ブロンクス交通白書 ミシェル・ゴンドリー 『ウィ・アンド・アイ』
『エターナル・サンシャイン』『僕らのミライへ逆回転』など、奇抜なアイデアと独特なアートセンスで人気を集めるミシェル・ゴンドリー。そのゴンドリーさんの新作が先日こちらでも上映されたので観てまいりました。ですがいつものゴンドリ節と勝手が違うような・・・? 『ウィ・アンド・アイ』、ご紹介します。
ニューヨークでもガラの悪い町として知られるブロンクス。明日からの夏休みを控えた若者たちは、授業を終えていつものようにバスに乗って帰途へつく。我が物顔で睨みを利かす不良たち、自信満々のアンジェラ・アキ似の美少女とその友達、なにやら不穏な気配の漂うゲイのカップル、オレ様すごいぞアピールを女子達に振りまく勘違い少年たち、周囲を気にせずスケッチや音楽に没頭する者・・・ 若者たちの様々な思いを乗せ、バスは都会の道を走っていく。
最初に「奇抜なアイデア」と書きましたが、今回はのゴンドリー作品はやけに現実的というか地に足のついた内容です。どこにでもいる若者のごく普通の日常を描いた映画なんで。特撮やCGもほとんどなし。変わったところといえば時折不意を突くように回想場面や妄想場面が挿入されるくらいです。
あとアンジェラ・アキ以外はどうももっさりしてるイケてない子たちばっかりなんですよね。日ごろ洋画を観てると欧米の住人たちは半分以上が美男美女なのでは、と思ってしまいがちですが、そうでないことがわかってなんだか安心しましたw これは本当にブロンクス在住の、演技にはアマチュアの若者たちを起用しているからのようです。なんだかいまはなき『中学生日記』を思い出させますね!
日本でも米国でも変わらないなーと思ったのは、不良たちがバスの最後部座席に「指定席」と称して固まりたがることとかw 友達同士なのにお互いを容赦なくこきおろすところもそうですね。このくらいの若者たちというのは友達に対して本当に残酷なことを言ったりやったりするもんです。
そしてタイトルが示唆しているように、十代の少年少女というのは何よりもまず仲間に受け入れられることとか、他人から自分がどう見えるか、ということを気にかけているもの。しかし周りに合わせた自分というのは素の自分からほど遠いため、やがてボロが出始めます。
バスに乗っている学生たちはお互いの心無い会話や仕打ちによって、自分の恥ずかしい姿を周囲にさらしていきます。しかしバスに乗っている以上目的地に着くまでは降りることもままなりません。でもそうやってさんざん恥をかいた果てに、ある者たちは周りに合わせたものではない、自分の本当の気持ちに気づいたりします。
逆に日本と違うな・・・と思ったのは、なんだかんだ言って向こうの若者たちは根拠のない自信を持ってる子が多いな、ということです。こちらの若者は『桐島、部活やめるってよ』を観てもわかるように、どちらかといえば自分に引け目というかコンプレックスを抱えている方が多い気がします。わたしもまさにそんな青春を送ってましたし・・・ あ、今もか?
あとこれは東西ということではなく時代の違いですが、いまの学生たちは携帯があるから内緒話もあっという間にひろまるんだなあ、と。自分の中高時代に携帯がなくて本当に良かったです。
本当に十代のころというのは悩み多き時代ですよね。ただもうじき不惑を迎えるわたくしも未だに惑いっぱなしだったりして・・・ 今日はどうも話が暗い方へ行きがちだな。もうそろそろビール飲んで寝よう。実はさっきからもう飲んじゃってるんですけどね!
『ウィ・アンド・アイ』はもうやってるところも少なくなりましたが、東北、北陸、四国、九州などはこれから回っていくみたいです。青春の甘酸っぱさにひたりたい人とバスが好きな人におすすめです。
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Comments
>不良たちがバスの最後部座席に「指定席」と称して固まり
ですよねえ。あれって一体何なんだろ。
皆を見渡せる席だからか?
いろいろと痛いシーンもいっぱいありましたけど、本音を隠して生きないといけない子どもたちは窮屈に見えます。
Posted by: rose_chocolat | July 16, 2013 11:47 PM
>rose_choccolatさん
本当になんでしょうねえ。多人数で固まりやすい席だからとか?
自分はどうだったかなー 「本音を隠す」ってことはなかったと思うけど、やっぱり友達の前では虚勢を張ってることが多かったような。バレバレの虚勢でしたけどねw
Posted by: SGA屋伍一 | July 18, 2013 10:54 PM