マイ・ハート・ウィル・強引 スコット・フィッツジェラルド バズ・ラーマン 『華麗なるギャツビー』
わたしも来月いよいよ大台に乗りますが、この年になっても読んでない「読んでおくべき名作文学」たくさんあります。そのひとつで村上春樹にも多くの影響を与えたという『華麗なるギャツビー』がこのほど映画化されたので、「やった! これで読んだふりができる!」とばかりに言ってきました。それでは知ってる人は知ってるでしょうけどあらすじから。
1922年のアメリカ。大都会ニューヨークに出てきた青年ニック・キャラウェイは株式市場で成功することを夢見て日々働いていた。彼の隣家では巨大な城に住むギャツビーという男が週末ごとに盛大なパーティーを催していた。ある日ニックの元にもギャツビーからパーティーの招待状が届く。想像以上の喧騒の中会場をさまよっていたニックは、突然招待主であるギャツビーその人と会う。
…と書いてみましたが、タイトルにもあるギャツビーさんが登場するまでにけっこう間があります。噂のみが飛び交い、なかなかはっきりしないギャツビーの実像。いい加減しびれを切らしたころにみんな知ってるディカプリオの顔がバーンと出てきて思わず「キターーーーー!!」と叫びたくなりました。こういう登場までの流れ、なんだか『ゴジラ』をはじめとする怪物映画のそれに似ていました。
小説『華麗なるギャツビー』は先にも申しました通り未読でございますが、ちらちら聞きかじった情報から「田舎から出てきた純朴な青年がギャツビーという大物そうな人物に出会うが、やがてギャツビーの化けの皮がはがれて青年は心に傷を負う」という話なのかと勝手に思ってました。まあそんなに外れてはいないかな。ただ実際観てみて、こんなに恋愛の比重が大きい話だったとは意外でした。ヘミングウェイにしろレイモンド・チャンドラーにしろスタインベックにしろ、このころのアメリカ文学の旗手ってなんか「男くせ~」印象が強いので、『ギャツビー』も勝手にそういう話だと思い込んでいたのですね。だいたいほら、日本で「ギャ(ッ)ツビー」といえば普通は男性用の香水かフェイシャルペーパーですし…
この『華麗なるギャツビー』、名作中の名作と言われるゆえ、これまでも4度に渡って映画化されてきました。そこで監督バズ・ラーマンが「同じことをやってもしゃあねえ」と考えたのか(こんな文章、ついこないだも書いたような…)、今回は『ギャツビー』初の3Dによる映画化となりました。思い切りましたね(笑)
で、特に3Dによる効果が出てたのが1920年代のニューヨークと、ギャツビー邸で行われるパーティーの場面。これらが立体映像で描かれていることで、いっそうそのにぎやかさというかかけばけばしさが際立っていたと思います。多少目がチカチカしましたが、眺めていて楽しいビジュアルでありました。
あと監督があえて3Dにしたのは「遠くの光に手を伸ばすギャツビー」「町を見下ろす巨大なメガネの看板」、これらのイメージの持つ「距離感」を強調したかったのかもしれません。人はいつの時代も手の届かない物を欲するもの。そんな願望がもたらす悲劇を傍観する何か。そういった距離感がこの作品のテーマのひとつのような気がします(そういうことは原作を読んでから言おうな?)
「何度も映画化された名作文学を斬新な手法でアレンジ」「富裕層の不倫が産む悲劇」「タイトルにカレーが入ってる」という点では先に公開された『アンナ・カレーニナ』とよく似ています。ただわたしとしては「奇妙な友情」という要素があった分こちらの方が好みでした。
ギャツビーはニックよりもはるかな高みにいる存在として登場します。それがいろいろあって、やがて対等の存在、真の友人となります。しかしその友情は築かれた途端、すぐに終りを迎えてしまう。そんな二人の関係につい感傷的にさせられてしまいました。
『華麗なるギャツビー』は全国の劇場で公開中ですが、明日で終わってしまうところがほとんどのようです。読書感想文の題材を探してるそこの学生諸君は急いで観にいってきましょう。
最後に印象に残った点をもうひとつ。きまずいムードになったギャツビーらが気晴らしに町に出かけるのですが、夏の暑さにかなり参ってるシーンがありました。そう、この時代はどんなに大金持ちといえど、暑さだけはどうにもすることができなかったわけですね。クーラーのありがたさにしみじみと感謝しながら、無意味な優越感にひたるわたくしでございました。
Comments
伍一さん、
唖然としちゃいました。さずがに伍一さん。
絶妙なレビューです!
私も、デカプリのギャッツビーが『ゴジラ』には見えなかったけれどど(笑) 登場した時のシーンは、じらされただけあって印象深かったです。
Posted by: まみっし | July 26, 2013 05:31 AM
>まみっしさん
おはずかしい
すごかったですよね、ディカプリオのドヤ顔(笑) こないだの『ジャンゴ』の高慢ちきぶりも板についてましたし
いまハリウッドでそこそこ若い中では、最もドヤ顔の似合う俳優さんだと思います。素では環境問題にも関心を払ったりとなかなか立派な御仁のようですが
Posted by: SGA屋伍一 | July 26, 2013 01:43 PM
伍一くん☆
お、ついに立派に大台なのですね。ってことは・・・・ぎゃーっ!
確かに節電を唱えながらもしっかりクーラーで涼を取っている私たちは、湯水のようにお金を撒き散らすギャッツビーよりも優雅なのかもしれないですね。
ディカプリオのドヤ顔、私はこちらの作品のほうが好きでした。
Posted by: ノルウェーまだ~む | July 28, 2013 04:15 PM
>ノルウェーまだ~むさん
ふふふ… 光陰矢の如しですよ…
自分も若かりしころは「昔の人はクーラーなんてなかったんだから」と扇風機だけで夏をしのいでいましたが、いまはもうダメです。クーラーなしでは夏を乗り切れません
やっぱり商取引でものを言うのはドヤ顔ですかね。自分もなんとか身に着けたいものです
Posted by: SGA屋伍一 | July 30, 2013 11:43 PM
こんにちは!(*^^*)
豪華絢爛絵巻は、ステキでしたが
お話は、切ないですからね〜。
ギャツビーの盲目的な愛に比べ、デイジーは現実的ですよねー。
いつの時代も女性の方が、現実的だということなんでしょうね〜。
それにしても連日本当に暑いですよねー。
エアコンのある時代でホント良かったです!(笑)
Posted by: ルナ | August 11, 2013 03:51 PM
>ルナさん
毎度返事が遅くなってすみませぬ…
>豪華絢爛絵巻は、ステキでしたが
お話は、切ないですからね〜。
そうですねー あとの祭り…じゃなくて祭りの後のさびしさをしみじみ感じさせるお話でした
>いつの時代も女性の方が、現実的だということなんでしょうね
やっぱりそうなんでしょうか(^^; でも確かに一見夢見がちでふわふわしてるようで、イザという時ばさっと冷静な決断を下す方は多いですよね。全ての女性がそうだってわけじゃありませんが…
ところでいま突然エアコンから水がバシャバシャ垂れてきてビビリました。いま壊れると非常に困るんですけど!
Posted by: SGA屋伍一 | August 14, 2013 12:35 PM
こんばんは
クーラーのない時代・・・たしかにいまよりは涼しかった夏ではあり摩すが
もう帰れませんね~~あの「打ち水」や「行水」や「すだれ」だけで涼を取る生活は。
そういやわたし大学時代は四畳半の下宿でしたが
クーラーなんかなかったなぁ。あんまり熱帯夜(滅多になかったけど)には
部屋の隅のミニ冷蔵庫に足を突っ込んで寝たことも(貧乏)
レオの登場シーンはわたしは彼のドヤ顔が
横長の楕円形になっているのに軽くショックを受けました。
丸顔になったなぁ~とは思っていたけど横長の楕円とは・・・・
Posted by: なな | August 24, 2013 08:27 PM
>ななさん
こちらにもありがとうございます
そういえばわたしが子供のころはクーラーってまだ贅沢品だったような。そんなに貧乏なうちでもなかったんですが… いや、貧乏だったのかな…
ななさんの学生時代のお話面白いです でもそういった苦労が後になっていろいろ実を結ぶのではないでしょうか…
そういえば新バットマンがベン・アフレックに決まりましたね。コミックではバットマンって顔が縦ではなく横に広く描かれることが多いので、もっと他にいるんじゃないかな~と思いました
で、顔が横に広く演技力もあって富豪が似合う俳優…ということでぱっとレオ様が思い浮かんだのです。うん、でもやっぱりなんか違いますね
Posted by: SGA屋伍一 | August 26, 2013 09:15 PM
この映画は泣きました。
恋愛ってここまでやってもダメな時はダメなんですねw
人生ってタイミングって大事なんだな~(メモメモ!
Posted by: 田代剛大 | October 15, 2013 10:48 PM
>田代剛大さん
泣けましたね…
あのディカプリオでさえタイミングを誤ったりついかっとなったりするだけで女子からさぱっとふられてしまうわけですよ
ですからわたしらなんてなおさら努力すべき… というか、努力して報われるのかな、と思ってしまった40歳独身でした
Posted by: SGA屋伍一 | October 16, 2013 10:17 PM