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July 30, 2013

サイコキラーでも大丈夫 パク・チャヌク 『イノセント・ガーデン』

Ingd2「復讐三部作」や『JSA』で知られ、国外でも高い評価を得ている韓国の鬼才パク・チャヌク。そのパクさんがとうとうハリウッドデビューを飾ったのが本作品。『アリス・イン・ザ・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカを主演に少女の奇妙な変容を描く『イノセント・ガーデン』、ご紹介します。

アメリカの地方都市に住む孤独な少女インディア・ストーカーは18歳の誕生日の日に父を事故で亡くす。それと入れ替わるように、これまで姿を見せたことのなかった叔父・チャーリーが彼女と母が住む屋敷にやって来る。ミステリアスだが物腰の柔らかいチャーリーに母イヴリンは惹かれて行くが、インディアはなかなか警戒を解こうとしない。やがて彼女の住む町の中で不振な失踪事件が相次ぐようになる…

『イノセント・ガーデン』という題はなにやらバーネット夫人の名作『秘密の花園』を思い出させます。きっと豪華な屋敷の庭に秘密が隠されていて…とそんなストーリーを期待してましたが、お庭はあんまり重要じゃなかったですね(^^; だいたい調べてみたらこれ日本で付けられたタイトルで原題は『Stoker』といいます。全然違うやん! この題はヒロインの姓であると同時に「忍び寄るもの」みたいな意味も含められているのかもしれません。

ちょっとストーリーをばらさせてもらうと

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まあこの叔父さんというのが根っからのサイコさんというか、快楽殺人犯なんです。ヒロインがそれに気づいて「きゃあどうしよう私がお母さんを守らなくちゃ」とハラハラドキドキの追跡劇を繰り広げればふつーのエンターテイメントなんですけど、ここでちょっとあっけにとられちゃうのが、叔父さんの正体を知ってむしろときめいてしまうという。パク・チャヌクらしい展開ですね(笑)
女の子にはやっぱり多かれ少なかれそういうところがあるんですかね… どうしようもなく危険な男だとわかっているのに、ついその微笑みに魅せられてふらふらとよろめいていってしまうという性向が。そして自分の中の危険な性癖に気づき始めるインディアの姿は、最初は引っ込み思案だったのに一線を超えた途端ケラケラ笑いながら周囲の人間を殺し始めるパク作品『渇き』のヒロイン・テジュを思い出させます。
一方でどんなにシリアスな作品でも時折挿入されてるパク・チャヌク独特のあのユーモアセンスが、こちらではほとんど見受けられなかったな… インディアが自分を時計に見立てて脚をバタバタさせてるところくらい。初めてのハリウッド進出ということでギャグを入れる余裕もないほど緊張していたのでしょうか。

代わりにあからさまに感じるのがヒチコックの名作『サイコ』の影響。ハンサムなおじさんの風貌や、不気味なモーテル、ビニール越しのシャワーシーンなど「これどう見ても『サイコ』でしょー」というシーンが幾つかありました。ただ同じ素材を使っていても展開はかなり違いますので、『サイコ』を観ているとかえって意表をつかれるかもしれません。

主演のミアちゃんは少し前に『アリス~』でお子様向けの清純なヒロインを演じていたのに、この作品では子供には見せられないようなあんなことやそんなことにまでチャレンジしていて、「少女が大人になるのは早い…」と痛感せざるをえませんでした。そしてミアちゃんにそういったことまで(たぶん)嬉々としてやらせていたパクさんは「筋金入りの変態だな」と思いました。

ところで先日知ったのですが、パク・チャヌク監督はいがらしみきお先生の漫画『ぼのぼの』の大ファンでもあるそうです。平和でほのぼのした『ぼのぼの』と血みどろ情念グチャグチャなパク作品は全くつながりが感じられませんが、うーん… シュールで独特なユーモアセンスや、世間一般の価値観や常識に囚われないあたりは確かに通ずるところがある…ということにしておきましょう。毎度のことですが強引につなげました。

Ingd1『イノセント・ガーデン』はまだこれから東北・東海・九州などでかかる劇場もあるようです。くわしくは公式サイトをごらんください。この作品は興業的には微妙だったようですが(^^; スパイク・リー監督による『オールド・ボーイ』リメイクや、『グエムル』のポン・ジュノ監督のハリウッドデビューも控えていて、引き続き韓国×米国の興味深いコラボを楽しみにしております。


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Comments

パク監督らしい、ヤバい作品でしたよね〜。
前半の何かわかんないけど、全体に漂う不気味な感じが
後半はおいおい!ミアちゃん、そっちへいっちゃうわけねーーって
感じで・・・(~_~;)
まあ、ユーモアには少々かけていたかもしれませんが、
とりあえずハリウッド進出は成功!ってことでしょうね〜。

Posted by: ルナ | August 11, 2013 at 04:02 PM

>ルナさん

場所は変われど変態は変わらず、というかんじでした。あとはもうちょっとお笑いシーンがあれば、ねえ
危険な男にひきよせられていくミアちゃんでしたが、わたしも危険になっていくミアちゃんにひきよせられてしまいました。うーん、やっぱり変態なんでしょうかw
とりあえずポンジュノ監督も負けじとがんばってほしいものです。変態道を

Posted by: SGA屋伍一 | August 14, 2013 at 12:39 PM

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