のような世界を描き続けてきた宮崎監督と微妙に重なります。
前半で特に印象に残ったのは、堀越青年が貧しい姉弟にパン菓子を恵もうとして拒絶されたエピソードでした(弟は食べたそうでしたが)。飢えることになろうともプライドを重んじるこの子供たちはなんだか高畑勲監督の『火垂るの墓』の兄妹を思い出せます。
宿に帰ったあとで二郎の親友本庄は「それは偽善だ」と彼を責めます。現実に目を向けずに夢だけを追いかけている二郎を宮崎監督だとするなら、現実を見据えつつ淡々と与えられた仕事をこなす本庄は高畑監督がモデルなのかもしれません。劇中で「本庄と組みたい」という二郎が上司から「同期とは組むな。友情を失うぞ」と諭されるシーンはなんだか意味深でありましたw

で、そんな堀越青年に現実に目を向けさせることになるのがヒロイン菜穂子の存在であります。彼女と愛し合うことで二郎は初めて飛行機以外のものに心を奪われ、生身の人間の命を実感することになります。
しかし飛行機への情熱は間接的に菜穂子の死を早めることになります。そして彼女の喪失と零戦の完成が交錯した瞬間、二郎は自分の夢が人の命を奪うものであったことを、自分の罪を認めざるをえなくなります。こういった二郎の半生は宇宙ロケット開発のためにナチスに手を貸してしまった科学者フォン・ブラウンの話も思い出させます。
でも彼が死なせてしまった人たちは二郎のことを責めません。菜穂子は無邪気に「生きて」と語りかけ、空に散っていったゼロ戦のパイロットも「素晴らしい飛行機をありがとう」と言います。そんな優しい態度は厳しく難詰するよりも、一層二郎を苦しめると思うのですが。
愛する伴侶を失い、才能は枯れはて、ズタボロになった飛行機の残骸のような体で生きていくというのは、このうえない罰であるかのように思えます。それでも二郎は「生きねば」とつぶやいて物語を閉じます。まるで自分の罰を従容として受け入れるかのように。


さて、今回大きな評価の分かれ目となったのは主人公・二郎を演じたアニメ監督庵野英明氏の声でした。いい加減贔屓目だとは思いますが、わたしは彼の声でよかったと感じました。というのは朴訥であまり感情のこもってない演技が、夢にうかされて現実を見ていない二郎のキャラクターによく合っていたから。そして普段は平板な彼の口調に、菜穂子を抱きしめる時だけぐぐっと熱い感情が込められる。そこがまた印象深かったです。
今回庵野氏が起用されたのは、彼もかつて作品を創るにあたり地獄を見た経験があったからだと思います。どこまで本気かわかりませんが、『エヴァ』TVシリーズ終了後精神的に追い詰められてビルから飛び降りようかな、とまで思ったとか。そんな彼の過去を知っていると、二郎が庵野氏にシンクロしてきて一層親しみ深いキャラに感じられたのでした(笑)
まあ庵野さんは二郎に比べるとかなりワイルドなクリエイターのようですけど。十五年ほど前読んだ本によりますと、スタッフが思い通りに動かないこと「チクショーチクショー」とつぶやきながらロッカーに頭をガツンガツンぶつけだすんだとか。そんで気迫に押されたスタッフが「仕方ない…」と言うことを聞くんだとか。「あれ、最初は素でやってたと思うんですけど今は計算してやってると思うんですよね」と某スタッフは語っておりました。今も果たしてその戦法を使っているのかどうかはわかりません。

Kztn2話が横道にそれましたが、言うまでもなく『風立ちぬ』は現在全国の映画館で上映中。そして朋友?高畑勲氏の新作『かぐや姫の物語』も今秋公開予定。これまたかぐや姫の「罪と罰」をめぐるお話だそうで… 高畑氏の作品は観てて辛くなるものもあるんですが、この競作、やはり自分の目で確かめないわけにはいきますまい。
そして庵野さん、そろそろ『新エヴァ完結編』の公開の日付を教えてくれんかね…


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August 14, 2013

朴念仁の夏休み 東野圭吾・西谷弘  『真夏の方程式』

Mnht2いやーーーー! みなさん、夏、楽しんでますか! わたしは今晩は親戚のおばさんが来てて酒盛りがあったので、すでにべろんべろんです!
でもいい加減間が空いてしまったので、今日はがんばってブログ更新したいと思います。話題の東野圭吾×福山雅治の『ガリレオ』シリーズ最新劇場版『真夏の方程式』、ご紹介いたします。

今を遡ること16年前。東京の片隅で一人の女性が刺殺された。犯人は彼女の顔見知りの男性と断定され、男も素直に罪を認めた。事件はそれで解決したかに見えた。
現在。警察に捜査のアドバイスで度々協力している物理学者の湯川は、環境保全の説明会で海辺の町・玻璃ヶ浦へ向かう。彼が泊まった旅館は、たまたま来る途中知り合った少年・恭平の親戚が経営している宿であった。
子供らしく遠慮のない態度で接してくる恭平に、辟易する湯川。
しかし旅館で起きた殺人事件をきっかけに、湯川は少年の人生を守るために奔走することになる…

東野圭吾作品はこの「ガリレオ」シリーズで本格的にブレイクする以前に十作くらい読んでました。とりわけ良かったのは『魔球』『変身』あたりでしょうか。『十字屋敷のピエロ』も好きでした。
ただ「ガリレオ」シリーズは第1シーズンとその劇場版『容疑者Xの献身』をテレビで観ただけ。第2シーズンにいたってはついスルーしてしまいました。それでもこの『真夏の方程式』を映画館で観ようという気になったのはツイッターで非常に評判が良かったから。
普通最近の若い映画ファンって滅多にTVドラマの劇場版ってほめないんですよ。それがけっこうみなさん熱く絶賛してるので、これはなにかあるだろうと。変人と少年の交流・夏休み映画ってわたしの好みの題材でもありますしね。

というわけで観賞に臨んでみましたが、ちょっとひっかかるところがないでもなかったです。というのはこれ、湯川・少年・被害者が旅館に同じ日に泊まらないと成立しない話なんですね。三人がそれぞれ玻璃ヶ浦に来た理由というのがてんでバラバラなもんですから、そんな偶然あるもんかなあ… とちょっと気になってしまったのです。二人くらいまでならまだしもそんな偶然もあるかもしれませんが。

と、ケチをつけながらも後半のあたりではダラダラと涙と鼻水を流しておりました(笑) 計算にのせられてるなーとは思ったんですが、前田吟と白竜の朴訥な演技に泣きツボをやられてしまったのでした。あと現在朝ドラで活躍中の塩見三省氏が「勉さん」そっくりのいでたちで出てきて、あっけなく退場してしまったのがまるで勉さんが死んでしまったようでそこも泣けました。

「現在の殺人事件が十数年前の出来事と深く関わっている」「犯人を必死でかばおうとする老人」というところは、松本清張の小説・映画『砂の器』を思い出させます。日本ミステリー界・映画界にはかなり『砂の器』が好きな方も多いようなので、東野氏・西谷氏ももしかしたら意識してたのかもしれません。

あともうひとつ、なんでわざわざ子供と湯川をからませたのか…その辺を疑問に思いながらずっと観てたんですが、最後の方になってやっと「ああ、そういうことだったのか」と深く納得いたしました。
世の中は決して「子供だから」といって容赦してくれるわけではありません。時として残酷な運命に見舞われる子供もいます。そんな時、大人である自分は子供たちの助けになってやれるだろうか…と映画を観ていて思いました。
ガリレオ先生こと湯川教授も根は子供なんだと思います。周囲の騒ぎなどお構いなしに自分の好きなことだけに打ち込んでいる様子から、それがわかります。そんな湯川教授だからこそ、子供の気持ちがよくわかったのかもしれません。もっともベタベタに優しいわけではなく、序盤は「子供は苦手だ」と邪険に扱ってたりして。そんなぎこちないやり取りも面白うございました。

225pxgalileo_arp_300pix『真夏の方程式』は現在大ヒットにつき全国の映画館でたぶんまだ上映中。
この時期になると「○○感想文」というワードで検索されることが多いんですが、そんな学生諸君に湯川先生の言葉を借りて警告いたします。

「いいか、自分で考えろ」

失礼いたしました。


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August 09, 2013

お化けなんて怖くない(場合もある) ダン・スキャンロン 『モンスターズ・ユニバーシティ』

Msuv1昨年の『メリダとおそろしの森』の日本での爆死っぷりが記憶に新しいピクサー・アニメーション・スタジオ。しかし今年はうってかわって全盛期並みの盛り上がりを見せております。そりゃそうだよなー あのマイクとサリーが帰ってきたんだから…
名作『モンスターズ・インク』の12年ぶりの続編というか前日談、『モンスターズ・ユニバーシティ』後紹介します。

そこはモンスターたちが暮らす世界。彼らは人間界へ時々お邪魔しては子供を驚かせ、その恐怖をエネルギーに活用して文明を発展させてきた。モンスターの子供マイクは社会科見学で「怖がらせ屋」たちの仕事を見て以来、自分も「怖がらせ屋」になることを夢見て勉強に励んできた。その甲斐あってマイクは一流モンスターたちが集まる名門「モンスターズ・ユニバーシティ」に晴れて合格する。念願の大学生活に浮かれていたマイクだったが、同じ新入生のサリーのいけすかない態度が彼を苛立たせるのだった…

導入部でまず心を奪われるのはチビマイクのかわいらしさです。正直一作目の時は「やかましいウザいやつ」という印象のマイクでしたが、ちっこくてまん丸でひたむきでかわいそうで、川原泉先生のお言葉を借りるなら「おにぎりにして転がしたいかわいさ」でありました。
ただモンスターにとって「かわいい」というのはあまりほめられた特徴ではないようで。マイクは体格の不利(笑)を補うべく一生懸命努力するのですが、それでも「かわい~~~」と言われてしまうあたりは爆笑ものでした。
爆笑ものといえば自分の限界を感じてマイクが一人川辺でたそがれるシーンがあります。この辺も本当にかわいそうなシーンでもあるんですけど、ただでさえヘンテコなシルエットのマイクが後ろを向いてうなだれる姿はもう謎の物体でしかない。こんなシュールな光景で「泣け」と言われても、ねえ(^^;
そんなわけでとにかくマイクにいろいろ楽しませてもらった二時間でありました。
対して一作目の主人公であったサリーは最初いや~なイメージをまとわせつつ登場いたします。これはショックですよね。『~インク』では優しく朴訥で頼もしかったサリーがまるでいじめっ子みたいなんですから。当然いじめられっ子っぽいマイクとは犬猿の仲であります。
そんな風に観ていくと幾つか疑問がわいてきます。なぜ険悪だったマイクとサリーが『~インク』では親友になっていたのか? そしてマイクは確か「怖がらせ屋」ではなくあくまでサリーのサポート役ではなかったか? 『~インク』での悪役ランドールはなぜサリーを憎んでいたのか? 
前日談の醍醐味というのはこの辺にあると思うんですよね。スターウォーズEP3しかり、X-MENファーストジェネレーションしかり。沸き起こってきた疑問がクライマックスに近づくにつれ次々と解けていき、最後にわたしたちの良く知っているあの話にバーーーーン!と繋がっていくあのカタルシス。その点ではこの『モンスターズ・ユニバーシティ』はなかなか良くできた「前日談もの」でありました。

というわけで十分満足した『モンスターズ・ユニバーシティ』ですが、ちょっと不満というか不安に思った点がひとつ。
これまで「信じれば(がんばれば)どんな夢でもかなう」ということを子供たちに教えてきたディズニー。しかしこの映画では「どんなにがんばってもかなわない夢もある」という現実をはっきりとつきつけます。で、「かなわない夢は諦めて自分の本来持ってる才能を生かせ」と。そういえば春にやってた『シュガー・ラッシュ』もそんな感じだったなあ。
それも確かに人生の真理なのかもしれませんが、子供たちにはもっと甘い夢を見させてあげてもいいのでは… と人生にくたびれてきたおじさんは思うのでした(^^;

Msuv2最近『カーズ2』『トイストーリー3』と続編ものが続き、『ファインディング・ニモ』の続編も準備されているピクサー。しかし『ニモ2』のあとは後進育成のためにしばらく「続編もの」を封印するとの発表だなされました。さすがチャレンジ精神を重んじるピクサー!と感心したものの、ちょっと残念なのも確か。『~インク』で登場したブウちゃんの成長した姿や、彼女とサリーはいつまで一緒にいられるのか?という話も見てみたいんですがね… そんな「後日談」を作ってようやくマイクとサリーの物語は美しく終われると(勝手に)思うんですが。

『モンスターズ・ユニバーシティ』は現在全国の劇場で上映中。『風立ちぬ』と並んで今年の夏はアニメが強いです。

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August 07, 2013

吾輩は泥棒猫である アラン・ガニョル ジャン=ルー・フェリシオリ 『パリ猫、ディノの夜』

Pcdn1『ベルサイユのバラ』『ノートルダムの鐘』『レミーのおいしいレストラン』… パリを舞台にした名作アニメも色々ありますが、この度また風変わりな1本がそれに加わりました。2012年のアカデミー賞アニメーション部門の候補ともなった『パリ猫、ディノの夜』ご紹介いたします。

ディノはパリに住む少女ゾエに飼われている勇ましい猫。先に父を亡くし、母は警察の仕事で忙しく、ゾエはさびしい毎日を送っていたが、ディノは彼女をなぐさめてくれる数少ない友人であった。ある日ゾエは好奇心に誘われて、夜の散歩に出かけたディノのあとをこっそり付いていく。ディノが向かった先はなんと警察が追っている凄腕の怪盗ニコの家であった…

原題は「UNE VIE DE CHAT」。直訳すると『猫の生活』ってとこでいいのかな? もしこの訳があってるのだったら、チャップリンの名作『犬の生活』をもじったのかもしれません。
最初はその独特なデフォルメ感覚に当惑させられますw 同時期に公開されている欧州アニメ『しわ』と比較するとよくわかるんですが、明らかに通常の人体のシルエットをくずして描いています。フランスだからというわけではありませんが、全体的にヌボーってしてる感じですし、おっぱいの膨らみ方もなんだか不自然。しかしそのシンプルで個性的な描線が画面にやわらかみをそえています。
やわらかみといえばこの作品は最近新作では珍しくなったフィルム上映でありました。わたしゃあまりフィルムとデジタルの違いがわかりにくい人間なんですが、久しぶりにアニメをフィルム上映で観てみたら、漠然とフィルム特有のじんわりとした色合いがわかってきたような。そういえば特にアニメに関してはデジタルとフィルムの差がはっきり出る、とどこぞのコラムで読んだ記憶があります。

ストーリーもハリウッドの作る冒険モノとはちょっと違います。米国のアニメ映画では大抵主役の動物キャラは愉快でかわいらしく、人語を話してストーリーをひっぱっていくものですが、こちらのディノくんはワイルドでミステリアスで、普通に猫語しかしゃべりません。というかタイトルにはなっているけれど、ディノ君は主人公ではないような。
お話をひっぱっていくのはゾエとスマートな怪盗ニコ。ディノは二人を結ぶキーパーソンならぬキーキャットであり、気の利くサポート役であります。映画ではなんでか猫がかっこよく描かれることはまれなので、その一点だけとっても貴重な作品と言えます。
あとディノと同じくらいしぶいかっこよさ漂わせているのは大泥棒のニコです。やってることはコソ泥なんですが、屋根を駆け抜け、大胆な手口で誰も傷つけずにお宝をゲットする仕事ぶりはフランスを代表する怪盗アルセーヌ・ルパンを彷彿とさせます。しかもたまたま知り合っただけの少女を救うために、危険を犯してギャングと戦う姿は大抵の女子であればコロリと参ってしまうでしょう。
一方でニコやゾエの母の敵となるギャングのコスタは見かけも行動も醜悪に描かれています。この辺のフランス人の微妙な善悪の感覚も面白いところ。泥棒であっても女子供に優しく血を流さないニコは善玉、同じ犯罪者なのに私欲のためには殺人もいとわないコスタは誰が見ても極悪人であります。こういう犯罪者の個性の書き分けなどは池波章太郎先生の『鬼平犯科帳』を思い出させます。そんな子供アニメには似つかわしくないフィルムノワールっぽさも、アニメ作品にしては珍しいです。
あとどういうわけか『ゴジラ』をオマージュしたようなシーンもあるので怪獣好きは観ておいた方がいいでしょう。そういや『ペルセポリス』でも一場面が映って?いたし、先の『ホーリー・モーターズ』でも音楽が使われていたり、フランスの文化人にはゴジラ好きが多いのかもしれません。親近感を感じます。
Pcdn2_3『パリ猫、ディノの夜』は現在東京は新宿ピカデリーのみで上映中。遠からずDVDも発売されるでしょうが、もっと多くの人にスクリーンで味わってほしいものです。
となりの画像はコスタ親分が狙うお宝「ナイロビの巨像」。うろおぼえで描いたので細部はやや異なるかもしれません。

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August 02, 2013

寄せては返す波のようで J・A・バヨナ 『インポッシブル』

Inps1いまも多くの人々の記憶にはっきりと焼きついている東日本大震災。直後はその影響で様々なパニックものの映画が公開延期になったものでした。それから二年。2004年のスマトラ沖地震を題材にした映画がこの度危ぶまれつつも日本公開となりました(もう二ヶ月経ってますけど…)。『インポッシブル』紹介いたします。

クリスマス休暇に3人の息子と共にタイのプーケットを訪れたマリアとヘンリーの夫妻。仕事がこの先も続くか不安なヘンリーだったが、豪華なホテルで一家は楽しいひと時を過ごしていた。だがその翌日、スマトラ沖で起きた地震が原因でプーケットにも津波の被害が押し寄せる。奔流に押し流されつつもなんとか浮き上がったマリアだったが、彼女の視界に映った家族の姿は長男のルーカスただ一人だった…

なんとなくちらりと見た画像から沖へ流された家族がずっと漂流する話なのかと思ってましたが、意外と早く陸地に上がってました。ただそのあとがけっこう大変で一家はバラバラになってしまうし、けっこうな大怪我も追ってしまうし、離れ離れになってしまった家族は生きてるかどうかもわからないし… もう一度彼らは再びめぐり会うことができるのか。そこでこの映画のタイトル『不可能』が生きてきます。ちなみにこの言葉は子供たちにあるおばあちゃんが「夜空に光っている星が今もまだ残っているのか確かめるのは不可能」と語りかけるセリフの中に出てきます。

監督は異色の癒し系ホラー『永遠のこどもたち』を撮ったスペインの新鋭J・A・バヨナ。ファンタジックなホラーから実話を元にした感動作ってけっこうジャンプしたなあ…とは思いましたがニ作品には色々通じるところがありました。
ひとつは子供を救おうと鬼気迫る表情で必死になる親の姿。まあ親御さんにとって最も恐ろしいのは怪物でも幽霊でもなく自分の子供を失うことでしょうから、半狂乱になるのも無理からぬことかと思います。
もうひとつはきめ細かな「痛い」描写。この映画ではナオミ・ワッツ演じるマリアさんのヒザ裏が「べろんちょ」とえぐれてるシーンがありまして、あーもーあーもー 思い出しただけでも身の毛がよだちます。そういえばナオミさんは冒頭こそ「この人も年くわないなー」って感じなんですけど、お話が進むにつれ怪我と心労で見る見るゾンビのようになり、おまけに乳首まで出して本当にお疲れ様でした。

以下ストーリー中バレで。「『泣かせ』がくどい」という意見もあるのですが、近頃子供が一生懸命になっている姿に弱いわたしとしては見事に計算に乗せられてしまいました。「私はいいから誰かの助けになってあげて」という頼みを聞いて、病院で人助けに奔走するルーカス君。そんでかえってきたらお母さんのベッドはなくなってるし… この辺の理不尽さにまずぶわっときました。その後も五分おきくらいにきつかったりほっとしたりするシーンが交互に押し寄せてきて、歯を食いしばりながらガンガン泣いてたらしまいにゃ頭が痛くなってきてしまいました。映画で泣くのにも「うむ! 気持ちよく泣かせてくれてありがとう!」という場合と「そんなにあたしの弱点ばっかり攻めないで! 卑怯よ!」という場合があるのですが、この映画の場合は… 後者かな。確実に言えるのは十年前よりも確実に涙もろくなっているということです。

Inps2『インポッシブル』は首都圏ではだいたい公開終わってしまったようですが、東北など地方ではこれからかかるところも多いようです。詳しくは公開劇場一覧をご覧ください。


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