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July 30, 2013

サイコキラーでも大丈夫 パク・チャヌク 『イノセント・ガーデン』

Ingd2「復讐三部作」や『JSA』で知られ、国外でも高い評価を得ている韓国の鬼才パク・チャヌク。そのパクさんがとうとうハリウッドデビューを飾ったのが本作品。『アリス・イン・ザ・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカを主演に少女の奇妙な変容を描く『イノセント・ガーデン』、ご紹介します。

アメリカの地方都市に住む孤独な少女インディア・ストーカーは18歳の誕生日の日に父を事故で亡くす。それと入れ替わるように、これまで姿を見せたことのなかった叔父・チャーリーが彼女と母が住む屋敷にやって来る。ミステリアスだが物腰の柔らかいチャーリーに母イヴリンは惹かれて行くが、インディアはなかなか警戒を解こうとしない。やがて彼女の住む町の中で不振な失踪事件が相次ぐようになる…

『イノセント・ガーデン』という題はなにやらバーネット夫人の名作『秘密の花園』を思い出させます。きっと豪華な屋敷の庭に秘密が隠されていて…とそんなストーリーを期待してましたが、お庭はあんまり重要じゃなかったですね(^^; だいたい調べてみたらこれ日本で付けられたタイトルで原題は『Stoker』といいます。全然違うやん! この題はヒロインの姓であると同時に「忍び寄るもの」みたいな意味も含められているのかもしれません。

ちょっとストーリーをばらさせてもらうと

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まあこの叔父さんというのが根っからのサイコさんというか、快楽殺人犯なんです。ヒロインがそれに気づいて「きゃあどうしよう私がお母さんを守らなくちゃ」とハラハラドキドキの追跡劇を繰り広げればふつーのエンターテイメントなんですけど、ここでちょっとあっけにとられちゃうのが、叔父さんの正体を知ってむしろときめいてしまうという。パク・チャヌクらしい展開ですね(笑)
女の子にはやっぱり多かれ少なかれそういうところがあるんですかね… どうしようもなく危険な男だとわかっているのに、ついその微笑みに魅せられてふらふらとよろめいていってしまうという性向が。そして自分の中の危険な性癖に気づき始めるインディアの姿は、最初は引っ込み思案だったのに一線を超えた途端ケラケラ笑いながら周囲の人間を殺し始めるパク作品『渇き』のヒロイン・テジュを思い出させます。
一方でどんなにシリアスな作品でも時折挿入されてるパク・チャヌク独特のあのユーモアセンスが、こちらではほとんど見受けられなかったな… インディアが自分を時計に見立てて脚をバタバタさせてるところくらい。初めてのハリウッド進出ということでギャグを入れる余裕もないほど緊張していたのでしょうか。

代わりにあからさまに感じるのがヒチコックの名作『サイコ』の影響。ハンサムなおじさんの風貌や、不気味なモーテル、ビニール越しのシャワーシーンなど「これどう見ても『サイコ』でしょー」というシーンが幾つかありました。ただ同じ素材を使っていても展開はかなり違いますので、『サイコ』を観ているとかえって意表をつかれるかもしれません。

主演のミアちゃんは少し前に『アリス~』でお子様向けの清純なヒロインを演じていたのに、この作品では子供には見せられないようなあんなことやそんなことにまでチャレンジしていて、「少女が大人になるのは早い…」と痛感せざるをえませんでした。そしてミアちゃんにそういったことまで(たぶん)嬉々としてやらせていたパクさんは「筋金入りの変態だな」と思いました。

ところで先日知ったのですが、パク・チャヌク監督はいがらしみきお先生の漫画『ぼのぼの』の大ファンでもあるそうです。平和でほのぼのした『ぼのぼの』と血みどろ情念グチャグチャなパク作品は全くつながりが感じられませんが、うーん… シュールで独特なユーモアセンスや、世間一般の価値観や常識に囚われないあたりは確かに通ずるところがある…ということにしておきましょう。毎度のことですが強引につなげました。

Ingd1『イノセント・ガーデン』はまだこれから東北・東海・九州などでかかる劇場もあるようです。くわしくは公式サイトをごらんください。この作品は興業的には微妙だったようですが(^^; スパイク・リー監督による『オールド・ボーイ』リメイクや、『グエムル』のポン・ジュノ監督のハリウッドデビューも控えていて、引き続き韓国×米国の興味深いコラボを楽しみにしております。


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July 25, 2013

マイ・ハート・ウィル・強引 スコット・フィッツジェラルド バズ・ラーマン 『華麗なるギャツビー』

20130724_120552わたしも来月いよいよ大台に乗りますが、この年になっても読んでない「読んでおくべき名作文学」たくさんあります。そのひとつで村上春樹にも多くの影響を与えたという『華麗なるギャツビー』がこのほど映画化されたので、「やった! これで読んだふりができる!」とばかりに言ってきました。それでは知ってる人は知ってるでしょうけどあらすじから。

1922年のアメリカ。大都会ニューヨークに出てきた青年ニック・キャラウェイは株式市場で成功することを夢見て日々働いていた。彼の隣家では巨大な城に住むギャツビーという男が週末ごとに盛大なパーティーを催していた。ある日ニックの元にもギャツビーからパーティーの招待状が届く。想像以上の喧騒の中会場をさまよっていたニックは、突然招待主であるギャツビーその人と会う。

…と書いてみましたが、タイトルにもあるギャツビーさんが登場するまでにけっこう間があります。噂のみが飛び交い、なかなかはっきりしないギャツビーの実像。いい加減しびれを切らしたころにみんな知ってるディカプリオの顔がバーンと出てきて思わず「キターーーーー!!」と叫びたくなりました。こういう登場までの流れ、なんだか『ゴジラ』をはじめとする怪物映画のそれに似ていました。

小説『華麗なるギャツビー』は先にも申しました通り未読でございますが、ちらちら聞きかじった情報から「田舎から出てきた純朴な青年がギャツビーという大物そうな人物に出会うが、やがてギャツビーの化けの皮がはがれて青年は心に傷を負う」という話なのかと勝手に思ってました。まあそんなに外れてはいないかな。ただ実際観てみて、こんなに恋愛の比重が大きい話だったとは意外でした。ヘミングウェイにしろレイモンド・チャンドラーにしろスタインベックにしろ、このころのアメリカ文学の旗手ってなんか「男くせ~」印象が強いので、『ギャツビー』も勝手にそういう話だと思い込んでいたのですね。だいたいほら、日本で「ギャ(ッ)ツビー」といえば普通は男性用の香水かフェイシャルペーパーですし…

この『華麗なるギャツビー』、名作中の名作と言われるゆえ、これまでも4度に渡って映画化されてきました。そこで監督バズ・ラーマンが「同じことをやってもしゃあねえ」と考えたのか(こんな文章、ついこないだも書いたような…)、今回は『ギャツビー』初の3Dによる映画化となりました。思い切りましたね(笑)
で、特に3Dによる効果が出てたのが1920年代のニューヨークと、ギャツビー邸で行われるパーティーの場面。これらが立体映像で描かれていることで、いっそうそのにぎやかさというかかけばけばしさが際立っていたと思います。多少目がチカチカしましたが、眺めていて楽しいビジュアルでありました。
あと監督があえて3Dにしたのは「遠くの光に手を伸ばすギャツビー」「町を見下ろす巨大なメガネの看板」、これらのイメージの持つ「距離感」を強調したかったのかもしれません。人はいつの時代も手の届かない物を欲するもの。そんな願望がもたらす悲劇を傍観する何か。そういった距離感がこの作品のテーマのひとつのような気がします(そういうことは原作を読んでから言おうな?

「何度も映画化された名作文学を斬新な手法でアレンジ」「富裕層の不倫が産む悲劇」「タイトルにカレーが入ってる」という点では先に公開された『アンナ・カレーニナ』とよく似ています。ただわたしとしては「奇妙な友情」という要素があった分こちらの方が好みでした。
ギャツビーはニックよりもはるかな高みにいる存在として登場します。それがいろいろあって、やがて対等の存在、真の友人となります。しかしその友情は築かれた途端、すぐに終りを迎えてしまう。そんな二人の関係につい感傷的にさせられてしまいました。

20130525_124026『華麗なるギャツビー』は全国の劇場で公開中ですが、明日で終わってしまうところがほとんどのようです。読書感想文の題材を探してるそこの学生諸君は急いで観にいってきましょう。
最後に印象に残った点をもうひとつ。きまずいムードになったギャツビーらが気晴らしに町に出かけるのですが、夏の暑さにかなり参ってるシーンがありました。そう、この時代はどんなに大金持ちといえど、暑さだけはどうにもすることができなかったわけですね。クーラーのありがたさにしみじみと感謝しながら、無意味な優越感にひたるわたくしでございました。


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July 23, 2013

Sr.&Jr.スミス ナイト・M・シャマラン 『アフター・アース』

Ae1最近は微妙な出来の作品が続いているのに、なんでか映画ファンからやたらと愛されている映画監督ナイト・M・シャマラン。そのファン待望の新作がこのほど公開されました(もう一ヶ月くらい経っちゃいましたけどね…)。スター俳優ウィル・スミスと初の宇宙SFに挑んだ『アフターアース』、ご紹介します。

はるか遠い未来。宇宙へ進出した人類は、移住した惑星で「アーサ」と呼ばれる生物兵器に襲われる。アーサは視覚をもたないが、生き物の恐怖を感じ取って飽くことなく殺戮を続ける恐ろしい怪物だった。人類が辛くもアーサに勝利を収めた数年後、戦争の英雄サイファは息子を伴って宇宙旅行へ出かける。サイファはその旅で息子との間に生じている溝を埋めようと考えていた。だが宇宙船は予期せぬ流星雨と衝突し、付近の惑星へと不時着。そして恐ろしいことに訓練用に積み込まれていたアーサがその星へと放たれてしまう。

で、タイトルにもあるようにこの不時着した惑星が未来のアレなんですね。『猿の惑星』では最後まで引っ張られた謎がこの映画ではしょっぱなから明かされてしまいます。
なんとか生き延びたもののウィル父さんは怪我で動けず。仕方なく息子のジェイデン君がけだものどもがわしゃわしゃ繁殖しているその星で、遠くにおっこった救援要請装置(進化した発炎筒のようなもの?)を取りにむかいます。都会育ちのジェイデン君は人も住んでいないど田舎で「はじめてのおつかい」を達成できるのでしょうか…

疑問に思ったのはボスキャラ「アーサ」の生態ですね。これは宇宙人が元地球人を駆逐するために開発した生き物なんですが、恐るべき戦闘力を誇るのに目が見えない。「恐怖」を感知して攻撃できるんだからそれでいいやん、と考えたのかもしれませんが、やはりいざという時のために目くらい見えるように作っといたほうがよかったのでは? 実際それが負けた原因にもなっちゃってますし・・・ まあこの辺のうっかりテイストがシャマラン作品の特徴でもありますね。過去の例でいうと、水が苦手なのにうっかり地球に攻めてきちゃう宇宙人とか、さっさと用件を言えばいいのにおどかすだけで帰ってしまう幽霊とか、どう見ても人間の姉ちゃんなのに彼女が妖精だと素直に信じちゃう管理人さんとか。
こういういかにもドジっ子っぽいセンスこそが、シャーミンがみんなから愛されている理由なのかもしれません。多少のうっかりは生暖かい目で見守ってあげることにしましょう。

ただ疑問に思った点はもうひとつあります(書いてるそばから…)。それはこの作品、SFよりも昔話風のファンタジーにした方がしっくり来るんじゃないの?ということ。「昔々化け物を退治した英雄が息子をつれて航海に出るが、海難事故で未知の大陸に漂着してしまう。息子は怪我をした父を救うために数々の試練をくぐりぬけることになる」 これだったら強引なアーサの設定も気にならないかもしれません。昔話に理屈なんか求める人はそうそういないですからね。しかし前作『エアベンダー』もファンタジーでしたし、何よりウィル・スミスが宇宙SFをやりたがったみたいです。最初の案では本当に現代の野山で親子がサバイバルする・・・という話だったそうですから。まったく金と知名度にものをいわせてなんて強引にことを運んでしまうんだ! うらやましい! おかげで前作にもましてシャマランっぽくない作品に仕上がってしまいました。

ただまあわたし今ではそんなに熱心なシャマラン党というわけでもなく。この映画を観ようと思った動機は、なんだか『少年ケニヤ』っぽかったからです。『少年ケニヤ』というのは父とはぐれた少年がアフリカの大自然を舞台に野生動物や悪漢たちとバトルを繰り広げる絵物語。わたしの生まれる前に人気を博した作品でしたが、リバイバルブームが起きたときけっこう夢中になって読んだものでした。『アフターアース』はジェイデン君がいろいろ便利なひみつ道具を持ってるという違いはありましたが、「『少年ケニヤ』みたいなもんが見たいな~」というわたしの期待には十分こたえてくれたのでそれでよしとします。

「見えそうでなかなか姿を現さない怪物が襲ってくる」というところとか、「主人公が家族を亡くした哀しみから立ち直れてない」というところとかは辛うじてこれまでのシャマラン作品と共通しているかも。ファンはそうやって無理矢理「シャマランらしさ」を探って楽しんでみるのも一興かもしれません。

Ae2『アフターアース』は本国ではいまひとつな成績に終わったようですが、なんでか日本では初登場1位を記録。なぜだ・・・ いつもはこれと逆になることが多いんですがねー
ただ日本でもぼちぼち公開が終わりそうです。「熱心なシャマランファンではない」とは書きましたが、やっぱり2、3年に一度のシャマラン祭りがひっそりと終わってしまうのはさびしい… またすぐに帰ってきてね、シャマラン! できればもうちょいあなたらしい映画で…


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July 18, 2013

台湾首刈り伝説 ウェイ・ダーション 『セデック・バレ』

Sdbr1よし! 今日は素面だ! 
本日は2011年に台湾で公開され、その年の映画賞を総なめにした4時間30分の超大作『セデック・バレ』を紹介します。

20世紀初頭、台湾の山岳にはセデック族という狩猟民族が栄えていた。好戦的なセデック族は敵の首を刈ることを名誉なこととしていて、それが「真の男子の証」ともなっていた。
やがて台湾は日本の統治下に置かれ、執拗に抵抗を続けていたセデック族もまた、その武力の前に屈することになる。総督府の支持のもと日本語を教育され、土木工事に使役されるセデック族。中には日本人の国籍を得る者もあり、それなりに平和な20年が過ぎた。しかしかつて日本軍に激しく抵抗し戦った頭目モーナ・ルダオの胸には、押さえがたい反逆の炎がくすぶり続けていたのだった。

1930年に実際に起きた「霧社事件」を題材にした作品。先にも述べましたが、長尺のため第一部「太陽旗」と第二部「虹の橋」からなっております。
いやあ、びっくりですよね・・・ 首刈り族といえばてっきり南洋とかアフリカとかあっちの方の話だと思っていたのに、普通にこの東アジアにもつい最近までいらっしゃったなんて! まあ日本の侍だって戦場においては「敵の首級をあげる」のがお仕事だったわけですから、彼らだって「首刈り族」と言えなくもないですが。
ただ日本においては首を刈るのは侍だけですが、セデック族では男子はみな戦いで首をチョンパすることが必修課題となっていて、それを一度も果たしたことのない者は「天国に行けずにあの世で苦しむ」ということになっています。軟弱者のわたしとしてはセデック族に生まれなくて本当に良かったと思いました。

現代社会に生きているわたしたちからすれば「野蛮な風習だ」と思うかもしれません。しかし彼らが「狩場」を神聖なものとし、死守しようとしていることからもわかるように、限られた土地で一族のために必要な食料を集めるためにはそれくらい必死になって自分たちの領地を守らねばならなかった、ということなのでしょう。
ただセデック族の中にも「首刈りなんてイヤだ」と進んで日本の教育を受ける者もいたり、戦いのない暮らしに安らぎを感じる者もいます(特に女子)。そんな人々が再び激しい戦いに巻き込まれて苦しんでいく様子は、なんともやるせないものがありました。
板ばさみになった者たちの悲劇を丹念に語る一方で、ダーション監督はモーナ・ルダオとその仲間たちを敬意をこめて雄々しく描きます。それはわたしたちが狼やライオンといった、気高い野生の生き物に抱く憧れと似ているかもしれません。そういった生き物を怒らせれば悲惨な結果が待っているのは当然です。それが如実に表れているのが第一部ラスト。本当にこれでもかというくらい首チョンパ・チョンパ・チョンパの嵐です。だもんでこの辺あまり血しぶきの苦手な人にはおすすめできません。
そんだけ派手にチョンパしまくった後で、「真の人になる~」というスローな癒し系のメロディーが流れ出すので少々調子が狂いました。

ちなみにわたくしたまたまこのウェイ・ダーション監督の前作『海角七号、君想う国境の南』という作品を観たことがあるのですが、そちらの方は血の一滴も流れない、台湾と日本の間のメロメロなラブロマンスを描いた映画でした。それからどうしてああしてこうなったのか、さっぱりわかりません。ただダーション監督は「日本と台湾」という題材に興味があるようで、他にも台湾の学校が甲子園で優勝した話を撮っているそうです。

Sdbr2『セデック・バレ』は日本での公開からもう3ヶ月も経ってますが、まだまだこれからかかるところも多いようです。詳しくは公式サイトをチェックしてみてください。


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July 16, 2013

復讐するはハゲにあり ジョン・チュウ 『G.I.ジョー バック2リベンジ』

Gijo1最近更新の間が空きがちな当ブログでございます。やっぱりこう暑い中一日働いてきゅーっとお酒飲んじゃうと、なかなかまたPCの前に向かおうという気にならないんんですよねー そんな自分に渇を入れるべく今日はがんばって記事を書きます。まあもう一杯ひっかけちゃってるんですけどね♪(ダメじゃん!) 『G.I.ジョー バック2リベンジ』紹介いたします。

コブラコマンダーとの激闘から数年後。英雄デュークの指揮のもと、世界最高のエキスパートチームG.I.ジョーは新星ロードブロックらをチームに加え、世界で転戦を続けていた。ある時パキスタンで核兵器の密輸がなされているという情報をつかんだG.I.ジョーは、ただちに現地に飛ぶ。デュークらはほとんど犠牲もなく任務を遂行したが、それは「コブラ」の生き残りであるザルタンの巧妙な罠であった…

4年前にも似たような記事書きましたが、『G.I.ジョー』というのはもともとアメリカで売られていた兵隊さんの玩具の商標です。世代を超えて向こうのガキンチョたちから愛され、80年代にはTVアニメも作られました。そして数年前同じく玩具から発した『トランスフォーマー』のヒットを受けこちらも映画化されたのですが、これが大コケと言わないまでも微妙に赤字な結果となってしまいました。
それがよほど悔しかったのでしょうか。今回は「なにがなんでもヒットさせたるでえ!」という気合に満ち満ちています。
まず製作費が4千万$ダウンw ついで監督・主演をそれぞれジョン・チュウ、ドウェイン・ジョンソンに交替。さらにダメ押し的に大スター・ブルース・ウィリスを「初代ジョー」として招聘。また本来は昨年夏に公開するはずだったのに、強力なライバル『アメイジング・スパイダーマン』との衝突を避けるため上映をほぼ一年延期。「試写会での評判があまりに悪かったので手直しが加えられた」なんて話まで聞きました。
いったいなぜ?どうして?そこまで『G.I.ジョー』のヒットにこだわるのか? 微妙だった作品の続編を創るよりも、もっと見所がありそうな企画を一からやった方が確実なのでは? ・・・まあその理由は、きっとスタッフ・製作のみなさんが「ジョーをとっても愛しているから! こいつにてっぺん取らせてやりてえんだ!」・・・って思ってるからなんでしょうね。そこまで愛されているGIジョーにムラムラと嫉妬心がわきあがって参ります。

それだけあれこれ手を尽くしたせいか、『G.I..ジョー バック2リベンジ』は日米ともにまずまずのヒットを記録。まだ公開が続いているにもかかわらず、すでに製作費の三倍弱の興収を達成しました。とりあえずおめでとうございました。
わたしとしては前作の珍発明・珍ビーグルがぞろぞろ出てくるような作風が好きだったのですが、今回も少なくなったとはいえそれなりに珍マシンの出番もあったので許すことにしました。
ヒットの理由はそういうものより「忍者アクション」をもっと前面に出したところにもあると思います。もともと劇場版『G.I.ジョー』は軍隊というより忍者っぽいをカラーのチームでありましたが、今回はさらにそれが強調されていました。なんせいま、忍者って世界ですんごい人気を誇ってるそうですからね。その戦略は確かに正しい。

しかし、しかしです(以下は重要キャラの生死を明かしておりますのでどうぞご了承ください)

rock
rock
rock
rock
rock

いくらドウェイン・ジョンソンを目立たせたいからってあんなにあっさり前作の主役を殺すのってどうかと思います。まるでホラー映画によくある「前作でなんとか生き延びた主人公が続編の冒頭で死んじゃう」あのパターンみたいでした。ついでに言うとヴィン・ディーゼル主演の『トリプルX』もそうでした。
実は先ほど少し話題に出しましたが、試写で評判が悪かったのは「チャニング・テイタム演じるデュークがすぐ退場してしまうから」なんですよね。だからスタッフは「デュークが死なないようにストーリーを変更した」なんて噂を聞いたのですが・・・ 普通に死んでましたね・・・(笑)
まあこの主役交替にはヒットさせるためというより、最近人気急上昇のチャニング君のスケジュールが合わなかったから、なんて説もあります。幸い?デュークは爆風に吹っ飛ばされて「死んだ」と言われてたものの、死体ははっきり映ってなかったと思ったので、彼のスケジュールさえ合えば第3作(あれば)にカムバックしてくるかもしれません。大体イ・ビョンホン演じるストームシャドウだって前作ラストでは明らかに死んでましたからね~

Gijo2というわけでそろそろ終了しそうですが『G.I.ジョー バック2リベンジ』は現在全国の劇場で上映中であります。B・ウィリスとD・ジョンソンのあまりのかっこよさに、なんだかわたしもスキンヘッドにしてみたくなりましたよ。しませんけどね!


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July 10, 2013

ブロンクス交通白書 ミシェル・ゴンドリー 『ウィ・アンド・アイ』

Wai2『エターナル・サンシャイン』『僕らのミライへ逆回転』など、奇抜なアイデアと独特なアートセンスで人気を集めるミシェル・ゴンドリー。そのゴンドリーさんの新作が先日こちらでも上映されたので観てまいりました。ですがいつものゴンドリ節と勝手が違うような・・・? 『ウィ・アンド・アイ』、ご紹介します。

ニューヨークでもガラの悪い町として知られるブロンクス。明日からの夏休みを控えた若者たちは、授業を終えていつものようにバスに乗って帰途へつく。我が物顔で睨みを利かす不良たち、自信満々のアンジェラ・アキ似の美少女とその友達、なにやら不穏な気配の漂うゲイのカップル、オレ様すごいぞアピールを女子達に振りまく勘違い少年たち、周囲を気にせずスケッチや音楽に没頭する者・・・ 若者たちの様々な思いを乗せ、バスは都会の道を走っていく。

最初に「奇抜なアイデア」と書きましたが、今回はのゴンドリー作品はやけに現実的というか地に足のついた内容です。どこにでもいる若者のごく普通の日常を描いた映画なんで。特撮やCGもほとんどなし。変わったところといえば時折不意を突くように回想場面や妄想場面が挿入されるくらいです。
あとアンジェラ・アキ以外はどうももっさりしてるイケてない子たちばっかりなんですよね。日ごろ洋画を観てると欧米の住人たちは半分以上が美男美女なのでは、と思ってしまいがちですが、そうでないことがわかってなんだか安心しましたw これは本当にブロンクス在住の、演技にはアマチュアの若者たちを起用しているからのようです。なんだかいまはなき『中学生日記』を思い出させますね!

日本でも米国でも変わらないなーと思ったのは、不良たちがバスの最後部座席に「指定席」と称して固まりたがることとかw 友達同士なのにお互いを容赦なくこきおろすところもそうですね。このくらいの若者たちというのは友達に対して本当に残酷なことを言ったりやったりするもんです。
そしてタイトルが示唆しているように、十代の少年少女というのは何よりもまず仲間に受け入れられることとか、他人から自分がどう見えるか、ということを気にかけているもの。しかし周りに合わせた自分というのは素の自分からほど遠いため、やがてボロが出始めます。
バスに乗っている学生たちはお互いの心無い会話や仕打ちによって、自分の恥ずかしい姿を周囲にさらしていきます。しかしバスに乗っている以上目的地に着くまでは降りることもままなりません。でもそうやってさんざん恥をかいた果てに、ある者たちは周りに合わせたものではない、自分の本当の気持ちに気づいたりします。
逆に日本と違うな・・・と思ったのは、なんだかんだ言って向こうの若者たちは根拠のない自信を持ってる子が多いな、ということです。こちらの若者は『桐島、部活やめるってよ』を観てもわかるように、どちらかといえば自分に引け目というかコンプレックスを抱えている方が多い気がします。わたしもまさにそんな青春を送ってましたし・・・ あ、今もか? 
あとこれは東西ということではなく時代の違いですが、いまの学生たちは携帯があるから内緒話もあっという間にひろまるんだなあ、と。自分の中高時代に携帯がなくて本当に良かったです。

Wai1本当に十代のころというのは悩み多き時代ですよね。ただもうじき不惑を迎えるわたくしも未だに惑いっぱなしだったりして・・・ 今日はどうも話が暗い方へ行きがちだな。もうそろそろビール飲んで寝よう。実はさっきからもう飲んじゃってるんですけどね!
『ウィ・アンド・アイ』はもうやってるところも少なくなりましたが、東北、北陸、四国、九州などはこれから回っていくみたいです。青春の甘酸っぱさにひたりたい人とバスが好きな人におすすめです。

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July 06, 2013

人間やめてます・覚醒剤やめません ドン・ウィンズロウ オリバー・ストーン 『野蛮なやつら/SAVAGES』

Svg1『ストリート・キッド』の翻訳以来、日本でもミステリーファンの間で注目を集めているドン・ウィンズロウ。わたしもニール・ケアリー・シリーズや『ボビーZの気だるく優雅な人生』『犬の力』など読んでみましたが、どれも傑作でありました。そのドン・ウィンズロウの作品を名匠オリバー・ストーンが映画化したというので「ほうほう」と観にいってまいりました。『野蛮なやつら/SAVAGES』紹介いたします。

インテリのチョンと湾岸帰りのベンは子供のころからの親友同士。二人はお互い助け合って西海岸で超良質のドラッグを開発し、共通の恋人(!)オフィーリアとハッピーでバブリーな毎日を送っていた。ある日メキシコの麻薬密売組織が彼らのドラッグに目をつけ、彼らの傘下に入れと要求してくる。組織の要求が色々気に食わなかったチョンとベンは商売をたたみ西海岸から高飛びすることにしたが、それを察した組織はオフィーリアを誘拐して二人に言うことを聞かせようとする。

ドン・ウィンズロウの作品は、犯罪に関わる人々をひょうひょうとした筆致で描いたものが多いです。この『野蛮なやつら』の映画版も全体的に軽妙なムードが全体に漂ってるんですが、同時にゴア描写も半端なく。冒頭からはっきり切断するとこまでは映さないものの、チェーンソーで組織に逆らった連中が片っ端から首をチョンパされてたりしますshock まあこれくらいは実在の麻薬組織もやってることなので仕方ないですね・・・ いや、仕方なくないけど。
そんな身の毛のよだつ連中を向こうに回すベン&チョンは、それぞれ才能もあるんだけどちょっとのんびりしてたり、ドンパチに慣れてなかったりでいまひとつ頼りない。そんな二人ですが、最愛のオフィーリアを取り戻すために手を汚していくにつれ、ずんずんと凄みを増していきます。
この「共通の恋人」ってのがなかなか他に類をみない関係であります。どちらかに隠してこっそりつきあっているわけでもなく、完全オープンで三人仲良くつるんでいる。ベンもチョンもお互いに嫉妬するわけでもなく、オフィーリアも二人を本当に平等に愛している。西海岸のファンキーな風土だからこそそんなカップル・・・じゃなくてトリオも成立するんでしょうか。

彼らを苦しめる麻薬組織の女首領もちょっと変わってます。敵対者たちは容赦なく血祭りにあげる残酷な面を持つ一方、最愛の娘に冷たくされるとメソメソしていたりする。ベニチオ・デル・トロ演じるその懐刀も本当に「人でなし」という言葉がぴったりくる極悪人なんですけど、どこか愛嬌があるというかにくめないというか。一生懸命「こいつを許しちゃいけない」と頭に刻もうとするんですけど、ついその振る舞いにニヤニヤしてしまいました。これは演じてる俳優の力もあるし、作者・監督が愛情を注いで造形しているからなんでしょうね。
オリバー・ストーンといえば重厚な作品を撮る人、という印象があったのですが、こんな人を食った映画を作るとは意外でした。
以後は若干ネタバレしてるので未見の方は避難していただきたいのですが

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この映画、クライマックスも相当人を食ってます。登場人物がバタバタ死んでいって「むなしい結末だ・・・」とひたっていたら、急に「こうなるかと思ったんだけど」というモノローグとともにギュイギュイと時間が巻き戻っていく。そしてそのあとのもうひとつの結末が、「本当にそれでいいんかい!」と笑ってつっこみたくなるようなものでした。ただこの「もうひとつの結末」、オフィーリアが麻薬でラリッた頭で見た幻想としても解釈できそうな。どっちが真のENDなのかは、それこそ「観客にまかせる」ということなんでしょうね。

Svg2ちなみにオリバー・ストーンはよほどこの原作が気に入ったようで、ドン・ウィンズロウに「続編を書いて欲しい」と要請したとか。それをうけてドンさんもその気になっているとか。そしたらまたストーン監督が映画化するんでしょうか。

『野蛮なやつら/SAVAGES』はすでに上映終了(^^; 8月末にDVDが出ますので興味を惹かれた方は原作(角川文庫)かそちらをどうぞ。


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July 02, 2013

丸・三角・記憶 ジョセフ・コシンスキー 『オブリビオン』

Obbin2同じ時期に企画がかぶるということはよくあるようですが、今年はなぜかハリウッドで世界滅亡というかディストピアものが大流行なようで。『アフター・アース』『パシフィック・リム』『ワールド・ウォーZ』『エリュシオン』『ザ・ワールズ・エンド』『ディス・イズ・ジ・エンド』… その先陣を切って公開されたのが、すでに『宇宙戦争』でこの世の終わりを経験しているトム・クルーズの『オブリビオン』。あらすじから参ります。

宇宙からの侵略により、死の星と化してしまった地球。ジャックとヴィカはわずかに生き残った人類の代表として、母星の環境復元と敵の残存勢力追討に日々務めていた。任務も満了に近づいたころ、ジャックは異星人らしき武装集団に襲われる。辛くも逃れたジャックだったが、その時感じた違和感や続けて起きた事件をきっかけに、自分の境遇に疑問を抱き始める。

「オブリビオン」の意味は・・・と書くとこれだけで若干ネタバレになってしまうのが辛いところ。まあ英語圏の人たちには意味なんて一発でわかるわけですから、それくらいバレたってかまわないと作者は思ってるんでしょうけど。これ、なかなかにシンプルで渋いタイトルでありますよ。
正直SF映画やSFアニメをたくさん観てる身としては「ああ、そのアイデアはあれにもあったよね」というところが色々ありました。まあ監督のコシンスキーさんも相当その手の映画が好きなんでしょう。
ただ既視感こそあったものの、「コシンスキーさん、いいセンスしてるなあ」とは思いました。人間や建造物がほとんどないせいか、スクリーンに映る景色が雄大かつ清浄で癒されるんですよね。あといちいち丸っこいビーグルやロボットのデザインも好みでした。夏目房之介先生もおっしゃってましたが、円とか球という形は人の心に安定を与えるんだそうです。
そしてもうひとつ嬉しかったのがけっこういいところでプロコル・ハルムの『青い影』がかかるんですわ。わたしこの曲がオールディーズの中でも1,2を争うくらい好きなもので。ちなみにこの曲ムードたっぷりの甘いメロディなので歌詞もさぞかし甘々なのかと思いきや、こんなわけのわからん歌詞だったりします。

さて・・・ こんだけえんえんと誉めたので、以降はオタクらしく完全ネタバレで「これはあれに似てる」という点をねちっこく指摘してみましょう。そういうわけで未見の方はご了承ください。

☆主人公の正体が実はアレだったという真相・・・いろんなところで言われてますけど、『月に囚われた男』と一緒です。アニメ『ゼーガペイン』の敵もそうでした。

☆古典に触れて感性が豊かになってしまう主人公・・・これは『リベリオン』でしょう。タイトルも似てます。

☆ボール状でダルマみたいなメカ・・・これはたまたま似ちゃっただけだと思いますが、横山光輝御大が描かれた『マーズ』に登場する「ウラエヌス」というロボットにちょっと似てます。あと『ガンダム』のボールとか。

☆敵のコンピューターと対話する場面・・・『装甲騎兵ボトムズ』のクライマックスにそっくしな場面がありました。あと侵入していく様子は『インデペンデンス・デイ』を彷彿とさせます。コンピューターのシンボルが丸い赤ランプなのは『2001年宇宙の旅』ですね。

☆ナツメロがふいに流れ出して踊りだす二人・・・SFじゃないですけど『ゴースト ニューヨークの幻』みたいでした

☆オチ・・・トニー・スコットの『デジャヴ』ですよね~

まだあった気もしますが、観たのももう一ヶ月前なんで思い出せるのはこれくらいです。なるたけその作品のいいところを、オリジナリティを見つけたい・評価したいと思ってるのに、ついついそうでない方が気になっててしまう。オタクというのはつくづく救いがたい人種です。

Obbin1そんな『オブリビオン』はスター俳優トム・クルーズと終末SFの相性がよかったのか、地味なタイトルとは裏腹にそこそこヒットを飛ばしているようです。まだ1、2週間くらいは上映してるんじゃないでしょうか。
とりあえず次はディストピア映画は、これまたスターのウィル・スミスとお騒がせ監督ナイト・M・シャマランが組んだ『アフターアース』を観賞する予定。こちらはまた濃いい地雷臭を感じるのですが、それもまた良しw

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